アヤカシ学園 N o.1

白凪 琥珀

文字の大きさ
上 下
1 / 5
夏: 初めて編

EP1 やってきた不幸

しおりを挟む
「もしもし、うん着いたよ。道ぐらい
 分かるって!子供扱いしないでよ!」
プツっと通話中の画面を消した。
私は清水葵。今日からこの六花学園に編入することになった雨女です。妖怪の母と人間の父の間に生まれたハーフです。
妖力のコントロールが苦手で気づいたら妖力垂れ流しで家が浸水しそうになったので妖力封じの腕輪をつけています。
(振り返ってみると我ながら恥ずかしい
 ほどのヘタレっぷりだなぁ…)
「見えてきた!意外とでっかい校舎だな
 ぁ」
ビックリなのは外観だけじゃなく、校舎の中も本当に綺麗です。
(よく掃除が行き届いてるなー)
学園長室は3階。3階までエレベーターは通っていますが、私は人混みが苦手なので階段を登っていきます。
コンコン。
「し失礼します。私清水葵と申します。
 早速ですが、20分の遅刻すいませんで
 した!!」
「それは良いんですが、ノック2回はト
 イレですよ。ここはトイレじゃない
 です。」
大きな椅子に座って学園長が言った。
学園長は目元が隠れるお面をつけていて
ミステリアスでかっこいい…
「それではあなたのクラスに行きますよ
 。」
「は、はい。」

「さて、ここが今日からあなたのクラス
 ですよ。2年D組は…まぁ、問題児が
 多いですが…頑張れ」
学園長がグッと親指を立てた。
「いや、学園長そんなクラスになんで私
 を…あぁ多分あと一時間後にはクラス
 のみんなに焼きそばパンとか買わされ
 てるんだ…」
「そんな典型的なヤンキーじゃあるまい
 し…というかこの学校の購買に焼き
 そばパンは売ってません。」
「え!そういう問題なんですか!?」
「早く行った行った。私もこう見えて
 暇じゃないんで」
ガラッ。ドアを開けるとクラスメイトが
私に注目していた。
「ああの、えっと…」
緊張で溶けそうなときは、姉直伝!空っぽビンタ!
顔をベシッと叩いて、深呼吸をした。
「ゎ私は清水葵…です。っ今日からこの
 クラスに転入してきました…よろしく
 お願いします…」
しーん。この沈黙が私の心を抉る。
「あれ、転入生がもう来てる…」
あくびをしながら男性が入ってきた。
「おせーよ、黒江。」
「わりーわりーこれでも急いだ方だって
 。清水、俺担任の黒江椿。」
黒江先生はよっと手を上げた。この人ピアスしててなんか怖い…
席につくと、窓側の一番後ろ。私は知っている。この席は一番教師の目がつきにくいと。
こうして、午前はほとんど寝ていた。というわけで友達も未だに出来ていません。
「転校生の…清原だっけ?」
女装した男の子が話しかけてきた。
「あの…清原じゃなくて清水です…」
「清水、黒江から部活見学行けって。
 ついでに俺に校内を案内しろってさ。」
(名前間違えたのに無かったことにされた…)
「俺、冬馬渚。一応学級委員。雪女って
 妖怪。」
「冬馬くんなら、雪男じゃないの?」
彼は女装しているけど、声とか口調は明らかに男だ。
「雪男は獣みたいなやつだよ。雪女は
 人型だけど、雪男は馬鹿デケェぞ。
 ってこんなことも知らないのかよ。」
「私ずっと千葉で暮らしてたけど、
 妖怪見たことなくて…」
「へー。ま、氷と水の妖怪同士、仲良く
 やろうぜ。」
冬馬くんは見た目は女の子だが、中身はめちゃくちゃ男らしい。
「最初は生物室だな。生物室では生物部
 が活動してるんだ。ま、部員は3人だ
 けど。」
生物室と書かれた教室のドアを開ける。
「あ、っ冬馬くん!と清水さん?」
「よぉ橘高。」
生物室には二つ結びの少女がプランターに水をやっていた。
「わ私、冬馬くんと学級委員をしています 。橘高萌葱と申します。」
「今、清水に校内案内しててさ。ついで
 に生物部に顔出してみたんだ。」
よく見ると彼女の頬がわずかに紅潮したのがわかった。ただこの話の主人公はこの手の話に全く疎かった。
「部員が少なくて…今は私以外に一年生
 が二人いるんですが、幽霊部員で…
 冬馬くんや清水さんが入ってくれれば
 水やりに困らないし…」
「いや、俺は多分花凍らせるから
 無理だわ。清水は?」
冬馬くんが花にフーと息を吐くと凍ってしまった。
「私、妖術コントロール出来なくて、枯
 らしちゃうと思うから遠慮しとく…」
「そっか…残念…
 あ、この鉢植えあげます。」
「橘高さん、これ何?」
橘高さんから貰ったのは小さい蕾のように赤い花。
「これはシクラメンっていうヨーロッパ
 の花です。」
実はこのシクラメンという花の花言葉は
白は『思いやり』、ピンクは『憧れ』、
そして赤は『嫉妬』である。橘高萌葱。彼女は物静かでおとなしいが、ごくたまに胸に秘めた思いの花を他人に渡す、少しヤバい奴であった。しかもこの行為は無意識である。
そんなことを知らない清水葵は親切にしてもらったと思い、上機嫌である。
(綺麗な花だなぁ。どこに飾ろうかな?)

 


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

アヤカシ学園 N o.2

白凪 琥珀
ライト文芸
私立六花学園に転校してきた、妖怪雨女の清水葵。消極的で引っ込み思案だったが、クラスメイトの冬馬渚や同室の霧島蕾華など個性豊かな友達ができ、少しずつ葵に変化が見える。  3人1チームの実技訓練が始まる! だが、妖術のコントロールが苦手な葵は この訓練に不安を感じていて、、

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話

赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

処理中です...