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09初めての殺人

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「おいっ、荷物と女を置いていきな!!」

 そうして首都テンプルムまでもうしばらくの場所でだった、ガラの悪そうな男たちが前後から十数人現れた。そうして荷物と女を置いていけと言うのだから盗賊だった、俺とオウガは合図して荷物の前後に分かれた。ティカとリンダは震えていたが、ハンターとして必死に戦おうとしていた。俺がそうして一応、盗賊らしき奴らに声をかけた。

「荷物も女も渡さないって言ったら俺たちはどうなる?」
「そりゃ、皆殺しさ!!」

 その言葉を合図に戦いがはじまった、俺はまずは数を減らそうと銃撃した。近くまで来られたら刀にアーツを変えてそいつの心臓を刺すか、それか首を斬り落としていった。それで前にいた十数人は片付いた、俺は急いでオウガの方の応援に行った。オウガも盗賊を見事に倒していた、首が転がった盗賊たちの死体しかもうなかった。それでもオウガがまだ刀を持って険しい顔をしているので、俺はそんなオウガの肩を叩いて軽く声をかけた。

「オウガ、よくやった。もう死んでる、大丈夫だぜ」
「ああ、ロン。僕は上手くやれた?」

「これだけの盗賊倒してりゃ十分さ」
「良かった、夢中だったから殺し損ねがいないといいけど」

「大丈夫だ、全員が死んでる」
「そう、やっと安心したよ」

 そうして俺たちはやっと首都テンプルムに着いた、ティカとリンダはまだ震えが収まっていなかった。よっぽど怖い盗賊でもいたのか、俺は後でオウガに聞いてみようと思って、首都テンプルムに入った。ルックの街を大きくしたような構造で、家もルックの街より立派だった。俺たちは商隊護衛を終えて報酬を貰った、ティカやリンダは逃げるように俺たちから去っていった。

「オウガ、夕飯食ったら風呂付の宿を探そうぜ」
「うん、今日は早く寝たい気分だ」

「具合が悪いのか?」
「ううん、さっきの盗賊たちが煩かっただけ」

「それじゃ、飯だ、飯!! 食わないと元気も出ない」
「うん、分かった」

 そうして俺たちは夕食を食べ終わると風呂付の宿屋に二人部屋をとった、結構高めの値段設定だった一泊で銀貨三枚だ、今までのルックの街だと銀貨一枚ですんだ。こりゃ明日からわりの良い仕事を探さないと、いずれ文無しになるなと俺は気を引き締めた。逆にオウガはフラフラしていた、そうして風呂に入るとすぐに眠ってしまったのだが、寝ながら無言で泣き出したから俺はびっくりした。

「ここにはお前を傷つける者はいないぜ、オウガ」

 仕方がないので俺はオウガのベッドにもぐりこんだ、そうしたらオウガがすぐに抱き着いてきた。だから最初は起きてるのかと思ったくらいだった、でも考えてみれば今日オウガは初めて人を殺したのだ。精神的に衝撃を受けていてもおかしくなかった、だから昔のべそかいてたオウガにするように、頭を撫でてやったらしばらくしたら泣き止んだ。それで安心して、俺もそのまま眠った。

「ロン、夜這いしてくれたんなら起こしてよ!?」
「はぁ? 夜這い? 何のことだ。ふぁ~ぁ」

「僕のベッドに始めてロンから入ってきてくれた!!」
「ああ、べそかいてお前が寝てるからよ。気になって一緒に寝ただけだぜ」

「僕、泣いてた?」
「ああ、ちょっとな。まぁ、恥ずかしいことじゃねぇだろ」

 だからロンが好きだと俺はオウガから抱きしめられた、俺は朝から何が何だかよく分からなかった。それから朝食を宿屋で食べて、とうとう首都のハンターギルドに行ってみることにした。ここならばそれなりのアビスハンターがいるに違いない、むしろここにいなかったらどこにいるんだろう、そう思って俺たちはハンターギルドに入った。

「おお、オウガ。ちゃんと訓練してるハンターがいるぜ」
「本当だ、きちんとアーツの使い方が分かっている人がいる」

「訓練場も広いなぁ、すげぇ運動場いっぱいだぜ」
「ここならきちんと訓練できそうだね」

「おはよう、お姉ちゃん。ここのハンターギルドに来るのは初めてなんだ、簡単に案内してくれないか?」
「すみません、お姉さん。どうかお願いします」

 俺が声をかけたお姉ちゃんはオウガの余所行き笑顔に真っ赤になって、それからここのハンターギルドについていろいろ説明してくれた。基本的には他所のハンターギルドと変わりないが、図書室もあってそれに運動場があって、五つ星から十つ星のハンターにしか開放していないということだった。四つ星以下のハンターは外などで訓練するそうだ、俺とオウガは認識票を見せてさっそく運動場に向かった。

