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第百九十二話 勝手に選んでも従わない
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「ねぇ、知ってるかい。あの勇者さまもこの店で買い物していったんだよ」
俺たちはしばらく売り子のおばちゃんの言葉に驚いていたが、まさかセイヴィヤもことではあるまいと思い聞き返した。
「どこの勇者さまなんだ?」
「それがあのポプルス国の勇者、ドミナ様っていう女性の勇者さまさ」
「ふーん、勇者っていうのはそんなに沢山いるのか」
「そうだね、最近は多いね。いろんな国の勇者さまの名前を聞くよ」
「それで、勇者さまの目的は何なんだ」
「どこそこ国の王様が悪い奴で、それを止めるのが勇者さまの使命だと聞くね」
「そうか、それじゃ。このドライフルーツを5袋くれ」
「ありがとね、おまけにこの飴玉をあげるよ」
そう言って売り子のおばちゃんはファンに飴玉を渡していた、ファンは見た目は十歳そこそこにしか見えない、だから子ども扱いされているのだがファン本人は喜んで飴玉を受け取っていた。さて勇者とかいう奴らが増えているらしい、そしてそれぞれに敵の王様がいるようだ。思いがけず面倒な話を聞いてしまった、それが本当ならフメット国とグラウェル国のようにあちこちで戦争になりかねない。買い物ができる通りを歩きながら、仲間たちと話してみる。
「誰かが故意に勇者というものを作り出しているみたいだな」
「何故、そんなことをするのでしょう。まるで戦争を引き起こしたいように思えます」
「うーん、そうなの。戦争は嫌だな、どうせ戦うなら一対一で戦って勝敗を決めればいいのに」
「勇者ですか、またお仕置きを受けるのは嫌なので黙っていることにします」
「ファンの言う通りに一対一で戦うほうが犠牲は少なくて済むな」
「勇敢なドラゴンならではの考え方ですね」
「そうだよ、ドラゴンなら自分で戦って正義を決める」
「ああ、かっこかわいいファンさん。はい、『思念転写』」
「どこの勇者にも関わりたくはないが、戦争を起こされては困るな」
「誰が勇者を選んでいるのでしょうか、セイヴィヤさんは自然とその地位を押し付けられたようでしたが」
「本当に誰が勇者だって決めるんだろうね、その基準は一体何なのかな」
「ファンさんの可愛い写し絵が撮れましたので私の宝物に致します、そうですね。きっと勇者を決めるのはどうせどこかの神様ですよ」
どうせ暇だったので買い物を続行しながら勇者に関することを聞いて回った、するとミゼが言っていたことが当たっていたのだ。どの国でも神からのお告げで勇者を決めてしまったらしい、そして予言された国の敵対国を倒せと命令までされているそうだ、なんて都合の良い神様なのだろうか。実際は国の権力者が都合の良い者を選んでいるのではないかと思ってしまう、そうでなければ勇者の敵がその国の敵対国だという説明がつかない。まぁ、俺たちには関係のない話なので十分に買い物を楽しんだ。
それから宿屋を決めた後に傭兵ギルドに寄ってみる、今は別に仕事を探しているわけではないが、様々な情報を得るならこういった組織が役に立つからだ。するとあちこちの国で傭兵の募集があった、中には勇者の仲間としての募集すらあった。火薬庫に火を突っ込むような馬鹿な真似はしない、依頼を確認だけしてあとは隣接している酒場などに行ってみた。酒場も情報を得たり逆に流したりとなかなか便利なところだ、俺は酒をディーレたちはジュースを頼んでいた。酒場の店主相手に話を聞いてみる、いろんなことを知っているだろうからだ。
「最近は勇者が活躍しているようだが、勇者という考えはどこから始まったんだ」
「ああ、始まりはディース神の教会からだな。神様が世界を浄化しようとしているんだとさ」
「傭兵だが勇者とかいうあやふやなものは苦手なんだ、どこか他に稼ぎの良い場所はないか」
「勇者にはそれぞれ国が後ろ盾になっているから、ある意味で稼ぎ頭みたいなものだぞ」
「あいにくと俺の神様は戦争が嫌いなんだ、だから勇者にも関わりたくない」
