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2-18慌てん坊と再会する
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「おや、リタさんとソアンさん。どうしてここに、お久しぶりですね」
「ステラさんじゃないか、お久しぶりですね」
「慌てん坊のステラさんですか、今日はそっちこそどうしてここに?」
僕たちが再会したのは神官であるステラだった、白い髪に赤い瞳を持つ少し落ち着きのない少女だった。彼女がここにいるということは神殿が絡んでいるのか、そう僕は思いつつステラへの返事を待った。
「もっちろん、一攫千金を狙ってエリクサー探しです!! …………でも、デビルウルフに襲われてしまって、それで仲間たちとはぐれてしまいました」
「それはお気の毒に、貴女も相変わらずですね」
「本当に慌てん坊なステラさんです、ほらっ出口はすぐそこですよ」
「うぅ、それはご親切にどうもありがとうございます。仲間ともバラバラにはぐれた時には、すぐに出口から出ろと言われています」
「デビルウルフの群れなんかがいますし、ここは危険なダンジョンですからそれは良い判断です」
「ステラさん、今回の仲間の方はわりと常識人ですね」
「まるで私に常識がないように言わないでください、ちょっとおいしい話に飛びつきがちで、それに人を見る目がないだけなんです!!」
「ステラさん、それだけで十分に君は慌てん坊なんじゃないかな」
「はぁ~、ステラさん。貴女は慌てん坊の自覚を持って、しっかり行動した方がいいですよ」
ステラは僕たち二人から慌てん坊だと言われてちょっと涙目だった、でも実際に彼女の行動はこのエテルノのダンジョンでは危険過ぎる、たった一人でこのダンジョンを歩いているのは非常に危ない事だった。ステラは他に良い方法も何も無くて仕方がなく涙目のままで、僕たちが入ってきた出口からエテルノのダンジョンを出ていった。
僕たちはそんなステラを見送って、彼女が無事に仲間と再会できるように祈った。森や大きな世界はその願いを聞いてくれただろうか、ステラはデビルウルフに襲われたと言っていたが、彼女一人でも逃げれたなら一匹だけだったのだろう。彼女を襲ったのがデビルウルフの群れじゃなかったことは幸運だった、それに僕たちにこの近くに少なくとも一匹はデビルウルフがいると教えてくれた。
「ソアン、デビルウルフに気をつけていこう」
「はい、リタ様。足跡や周囲に警戒をしましょう」
「ここは地図でいうとこの辺りだ、なら今の太陽と逆に進んだら建物がある」
「今度はなんの建物でしょうか、今から気になりますね」
「そうだね、でもまだ建物は50個はあるから、あまり期待は持てない」
「そんなにあるんですか、はぁ~。仕方ありません、気を抜かずに行きましょう」
そうして僕たちが見つけた建物はとても小さかった、宿屋にある馬小屋よりも小さかったくらいだ。そして何の建物なのかは中を見ても分からなかった、僕は分からなかったのだがソアンは驚いて口元を押さえていた。だから僕はソアンにここは何の建物なのか、どういった用途で使うのかを聞いてみた。するとソアンはあはははっと笑い、ハッとして周囲を警戒した後に苦笑いしながら教えてくれた。
「リタ様、これは公衆トイレです。しかもおそらくお尻洗いの機能付きです、あはははっ」
「ええ!? この建物はトイレの遺跡なのかい??」
言われてみれば古代の人々も生活を営んでいたのだから、そういう公衆のトイレの遺跡があってもおかしくはなかった。でも深く考えれば考えるほど可笑しくて、思わず僕もあはははっとソアンと一緒になって笑ってしまった。そうしながら僕たちは地図上に記録して、またエテルノのダンジョンから出ることにした。古代の人々の生活を少し覗いてしまった、そんな気分で思い出し笑いが時々出てしまった。
エテルノのダンジョンから外に出ると、意外なことにステラが僕たちを待っていた。彼女の傍には剣士やシーフ、それに魔法使いらしき三人の人間がいた。ステラを含めて皆がちょっと埃っぽくなっていたが、あそこはそういう風が吹く地面が広がっていたからだった。ステラと他の三人の人間は礼儀正しく、僕らに向かってそれぞれが頭を下げた。
「リタさん、ソアンさん、出口を教えてくれてありがとうございます。おかげで仲間たちと出口の外で再会できました」
