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3-19とても薬が足りやしない
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「アクアとリッシュはこれを飲むの、怪我をしたらいけないからシエルとレンも飲むの」
「ああ、分かった。アクア」
「これを飲むのか、チビ」
「アクア様がおっしゃるなら、これは薬なのでしょう」
そうして俺たちは全員でその粉を飲んだ、もちろん美味いものではなかったが、これが薬になるならそうする以外に方法はなかった。そうして一晩また宿屋で眠ったが、今度はアクアやリッシュは流行り病にかからなかった。俺やレンも同じだった、これでとりあえず俺たちは安全だった。ただアクアは暗い顔をしていた、俺が理由を聞くとアクアは俺たちにこう話した。
「この病気はキナの木の樹皮が予防薬にも治療薬にもなるの、でも昨日森の中を調べてみたらキナの木はあまり生えてなかったの」
「そうか、この流行り病の治療法を伝えることは危険だな」
「下手をすればその木の奪い合いになりかねぇか」
「助けられる命があるのに、助ける為の薬が少ないのですね」
「それにこの病気、本当はもっと発病が遅いはずなの。でもアクアたちがかかったこの病気、とても発病が早くて死ぬまでの時間が短いの」
「ますます迂闊なことは言えないな」
「チビ、そんなに気にすんな。ないものは仕方がねぇ、木をいきなり増やすわけにもいかねぇ」
「そうですね、それで木自体がなくなってしまったら、もっと先の未来の為に良くありません」
「病気を運んでいるのは蚊なの、だから蚊を減らせば病気にかかる人も減るの」
「分かった、アクア。一応は医者たちにそう言ってみよう、きっと馬鹿にされるだろうが忠告はしなきゃな」
「それじゃ、俺様はまだ少し宿屋で休むぜ」
「僕もレン様と一緒におります、少し眠っておきたいです」
それから俺とアクアは何人もの医者に会ってみた、でも病気の原因が蚊だというと俺たちの話は笑い飛ばされた。中には真剣に話を聞く医者もいたが、治療法については俺もアクアも黙っていた。ただ俺は商業ギルドで人を何人か雇った、そうしてキナの木の種を買い占めた。そして買い占めたキナの木の種を、森に丁寧に植えていくように雇った人間に頼んだ。
こうしておけば時間はかかるが、もっと先の未来でキナの木の樹皮が薬だと分かり、薬として皆に使ってもらえるかもしれなかったからだ。木が育つのには時間がかかるから気の長い話だった、でも確実に未来への希望を残していく作業でもあった。俺のしたことにアクアはとても喜んだ、商業ギルドで雇った人間と一緒になって、アクアはキナの種をまいて丁寧に埋めていた。
そうして宿屋に帰るとまた問題が起きていた、俺たちが病人を連れてきたはずなのに治っている、そう宿屋の主人や奉公人が言ってまわったようだった。だから俺たちの部屋には流行り病の重病人の家族がきていた、彼らは涙を流しながら薬をくれるように俺たちに訴えた。俺はもうこの街を出ると言って、レンやリッシュを起こして旅支度をさせた。
「流行り病にかかっているなら、医者に頼め。俺たちは医者じゃないんだ、俺たちの仲間の病気は流行り病に似ていただけだ」
そう言って俺たちは宿屋を裏口から出ていった、口の軽い宿屋の店主や奉公人が噂を流していたからだった。裏口にも何人か人がいたが、俺はアクアを連れて強引にここを出ていった。そして街の門からも出て、そこからアクアを背負って少し早く皆でこの街から離れた。そうして旅をはじめたらなんとあの街から追っ手がかかった、俺たちは追ってくる馬に乗った人間を避けて山道を進んで歩いていった。
「キナの木がいっぱいあったら良かったのに……」
「アクア、ないものは仕方ない。レンも言ったろ、アクアは偉い。俺たちはできるだけのことはしたんだ」
「神殿の病院、流行り病の人でいっぱいだったの」
「ああ、いつかあの木が十分に育った時、その時に治療法として気づいて貰えると良いな」
フラワーリング国にいる間は流行り病がどこでも流行っていた、アクアは森を調べて十分にキナの木がある時には、医者に薬だと言ってみたがほとんどの医者は本気にしなかった。俺はどの街の森でも人を雇ってキナの木の種を植えさせた、こうしておけばキナの木は増えるし、どうしてこんなことをしたのか不思議に思う人間もいたはずだ。実際に俺がしていることを、そう不思議に思っている人間はいた。
「なんだ、坊主。キナの木の種なんて買ってどうする?」
