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戦場の姫君 ~私が私である為にはまずドラゴンを倒すことが必要だった~
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「よく知らない男と結婚なんて嫌よ、私は好きになった男としか結婚しない!!」
王族に生まれた第三王女にとって政略結婚は当たり前のことだった、でも私はそれが嫌で堪らなくていろんなことを試した。剣術や乗馬を習ってはお転婆姫と言われ、勉学や魔法を習っては気狂い姫と呼ばれた。でも私は着々と一人で生きていける技術を身に着けていた、私は侍女やメイドなどに頼らずに自分のことは全て自分でしていた。私の名はルミナ・ピエトラ・ベルンシュタイン、金の髪に蒼い瞳を持った第三王女だった。
「お父さま、これが私に今までかかった費用です!!」
「うむ、よく計算させたものだ、確かにどうやらそのようだな」
「もしこの金貨七千枚を私が用意できたら、私を王家の関係者は追わず自由にしてください!!」
「このお転婆姫がただでさえ嫁の貰い手がないのに、まぁいい。まさか万が一も無いだろうが、一応は魔法契約書を作ってやる」
私は見た目だけならごく普通のお姫様だった、そうして私は十四歳の時に今まで自分にかかった費用を計算させた、私には金貨七千枚ほどのお金がかかっていた。そしてお父さまと話し合いをした、もし私が金貨七千枚を用意することができたら、私のことをただの一人の人間として認めると父である国王に確認した。そしてその後は王家の関係者は私を追わず、私の人生を自由にさせてくれることになった。
「私は行く、これはお父さまからも許可が出ている。だから、私の邪魔をするな」
そういう魔法契約書を交わして、そうして私は命がけの旅に出た。気狂い姫の気紛れだと言われたが、私は真剣に私自身の自由を求めていた。だから前々から噂に聞いていたドラゴンの住処を街で調べて、そうして私はそのドラゴンと戦う為に魔の森の奥に向かった。時々現れる魔物などを倒して、私はとうとうドラゴンの住処まで辿り着いた。
「誇り高きドラゴンよ、私は自由を求めて戦う者であるルミナ。どうか私と正々堂々、勝負をして貰いたい!!」
「はははっ、人間としては面白い小娘だ。いいだろう、正々堂々と勝負をしよう!!」
そして私は自由を求めてベルンシュタイン国の魔の森の奥に住んでいたドラゴン、誇り高き神獣の長であるドラゴンに戦いを挑んた。ドラゴンには空を飛べる翼があるうえに、高温のブレスを吐き私は追いつめられた。だから私は上級魔法の『飛翔』を使い高温のブレスを避けながら、ドラゴンの急所である首の一点を狙っていた。
「見事だ、人間の娘。いや、ルミナよ。われの集めた財宝とわれの体の一部を持って帰れ、この勝負の勝者はそなただと認めよう」
「ありがとうございます、誇り高きドラゴンよ」
私はドラゴンの急所である首の一点だけを攻撃して、どうにか私はそのドラゴンを倒してみせた。そうして私はドラゴンが集めた財宝と、ドラゴンの体の一部を持って王城に帰った。私は『魔法の箱』の魔法が使えたから、貰った物を全て持って帰ることができた。そうして私はお父さまである国王に金貨七千枚を渡して自由になり、魔法契約書のとおりにこの王宮を出て行くことにした。
「ルミナ、本当に出て行くのか? 私の可愛い娘よ」
「お父さま、私にあんな酷い縁談ばかり押しつけようとしておいて、今更家族の情などに頼ろうと言うのですか」
私は第三王女とはいっても妾腹の娘で全く大事にされていなかった、時には侍女から嫌がらせを受けることがあったくらいだ。そのくらい私は王宮で馬鹿にされて育った、私を産んだ妾のお母さまは正妻からのいじめにあい自殺してしまったくらいだった。この王宮には私の味方はほとんどいなかった、むしろ敵ばかりがいたくらいだった。