「それは良かったですね、怪我などはされませんでしたか?」
「一安心です、慌てん坊もほどほどにしてください」
「ええ、全員が一斉に逃げ出してほぼ無事でした。あのデビルウルフは弱っていたようです、走って逃げる私たちを追ってきませんでしたから」
「本当に運が良かった、次はエテルノのダンジョンに行くならお気をつけて」
「デビルウルフの群れは本当にいますから、だから十分に気をつけてくださいね」
「はい、ありがとうございました。リタさんとソアンさんに幸運が訪れますように」
「ありがとうございます、貴女たちも幸運に恵まれますように」
「ええ、慌てん坊のステラさん。貴女も幸運に恵まれますように」
僕とソアンは今日の捜索はそこまでにして帰ることにした、エテルノのダンジョンに行く列はまた長くなっていたし、その列に並んでいたらダンジョンに入るころには夕方になってしまうからだった。だからいつもどおりに宿屋に戻って水浴びをした、そして宿屋の酒場で夕食を食べたが久しぶりにミーティアが歌っていた。僕たちはミーティアの歌を聞きながら、楽しく夕食を食べることができた、そして演奏が全て終わるとミーティアが話しかけてきた。
「お久しぶりやね、師匠。ソアンちゃん」
「うん、ミーティアも無事で良かった」
「ミーティアさんも今夜は、ダンジョンの捜索はお休みですね」
「さすがにもう何週間も過ぎたやろ、エリクサーは無いんじゃないかちゅう話や」
「最初の1本が最後の1本だったと、そういうことになっているのか」
「なるほど、それで少しだけエテルノのダンジョンに行く人が減ったんですね」
「あのダンジョンは行くたびに姿を変えよるからな、皆もう意地で運試しに行っとるようなもんやなぁ」
「確かに運が大きく影響するダンジョンだ」
「どうか私の強運が、正しい道にリタ様を導きますように」
それから僕たちはいつものように宿屋の部屋に戻って眠りについた、そうして数日エテルノのダンジョンに行き続けたが、地図上に×の印が増えていくだけでエリクサーは見つからなかった。そうしたらまた僕が動けない日がきてしまった、ソアンはフォルクに狙われているので用心して、ずっと部屋で過ごしている僕の相手をしてくれた。
そんな日を何日か過ごすとまた僕の体調は良くなった、睡眠を多くとった日の翌日の方が調子が良い、この心の病気を患ってからまた初めて知る事実が出てきた。だから僕は夜はなるべくよく眠るように心掛けた、何日かそうすると体の調子も良くなるのだった。不眠を治すことが心の病気を治すことに繋がるようだった、ソアンもそういえばそうでしたと何故か納得していたから、きっと僕の推測は間違ってはいないはずだった。
そんな日々を過ごしていたある日、さすがにエテルノのダンジョンに行くのも飽きて、ふと僕の歌を喜んで聞いてくれるシャールのことを思い出した。だから気分転換にソアンとも話し合って、領主の館まで出かけていった。領主の長男であるフォルクに会うことだけが心配だったが、フォルクは幸いにも留守にしていた、それはいいのだがシャールも外に出ているという話だった。
「シャール様の具合がとても悪いのです、ですからエリクサー見つけたらすぐに飲めるようにと、ジーニャス様が一緒にお連れになりました」
その話を聞いて僕の心は重くなった、僕の心の病気は命に関わるものじゃない、だからエリクサーが飲めなくても死にはしないのだ。でもシャールは別だった、おそらくは生まれつき心臓が悪いのだ。正常でない心臓が更に悪化していて、エリクサーが手に入らなければシャールの命は、きっとあまり長くは持たないだろうと思われた。
なにせジーニャスが危険なエテルノのダンジョンに、弱っているシャールを連れていくくらいだ、もう相当に彼女の心臓は悪いのだろうと思えた。生まれつき奇形の臓器では上級魔法の回復でも治らない、僕が上級の回復魔法が使えたとしてもシャールを助けることはできなかった。僕はそう事実を素直に認めてから、エリクサーの使い道を改めて考えてみた。
僕ではなくシャールにエリクサーを使ったほうが良いのではないか、でもエリクサーは僕とソアンが命をかけて探している薬でもあるのだ。僕はソアンの方を見た、ソアンも僕の方を見ていた。その瞳には迷いがあった、彼女も僕と同じように迷っているのだと思った。だから、領主の館から帰りながらソアンに思い切って言ってみた。
