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29テンプレなんか、蹴飛ばせばいい

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「全くうちのサシュは可愛すぎると思わないか」

 朝食の席でカタラータにそう自慢したら、呆れたようにはぁ~とため息をつかれた。俺としては同意が返ってくると思っていたのに心外だった、それからカタラータはこう言った。

「お二人とも恋人同士ですから、そうお互いが愛らしく見えるのですわ。まぁ、確かにサシュさんは小さくてお可愛いらしいですが」
「そうだろう、サシュは可愛いだろう!! あっ、カタラータもなかなか人気があって昨日の夜に夜這いに来た男がいたぞ」
「そうなのです、おかげでカイトがちょっとだけいなくなったのです」

「ええ!? 私ったらさらっと貞操の危機でしたの!?」
「それだけ女性としては魅力的だということだ、自信を持て聖女を辞めても嫁に行けるぞ!!」
「お嫁さんになれるのです」

「いきなり女性に乱暴しようとする人が旦那様だなんて嫌ですわ!?」
「まぁ、夜這い野郎は放っておいて、いろんな可能性がカタラータにもあるってことさ」
「可能性って素敵な言葉ですね」

 俺たちがカタラータにはいろんな可能性があるというと、カタラータはまたはぁ~とため息をついた後にこんなことを言いだした。

「可能性、実は私は王太子の婚約者でもありまして……」
「ちょっと待て、カタラータ。それで王太子に好きな子ができちゃって、だんだん冷たくなって、その好きな子にいじわるするなとか言われてたりしないよな?」
「王太子の婚約者なのですか」

「あらっ、まるで私のことを見ていたようにご存じですのね。私びっくりしましたわ、そうなのです。私の婚約者には好きなお方がいて、私には冷たくて、いじわるするなとかも言われてますわ」
「テンプレかよ!? それってカタラータ、神殿に帰ったら長い間神殿を空けて浮気者とか言われて追放じゃないだろうな!?」
「てんぷれ? はっ、追放されたらカイトは金貨五百枚貰えないです」

「だから私は護衛賃の時に迷ったのです、私を全く信じない王太子が金貨五百枚も出すかどうか、自信が持てなくて信じられなかったのです」
「そりゃ出すわけないよ、あー今回ただ働きか。やる気がなくなったが一応契約だから、そのカタラータがいたノイヤールの街まで送るぞ。魔法契約書があるからな」
「カタラータさんも契約ですから、金貨五百枚払わないといけませんよ。これは大変です」

 サシュの言葉にカタラータはまた汗をぶわっと噴き出してカタカタ震えていた、そう魔法契約書があるからカタラータはたとえ王太子から捨てられたとしても、俺に金貨五百枚払うということには変わりがないのだ。さて、どうやってカタラータに金貨五百枚を支払わせようか、俺はそう思ったがまぁ鬼のように取り立てる気もなかった。そうしてまた俺たちは旅に戻り、奇跡を起こしながらカタラータのノイヤールの街を目指した。

「水と光の神よ、浄化の光よ」

 こうやって奇跡を起こすカタラータだが、その顔色はあまり良くなかった、悪い未来をある程度覚悟してしたからかもしれなかった。なので俺はお手紙を一通、誰にも内緒でお届けしておいた。それから夜の方はサシュとカタラータの部屋が別の時だけいちゃいちゃしまくった、何日か禁欲してからのエッチというのもそれはそれでもえた。そして、とうとうカタラータのいた街、ノイヤールの街へと俺たちは着いた。

「ああ、ノイヤールの街ですわ!!」
「ようやく着いたか、さて吉と出るか凶と出るか」
「カタラータさん、追放されないといいですね」

 神殿に着いたら神殿の者はカタラータを歓迎してくれたが、俺の護衛賃の金貨五百枚には王室と相談しないと出せないという誠実な返事があった。午前中に着いたので、午後ゆっくりとしていたらそれは起こった。王太子様と愛する女性それに取り巻きのご登場だった、そこからはテンプレだった。

「この売女め!! 誘拐というのもきっと嘘でそこの男を篭絡していたのだろう!! 僕の愛するエリザにも嫌がらせをしていたこの女!! 護衛賃の金貨五百枚だとふざけるな!! どうせ聖女というのも嘘だろう、貴様は即刻追放とする!!」
「きゃー、ジェフリー様ったら素敵ですわ」

 金色の髪に蒼い瞳の男に、金髪に緑色の瞳をしている女性が抱き着いた。カタラータはこの処分を覚悟していたのだろう、あまり驚きはしていなかった。ただ根が真面目なので護衛賃金貨五百枚どうしようと、顔色が蒼くまたカタカタと震えていた。とここで王室騎士団が二十人ほどやってきた、そしてジェフリーとかいう王子様にこう言った。

「隠れて全て見ていました、ジェフリー殿下。王室と聖女の勝手な婚約破棄などできません、国王陛下からジェフリー殿下と殿下を騙したエリザという女性、両名を王城へ連行するようにご命令が出ております!!」
「なっ、なんだと!?」
「そっ、そんな!?」

 そうしてジェフリーとかいう王太子とエリザという女性が王室騎士団に連れていかれた、カタラータはポカーンとした顔をしていたが、その顔に俺がグッジョブと親指立てて答えた。

「何ですの、何なのですの!? カイト、貴方何かしましたの!?」
「ははっ、内緒だぞ。カタラータを護衛しながら隙を見て、闇を使ってあちこち調べてあの女や王太子の動向の詳細を書いた手紙を、国王陛下の書斎に置いてきたぜ!!」
「カイト、王城に忍び込むなんて凄いのです」

「それでは私は聖女を続けられますの!?」
「今日の反応だとその可能性は高いな、聖女っていうのはお前が思っている以上に凄いもんなんだよ」
「カタラータさんも凄いのです」

「なんとお礼を言ったらいいのか!!」
「お礼は護衛賃の金貨五百枚でいいさ」
「カイトったらしっかりしているのです」

 それから数日後に王室からはカタラータのお詫びの手紙が届いた、ジェフリー殿下は王太子から外されカタラータとの婚約は破棄、第二王子のアントレ殿下とカタラータが良ければ、あくまでも本人の希望があれば婚約を結びなおしたいということだった。ちなみに護衛賃の金貨五百枚もしっかりと手紙と一緒に届けられた。そして俺たちもお別れすることになった、俺とサシュは二人で旅を続けるのだ。

「ありがとうございました、おかげで私は聖女を続けていくことができます」
「なぁに、金貨五百枚のためにしたことさ」
「カイトの照れ隠しなのです」

「婚約の話は本当に助かりました!! 元々、私は聖女の仕事だけしたいと思っていたのです!!」
「そりゃ、良かった。そんなに聖女の仕事っておもしろいか?」
「どこが楽しいお仕事なのです?」

 俺とサシュが聖女の仕事について聞いてみると、カタラータは誇らしげに笑ってこう答えた、心からの幸せそうな笑顔だった。

「この旅でも見られました、私が奇跡をおこなうと皆さんが笑顔になってくださいます。それはなにものにも代えがたく素晴らしいものなのです、それではお二人の旅路の平穏をお祈りしておきます、さようなら。カイト、サシュ」
「ああ、さようなら。カタラータ」
「さよならなのです、カタラータさん」

 こうして俺たちとカタラータは別れ、また俺たちは二人旅に出ることにした。しかし、俺にはそろそろサシュに聞いてみたいことがあった。

「サシュ、俺は心からお前を愛しているぞ」
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