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001深い穴
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「止めろよ!! 兄さん達!?」
俺はリード、リード・カクタス・ウィスタムというれっきとした貴族、ウィスタム家の四男だ。黒髪に茶色い瞳を持つ俺は周りにいる皆に訴えかけていた、周りにいたのはウィスタム家の長男のレッジェで金髪に蒼い瞳をしていた。他にも赤茶色の髪に黒い瞳の次男のリヒター、それに三男のやたら太った黄色い髪に茶色い瞳のタックスがいた。そして、レッジェ達が口々に言った。
「煩い、リード。お前にはもううんざりなんだ」
「そうそう、その珍しい黒髪も見たくもない」
「今日こそ本当にさようならだ」
俺たちは今、街の外にある深い山に来ていて俺の背後には真っ黒い深い穴があった。レッジェ達はそれぞれ剣とか武器を持っており、素手の俺は追い詰められて後ろに下がるしかなかった。俺は元々家を出るつもりだった、だからそのことを伝えた。
「俺は十五歳になった、だから家から出て行く。それでいいじゃないか!?」
俺の言葉の聞いてレッジェが嫌そうな顔をした、リヒターも面倒そうだった。タックスは馬鹿じゃないのかという視線でこっちを見ていた。そして、またレッジェ達が口々に言った。
「お前を処分することは父上もご存じだ、無能はウィスタム家には必要ない」
「うっとうしかったですからね、貴方。毎日、無能なのに剣だ、勉強だと努力して」
「その努力も無駄だってわけだな、お前は今日ここでおしまいだ」
無能というのは精霊と契約できていない人のことを言う、この世界では精霊と契約できてはじめて魔法が使えるようになるのだ。だが世間では無能の方が数が多い、統計をとったわけじゃないが俺の知っている中では無能は七割くらいいた。俺は腹が立って言い返した。
「無能の方が数が多いのに、それを理由に殺されるなんてあんまりだ!!」
すると長男のレッジェやリヒター、それにタックスが笑い出した。そして皆はそろってまた口々にこう言った。
「貴族は無能じゃいけないんだ、貴族で無能なんて価値がないのさ」
「兄上の言う通りだぜ、それにお前の顔は見飽きたんだ」
「独立して外の世界に出て、何か恥をかいて死なれるのは、ウィスタム家にとって迷惑なんだよ」
俺は反論する言葉を失った、確かに貴族には無能は少なかった。皆、何かしらの精霊と契約している者が多かった。そして、いい加減に飽きたのだろう、長男のレッジェが俺に向かって笑いながら魔法を放った。
「いけ、”炎の矢”」
「うわっ!? あっ!! うわあぁぁ――――――!?」
そうして俺は深くて暗い穴の中に背中から落下した、魔法を避けるにはそうするしかなかった。でもそれで俺の体は穴の底の地面に叩きつけられた、凄い衝撃がきて頭がくらくらして俺は気を失った。そうして俺は気を失い夢を見た、長い現実のような夢だった。
「ありがとうございましたー!!」
夢の中で俺は日本という国にいた、年は四十二歳で最初は公務員を目指していたがなれなかった。大学までいったが碌に資格を持っていなかった俺には選べる仕事も少なかった、レジ打ちの仕事だって必死に履歴書を書いて面接を受けて貰った大事な仕事だった。
「……今日から無職か」
俺は人員整理で首になって、それから俺なりに必死で仕事を探したが見つからなかった。仕事とは新卒のほうが得られるものだった、俺は新卒の時に就職しなかったことを後悔した。そうして貯金を取り崩しながら生きていたが、やがて食べ物も買えなくなり家賃だけは支払いを欠かさなかった。結局、夢の中の俺はそのまま自室の布団の中で衰弱死した。そんな寂しい夢だった。
「うぅ? こっち、は、げっ、現実か?」
俺は前世の記憶を長くて辛い夢の中で思い出した。でもそれが今の状況で何の役に立つだろうか、何の役にも立たず俺は酷い怪我を負って、深い穴の底から丸い出口を見つめていた。血が体から流れだしていくのを感じた、俺は今度の人生は失血死かと思い諦めかけていた。
「ひ、かり?」
真っ白な綺麗な小さな光が俺の周囲を飛び回っていた、俺は最期に綺麗なものを見れたなと思って、また気を失ってしまった。そうして俺の二度目の人生は終ったはずだった。俺はもっと早く前世を思い出していたら、何かできることがあったのかなと思いながら意識を失った。
