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第二章 変わり始める互いの世界
サーメイヤ語教室開設とインジスカン王国観光
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インジスカン王国側に遅れること1ヶ月、日本でも、インジスカン王国の共通語であるサーメイヤ語の語学教室の開設に、何とかこぎ着けた。
「この度はこちらの発案によりお集まり頂いただき感謝します。当サーメイヤ語教室責任者で教師の岡塚汲広です。まずはお配りした用紙をご覧下さい。表音文字26文字が2セットで52文字、それに単語や発音や文法などが主な授業内容となります」
サーメイヤ語教室に参加したのは、インジスカン王国側と同じく、40人程であった。すでに地球の日本語以外の言葉も堪能な者も結構いるらしく、生徒はわりと落ち着いている。
「インジスカン王国にはあって日本に、いや、地球にないもの。それは何と言っても魔法でしょう。
魔法についてはまだ研究すらされておらず、そんなもの、本当にあるのか?と疑っている方もいらっしゃるでしょう。
しかし私は魔法は実在し、今の科学技術では不可能なこともできると確信しています。これから、魔法に携わる方も、そうではなく、通訳に集中される方も、共に異世界の言葉を学んでいきましょう」
「同じく、教師役の岡塚アントネラです。
サーメイヤ語を共通語としているインジスカン王国は、隣国と緊張関係にあるため、多少ピリピリとした雰囲気のところもありますが、
科学が発達していない故、自然豊かで公害もほぼ無く、比較的のんびりとした国です。
さあ、そんな国との交易の為、サーメイヤ語について勉強していきましょう」
「「サーメイヤ語教室、ここに開講します」」
かくして、サーメイヤ語教室が始まったのだった。
*
所変わってインジスカン王国王都のシンダーグス。
以前、馬車で通った大通り。そこには日本から来た視察団一行がいた。
こちらの悠生は手が空いていたので、ステファニアにばかり負担をかけても仕方ないし、悠生が案内役であった。
やはり、金換算でレートを割り出していた悠生は、肉屋、魚屋、八百屋で電卓片手に日本円でいくらと値段も説明しながら各店を回っていた。
インジスカン王国側の視察団が来たときとは違って、事前通達があったため、見せたい場所には通達がいっていたのだが、異国の、それも聞き慣れない言葉を話す一行は、物珍しく見る者、遠巻きに見て近づかない者、避けて通る者など、奇異の目で見られていて、とても目立っていた。
一通り大通りを巡ったあとは、1本裏路地へと入ってみる。
そこには表通り程の賑わいはないが、店が並ぶ。武器屋、防具屋などの、ハンターに必要な店やら、薬屋、動物の皮でてきていそうな水筒やら防水布など、旅人全般に必要となる道具屋、宿屋などがあった。
こちらの筋でもやはり電卓片手に値段を言いながら説明する悠生。
視察団は「噂には聞いていたが」とか、「過去にタイムスリップしたようだ」など、口々に感想を述べながら見て回った。
夕方には貴族街へと入り、カンデラ邸でお世話になる。
語学学校の人達と被らないように、先に風呂へ入ってもらい、2人1部屋ずつ割り当てられた部屋で、少し待ってもらった後、大広間で夕食となった。
風呂も、夕食も、満足してもらえたようだった。しかし、個室にまでは電気は回していなかったため、皆、手燭にロウソクを立て、部屋では燭台に立っているロウソクに火を移し、明かりを採った。
2日目の朝食の際には、星明かりが綺麗であったと口々に言っていた。
星に詳しい者もいたようで、日本に居たときに見た星と、全く配置が異なり、改めて、別の星に来たのだなぁとつぶやく者もいた。
これで、魔法で別の星に来たことをいくらかでも信じてもらえたかな?と思う悠生であった。
2日目の午前中は、カンデラ邸を散策した。泊まってもらった客間以外にも、執事やメイドなど、使用人の部屋や、調理場、薪置きの納屋やら馬小屋やら馬車の駐車場、途中、先月取り付けたガスボンベやら発電機も見つかってしまった。
しかし、視察団の人は一様にほっとした雰囲気になったような気がした。
午後は貴族街を散策した。庭のあるなし、屋敷の大きさは貴族の位や領地の稼ぎによるものだと説明した。庭の手入れが行き届いた庭園や、花々の綺麗な庭園などは皆、足を止めて見入っていた。
3日目は、また平民街へと戻り、一般宅へ数件お邪魔した。
悠生の通訳で、住民と会話したりもした。やはり感想は、「過去にタイムスリップしたようだ」といったものだった。
昼の3時頃には掃き出し窓の魔法を使い、カンデラ領へ移動してもらった。今日は、カンデラ領の領主邸である方のカンデラ邸で泊めてもらうためだ。
4日目の朝は、無理を言って平民の食べ物を出してもらう。
皆、平民はやはり質素なのだなぁと口々につぶやいていた。
午前中は、こちらのカンデラ邸を散策した。泊まってもらった客間以外にも、執事やメイドなど、使用人の部屋や、調理場、薪置きの納屋やら馬小屋やら馬車の駐車場や、手入れの行き届いた庭園などを散策した。
中には「こちらには発電機はないのか」とがっくりする者もいた。何故だ!