「ルミナ、考えなおせ。もっと良い嫁ぎ先を見つけてやるから」
「いえ、そんなもの要りません。それではお父さまに金貨七千枚、確かに貴方にお渡ししました」
ドラゴンの集めた財宝はかなりの量で、それだけで私は金貨七千枚をお父さまに払うことができた。お父さまは私の話を聞いて驚き悔しそうにしていたが、魔法契約書があったので私を自由にせざるを得なかった。私は自由になってすぐにこの国を出て、そう遠くない隣国へと移り住むことにした。何故なら今やドラゴンスレイヤーとなった私を、お父さまはとても惜しい者を失くしたと、かなり悔しがっていたからだ。
「ああ、自由な国の空気は美味い!!」
そうしてベルンシュタイン国から、メルテウス国に移り住んだ私は王族の身分を捨てて、ただの冒険者として暮らしだした。冒険者のランクは銅が新人、鉄で一人前、銀で熟練者、金は相当の実力者、白金はそれ以上で幾つかの功績を修めた者となっている。ドラゴンを倒した時に冒険者登録をしていなかた私は、一番下っ端の銅の冒険者になり仕事をするようになった。
「ルミナと言ったか、そんな細腕で仕事ができるのかい」
「私は魔法も使えますから、大丈夫です戦えますよ」
私はドラゴンから貰った財宝の残りで何もしなくても暮らしていけた、だが何があるか分からないのがこの世界だからずっと私は戦い続けた。そうしていると私はだんだんと冒険者のランクが上がっていった、いつしか私は金の冒険者になっていてこの国の貴族とも関わるようになっていった。そして私は第一王子の護衛という仕事を頼まれた、どうして冒険者などを第一王子の護衛にするのか私は疑問だった。
「僕の新しい護衛は君? よろしくね、げほっ、けほっ!?」
「大丈夫ですか!? 水を飲みますか?」
「ありがとう、大丈夫だよ。僕は生まれつき体が弱いんだって、だから王太子候補からも外されているんだ」
「私は冒険者のルミナと申します、これから第一王子であるシュノーク殿下にお仕え致します」
私の働き先となった第一王子の離宮は酷い有様だった、メイドや侍女は数名しかいないうえに彼女らは碌に仕事をしなかった。銀の髪に黄金の瞳を持つ第一王子シュノーク・サファイヤ・メルテウスは生まれつき体が弱かった、それに彼は優しい性格だったから碌に仕事もしないメイドや侍女を怒らなかった。私はとりあえずシュノーク様が使う部屋だけでも綺麗に掃除をした、その間シュノークには客室で過ごして貰った。
「うわぁ、凄い。お部屋が綺麗になったね」
「あんな埃が多い部屋では、どんな強い体も悪くなってしまいます」
「ルミナは優しいな、僕は嬉しいよ」
「私は仕事をしているだけです、次は少し体を動かしましょう」
私はできるだけシュノーク様の住んでいる環境を改善した、部屋を綺麗に掃除して調理場にお金を渡して栄養のある食事を作って貰った。そしてシュノーク様自身の体もできる限り鍛えた、運動はほんの少ししかできなかったが、地道に筋肉を鍛えることはできた。私は第一王子なのに家庭教師もいなかったので、私が知っている限りの知識をシュノーク様に教えた。シュノーク様は知識に飢えていたかのように、私がする授業を真面目に聞きそして勉強をし始めた。
「……とこういうことで国の予算は決まるのです」
「そうか、なるほど。次は予算をどう使えば良いのか、それを詳しく教えてくれ」
「予算の配分となりますと、複雑な要因が絡み合います。ですが、まずは民を第一に考えることです」
「民のことを考えた上での予算の使い方か、でもそう単純にはいかないんだな」
シュノーク様は教えれば理解をするかなり頭の良いお方だった、まだ十四歳だそうだが体さえ丈夫ならば、十分に王太子に彼はなれるはずだった。私とは三歳しか年齢が違わなかった、私はもう十七歳になっていた。貴族ではそろそろ嫁にいく年齢だったが、平民になっていた私には関係なかった。でもシュノーク様には関係あったようだ、私に体を洗われたりすることを彼は恥ずかしがった。
