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第二百十九話 繋いだこの手を離さない
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「さぁ、行こう。フェリシア、これからはずっと傍にいられるように、大切な時間を俺と一緒に生きていこう」
「……うん、……私もレクスと……一緒にいきたい……」
俺はフェリシアを王座からすくい上げるようにして抱き上げた、なんて軽いんだろうと彼女の体が心配になった。でも顔にはそう考えていることを出さずにただフェリシアの額に一度キスをした、初めて触れたフェリシアのことが愛おしくて堪らなかったからそうした。フェリシアは嬉しそうに笑っていた、俺もその愛おしい笑顔に笑い返した。そうしてしっかりとフェリシアを抱きしめる、それからエルフの王国であるラウト国へ長距離転移の魔法を使った。
俺たちが今いた場所から転移する瞬間だった、全てのヴァンパイアは逃げ出したと思っていたが、たった一人だけ実はまだその場に残っていた。それは俺を見逃してフェリシアのところまで案内したキリルだった、フェリシアはキリルを見て一筋の涙を流して手を振った、キリルはそんなフェリシアに向かって優雅に臣下として一礼してみせた。それが俺たちが二人でキリルを見た最後だった、その後にすぐ俺の長距離転移の魔法が発動して、俺たちはラウト国の近くにある森に帰ってきていた。
「レクスさん!!ミゼさん!!ああ、フェリシアさんもご無事で良かった、神よ。その大いなる御心が行う救いの御業によって、希望という光がある限り必要な助けをお与えください」
「ミゼ!!偉いよ、ちゃんとレクスを連れて帰ってきたんだね!!フェリシアさん、もう大丈夫だよ。これからはずっとレクスといられる、いいやずっと皆でいられるんだ!!」
森ではディーレとファンが出発した場所で俺たちを待ってくれていた、どれだけ時間がかかるか分からなかったのに、ずっと俺たちが無事に帰ってくることを信じてここで待ち続けていたらしい。大賢者ラウトの影もそうだった、再会を喜ぶ俺たちを見ながら微笑みを浮かべて、彼はとても満足そうにしていた。
「さっそくですが、レクスさん。『完全なる癒しの光』、ふぅ。これで少し体が楽になるでしょうが完治してはいません、戦いで失った血や何度も負った深い傷跡は時間をかけて癒していくしかないでしょう」
「ミゼ、こっちにおいで。ああ、あの薬もやっぱり使ったんだ。レクス、あれを使うとね。すっごく力が出せるけど、その反動でしばらくは体が動かなくなるよ。ディーレにフェリシアさんを抱えていってもらう?ミゼは僕が抱いていくから大丈夫だよ」
俺は確かに体がもうボロボロだった、何度も何度も同じところに傷を負ったり、かなりの出血をしていたからだ。でも俺は意地でもフェリシアのことを手放したくなかった、相手がディーレであってもフェリシアを抱いて運んでいく役を譲らなかった。ディーレもファンもそれに大賢者ラウトの影までそんな俺に対して笑っていた、俺とフェリシアがどれだけお互いに会いたがっていたか、それを知っているから笑って俺たちのことをただ見守っていてくれた。
だから俺は体はとても傷が痛んで辛かったが心は羽が生えたように軽くて、大切なフェリシアをひと時も離さずにラウト国にある大樹の塔まで運んでいった。そしてフェリシアをベッドに寝かせた途端に気を失った、ヴァンパイアたちとの闘いの後で気力と体力の限界だったのだ。俺は優しくて温かい心を持った仲間を信じて眠りについた、久しぶりに何も心配する必要がない深い眠りを味わった。
「…………レクスったら、本当に無茶をしたんだね」
「俺は無茶なんてしてない、ただフェリシアに会いたかっただけだ」
