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3-13お友達に戻ってみる
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「美しい者は恐ろしいから殺す、お前たちは真っ赤な血が好きなんだ。美しさなんてまやかしだ、全てズタズタに切り刻んで壊してやる。まず今夜は、お前だ……」
「美しい者は恐ろしいから殺すか……、犯人は美しい者から何か酷い目に遭わされたのかな」
「殺すのを止める気はなさそうです、きっと次の犯行がまた起こります」
「もうその言葉が耳から離れないんです、まるで歌うみたいに綺麗に美しい高い声で話すんです」
「よくその恐怖に耐えたね、ステラ。しばらくは安全な神殿で生活したほうがいいよ」
「ステラさん、勇気を出してよく話してくれました」
僕とソアンは勇気を出して話してくれたステラに労った、ステラは話をした後もまた震えていた。殺されかけるということは、訳の分からない殺意を向けられるということは、それだけ恐ろしい出来事なのだ。ステラは十分に頑張っていた、よく勇気を出して話してくれていた。しばらくは安全な神殿で彼女は生活する方が良いだろう、冒険者を時々しているようだがそれはお休みだ。
「り、リタさんとソアンさんも気をつけてください。連続殺人犯でしたっけ、あれはきっと誰が相手でも殺してしまいます」
「うん、僕とソアンも十分に気をつけるよ」
「リタ様は私がお守りします、もちろん私自身だって気をつけます」
「もうあんな怖い思いをする人やエルフが出るのは嫌なんです」
「うん、今日はありがとう、ステラ」
「はい、ありがとうございました、ステラさん」
僕とソアンはステラにお礼を言って神殿を後にした、それからソアンと立ち止まって小さな声で少し話し合った。連続殺人犯は美しい者から何か酷い目に遭った者だ、それがどういう所業なのかは分からないが、殺すのをやめるという選択肢はなさそうだった。きっと次の犠牲者もそう遠くないうちに出るだろう、そう話して二人で十分に気をつけようとした。
「そうだ、ソアン。僕はティスタに会いに行きたいけど、ついてきてくれるかい」
「こんな時ですからね、ティスタさんには悪いですけど、私も一緒についていきます」
「もうティスタの恋人候補を止めよう、色々と考えたけどそう思っているんだよ」
「え!? あんな美人のティスタさんを振ってしまうんですか!?」
「ティスタが良い人間なのは分かっている、でも僕はどうやら彼女を愛せないようなんだ」
「……リタ様がそう考えたならいいですけど、勿体ないってあとで後悔しても知りませんよ!!」
そうソアンからはティスタとの交際を断ることについて忠告された、でもきっと僕は後悔はしないと思っている、なんとなく勘だけどそう思うことができるようになっていた。ソアンはちょっと怒っているような、でもなんだか笑ってもいるような、そんな難しい顔をしていた。いい年になって恋人の一人も作っていられない、そんな僕に呆れているのかもしれなかった。
神殿からそれでティスタに会いに、二人で一緒に裁縫屋に行くことにした。ソアンはその間中ずっと落ち着きがなかった、妙にソワソワしていたり笑ったかと思えば首を横に振ったりしていた。僕を好きになってくれた貴重な女性の好意を断る、僕もなんだかソアンにつられて落ち着かなくなってきた。きちんとティスタに自分の気持ちを伝えられるのか、悲しませることになるかもしれないが言わなくてはならないのだ。そうこうしているうちに、裁縫屋に着いてしまって僕は焦った。
「あらっ、リタにソアンちゃん。いらっしゃい、今日はどうしたの?」
「ちょっと二人だけで話せないかな、ティスタ」
「いいわよ、それじゃソアンちゃんとポエットは二階に上がっててね」
「そうしてくれると助かるよ、ティスタ」
僕は裁縫屋の店の中でティスタと二人きりになって緊張してきた、でもいつかは言わなくてはいけないことだったから、なんとか僕の中で言葉にしてこう言った。
「ティスタ、君は素晴らしい女性だと思う。でも、どうやら僕は君を愛せないようなんだ」
「…………そっか、それは残念ね。リタとはとても素敵な時間が過ごせたのに」
「僕も君と過ごす時間は楽しかった、しかし何かが違う男女の愛情ではないんだ」