「ルミナ!? 白いおしっこが出たんだが、僕はとうとう死ぬのか!?」
「…………それは精通かと思われます、シュノーク様は大人になられたのです」
シュノーク様は体が弱いこともあって成長が遅れていたようだ、私から精通の知識を聞いてシュノーク様は真っ赤になって布団を被ってしまった。私は男性なら誰にでもあることで、何も心配することではないと伝えた。シュノーク様はうんと言って頷いて、布団から出てきて私の顔を見て真っ赤になっていた。私はシュノーク様が元気になれれば良いのに、そう思って駄目で元々と思いシュノーク様に聞いてみた。
「シュノーク様、貴方の虚弱体質は何をしても治らないものでしょうか?」
「ううん、えっとね。母上が言っていたけど、ドラゴンの鱗を粉にして飲めば強い体になれるって」
「それは!? もっと早くにおっしゃって貰いたかったですね」
「どうして、ルミナ?」
私はドラゴンを倒した時にドラゴンの鱗を貰っていた、だから私はその鱗をすり鉢ですり潰して、それから私自身が飲んでみて毒性は無いと確かめた。そうしてそれをシュノーク様に飲ませた、私は沢山ドラゴンの鱗を貰っていたから、一日三回シュノーク様にそれを飲ませ続けてみた。そうしたらみるみるうちにシュノーク様は元気になっていった、私もドラゴンの鱗を飲み続けてみようと思った。
「ルミナ!! 剣術を教えておくれ!!」
「はい、まずは剣の構えからです」
「ルミナ!! 乗馬を教えておくれ!!」
「ええ、最初は私と一緒に乗ってみましょう」
「ルミナ!! 魔法を教えておくれ!!」
「はい、それでは初級魔法の『光』からです」
シュノーク様は一月ほどで完全に虚弱体質が治った、私はシュノーク様に情が移っていたから、そのことを二人だけでとても喜んだ。何故二人だけの喜ぶことにしたのか、それは第一王子が回復したなんて聞いたら、その命を狙う者も現れるだろうからだった。シュノーク様は本当にとても賢かった、私以外の人の前では昔のように病弱なふりをした。そうして、私とシュノーク様が会って一年が経っていた。
「ルミナ、もうすぐ僕は廃嫡されるよ。そうしたら平民にして貰うから、君と一緒に行ってもいい?」
「ええ、構いませんよ」
「ええとね、ルミナ。一緒に行っていいというのは君が好きだから、僕は君と一緒に生きていきたいという意味だよ」
「はい、分かっています。ふふっ、私は構いませんよ」
シュノーク様は少し前から分かりやすく私が近づくと顔を赤くしていた、好意を持たれているのだと鈍い私でも気がつくくらいだった。でも私はそのシュノーク様からの好意が気持ち良かった、私もいつの間にかこの可愛い王子さまが好きになっていた。無償でドラゴンの鱗を分け与えるくらいに、そう私なりにシュノーク様のことを愛していた。
「シュノーク!! 貴方がこんなに元気になっているなんて!?」
「なっ、なんで母上がここに!?」
そうして十五歳になったシュノーク様は廃嫡されるはずだった、でもシュノーク様を産んだ王妃様がある日やってきて彼が元気になっていることに気づかれた。そうしてシュノーク様は第一王子として王太子になった、今までシュノーク様を虐げていた者は全て酷く罰せられた。私はこの職場をただちに解雇され、シュノーク様と会うことはできなくなった。
「私の可愛い王子さまだったのにな、まぁ彼がそれで幸せになれるならいいか」
私はそう思って潔く彼から身を引いた、私の可愛い王子さまを想って少しだけ涙が出た。だがそれから一週間もしないうちにまた私は王宮に呼ばれた、そして私は王宮で王太子として謁見の間に座っているシュノーク様から求婚された。彼は十五歳になっていた、私は十八歳になっていた。賢いシュノーク様は私のことを詳しく調べなおしていた、そして私がルミナ・ピエトラ・ベルンシュタインであること、そうベルンシュタイン国の第三王女であることまで調べ出していた。