気がついたら俺は何故かフェリシアと同じベッドに寝かされていた、傍にいたフェリシアが俺が起きたことに気がつくと少し困った顔をしてそう言った、彼女を困らせたくなかったから俺はまるで何もなかったかのように、そう過ぎ去ったウィルたちとの戦いのことは何も言わなかった。フェリシアはかなり回復していた、喋り方もしっかりとしていてまだ痩せてはいたが、あの病的な雰囲気はすっかりなくなっていた。
「ああ、レクスさん。ようやく起きたんですね。もう三日も眠っていたんですよ、それでもフェリシアさんから手を離さないから、これからレクスさんとフェリシアさんは二人部屋にします」
「良かったね、レクス。ずっとフェリシアさんといられるよ、えへへへっ、彼女の声が違うでしょう。レクスが起きるまで一生懸命に食事をしっかりとって、それから話す練習をしてやっとここまで回復したんだよ」
「レクス様、ようございました。さて、お心の準備は大丈夫でしょうか。ええいリア充よ、爆発しろ木っ端みじんにな、でございます。もしくは教会がやってこいでしょうか、どちらにしろ羨ましいことでございます。ちっ!!」
ディーレはいつもどおりに俺たちに優しかった、俺とフェリシアはこの先ずっと二人部屋になるようだ、ずっと一緒にいたいと思うから反対する理由は何もなかった。ファンは俺が気を失っている間にフェリシアのことを見ていてくれたようだ、女同士でつきあいやすいというのも理由の一つだろう。それからミゼの奴は相変わらずだった、何を言っているのかさっぱり分からない。とにかく爆発が好きな奴だ、そして教会がやってこいとは一体どういう意味なのか、多分考えるだけ無駄なのだろう。
「ふふふっ、レクスとずっといられるのは嬉しいな。きっと自分では知らないよね、レクスの寝顔ってとっても可愛いんだよ」
「そんなこと知っているのはフェリシアだけでいいさ、しかし体が動かないというのは暇だな。フェリシア、また何か歌ってくれ。お前の声は聞いていると、とても気持ちがいいんだ」
俺が最後に使った薬はやはり特殊な薬だった、ファンが言ったとおりしばらくは体が思うように動かせなかった。そうなるとベッドの上でずっと過ごすことになるが、横でフェリシアも体を回復させるために寝ていたから退屈はしなかった。俺はフェリシアが歌がかなり上手いということを初めて知った、歌詞は古語だったからほとんど分からなかったが、様子を見に来たミゼが思わず眠りこけるほど優しい歌声だった。
そうやって俺とフェリシアはしばらくベッドの中で動かずに体が回復するのを待った、時にはお互いに本を読んで勉強したりして、また今までできなかった分を取り戻すようにお互いのことを話し合った。フェリシアの白くなった金の髪は伸びてきたら色と輝きを取り戻した、とても綺麗な碧の瞳は以前と変わらず俺のことを優しく静かに見守ってくれていた。俺は体が力を取り戻していくにしたがって、フェリシアに触れるのが難しくなった。
「レクス、レクス、どうしてそんなに私から離れて寝るの?」
「…………あのな、フェリシア。俺も19歳で人間でいえば大人の男だ、あまり女に近づかれると気持ちが落ち着かなくてしょうがない」
フェリシアはああと何かに気づいたようだった、どうやら俺の生理的な事情を察してくれたようだ。だがフェリシアの考えは俺の斜め上をいった、彼女はその場で服をいきなり脱ぎだしたのだ。
「なっ!?何をしてるんだ、フェリシア!!」
「え?レクスが私と交わりたいっていうから、邪魔なものは脱いでしまおうと思って」
俺がそれからフェリシアに話をよく聞いてみると、祝福されし者の間では好きな者が愛し合うことは何も恥ずかしいことではなく、むしろ喜ばしく求められて嬉しかったならすぐに結ばれるのが当然という話だった。だからフェリシアはいきなり服を脱ぎだしたのだ、俺はそれを聞いて顔が赤くなった後に青くもなった。
この二人部屋の壁は薄いのだ、そして俺たちの体調になにか変化が会った時の為に、ディーレたちは隣の部屋に常に誰かしらいてくれたのだった。だからつまりは俺たちの会話も丸聞こえだった、しばらくするとディーレを先頭にして仲間たちが二人部屋に入ってきた、そして俺が何か言おうとする前にディーレがこう言いだした。