「あーあ、悪い予感はあたるものね、でも私たち友達ではいられるかしら」
「それはとても嬉しい、でもそれで良いのかい。ティスタ」
「うふふっ、リタさん。これからはティスタさんでよろしく、私の恋人候補だった大事なお友達」
ティスタは悲しそうな顔は見せずに笑っていた、でもその心に衝撃を受けなかったわけじゃない、その証拠に少し彼女の声が震えていた。僕はそれでも友達でいてくれるというティスタ、彼女を素晴らしい人間だと思った。僕だったら好きになった者から好意が無いと言われたら、どんな顔をしてどう話していいのかも分からなくなっていた。
「それじゃ、ティスタさん。ありがとう、君の恋人候補はとても楽しかった」
「こちらこそありがとう、リタさん。それじゃ、今日はさようなら」
僕は二階にいるソアンを呼んで二人ですぐに裁縫屋を出ていった、ティスタには今はポエットの慰めが必要だと思ったからだ。ソアンもペコリとティスタに向かって頭を下げると、僕と一緒に裁縫屋を出ていった。ポエットがちょっと怖い顔をしてこちらを睨んでいたが、ティスタは最後まで笑顔を崩さずに僕たちを優しく見送ってくれた。
神殿に行ってから裁縫屋に行って、思ったよりも時間が経っていた、もう夕方が近かったので今日は宿屋に帰ることにした。僕とソアンはしばらくは黙っていた、僕は自分のしたことは間違っていない、そう思っていたが少し胸が痛んだ。そのくらいにはティスタに好意を抱いていたのだ、でもそれは手放したくないという思いには至らなかった。やがて、ソアンが僕に対して口を開いた。
「リタ様はティスタさんに感謝してください」
「うん、僕がこんな酷いことを言って、それでもまだ友達でいてくれるんだ」
「そうですよ、そんなに優しい女性はなかなかいません」
「ティスタさんには感謝するよ、今後は友達としてつきあっていきたい」
「本当に優しい人です、私もかなり感心しました」
「僕だったらあんなことは咄嗟に言えない、本当に素晴らしい人間だ」
僕はティスタという初めて付き合った女性を誇らしく思った、彼女の優しさと強さに感動すらした。そしてこれから僕が付き合う女性にも誠実であろう、もし交際を断られた時にはティスタのように、相手の気持ちを思いやって話そうと決めた。僕がこれからどんな者と恋に落ちるかは分からない、でもその相手にも恥ずかしくない自分でいたいとそう思った。
そうして帰った酒場ではいつものようにミーティアが歌っていた、それはいいのだが酒場の外にはもう当たり前のようにアウフが中を覗き込んでいた。僕はこの少年も恋をしていて、それで気持ちが抑えられないのだと感じた。そらならばアウフの奇行もミーティアの迷惑にならない限り、それに酒場の迷惑にならない限りはいいのだと思った。
「ティスタさんを振って良かったけど、彼女が今頃泣いていないか心配だな」
「きっとポエットさんが慰めてくれてますよ」
「うん、ティスタさんは良い友人をもって幸せだね」
「友人というのは恋人とは違って、また貴重で大切なものです」
「僕もディルビオのことを思い出した、僕が恋に破れて泣いてたら彼は何て言うだろう」
「きっともっと良い女がいるぜってそう言います、あの遊び人っぽいディルビオさんなら」
ディルビオは僕の友人で恋人が何度も変わるというエルフだった、確かにソアンからみれば人間でいう遊び人と言ってもよかった。それでも一度に複数と付き合ったことはないし、交際を断る時は上手く断っていたように思えた。僕はディルビオほど器用ではなかった、彼のように上手くティスタに話すこともできなかった。
「ティスタさんもまたきっと好きな人ができますよ、エルフかもしれませんけどね」
「良い人やエルフを好きになって欲しい、僕のとても大切な友人なんだから」
「リタ様も大人になられましたね、恋はまだ知らないようですけど」
「うっ、その点では僕はソアンより子どもなわけだ」
「そうですね、ソアンさんって呼んでくれても良いですよ」
「恋を知っているって強いんだね、ソアンさん」
僕が冗談でソアンのことをさん付けで呼ぶと、ソアンは面白そうに笑ってくれた。僕はティスタを振ってから重くなっていた気持ちが少し軽くなった、ソアンの笑顔はいつだって僕に力を与えてくれるんだ。僕は改めてソアンを大切な家族だと思った、そしてソアンの好きな者が誰かは知らないが、簡単には渡さないと心に誓った。ソアンはそれを知ってか知らずか、僕にこう言って笑っていた。