「ふーん、それなら稼ぐのは難しい。この国の教会が勇者という者を初めて認めたところだからな」
「…………この国が勇者という者を認めて広めているのか」
「そうさ、教会に行ってみるといいい。勇者になりたい者の行列ができているぜ」
酒場の店主からもまた思いがけない話が聞けた、セイヴィヤなどの勇者をこのスフィーダ国が生み出しているという、セイヴィヤを好きだった王女も予言がどうとか言ってたっけ。俺としては絶対に教会には近づきたくない、この国にいる間は大人しくしていることにしよう。そんな面倒ごとの匂いがする話を聞いたので、大人しく宿屋に戻って仲間たちと少し話をした。
「教会にはこの国では立ち寄らないほうが良さそうだ」
「ええ、残念ですがそうですね」
「勇者って作られるものなんだね、なんか変なの」
「まぁ、神様から選ばれて勇者になるパターンは多いですね。他には異世界から呼ばれるとか、実は神様の子どもが勇者だったとか」
「どんな勇者でも関わりたくない、その勇者には国の権力者がくっついてくるからな」
「本来はどういうものなのでしょうね、勇者とは勇気がある者のことでしょうか」
「ディーレが言うような勇者だったら会ってみたいかも」
「ファンさん、勇者なんかより私のほうがずっと可愛らしいと思いませんか。勇者なんて所詮はイケメン、それもパーティにハーレムを作るタイプのイケメンでございます。けっ、全員でそろって爆発しろ!!」
「まぁ爆発はどうでもいいが、この国にいる間は大人しくしておこう」
「はい、教会が見れないのは残念ですが、他にもいろんな物がありそうです」
「今日の買い物も楽しかったね、明日もまた行こう!!」
「はい、ファンさん。たとえ私だけでも喜んでファンさんのお供を致します!!」
そうやってその日は宿屋で休んだ、その翌日になってそれぞれがやりたいことをすることにした。ディーレは『貧民街』の様子を見に行きたいというので、俺がついていくことにした。ファンはミゼをつれて買い物をするそうだ、携帯食を沢山買ってきてくれと頼んで、財布と『魔法の鞄』を渡しておいた。
ディーレと見に行った『貧民街』は意外と整備されたところだった、交易が盛んなぶんこういった場所を減らす努力もされているようだ。俺たちは運が悪いことに教会が炊き出しをして食事をふるまう日にきてしまった、すると教会の人間を完全に無視するわけにもいかない。だが『貧民街』の住人でもない俺たちは目立っていた、ディーレと素早く合図をしあって『貧民街』からすぐに出ていくことにした。
「教会が定期的に炊き出しをやっているなら、この国も案外悪い国でもないな」
「はい、毎日は無理でも定期的にしているのなら効果はあるでしょう」
「勇者なんておかしな制度がなければ、ここの教会も見てみたかったな」
「そうですね、どうしてそんな制度ができてしまったのでしょうか」
俺とディーレは『貧民街』の裏道を歩きながら表通りに出ようとしていた、その時に俺たちの会話を聞いていたかのように声がかけられた。
「そこの冒険者たちこちらへお出でなさい、聖女エスタ様からお言葉を与えます」
俺たちは素早く周りを見渡したが、教会の人間ばかりで冒険者らしき人物はいなかった。だから俺たちにかけられた言葉と判断して、全速力で裏道を走って逃げた。教会の連中もいきなり逃げ出すとは思っていなかったようだ、戸惑っているようで追いかけてくる者は数名だった。俺は裏道を曲がるとディーレを抱きかかえて、思いっきり地面を蹴って建物の屋上に登って逃げきった。教会の人間たちはしばらくウロウロと周囲を歩いていたがやがていなくなった、俺たちは屋根伝いに表通りの方へと移動して逃げ延びた。
そうやって『貧民街』を逃げ出してからは追っ手もこなかった、屋根から降りて表通りをのんびりと昨日も買い物したあたりまで歩いていった。
「あれっ、レクス。ディーレ、どうしたの」
「私とファンさんとのデートを邪魔するとは一体何事でしょうか」
「『貧民街』にいったら、教会の連中がいたんだ」
「何だか不穏な雰囲気だったので、僕たちはそのまま逃げて来たんです」
俺たちは買い物をしていたファンと合流してそのまま買い物を楽しんだ、『魔法の鞄』があるおかげで大量に食べ物を買うことができた。そうして買い物を満喫して宿屋に帰ったら、そこには何故か教会の人間が一人俺たちを待っていた。