「ルミナ、どうか僕と結婚して欲しい。君と結婚できないなら王太子など辞める、そう父上と母上にも言って脅してある」
「まぁ、両親を脅しているのですか?」
「ああ、僕はルミナから上級魔法を教えて貰ったから、君と結婚できないなら王宮を燃やし尽くすと言ってある」
「それは、どうりでご両親も怯えるわけですね」
「ルミナ、君の気はまだ変わってない? 僕たちの住む場所は変わるけど、僕と一緒に生きていってくれないか? 僕は君を心から愛しているよ、その強さも優しさも愛おしくて堪らなく欲しいんだ」
「ふふっ、私は構いませんよ。シュノーク様、私も貴方を愛していますから」
私がそう言った途端にシュノーク様は座っていた椅子から飛び降りて、私のところまで走ってきて私に思いっきり抱き着いた。そうして少し涙を浮かべながら、私のことを大切に抱きしめた。私もシュノーク様が可愛いくて大好きで愛していると思っていたから、その彼から求婚されて本当に嬉しく思いその体を抱き返した。そうして私はルミナ・ピエトラ・メルテウスとなり、シュノーク様の王太子妃となって王宮で暮らすことになった。
「ルミナが強い女性で良かった、僕を選んでくれて本当に嬉しい」
「私は王族や貴族は大嫌いですが、でも貴方だけは別ですよ。シュノーク様、いえ私の可愛い旦那さま」
「僕は君を愛しているから、ルミナ。君に軽蔑されないような、いずれは立派な王になる」
「はい、楽しみにしています。私のシュノーク様、心から愛していますよ」
こうして私はメルテウス国の王宮で暮らすことになったが、第三王女の時にマナーは叩きこまれていたので困ることはなかった。第一王子の王太子妃になった私には沢山の敵ができたが、ドラゴンを倒すことに比べればそんなに苦労することもなかった。私の身長を追い越したシュノーク様はそれからもずっと私にべた惚れで、虚弱体質だった時に無視された他の女性など見向きもしなかった。そうして私とシュノーク様はやがて王と王妃になり、メルテウス国を良い政治で治めていった。
私は幼い頃に諦めずに戦ったことを誇りに思った、私がドラゴンと戦って国を飛び出さなければ、シュノーク様にもきっと出会えなかった。だから私は生涯戦い続けた、王宮という戦場で夫であるシュノーク様と助け合いながら、私たちは敵になった者たちと戦い続けた。そう諦めとは自分の心を殺すことだった、私たちはお互いを大事に想いながら、愛し合いそして生涯を戦い続けたのだった。
王族に生まれた第三王女にとって政略結婚は当たり前のことだった、でも私はそれが嫌で堪らなくていろんなことを試した。剣術や乗馬を習ってはお転婆姫と言われ、勉学や魔法を習っては気狂い姫と呼ばれた。でも私は着々と一人で生きていける技術を身に着けていた、私は侍女やメイドなどに頼らずに自分のことは全て自分でしていた。私の名はルミナ・ピエトラ・ベルンシュタイン、金の髪に蒼い瞳を持った第三王女だった。
「お父さま、これが私に今までかかった費用です!!」
「うむ、よく計算させたものだ、確かにどうやらそのようだな」
「もしこの金貨七千枚を私が用意できたら、私を王家の関係者は追わず自由にしてください!!」
「このお転婆姫がただでさえ嫁の貰い手がないのに、まぁいい。まさか万が一も無いだろうが、一応は魔法契約書を作ってやる」
私は見た目だけならごく普通のお姫様だった、そうして私は十四歳の時に今まで自分にかかった費用を計算させた、私には金貨七千枚ほどのお金がかかっていた。そしてお父さまと話し合いをした、もし私が金貨七千枚を用意することができたら、私のことをただの一人の人間として認めると父である国王に確認した。そしてその後は王家の関係者は私を追わず、私の人生を自由にさせてくれることになった。