「それでは結婚式はなるべく早くしましょう、もうしばらくしたらお二人の体も回復しますから、レクスさん何も心配はいりませんよ」
「……うん、……私もレクスと……一緒にいきたい……」
俺はフェリシアを王座からすくい上げるようにして抱き上げた、なんて軽いんだろうと彼女の体が心配になった。でも顔にはそう考えていることを出さずにただフェリシアの額に一度キスをした、初めて触れたフェリシアのことが愛おしくて堪らなかったからそうした。フェリシアは嬉しそうに笑っていた、俺もその愛おしい笑顔に笑い返した。そうしてしっかりとフェリシアを抱きしめる、それからエルフの王国であるラウト国へ長距離転移の魔法を使った。
俺たちが今いた場所から転移する瞬間だった、全てのヴァンパイアは逃げ出したと思っていたが、たった一人だけ実はまだその場に残っていた。それは俺を見逃してフェリシアのところまで案内したキリルだった、フェリシアはキリルを見て一筋の涙を流して手を振った、キリルはそんなフェリシアに向かって優雅に臣下として一礼してみせた。それが俺たちが二人でキリルを見た最後だった、その後にすぐ俺の長距離転移の魔法が発動して、俺たちはラウト国の近くにある森に帰ってきていた。
「レクスさん!!ミゼさん!!ああ、フェリシアさんもご無事で良かった、神よ。その大いなる御心が行う救いの御業によって、希望という光がある限り必要な助けをお与えください」
「ミゼ!!偉いよ、ちゃんとレクスを連れて帰ってきたんだね!!フェリシアさん、もう大丈夫だよ。これからはずっとレクスといられる、いいやずっと皆でいられるんだ!!」
森ではディーレとファンが出発した場所で俺たちを待ってくれていた、どれだけ時間がかかるか分からなかったのに、ずっと俺たちが無事に帰ってくることを信じてここで待ち続けていたらしい。大賢者ラウトの影もそうだった、再会を喜ぶ俺たちを見ながら微笑みを浮かべて、彼はとても満足そうにしていた。
「さっそくですが、レクスさん。『完全なる癒しの光』、ふぅ。これで少し体が楽になるでしょうが完治してはいません、戦いで失った血や何度も負った深い傷跡は時間をかけて癒していくしかないでしょう」
「ミゼ、こっちにおいで。ああ、あの薬もやっぱり使ったんだ。レクス、あれを使うとね。すっごく力が出せるけど、その反動でしばらくは体が動かなくなるよ。ディーレにフェリシアさんを抱えていってもらう?ミゼは僕が抱いていくから大丈夫だよ」
俺は確かに体がもうボロボロだった、何度も何度も同じところに傷を負ったり、かなりの出血をしていたからだ。でも俺は意地でもフェリシアのことを手放したくなかった、相手がディーレであってもフェリシアを抱いて運んでいく役を譲らなかった。ディーレもファンもそれに大賢者ラウトの影までそんな俺に対して笑っていた、俺とフェリシアがどれだけお互いに会いたがっていたか、それを知っているから笑って俺たちのことをただ見守っていてくれた。
だから俺は体はとても傷が痛んで辛かったが心は羽が生えたように軽くて、大切なフェリシアをひと時も離さずにラウト国にある大樹の塔まで運んでいった。そしてフェリシアをベッドに寝かせた途端に気を失った、ヴァンパイアたちとの闘いの後で気力と体力の限界だったのだ。俺は優しくて温かい心を持った仲間を信じて眠りについた、久しぶりに何も心配する必要がない深い眠りを味わった。
「…………レクスったら、本当に無茶をしたんだね」
「俺は無茶なんてしてない、ただフェリシアに会いたかっただけだ」
気がついたら俺は何故かフェリシアと同じベッドに寝かされていた、傍にいたフェリシアが俺が起きたことに気がつくと少し困った顔をしてそう言った、彼女を困らせたくなかったから俺はまるで何もなかったかのように、そう過ぎ去ったウィルたちとの戦いのことは何も言わなかった。フェリシアはかなり回復していた、喋り方もしっかりとしていてまだ痩せてはいたが、あの病的な雰囲気はすっかりなくなっていた。