「選ばれし者たちよ、聖女エスタ様からお言葉を与えます」
俺たちはしばらく売り子のおばちゃんの言葉に驚いていたが、まさかセイヴィヤもことではあるまいと思い聞き返した。
「どこの勇者さまなんだ?」
「それがあのポプルス国の勇者、ドミナ様っていう女性の勇者さまさ」
「ふーん、勇者っていうのはそんなに沢山いるのか」
「そうだね、最近は多いね。いろんな国の勇者さまの名前を聞くよ」
「それで、勇者さまの目的は何なんだ」
「どこそこ国の王様が悪い奴で、それを止めるのが勇者さまの使命だと聞くね」
「そうか、それじゃ。このドライフルーツを5袋くれ」
「ありがとね、おまけにこの飴玉をあげるよ」
そう言って売り子のおばちゃんはファンに飴玉を渡していた、ファンは見た目は十歳そこそこにしか見えない、だから子ども扱いされているのだがファン本人は喜んで飴玉を受け取っていた。さて勇者とかいう奴らが増えているらしい、そしてそれぞれに敵の王様がいるようだ。思いがけず面倒な話を聞いてしまった、それが本当ならフメット国とグラウェル国のようにあちこちで戦争になりかねない。買い物ができる通りを歩きながら、仲間たちと話してみる。
「誰かが故意に勇者というものを作り出しているみたいだな」
「何故、そんなことをするのでしょう。まるで戦争を引き起こしたいように思えます」
「うーん、そうなの。戦争は嫌だな、どうせ戦うなら一対一で戦って勝敗を決めればいいのに」
「勇者ですか、またお仕置きを受けるのは嫌なので黙っていることにします」
「ファンの言う通りに一対一で戦うほうが犠牲は少なくて済むな」
「勇敢なドラゴンならではの考え方ですね」
「そうだよ、ドラゴンなら自分で戦って正義を決める」
「ああ、かっこかわいいファンさん。はい、『思念転写』」
「どこの勇者にも関わりたくはないが、戦争を起こされては困るな」
「誰が勇者を選んでいるのでしょうか、セイヴィヤさんは自然とその地位を押し付けられたようでしたが」
「本当に誰が勇者だって決めるんだろうね、その基準は一体何なのかな」
「ファンさんの可愛い写し絵が撮れましたので私の宝物に致します、そうですね。きっと勇者を決めるのはどうせどこかの神様ですよ」
どうせ暇だったので買い物を続行しながら勇者に関することを聞いて回った、するとミゼが言っていたことが当たっていたのだ。どの国でも神からのお告げで勇者を決めてしまったらしい、そして予言された国の敵対国を倒せと命令までされているそうだ、なんて都合の良い神様なのだろうか。実際は国の権力者が都合の良い者を選んでいるのではないかと思ってしまう、そうでなければ勇者の敵がその国の敵対国だという説明がつかない。まぁ、俺たちには関係のない話なので十分に買い物を楽しんだ。
それから宿屋を決めた後に傭兵ギルドに寄ってみる、今は別に仕事を探しているわけではないが、様々な情報を得るならこういった組織が役に立つからだ。するとあちこちの国で傭兵の募集があった、中には勇者の仲間としての募集すらあった。火薬庫に火を突っ込むような馬鹿な真似はしない、依頼を確認だけしてあとは隣接している酒場などに行ってみた。酒場も情報を得たり逆に流したりとなかなか便利なところだ、俺は酒をディーレたちはジュースを頼んでいた。酒場の店主相手に話を聞いてみる、いろんなことを知っているだろうからだ。
「最近は勇者が活躍しているようだが、勇者という考えはどこから始まったんだ」
「ああ、始まりはディース神の教会からだな。神様が世界を浄化しようとしているんだとさ」
「傭兵だが勇者とかいうあやふやなものは苦手なんだ、どこか他に稼ぎの良い場所はないか」
「勇者にはそれぞれ国が後ろ盾になっているから、ある意味で稼ぎ頭みたいなものだぞ」
「あいにくと俺の神様は戦争が嫌いなんだ、だから勇者にも関わりたくない」
「ふーん、それなら稼ぐのは難しい。この国の教会が勇者という者を初めて認めたところだからな」
「…………この国が勇者という者を認めて広めているのか」
「そうさ、教会に行ってみるといいい。勇者になりたい者の行列ができているぜ」