「リタ様も恋を知ってください、私はずっと待っていますから」
「美しい者は恐ろしいから殺すか……、犯人は美しい者から何か酷い目に遭わされたのかな」
「殺すのを止める気はなさそうです、きっと次の犯行がまた起こります」
「もうその言葉が耳から離れないんです、まるで歌うみたいに綺麗に美しい高い声で話すんです」
「よくその恐怖に耐えたね、ステラ。しばらくは安全な神殿で生活したほうがいいよ」
「ステラさん、勇気を出してよく話してくれました」
僕とソアンは勇気を出して話してくれたステラに労った、ステラは話をした後もまた震えていた。殺されかけるということは、訳の分からない殺意を向けられるということは、それだけ恐ろしい出来事なのだ。ステラは十分に頑張っていた、よく勇気を出して話してくれていた。しばらくは安全な神殿で彼女は生活する方が良いだろう、冒険者を時々しているようだがそれはお休みだ。
「り、リタさんとソアンさんも気をつけてください。連続殺人犯でしたっけ、あれはきっと誰が相手でも殺してしまいます」
「うん、僕とソアンも十分に気をつけるよ」
「リタ様は私がお守りします、もちろん私自身だって気をつけます」
「もうあんな怖い思いをする人やエルフが出るのは嫌なんです」
「うん、今日はありがとう、ステラ」
「はい、ありがとうございました、ステラさん」
僕とソアンはステラにお礼を言って神殿を後にした、それからソアンと立ち止まって小さな声で少し話し合った。連続殺人犯は美しい者から何か酷い目に遭った者だ、それがどういう所業なのかは分からないが、殺すのをやめるという選択肢はなさそうだった。きっと次の犠牲者もそう遠くないうちに出るだろう、そう話して二人で十分に気をつけようとした。
「そうだ、ソアン。僕はティスタに会いに行きたいけど、ついてきてくれるかい」
「こんな時ですからね、ティスタさんには悪いですけど、私も一緒についていきます」
「もうティスタの恋人候補を止めよう、色々と考えたけどそう思っているんだよ」
「え!? あんな美人のティスタさんを振ってしまうんですか!?」
「ティスタが良い人間なのは分かっている、でも僕はどうやら彼女を愛せないようなんだ」
「……リタ様がそう考えたならいいですけど、勿体ないってあとで後悔しても知りませんよ!!」
そうソアンからはティスタとの交際を断ることについて忠告された、でもきっと僕は後悔はしないと思っている、なんとなく勘だけどそう思うことができるようになっていた。ソアンはちょっと怒っているような、でもなんだか笑ってもいるような、そんな難しい顔をしていた。いい年になって恋人の一人も作っていられない、そんな僕に呆れているのかもしれなかった。
神殿からそれでティスタに会いに、二人で一緒に裁縫屋に行くことにした。ソアンはその間中ずっと落ち着きがなかった、妙にソワソワしていたり笑ったかと思えば首を横に振ったりしていた。僕を好きになってくれた貴重な女性の好意を断る、僕もなんだかソアンにつられて落ち着かなくなってきた。きちんとティスタに自分の気持ちを伝えられるのか、悲しませることになるかもしれないが言わなくてはならないのだ。そうこうしているうちに、裁縫屋に着いてしまって僕は焦った。
「あらっ、リタにソアンちゃん。いらっしゃい、今日はどうしたの?」
「ちょっと二人だけで話せないかな、ティスタ」
「いいわよ、それじゃソアンちゃんとポエットは二階に上がっててね」
「そうしてくれると助かるよ、ティスタ」
僕は裁縫屋の店の中でティスタと二人きりになって緊張してきた、でもいつかは言わなくてはいけないことだったから、なんとか僕の中で言葉にしてこう言った。
「ティスタ、君は素晴らしい女性だと思う。でも、どうやら僕は君を愛せないようなんだ」
「…………そっか、それは残念ね。リタとはとても素敵な時間が過ごせたのに」
「僕も君と過ごす時間は楽しかった、しかし何かが違う男女の愛情ではないんだ」
「あーあ、悪い予感はあたるものね、でも私たち友達ではいられるかしら」
「それはとても嬉しい、でもそれで良いのかい。ティスタ」
「うふふっ、リタさん。これからはティスタさんでよろしく、私の恋人候補だった大事なお友達」