「ん?」
俺は目を覚ました、また転生したのではなくリードのままで目を覚ました。俺は痛みが無くなった体を起こした、服には血がべったりついていた。俺は何故自分が生きているのか不思議に思うと、俺の体の中から白い小さな光が出てきて俺の周りを二、三回飛び回ると俺の中に入ってしまった。
「もしかして俺は精霊と契約したのか?」
もしそうだとしたら凄いことだった、白色の小さな光の精霊は『光の精霊』で怪我を治してくれたり灯を与えてくれたりするんだ。他には結界を作ることができるし、それに闇の悪い契約を取り消したりもできるのだ。俺は光の精霊に感謝しながら周囲を見回してみた、この穴があるところ以外は真っ暗で見えなかった。
「”長き灯”」
でも俺は小さな灯を光の精霊に作ってもらって周囲のことが良く見えた、まず上の穴からの脱出は難しそうだった、壺状になっているこの穴は壁を登ることができなかった。時間はもう夕方になっていてここは山の中でも深いところで、人が通りがかることは無いからまず叫んでも無駄のようだった。
「喉が渇いた、マズイな」
俺は湧き水でも出ることを期待して湿っている土を掘ってみた、かなり掘ったが何も出ずに失血からくる喉の渇きに苦しんでいる時だった。橙色の小さな光がどこからか現れて俺の中に入っていった、すると掘りたいと思ったらボカンッ土が掘れるようになった。俺は『土の精霊』と契約したようだった、
「あんまりあちこち掘ったら、落盤するんじゃないかな。それは大変だ」
でもいくら湿った土を掘ってみても、水は一滴も得られず喉が焼けるようだった。俺は映画の知識だったが、服のボタンをちぎって口に含み唾液で誤魔化した。でも誤魔化しきれずに脱水症状で、俺は頭がくらくらして土の床に仰向けになった。その瞬間だった。
「ごぼっごぼっちょっとがぼっごくんっげほっごくんっ待ってがぼっごくんもうげほっ水はいいからごぼっごぼっごっくん!?」
俺の顔の上に突然だが大量の水が現れて俺はそれを貪るように飲んだが、それにしても水の量が多過ぎて全身びしょぬれになった。そうして水色の小さな光が俺の中にすうっと入ってしまった、俺は『水の精霊』と契約したのだった。正直なところ凄く助かった、ありがとうと感謝をしながら同時に思わず口に出た。
「へっクション!? ヤバイ、風邪を引くかも」
俺は一度服を全部脱いでからできるだけ絞って水気をとった、そうしてもう一度服を着たが寒気は止まらなかった。もう夜になっていたし、火でも起こせるものはないかと探したが、火打石っぽいものはあっても燃やす物が何もなかった。そんな時、いきなり僕の周囲を炎が取り囲んだ。
「レッジェか!?」
一瞬レッジェが戻って止めを刺しにきたのかと思ったが、巻き起こった炎は優しく燃え続け俺の服が乾くと消えた。血まみれだった服が水で洗われ、炎で乾燥してまぁまぁ綺麗になった。その間に赤くて小さな光が俺の体に入っていった、『火の精霊』と俺が契約したのだった。
「これは綺麗な石だ、宝石なのかな?」
体が温まってちょっと回復したところで、俺は土の精霊が掘った穴の中に残っているものに気がついた。どうやらただの石でなく鉱石や宝石の原石らしかった、俺はそれをここから出られることがあれば持って行こうと思った。その瞬間、金色の小さな光が俺の周囲をくるくるっと回って、俺の体の中に消えていった。そしたら俺はその鉱石や宝石の種類が分かるようになった、『金の精霊』と俺は契約したのだ。
「今日はもういい眠るか」
いろいろ試してみたが外には出れそうにないので、穴から見える星を見ながら眠ることにした。灯を消し真っ暗闇で眠ったが何も怖くないと思っていると、紫色の小さな光が現れて俺の中に入っていった。俺はうとうとしながら『闇の精霊』と契約をしていた。
「穴から出たい、空が飛べたらいいのになぁ」
翌日になって俺は穴から出る方法を考えていた、堀った土を階段状に盛ることも考えてやってみることにした。その作業の合間にふと俺が考えていたことが口に出た、するとだ俺の体がふわりっと浮き上がって暗い穴の中から外に飛び出ていた。俺は青く綺麗な空に感動した、そして緑色の小さな光が俺の中に入っていった、『風の精霊』との契約だった。俺は忘れずに拾った鉱石と宝石の原石を取りに戻って、今度は用心しながら飛んで外の世界へと出て行った。