「ここなら遠慮なくお前とやり合えるぜ、オウガ」
「久しぶりに本気が出せるね、ロン」

「全くだ、武器ありの練習形式で行くぞ」
「もちろんだよ、かかってきて」

「挑発とは生意気なことを、行くぞ!!」
「お互いに腕がなまってないといいけどね」

 そうして俺とオウガは武器ありの練習試合をした、やっぱり二人とも少し勘がにぶっていた。だからそれを取り返すように、俺たちは練習試合を本気でやった。他の人に当たるといけないから銃撃はしないが、他は何をやっても良いという乱暴な試合形式だ。でもそれで随分と戦いの勘が戻ってきた、俺はしばらくこの運動場に通おうと思った。

「くっそ、やっぱり少し鈍ってんな」
「アビス相手だったら、下手したら死んでたよ」
「あの~」

「分かってる、しばらくここに俺は通う。そうしながら仕事も探す」
「僕も随分となまっているようだから、そうするよ」
「あの~!? あのっ!?」

「それじゃ、昼飯に行ったらちょっと休んで続きしようぜ」
「うん、いいよ」
「だから、あのですね!!」

 昼飯に行こうとしてる俺たちに一生懸命に話しかけてきたお姉ちゃんがいた、俺たちは会話に夢中で碌に聞いていなかった。ようやく俺が気がついて何の用かと聞くと、その緑の髪に同じ色の瞳の女は新聞記者だと名乗った。そしてえっへんと胸を張ると、俺たちにとんでもないことを言いだした、新聞の記事に俺たちのことを使わせてくれと言うのだ。

「田舎に彗星のように現れた十つ星のハンター二名、これ良い記事になると思うんです!!」
「オウガ、今日の昼飯は何にする?」
「魚料理がいいな、刺身だとなおいいや」

「ですから、お二人に取材許可をとらせてください~!!」
「お前本当に魚が好きな、俺はなんか肉料理にする」
「ロンだって肉料理が好きでしょ」

「だから、あの、その、お願いです~!! 話を聞いて~!!」
「それじゃ、さっさと昼飯に行こうぜ」
「そうだね、煩い虫もいることだし」

 俺とオウガは新聞に載って騒がれたくなかったし、その新聞記者の女は無視した。そうして俺とオウガは数日、ハンターギルドの運動場で訓練を繰り返した。勘が戻ったと思ったから、仕事が何かないかと掲示板も見てみた。ちょうど良く、アビスが七体出るという依頼があった。だからその依頼の手続きをハンターギルドのお姉さんにしてもらった、場所はここから二時間くらい乗合馬車に乗れば良いというところだった、そこに行って村長とも会ってアビスが出る海岸を教えて貰った。

「それじゃ、久しぶりに全力で行くぜ!!」
「アビスが七体、上陸したらだね」

「おう、確実に仕留めていこうぜ!!」
「久しぶりの実戦だからね、それが良い」

「来た!!」
「一体だけ、妙にでかいのがいるね」

 アビスが七体上がってきたらまず俺が刀で三体の首を斬り落としていった、オウガも槍で次々とアビスをしとめた。そして妙にでかい、普通の二倍ほどあるアビスだけが残った。俺はまずは相手の足を狙って刀で斬りかかった、その瞬間だったアビスの背中から触手が出て頭をぶっ叩かれた。そうして俺は吹き飛ばされたが頭はすっきりしていた、目が覚めたというような感じだった。

「オウガ、俺が足を狙うから触手をどうにかしてくれ」
「分かった、ロン。怪我しないでね」

 そうして今度はオウガがそのアビスに向かって槍を振るった、体を狙ったんだじゃないアビスから出ている触手を絡めとったのだ。俺はその隙にアビスの左足を刀で斬り落として、更に背中から心臓を狙った。また二本ほど触手が襲ってきたが同じ手はくらわない、そいつらを斬り落としてから後ろから槍に武器をかえて心臓をぶち抜いた。それでやっとアビスは消えた、十等級の丸い黒石を残していた。

「まさか、アビスにも種類があんのかよ」
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