「ソアン、僕の病気は命には関係がない。だからもしエリクサーを見つけたら、シャールに使ってはいけないだろうか」
「ステラさんじゃないか、お久しぶりですね」
「慌てん坊のステラさんですか、今日はそっちこそどうしてここに?」
僕たちが再会したのは神官であるステラだった、白い髪に赤い瞳を持つ少し落ち着きのない少女だった。彼女がここにいるということは神殿が絡んでいるのか、そう僕は思いつつステラへの返事を待った。
「もっちろん、一攫千金を狙ってエリクサー探しです!! …………でも、デビルウルフに襲われてしまって、それで仲間たちとはぐれてしまいました」
「それはお気の毒に、貴女も相変わらずですね」
「本当に慌てん坊なステラさんです、ほらっ出口はすぐそこですよ」
「うぅ、それはご親切にどうもありがとうございます。仲間ともバラバラにはぐれた時には、すぐに出口から出ろと言われています」
「デビルウルフの群れなんかがいますし、ここは危険なダンジョンですからそれは良い判断です」
「ステラさん、今回の仲間の方はわりと常識人ですね」
「まるで私に常識がないように言わないでください、ちょっとおいしい話に飛びつきがちで、それに人を見る目がないだけなんです!!」
「ステラさん、それだけで十分に君は慌てん坊なんじゃないかな」
「はぁ~、ステラさん。貴女は慌てん坊の自覚を持って、しっかり行動した方がいいですよ」
ステラは僕たち二人から慌てん坊だと言われてちょっと涙目だった、でも実際に彼女の行動はこのエテルノのダンジョンでは危険過ぎる、たった一人でこのダンジョンを歩いているのは非常に危ない事だった。ステラは他に良い方法も何も無くて仕方がなく涙目のままで、僕たちが入ってきた出口からエテルノのダンジョンを出ていった。
僕たちはそんなステラを見送って、彼女が無事に仲間と再会できるように祈った。森や大きな世界はその願いを聞いてくれただろうか、ステラはデビルウルフに襲われたと言っていたが、彼女一人でも逃げれたなら一匹だけだったのだろう。彼女を襲ったのがデビルウルフの群れじゃなかったことは幸運だった、それに僕たちにこの近くに少なくとも一匹はデビルウルフがいると教えてくれた。
「ソアン、デビルウルフに気をつけていこう」
「はい、リタ様。足跡や周囲に警戒をしましょう」
「ここは地図でいうとこの辺りだ、なら今の太陽と逆に進んだら建物がある」
「今度はなんの建物でしょうか、今から気になりますね」
「そうだね、でもまだ建物は50個はあるから、あまり期待は持てない」
「そんなにあるんですか、はぁ~。仕方ありません、気を抜かずに行きましょう」
そうして僕たちが見つけた建物はとても小さかった、宿屋にある馬小屋よりも小さかったくらいだ。そして何の建物なのかは中を見ても分からなかった、僕は分からなかったのだがソアンは驚いて口元を押さえていた。だから僕はソアンにここは何の建物なのか、どういった用途で使うのかを聞いてみた。するとソアンはあはははっと笑い、ハッとして周囲を警戒した後に苦笑いしながら教えてくれた。
「リタ様、これは公衆トイレです。しかもおそらくお尻洗いの機能付きです、あはははっ」
「ええ!? この建物はトイレの遺跡なのかい??」
言われてみれば古代の人々も生活を営んでいたのだから、そういう公衆のトイレの遺跡があってもおかしくはなかった。でも深く考えれば考えるほど可笑しくて、思わず僕もあはははっとソアンと一緒になって笑ってしまった。そうしながら僕たちは地図上に記録して、またエテルノのダンジョンから出ることにした。古代の人々の生活を少し覗いてしまった、そんな気分で思い出し笑いが時々出てしまった。
エテルノのダンジョンから外に出ると、意外なことにステラが僕たちを待っていた。彼女の傍には剣士やシーフ、それに魔法使いらしき三人の人間がいた。ステラを含めて皆がちょっと埃っぽくなっていたが、あそこはそういう風が吹く地面が広がっていたからだった。ステラと他の三人の人間は礼儀正しく、僕らに向かってそれぞれが頭を下げた。
「リタさん、ソアンさん、出口を教えてくれてありがとうございます。おかげで仲間たちと出口の外で再会できました」
「それは良かったですね、怪我などはされませんでしたか?」
「一安心です、慌てん坊もほどほどにしてください」