酒場の店主からもまた思いがけない話が聞けた、セイヴィヤなどの勇者をこのスフィーダ国が生み出しているという、セイヴィヤを好きだった王女も予言がどうとか言ってたっけ。俺としては絶対に教会には近づきたくない、この国にいる間は大人しくしていることにしよう。そんな面倒ごとの匂いがする話を聞いたので、大人しく宿屋に戻って仲間たちと少し話をした。
「教会にはこの国では立ち寄らないほうが良さそうだ」
「ええ、残念ですがそうですね」
「勇者って作られるものなんだね、なんか変なの」
「まぁ、神様から選ばれて勇者になるパターンは多いですね。他には異世界から呼ばれるとか、実は神様の子どもが勇者だったとか」
「どんな勇者でも関わりたくない、その勇者には国の権力者がくっついてくるからな」
「本来はどういうものなのでしょうね、勇者とは勇気がある者のことでしょうか」
「ディーレが言うような勇者だったら会ってみたいかも」
「ファンさん、勇者なんかより私のほうがずっと可愛らしいと思いませんか。勇者なんて所詮はイケメン、それもパーティにハーレムを作るタイプのイケメンでございます。けっ、全員でそろって爆発しろ!!」
「まぁ爆発はどうでもいいが、この国にいる間は大人しくしておこう」
「はい、教会が見れないのは残念ですが、他にもいろんな物がありそうです」
「今日の買い物も楽しかったね、明日もまた行こう!!」
「はい、ファンさん。たとえ私だけでも喜んでファンさんのお供を致します!!」
そうやってその日は宿屋で休んだ、その翌日になってそれぞれがやりたいことをすることにした。ディーレは『貧民街』の様子を見に行きたいというので、俺がついていくことにした。ファンはミゼをつれて買い物をするそうだ、携帯食を沢山買ってきてくれと頼んで、財布と『魔法の鞄』を渡しておいた。
ディーレと見に行った『貧民街』は意外と整備されたところだった、交易が盛んなぶんこういった場所を減らす努力もされているようだ。俺たちは運が悪いことに教会が炊き出しをして食事をふるまう日にきてしまった、すると教会の人間を完全に無視するわけにもいかない。だが『貧民街』の住人でもない俺たちは目立っていた、ディーレと素早く合図をしあって『貧民街』からすぐに出ていくことにした。
「教会が定期的に炊き出しをやっているなら、この国も案外悪い国でもないな」
「はい、毎日は無理でも定期的にしているのなら効果はあるでしょう」
「勇者なんておかしな制度がなければ、ここの教会も見てみたかったな」
「そうですね、どうしてそんな制度ができてしまったのでしょうか」
俺とディーレは『貧民街』の裏道を歩きながら表通りに出ようとしていた、その時に俺たちの会話を聞いていたかのように声がかけられた。
「そこの冒険者たちこちらへお出でなさい、聖女エスタ様からお言葉を与えます」
俺たちは素早く周りを見渡したが、教会の人間ばかりで冒険者らしき人物はいなかった。だから俺たちにかけられた言葉と判断して、全速力で裏道を走って逃げた。教会の連中もいきなり逃げ出すとは思っていなかったようだ、戸惑っているようで追いかけてくる者は数名だった。俺は裏道を曲がるとディーレを抱きかかえて、思いっきり地面を蹴って建物の屋上に登って逃げきった。教会の人間たちはしばらくウロウロと周囲を歩いていたがやがていなくなった、俺たちは屋根伝いに表通りの方へと移動して逃げ延びた。
そうやって『貧民街』を逃げ出してからは追っ手もこなかった、屋根から降りて表通りをのんびりと昨日も買い物したあたりまで歩いていった。
「あれっ、レクス。ディーレ、どうしたの」
「私とファンさんとのデートを邪魔するとは一体何事でしょうか」
「『貧民街』にいったら、教会の連中がいたんだ」
「何だか不穏な雰囲気だったので、僕たちはそのまま逃げて来たんです」
俺たちは買い物をしていたファンと合流してそのまま買い物を楽しんだ、『魔法の鞄』があるおかげで大量に食べ物を買うことができた。そうして買い物を満喫して宿屋に帰ったら、そこには何故か教会の人間が一人俺たちを待っていた。
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