昼にはメルタープの街を散策した。肉屋、魚屋、八百屋、武器屋、防具屋、薬屋、道具屋、宿屋など、
やはり電卓片手に値段を言いながら説明する悠生。皆、口々に食料品は王都より安いが、道具類は高くなるのだなぁとか、道具の質もおちるなぁとか。外国語なのをいいことにあまり聞かせられないようなことを言う視察団一行。
5日目、6日目はこの辺りは比較的郊外も安全なため、街の外に出てみることにした。
悠生はここは馬車で通ったっきりであまり来ようとは思わなかった場所であり、初めての場所であったが、馬車が通るわだちが一本通っているだけの、他は広々とした草原であった。
街を一周するような感じで案内し、途中、遠くに森やら田畑やらがあった。そして、話には聞いていたが、カンスー河だろうか、大きな河が流れていた。
7日目には、昼頃、王都に掃き出し窓の魔法を繋いでもらい、一旦王都へ行き、夕方にはまた掃き出し窓の魔法を使い、皆を日本へ帰した。
インジスカン王国の視察団のときも思ったが、この視察で悠生もステファニアもどのような変化が起こるか想像できなかった。
インジスカン王国は田舎者だと馬鹿にされやしないだろうか。自分で始めたことなのに、若干後悔の残る悠生であった。
「この度はこちらの発案によりお集まり頂いただき感謝します。当サーメイヤ語教室責任者で教師の岡塚汲広です。まずはお配りした用紙をご覧下さい。表音文字26文字が2セットで52文字、それに単語や発音や文法などが主な授業内容となります」
サーメイヤ語教室に参加したのは、インジスカン王国側と同じく、40人程であった。すでに地球の日本語以外の言葉も堪能な者も結構いるらしく、生徒はわりと落ち着いている。
「インジスカン王国にはあって日本に、いや、地球にないもの。それは何と言っても魔法でしょう。
魔法についてはまだ研究すらされておらず、そんなもの、本当にあるのか?と疑っている方もいらっしゃるでしょう。
しかし私は魔法は実在し、今の科学技術では不可能なこともできると確信しています。これから、魔法に携わる方も、そうではなく、通訳に集中される方も、共に異世界の言葉を学んでいきましょう」
「同じく、教師役の岡塚アントネラです。
サーメイヤ語を共通語としているインジスカン王国は、隣国と緊張関係にあるため、多少ピリピリとした雰囲気のところもありますが、
科学が発達していない故、自然豊かで公害もほぼ無く、比較的のんびりとした国です。
さあ、そんな国との交易の為、サーメイヤ語について勉強していきましょう」
「「サーメイヤ語教室、ここに開講します」」
かくして、サーメイヤ語教室が始まったのだった。
*
所変わってインジスカン王国王都のシンダーグス。
以前、馬車で通った大通り。そこには日本から来た視察団一行がいた。
こちらの悠生は手が空いていたので、ステファニアにばかり負担をかけても仕方ないし、悠生が案内役であった。
やはり、金換算でレートを割り出していた悠生は、肉屋、魚屋、八百屋で電卓片手に日本円でいくらと値段も説明しながら各店を回っていた。
インジスカン王国側の視察団が来たときとは違って、事前通達があったため、見せたい場所には通達がいっていたのだが、異国の、それも聞き慣れない言葉を話す一行は、物珍しく見る者、遠巻きに見て近づかない者、避けて通る者など、奇異の目で見られていて、とても目立っていた。
一通り大通りを巡ったあとは、1本裏路地へと入ってみる。
そこには表通り程の賑わいはないが、店が並ぶ。武器屋、防具屋などの、ハンターに必要な店やら、薬屋、動物の皮でてきていそうな水筒やら防水布など、旅人全般に必要となる道具屋、宿屋などがあった。