「私は行く、これはお父さまからも許可が出ている。だから、私の邪魔をするな」
そういう魔法契約書を交わして、そうして私は命がけの旅に出た。気狂い姫の気紛れだと言われたが、私は真剣に私自身の自由を求めていた。だから前々から噂に聞いていたドラゴンの住処を街で調べて、そうして私はそのドラゴンと戦う為に魔の森の奥に向かった。時々現れる魔物などを倒して、私はとうとうドラゴンの住処まで辿り着いた。
「誇り高きドラゴンよ、私は自由を求めて戦う者であるルミナ。どうか私と正々堂々、勝負をして貰いたい!!」
「はははっ、人間としては面白い小娘だ。いいだろう、正々堂々と勝負をしよう!!」
そして私は自由を求めてベルンシュタイン国の魔の森の奥に住んでいたドラゴン、誇り高き神獣の長であるドラゴンに戦いを挑んた。ドラゴンには空を飛べる翼があるうえに、高温のブレスを吐き私は追いつめられた。だから私は上級魔法の『飛翔』を使い高温のブレスを避けながら、ドラゴンの急所である首の一点を狙っていた。
「見事だ、人間の娘。いや、ルミナよ。われの集めた財宝とわれの体の一部を持って帰れ、この勝負の勝者はそなただと認めよう」
「ありがとうございます、誇り高きドラゴンよ」
私はドラゴンの急所である首の一点だけを攻撃して、どうにか私はそのドラゴンを倒してみせた。そうして私はドラゴンが集めた財宝と、ドラゴンの体の一部を持って王城に帰った。私は『魔法の箱』の魔法が使えたから、貰った物を全て持って帰ることができた。そうして私はお父さまである国王に金貨七千枚を渡して自由になり、魔法契約書のとおりにこの王宮を出て行くことにした。
「ルミナ、本当に出て行くのか? 私の可愛い娘よ」
「お父さま、私にあんな酷い縁談ばかり押しつけようとしておいて、今更家族の情などに頼ろうと言うのですか」
私は第三王女とはいっても妾腹の娘で全く大事にされていなかった、時には侍女から嫌がらせを受けることがあったくらいだ。そのくらい私は王宮で馬鹿にされて育った、私を産んだ妾のお母さまは正妻からのいじめにあい自殺してしまったくらいだった。この王宮には私の味方はほとんどいなかった、むしろ敵ばかりがいたくらいだった。
「ルミナ、考えなおせ。もっと良い嫁ぎ先を見つけてやるから」
「いえ、そんなもの要りません。それではお父さまに金貨七千枚、確かに貴方にお渡ししました」
ドラゴンの集めた財宝はかなりの量で、それだけで私は金貨七千枚をお父さまに払うことができた。お父さまは私の話を聞いて驚き悔しそうにしていたが、魔法契約書があったので私を自由にせざるを得なかった。私は自由になってすぐにこの国を出て、そう遠くない隣国へと移り住むことにした。何故なら今やドラゴンスレイヤーとなった私を、お父さまはとても惜しい者を失くしたと、かなり悔しがっていたからだ。
「ああ、自由な国の空気は美味い!!」
そうしてベルンシュタイン国から、メルテウス国に移り住んだ私は王族の身分を捨てて、ただの冒険者として暮らしだした。冒険者のランクは銅が新人、鉄で一人前、銀で熟練者、金は相当の実力者、白金はそれ以上で幾つかの功績を修めた者となっている。ドラゴンを倒した時に冒険者登録をしていなかた私は、一番下っ端の銅の冒険者になり仕事をするようになった。
「ルミナと言ったか、そんな細腕で仕事ができるのかい」
「私は魔法も使えますから、大丈夫です戦えますよ」
私はドラゴンから貰った財宝の残りで何もしなくても暮らしていけた、だが何があるか分からないのがこの世界だからずっと私は戦い続けた。そうしていると私はだんだんと冒険者のランクが上がっていった、いつしか私は金の冒険者になっていてこの国の貴族とも関わるようになっていった。そして私は第一王子の護衛という仕事を頼まれた、どうして冒険者などを第一王子の護衛にするのか私は疑問だった。