「ええ、全員が一斉に逃げ出してほぼ無事でした。あのデビルウルフは弱っていたようです、走って逃げる私たちを追ってきませんでしたから」
「本当に運が良かった、次はエテルノのダンジョンに行くならお気をつけて」
「デビルウルフの群れは本当にいますから、だから十分に気をつけてくださいね」
「はい、ありがとうございました。リタさんとソアンさんに幸運が訪れますように」
「ありがとうございます、貴女たちも幸運に恵まれますように」
「ええ、慌てん坊のステラさん。貴女も幸運に恵まれますように」
僕とソアンは今日の捜索はそこまでにして帰ることにした、エテルノのダンジョンに行く列はまた長くなっていたし、その列に並んでいたらダンジョンに入るころには夕方になってしまうからだった。だからいつもどおりに宿屋に戻って水浴びをした、そして宿屋の酒場で夕食を食べたが久しぶりにミーティアが歌っていた。僕たちはミーティアの歌を聞きながら、楽しく夕食を食べることができた、そして演奏が全て終わるとミーティアが話しかけてきた。
「お久しぶりやね、師匠。ソアンちゃん」
「うん、ミーティアも無事で良かった」
「ミーティアさんも今夜は、ダンジョンの捜索はお休みですね」
「さすがにもう何週間も過ぎたやろ、エリクサーは無いんじゃないかちゅう話や」
「最初の1本が最後の1本だったと、そういうことになっているのか」
「なるほど、それで少しだけエテルノのダンジョンに行く人が減ったんですね」
「あのダンジョンは行くたびに姿を変えよるからな、皆もう意地で運試しに行っとるようなもんやなぁ」
「確かに運が大きく影響するダンジョンだ」
「どうか私の強運が、正しい道にリタ様を導きますように」
それから僕たちはいつものように宿屋の部屋に戻って眠りについた、そうして数日エテルノのダンジョンに行き続けたが、地図上に×の印が増えていくだけでエリクサーは見つからなかった。そうしたらまた僕が動けない日がきてしまった、ソアンはフォルクに狙われているので用心して、ずっと部屋で過ごしている僕の相手をしてくれた。
そんな日を何日か過ごすとまた僕の体調は良くなった、睡眠を多くとった日の翌日の方が調子が良い、この心の病気を患ってからまた初めて知る事実が出てきた。だから僕は夜はなるべくよく眠るように心掛けた、何日かそうすると体の調子も良くなるのだった。不眠を治すことが心の病気を治すことに繋がるようだった、ソアンもそういえばそうでしたと何故か納得していたから、きっと僕の推測は間違ってはいないはずだった。
そんな日々を過ごしていたある日、さすがにエテルノのダンジョンに行くのも飽きて、ふと僕の歌を喜んで聞いてくれるシャールのことを思い出した。だから気分転換にソアンとも話し合って、領主の館まで出かけていった。領主の長男であるフォルクに会うことだけが心配だったが、フォルクは幸いにも留守にしていた、それはいいのだがシャールも外に出ているという話だった。
「シャール様の具合がとても悪いのです、ですからエリクサー見つけたらすぐに飲めるようにと、ジーニャス様が一緒にお連れになりました」
その話を聞いて僕の心は重くなった、僕の心の病気は命に関わるものじゃない、だからエリクサーが飲めなくても死にはしないのだ。でもシャールは別だった、おそらくは生まれつき心臓が悪いのだ。正常でない心臓が更に悪化していて、エリクサーが手に入らなければシャールの命は、きっとあまり長くは持たないだろうと思われた。
なにせジーニャスが危険なエテルノのダンジョンに、弱っているシャールを連れていくくらいだ、もう相当に彼女の心臓は悪いのだろうと思えた。生まれつき奇形の臓器では上級魔法の回復でも治らない、僕が上級の回復魔法が使えたとしてもシャールを助けることはできなかった。僕はそう事実を素直に認めてから、エリクサーの使い道を改めて考えてみた。
僕ではなくシャールにエリクサーを使ったほうが良いのではないか、でもエリクサーは僕とソアンが命をかけて探している薬でもあるのだ。僕はソアンの方を見た、ソアンも僕の方を見ていた。その瞳には迷いがあった、彼女も僕と同じように迷っているのだと思った。だから、領主の館から帰りながらソアンに思い切って言ってみた。
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