「さて、脱出できたんだ。これからどうしようかな」
俺はリード、リード・カクタス・ウィスタムというれっきとした貴族、ウィスタム家の四男だ。黒髪に茶色い瞳を持つ俺は周りにいる皆に訴えかけていた、周りにいたのはウィスタム家の長男のレッジェで金髪に蒼い瞳をしていた。他にも赤茶色の髪に黒い瞳の次男のリヒター、それに三男のやたら太った黄色い髪に茶色い瞳のタックスがいた。そして、レッジェ達が口々に言った。
「煩い、リード。お前にはもううんざりなんだ」
「そうそう、その珍しい黒髪も見たくもない」
「今日こそ本当にさようならだ」
俺たちは今、街の外にある深い山に来ていて俺の背後には真っ黒い深い穴があった。レッジェ達はそれぞれ剣とか武器を持っており、素手の俺は追い詰められて後ろに下がるしかなかった。俺は元々家を出るつもりだった、だからそのことを伝えた。
「俺は十五歳になった、だから家から出て行く。それでいいじゃないか!?」
俺の言葉の聞いてレッジェが嫌そうな顔をした、リヒターも面倒そうだった。タックスは馬鹿じゃないのかという視線でこっちを見ていた。そして、またレッジェ達が口々に言った。
「お前を処分することは父上もご存じだ、無能はウィスタム家には必要ない」
「うっとうしかったですからね、貴方。毎日、無能なのに剣だ、勉強だと努力して」
「その努力も無駄だってわけだな、お前は今日ここでおしまいだ」
無能というのは精霊と契約できていない人のことを言う、この世界では精霊と契約できてはじめて魔法が使えるようになるのだ。だが世間では無能の方が数が多い、統計をとったわけじゃないが俺の知っている中では無能は七割くらいいた。俺は腹が立って言い返した。
「無能の方が数が多いのに、それを理由に殺されるなんてあんまりだ!!」
すると長男のレッジェやリヒター、それにタックスが笑い出した。そして皆はそろってまた口々にこう言った。
「貴族は無能じゃいけないんだ、貴族で無能なんて価値がないのさ」
「兄上の言う通りだぜ、それにお前の顔は見飽きたんだ」
「独立して外の世界に出て、何か恥をかいて死なれるのは、ウィスタム家にとって迷惑なんだよ」
俺は反論する言葉を失った、確かに貴族には無能は少なかった。皆、何かしらの精霊と契約している者が多かった。そして、いい加減に飽きたのだろう、長男のレッジェが俺に向かって笑いながら魔法を放った。
「いけ、”炎の矢”」
「うわっ!? あっ!! うわあぁぁ――――――!?」
そうして俺は深くて暗い穴の中に背中から落下した、魔法を避けるにはそうするしかなかった。でもそれで俺の体は穴の底の地面に叩きつけられた、凄い衝撃がきて頭がくらくらして俺は気を失った。そうして俺は気を失い夢を見た、長い現実のような夢だった。
「ありがとうございましたー!!」
夢の中で俺は日本という国にいた、年は四十二歳で最初は公務員を目指していたがなれなかった。大学までいったが碌に資格を持っていなかった俺には選べる仕事も少なかった、レジ打ちの仕事だって必死に履歴書を書いて面接を受けて貰った大事な仕事だった。
「……今日から無職か」
俺は人員整理で首になって、それから俺なりに必死で仕事を探したが見つからなかった。仕事とは新卒のほうが得られるものだった、俺は新卒の時に就職しなかったことを後悔した。そうして貯金を取り崩しながら生きていたが、やがて食べ物も買えなくなり家賃だけは支払いを欠かさなかった。結局、夢の中の俺はそのまま自室の布団の中で衰弱死した。そんな寂しい夢だった。
「うぅ? こっち、は、げっ、現実か?」
俺は前世の記憶を長くて辛い夢の中で思い出した。でもそれが今の状況で何の役に立つだろうか、何の役にも立たず俺は酷い怪我を負って、深い穴の底から丸い出口を見つめていた。血が体から流れだしていくのを感じた、俺は今度の人生は失血死かと思い諦めかけていた。
「ひ、かり?」
真っ白な綺麗な小さな光が俺の周囲を飛び回っていた、俺は最期に綺麗なものを見れたなと思って、また気を失ってしまった。そうして俺の二度目の人生は終ったはずだった。俺はもっと早く前世を思い出していたら、何かできることがあったのかなと思いながら意識を失った。