「僕の新しい護衛は君? よろしくね、げほっ、けほっ!?」
「大丈夫ですか!? 水を飲みますか?」
「ありがとう、大丈夫だよ。僕は生まれつき体が弱いんだって、だから王太子候補からも外されているんだ」
「私は冒険者のルミナと申します、これから第一王子であるシュノーク殿下にお仕え致します」
私の働き先となった第一王子の離宮は酷い有様だった、メイドや侍女は数名しかいないうえに彼女らは碌に仕事をしなかった。銀の髪に黄金の瞳を持つ第一王子シュノーク・サファイヤ・メルテウスは生まれつき体が弱かった、それに彼は優しい性格だったから碌に仕事もしないメイドや侍女を怒らなかった。私はとりあえずシュノーク様が使う部屋だけでも綺麗に掃除をした、その間シュノークには客室で過ごして貰った。
「うわぁ、凄い。お部屋が綺麗になったね」
「あんな埃が多い部屋では、どんな強い体も悪くなってしまいます」
「ルミナは優しいな、僕は嬉しいよ」
「私は仕事をしているだけです、次は少し体を動かしましょう」
私はできるだけシュノーク様の住んでいる環境を改善した、部屋を綺麗に掃除して調理場にお金を渡して栄養のある食事を作って貰った。そしてシュノーク様自身の体もできる限り鍛えた、運動はほんの少ししかできなかったが、地道に筋肉を鍛えることはできた。私は第一王子なのに家庭教師もいなかったので、私が知っている限りの知識をシュノーク様に教えた。シュノーク様は知識に飢えていたかのように、私がする授業を真面目に聞きそして勉強をし始めた。
「……とこういうことで国の予算は決まるのです」
「そうか、なるほど。次は予算をどう使えば良いのか、それを詳しく教えてくれ」
「予算の配分となりますと、複雑な要因が絡み合います。ですが、まずは民を第一に考えることです」
「民のことを考えた上での予算の使い方か、でもそう単純にはいかないんだな」
シュノーク様は教えれば理解をするかなり頭の良いお方だった、まだ十四歳だそうだが体さえ丈夫ならば、十分に王太子に彼はなれるはずだった。私とは三歳しか年齢が違わなかった、私はもう十七歳になっていた。貴族ではそろそろ嫁にいく年齢だったが、平民になっていた私には関係なかった。でもシュノーク様には関係あったようだ、私に体を洗われたりすることを彼は恥ずかしがった。
「ルミナ!? 白いおしっこが出たんだが、僕はとうとう死ぬのか!?」
「…………それは精通かと思われます、シュノーク様は大人になられたのです」
シュノーク様は体が弱いこともあって成長が遅れていたようだ、私から精通の知識を聞いてシュノーク様は真っ赤になって布団を被ってしまった。私は男性なら誰にでもあることで、何も心配することではないと伝えた。シュノーク様はうんと言って頷いて、布団から出てきて私の顔を見て真っ赤になっていた。私はシュノーク様が元気になれれば良いのに、そう思って駄目で元々と思いシュノーク様に聞いてみた。
「シュノーク様、貴方の虚弱体質は何をしても治らないものでしょうか?」
「ううん、えっとね。母上が言っていたけど、ドラゴンの鱗を粉にして飲めば強い体になれるって」
「それは!? もっと早くにおっしゃって貰いたかったですね」
「どうして、ルミナ?」
私はドラゴンを倒した時にドラゴンの鱗を貰っていた、だから私はその鱗をすり鉢ですり潰して、それから私自身が飲んでみて毒性は無いと確かめた。そうしてそれをシュノーク様に飲ませた、私は沢山ドラゴンの鱗を貰っていたから、一日三回シュノーク様にそれを飲ませ続けてみた。そうしたらみるみるうちにシュノーク様は元気になっていった、私もドラゴンの鱗を飲み続けてみようと思った。
「ルミナ!! 剣術を教えておくれ!!」
「はい、まずは剣の構えからです」
「ルミナ!! 乗馬を教えておくれ!!」