「ああ、レクスさん。ようやく起きたんですね。もう三日も眠っていたんですよ、それでもフェリシアさんから手を離さないから、これからレクスさんとフェリシアさんは二人部屋にします」
「良かったね、レクス。ずっとフェリシアさんといられるよ、えへへへっ、彼女の声が違うでしょう。レクスが起きるまで一生懸命に食事をしっかりとって、それから話す練習をしてやっとここまで回復したんだよ」
「レクス様、ようございました。さて、お心の準備は大丈夫でしょうか。ええいリア充よ、爆発しろ木っ端みじんにな、でございます。もしくは教会がやってこいでしょうか、どちらにしろ羨ましいことでございます。ちっ!!」
ディーレはいつもどおりに俺たちに優しかった、俺とフェリシアはこの先ずっと二人部屋になるようだ、ずっと一緒にいたいと思うから反対する理由は何もなかった。ファンは俺が気を失っている間にフェリシアのことを見ていてくれたようだ、女同士でつきあいやすいというのも理由の一つだろう。それからミゼの奴は相変わらずだった、何を言っているのかさっぱり分からない。とにかく爆発が好きな奴だ、そして教会がやってこいとは一体どういう意味なのか、多分考えるだけ無駄なのだろう。
「ふふふっ、レクスとずっといられるのは嬉しいな。きっと自分では知らないよね、レクスの寝顔ってとっても可愛いんだよ」
「そんなこと知っているのはフェリシアだけでいいさ、しかし体が動かないというのは暇だな。フェリシア、また何か歌ってくれ。お前の声は聞いていると、とても気持ちがいいんだ」
俺が最後に使った薬はやはり特殊な薬だった、ファンが言ったとおりしばらくは体が思うように動かせなかった。そうなるとベッドの上でずっと過ごすことになるが、横でフェリシアも体を回復させるために寝ていたから退屈はしなかった。俺はフェリシアが歌がかなり上手いということを初めて知った、歌詞は古語だったからほとんど分からなかったが、様子を見に来たミゼが思わず眠りこけるほど優しい歌声だった。
そうやって俺とフェリシアはしばらくベッドの中で動かずに体が回復するのを待った、時にはお互いに本を読んで勉強したりして、また今までできなかった分を取り戻すようにお互いのことを話し合った。フェリシアの白くなった金の髪は伸びてきたら色と輝きを取り戻した、とても綺麗な碧の瞳は以前と変わらず俺のことを優しく静かに見守ってくれていた。俺は体が力を取り戻していくにしたがって、フェリシアに触れるのが難しくなった。
「レクス、レクス、どうしてそんなに私から離れて寝るの?」
「…………あのな、フェリシア。俺も19歳で人間でいえば大人の男だ、あまり女に近づかれると気持ちが落ち着かなくてしょうがない」
フェリシアはああと何かに気づいたようだった、どうやら俺の生理的な事情を察してくれたようだ。だがフェリシアの考えは俺の斜め上をいった、彼女はその場で服をいきなり脱ぎだしたのだ。
「なっ!?何をしてるんだ、フェリシア!!」
「え?レクスが私と交わりたいっていうから、邪魔なものは脱いでしまおうと思って」
俺がそれからフェリシアに話をよく聞いてみると、祝福されし者の間では好きな者が愛し合うことは何も恥ずかしいことではなく、むしろ喜ばしく求められて嬉しかったならすぐに結ばれるのが当然という話だった。だからフェリシアはいきなり服を脱ぎだしたのだ、俺はそれを聞いて顔が赤くなった後に青くもなった。
この二人部屋の壁は薄いのだ、そして俺たちの体調になにか変化が会った時の為に、ディーレたちは隣の部屋に常に誰かしらいてくれたのだった。だからつまりは俺たちの会話も丸聞こえだった、しばらくするとディーレを先頭にして仲間たちが二人部屋に入ってきた、そして俺が何か言おうとする前にディーレがこう言いだした。
「それでは結婚式はなるべく早くしましょう、もうしばらくしたらお二人の体も回復しますから、レクスさん何も心配はいりませんよ」
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