こちらの筋でもやはり電卓片手に値段を言いながら説明する悠生。
視察団は「噂には聞いていたが」とか、「過去にタイムスリップしたようだ」など、口々に感想を述べながら見て回った。
夕方には貴族街へと入り、カンデラ邸でお世話になる。
語学学校の人達と被らないように、先に風呂へ入ってもらい、2人1部屋ずつ割り当てられた部屋で、少し待ってもらった後、大広間で夕食となった。
風呂も、夕食も、満足してもらえたようだった。しかし、個室にまでは電気は回していなかったため、皆、手燭にロウソクを立て、部屋では燭台に立っているロウソクに火を移し、明かりを採った。
2日目の朝食の際には、星明かりが綺麗であったと口々に言っていた。
星に詳しい者もいたようで、日本に居たときに見た星と、全く配置が異なり、改めて、別の星に来たのだなぁとつぶやく者もいた。
これで、魔法で別の星に来たことをいくらかでも信じてもらえたかな?と思う悠生であった。
2日目の午前中は、カンデラ邸を散策した。泊まってもらった客間以外にも、執事やメイドなど、使用人の部屋や、調理場、薪置きの納屋やら馬小屋やら馬車の駐車場、途中、先月取り付けたガスボンベやら発電機も見つかってしまった。
しかし、視察団の人は一様にほっとした雰囲気になったような気がした。
午後は貴族街を散策した。庭のあるなし、屋敷の大きさは貴族の位や領地の稼ぎによるものだと説明した。庭の手入れが行き届いた庭園や、花々の綺麗な庭園などは皆、足を止めて見入っていた。
3日目は、また平民街へと戻り、一般宅へ数件お邪魔した。
悠生の通訳で、住民と会話したりもした。やはり感想は、「過去にタイムスリップしたようだ」といったものだった。
昼の3時頃には掃き出し窓の魔法を使い、カンデラ領へ移動してもらった。今日は、カンデラ領の領主邸である方のカンデラ邸で泊めてもらうためだ。
4日目の朝は、無理を言って平民の食べ物を出してもらう。
皆、平民はやはり質素なのだなぁと口々につぶやいていた。
午前中は、こちらのカンデラ邸を散策した。泊まってもらった客間以外にも、執事やメイドなど、使用人の部屋や、調理場、薪置きの納屋やら馬小屋やら馬車の駐車場や、手入れの行き届いた庭園などを散策した。
中には「こちらには発電機はないのか」とがっくりする者もいた。何故だ!
昼にはメルタープの街を散策した。肉屋、魚屋、八百屋、武器屋、防具屋、薬屋、道具屋、宿屋など、
やはり電卓片手に値段を言いながら説明する悠生。皆、口々に食料品は王都より安いが、道具類は高くなるのだなぁとか、道具の質もおちるなぁとか。外国語なのをいいことにあまり聞かせられないようなことを言う視察団一行。
5日目、6日目はこの辺りは比較的郊外も安全なため、街の外に出てみることにした。
悠生はここは馬車で通ったっきりであまり来ようとは思わなかった場所であり、初めての場所であったが、馬車が通るわだちが一本通っているだけの、他は広々とした草原であった。
街を一周するような感じで案内し、途中、遠くに森やら田畑やらがあった。そして、話には聞いていたが、カンスー河だろうか、大きな河が流れていた。
7日目には、昼頃、王都に掃き出し窓の魔法を繋いでもらい、一旦王都へ行き、夕方にはまた掃き出し窓の魔法を使い、皆を日本へ帰した。
インジスカン王国の視察団のときも思ったが、この視察で悠生もステファニアもどのような変化が起こるか想像できなかった。
インジスカン王国は田舎者だと馬鹿にされやしないだろうか。自分で始めたことなのに、若干後悔の残る悠生であった。
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