「ん?」
俺は目を覚ました、また転生したのではなくリードのままで目を覚ました。俺は痛みが無くなった体を起こした、服には血がべったりついていた。俺は何故自分が生きているのか不思議に思うと、俺の体の中から白い小さな光が出てきて俺の周りを二、三回飛び回ると俺の中に入ってしまった。
「もしかして俺は精霊と契約したのか?」
もしそうだとしたら凄いことだった、白色の小さな光の精霊は『光の精霊』で怪我を治してくれたり灯を与えてくれたりするんだ。他には結界を作ることができるし、それに闇の悪い契約を取り消したりもできるのだ。俺は光の精霊に感謝しながら周囲を見回してみた、この穴があるところ以外は真っ暗で見えなかった。
「”長き灯”」
でも俺は小さな灯を光の精霊に作ってもらって周囲のことが良く見えた、まず上の穴からの脱出は難しそうだった、壺状になっているこの穴は壁を登ることができなかった。時間はもう夕方になっていてここは山の中でも深いところで、人が通りがかることは無いからまず叫んでも無駄のようだった。
「喉が渇いた、マズイな」
俺は湧き水でも出ることを期待して湿っている土を掘ってみた、かなり掘ったが何も出ずに失血からくる喉の渇きに苦しんでいる時だった。橙色の小さな光がどこからか現れて俺の中に入っていった、すると掘りたいと思ったらボカンッ土が掘れるようになった。俺は『土の精霊』と契約したようだった、
「あんまりあちこち掘ったら、落盤するんじゃないかな。それは大変だ」
でもいくら湿った土を掘ってみても、水は一滴も得られず喉が焼けるようだった。俺は映画の知識だったが、服のボタンをちぎって口に含み唾液で誤魔化した。でも誤魔化しきれずに脱水症状で、俺は頭がくらくらして土の床に仰向けになった。その瞬間だった。
「ごぼっごぼっちょっとがぼっごくんっげほっごくんっ待ってがぼっごくんもうげほっ水はいいからごぼっごぼっごっくん!?」
俺の顔の上に突然だが大量の水が現れて俺はそれを貪るように飲んだが、それにしても水の量が多過ぎて全身びしょぬれになった。そうして水色の小さな光が俺の中にすうっと入ってしまった、俺は『水の精霊』と契約したのだった。正直なところ凄く助かった、ありがとうと感謝をしながら同時に思わず口に出た。
「へっクション!? ヤバイ、風邪を引くかも」
俺は一度服を全部脱いでからできるだけ絞って水気をとった、そうしてもう一度服を着たが寒気は止まらなかった。もう夜になっていたし、火でも起こせるものはないかと探したが、火打石っぽいものはあっても燃やす物が何もなかった。そんな時、いきなり僕の周囲を炎が取り囲んだ。
「レッジェか!?」
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「これは綺麗な石だ、宝石なのかな?」
体が温まってちょっと回復したところで、俺は土の精霊が掘った穴の中に残っているものに気がついた。どうやらただの石でなく鉱石や宝石の原石らしかった、俺はそれをここから出られることがあれば持って行こうと思った。その瞬間、金色の小さな光が俺の周囲をくるくるっと回って、俺の体の中に消えていった。そしたら俺はその鉱石や宝石の種類が分かるようになった、『金の精霊』と俺は契約したのだ。
「今日はもういい眠るか」
いろいろ試してみたが外には出れそうにないので、穴から見える星を見ながら眠ることにした。灯を消し真っ暗闇で眠ったが何も怖くないと思っていると、紫色の小さな光が現れて俺の中に入っていった。俺はうとうとしながら『闇の精霊』と契約をしていた。
「穴から出たい、空が飛べたらいいのになぁ」
翌日になって俺は穴から出る方法を考えていた、堀った土を階段状に盛ることも考えてやってみることにした。その作業の合間にふと俺が考えていたことが口に出た、するとだ俺の体がふわりっと浮き上がって暗い穴の中から外に飛び出ていた。俺は青く綺麗な空に感動した、そして緑色の小さな光が俺の中に入っていった、『風の精霊』との契約だった。俺は忘れずに拾った鉱石と宝石の原石を取りに戻って、今度は用心しながら飛んで外の世界へと出て行った。
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