ティスタは悲しそうな顔は見せずに笑っていた、でもその心に衝撃を受けなかったわけじゃない、その証拠に少し彼女の声が震えていた。僕はそれでも友達でいてくれるというティスタ、彼女を素晴らしい人間だと思った。僕だったら好きになった者から好意が無いと言われたら、どんな顔をしてどう話していいのかも分からなくなっていた。
「それじゃ、ティスタさん。ありがとう、君の恋人候補はとても楽しかった」
「こちらこそありがとう、リタさん。それじゃ、今日はさようなら」
僕は二階にいるソアンを呼んで二人ですぐに裁縫屋を出ていった、ティスタには今はポエットの慰めが必要だと思ったからだ。ソアンもペコリとティスタに向かって頭を下げると、僕と一緒に裁縫屋を出ていった。ポエットがちょっと怖い顔をしてこちらを睨んでいたが、ティスタは最後まで笑顔を崩さずに僕たちを優しく見送ってくれた。
神殿に行ってから裁縫屋に行って、思ったよりも時間が経っていた、もう夕方が近かったので今日は宿屋に帰ることにした。僕とソアンはしばらくは黙っていた、僕は自分のしたことは間違っていない、そう思っていたが少し胸が痛んだ。そのくらいにはティスタに好意を抱いていたのだ、でもそれは手放したくないという思いには至らなかった。やがて、ソアンが僕に対して口を開いた。
「リタ様はティスタさんに感謝してください」
「うん、僕がこんな酷いことを言って、それでもまだ友達でいてくれるんだ」
「そうですよ、そんなに優しい女性はなかなかいません」
「ティスタさんには感謝するよ、今後は友達としてつきあっていきたい」
「本当に優しい人です、私もかなり感心しました」
「僕だったらあんなことは咄嗟に言えない、本当に素晴らしい人間だ」
僕はティスタという初めて付き合った女性を誇らしく思った、彼女の優しさと強さに感動すらした。そしてこれから僕が付き合う女性にも誠実であろう、もし交際を断られた時にはティスタのように、相手の気持ちを思いやって話そうと決めた。僕がこれからどんな者と恋に落ちるかは分からない、でもその相手にも恥ずかしくない自分でいたいとそう思った。
そうして帰った酒場ではいつものようにミーティアが歌っていた、それはいいのだが酒場の外にはもう当たり前のようにアウフが中を覗き込んでいた。僕はこの少年も恋をしていて、それで気持ちが抑えられないのだと感じた。そらならばアウフの奇行もミーティアの迷惑にならない限り、それに酒場の迷惑にならない限りはいいのだと思った。
「ティスタさんを振って良かったけど、彼女が今頃泣いていないか心配だな」
「きっとポエットさんが慰めてくれてますよ」
「うん、ティスタさんは良い友人をもって幸せだね」
「友人というのは恋人とは違って、また貴重で大切なものです」
「僕もディルビオのことを思い出した、僕が恋に破れて泣いてたら彼は何て言うだろう」
「きっともっと良い女がいるぜってそう言います、あの遊び人っぽいディルビオさんなら」
ディルビオは僕の友人で恋人が何度も変わるというエルフだった、確かにソアンからみれば人間でいう遊び人と言ってもよかった。それでも一度に複数と付き合ったことはないし、交際を断る時は上手く断っていたように思えた。僕はディルビオほど器用ではなかった、彼のように上手くティスタに話すこともできなかった。
「ティスタさんもまたきっと好きな人ができますよ、エルフかもしれませんけどね」
「良い人やエルフを好きになって欲しい、僕のとても大切な友人なんだから」
「リタ様も大人になられましたね、恋はまだ知らないようですけど」
「うっ、その点では僕はソアンより子どもなわけだ」
「そうですね、ソアンさんって呼んでくれても良いですよ」
「恋を知っているって強いんだね、ソアンさん」
僕が冗談でソアンのことをさん付けで呼ぶと、ソアンは面白そうに笑ってくれた。僕はティスタを振ってから重くなっていた気持ちが少し軽くなった、ソアンの笑顔はいつだって僕に力を与えてくれるんだ。僕は改めてソアンを大切な家族だと思った、そしてソアンの好きな者が誰かは知らないが、簡単には渡さないと心に誓った。ソアンはそれを知ってか知らずか、僕にこう言って笑っていた。
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