「ええ、最初は私と一緒に乗ってみましょう」
「ルミナ!! 魔法を教えておくれ!!」
「はい、それでは初級魔法の『光』からです」
シュノーク様は一月ほどで完全に虚弱体質が治った、私はシュノーク様に情が移っていたから、そのことを二人だけでとても喜んだ。何故二人だけの喜ぶことにしたのか、それは第一王子が回復したなんて聞いたら、その命を狙う者も現れるだろうからだった。シュノーク様は本当にとても賢かった、私以外の人の前では昔のように病弱なふりをした。そうして、私とシュノーク様が会って一年が経っていた。
「ルミナ、もうすぐ僕は廃嫡されるよ。そうしたら平民にして貰うから、君と一緒に行ってもいい?」
「ええ、構いませんよ」
「ええとね、ルミナ。一緒に行っていいというのは君が好きだから、僕は君と一緒に生きていきたいという意味だよ」
「はい、分かっています。ふふっ、私は構いませんよ」
シュノーク様は少し前から分かりやすく私が近づくと顔を赤くしていた、好意を持たれているのだと鈍い私でも気がつくくらいだった。でも私はそのシュノーク様からの好意が気持ち良かった、私もいつの間にかこの可愛い王子さまが好きになっていた。無償でドラゴンの鱗を分け与えるくらいに、そう私なりにシュノーク様のことを愛していた。
「シュノーク!! 貴方がこんなに元気になっているなんて!?」
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「私の可愛い王子さまだったのにな、まぁ彼がそれで幸せになれるならいいか」
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「ルミナ、どうか僕と結婚して欲しい。君と結婚できないなら王太子など辞める、そう父上と母上にも言って脅してある」
「まぁ、両親を脅しているのですか?」
「ああ、僕はルミナから上級魔法を教えて貰ったから、君と結婚できないなら王宮を燃やし尽くすと言ってある」
「それは、どうりでご両親も怯えるわけですね」
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「ふふっ、私は構いませんよ。シュノーク様、私も貴方を愛していますから」
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「ルミナが強い女性で良かった、僕を選んでくれて本当に嬉しい」
「私は王族や貴族は大嫌いですが、でも貴方だけは別ですよ。シュノーク様、いえ私の可愛い旦那さま」
「僕は君を愛しているから、ルミナ。君に軽蔑されないような、いずれは立派な王になる」
「はい、楽しみにしています。私のシュノーク様、心から愛していますよ」
こうして私はメルテウス国の王宮で暮らすことになったが、第三王女の時にマナーは叩きこまれていたので困ることはなかった。第一王子の王太子妃になった私には沢山の敵ができたが、ドラゴンを倒すことに比べればそんなに苦労することもなかった。私の身長を追い越したシュノーク様はそれからもずっと私にべた惚れで、虚弱体質だった時に無視された他の女性など見向きもしなかった。そうして私とシュノーク様はやがて王と王妃になり、メルテウス国を良い政治で治めていった。
私は幼い頃に諦めずに戦ったことを誇りに思った、私がドラゴンと戦って国を飛び出さなければ、シュノーク様にもきっと出会えなかった。だから私は生涯戦い続けた、王宮という戦場で夫であるシュノーク様と助け合いながら、私たちは敵になった者たちと戦い続けた。そう諦めとは自分の心を殺すことだった、私たちはお互いを大事に想いながら、愛し合いそして生涯を戦い続けたのだった。
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