「今は分からなくていんだ、そのうちに分かるさ」
「それに人を雇ってまでして、その種を森にまいてどうするんだ?」
「もっと時間が経って医者が気づけば、きっとあんたの孫あたりで分かることさ」
「一体何が分かるって言うんだ?」
「それは秘密だ、今はまだな」
そういう人間たちからキナの木が治療法だと、そう気がついて貰えれば良かった。俺の行為は一見すると無駄な行為にみえたが、数十年後にはキナの木が流行り病の薬になると気がついて貰えた。それからはフラワーリング国ではキナの木を大切にするようになり、そして病気を運ぶ蚊は憎まれて退治されるようになった。そうなればキナの木を植えた聖人などと、俺のことを歌う吟遊詩人までいるようになったそうだ。
「ふうっ、やっとフラワーリング国を抜けたか」
「シエルいっぱい頑張ったの、偉い、偉い」
「チビだって頑張ってたよな、偉いぞ、チビ」
「ええ、シエル様もアクア様もレン様も頑張っておられました」
「次はどんな国だっけ?」
「えっと、聞いた話だとチヤナ国なの」
「なんでも文化が変わってんだとさ」
「確か、ドラゴンの姿が違うそうです」
「え? 俺たちドラゴン族がか?」
「シエルとレン、違うドラゴンに変身できるの?」
「いや、できねぇよ!!」
「なんでもチヤナ国では、ドラゴンは蛇のように長い体を持つそうです」
俺とレンはまたため息をついた、トカゲと呼ばれたと思ったら今度は蛇だ。一体人間はドラゴンを何だと思っているのか、ドラゴンは聖獣や魔物の頂点に君臨する最強の生き物だ。世界の大きな力とも繋がっていて長い時を生きるものだ。この世で一番に恐ろしいのはドラゴンだった、俺はこの間の世界の大きな力で話をした母さんを思い出した。
あの時はレンを探す為に急いでいたから、あかり姉さんのことなど何も伝えられなかった。あれから世界の大きな力と接続する練習をしているのだが、母さんとは会えなかったからちょっと遠くに離れ過ぎていた。もしくは俺の世界の大きな力の使い方が下手なのだ、こっちの可能性の方が高かった。あれから世界の大きな力に接続しようと、毎朝試しているが俺は本当にできそこないのドラゴンで上手くいかなかった。
「なぁ、レン。世界の大きな力への接続ってどうするんだ?」
「はぁ!? そんなもんちょっと繋げて力を貰うだけだ」
「そのちょっと繋げての部分を詳しく!!」
「そんな簡単で基本的なこと言われてもな、そうだな大きな力に体を突っ込むようなもんじゃねぇか」
「なるほど、そうか試してみよう」
「でも世界の大きな力へと接続はドラゴンによって様々だ、中には夜にそれを必ずする奴もいる」
ドラゴンの本来の食事である世界の大きな力への接続方法、それはドラゴンによって違うそうだった。俺の母さんは大体朝にそうしていたが、レンの養い親のドラゴンは必ず夜にしていたそうだ。世界の大きな力はいつだってあるのだから、朝でも夜でも好きな時に繋がることができるのだった。それを聞いたアクアはこんびにみたいと言っていた、こんびにとはそんなに大きな力なのだろうかと俺は思った。
「見て、シエル。凄く綺麗な女の人達なの」
「ああ、分かった。アクア」
「これを飲むのか、チビ」
「アクア様がおっしゃるなら、これは薬なのでしょう」
そうして俺たちは全員でその粉を飲んだ、もちろん美味いものではなかったが、これが薬になるならそうする以外に方法はなかった。そうして一晩また宿屋で眠ったが、今度はアクアやリッシュは流行り病にかからなかった。俺やレンも同じだった、これでとりあえず俺たちは安全だった。ただアクアは暗い顔をしていた、俺が理由を聞くとアクアは俺たちにこう話した。
「この病気はキナの木の樹皮が予防薬にも治療薬にもなるの、でも昨日森の中を調べてみたらキナの木はあまり生えてなかったの」
「そうか、この流行り病の治療法を伝えることは危険だな」
「下手をすればその木の奪い合いになりかねぇか」
「助けられる命があるのに、助ける為の薬が少ないのですね」
「それにこの病気、本当はもっと発病が遅いはずなの。でもアクアたちがかかったこの病気、とても発病が早くて死ぬまでの時間が短いの」
「ますます迂闊なことは言えないな」
「チビ、そんなに気にすんな。ないものは仕方がねぇ、木をいきなり増やすわけにもいかねぇ」
「そうですね、それで木自体がなくなってしまったら、もっと先の未来の為に良くありません」
「病気を運んでいるのは蚊なの、だから蚊を減らせば病気にかかる人も減るの」
「分かった、アクア。一応は医者たちにそう言ってみよう、きっと馬鹿にされるだろうが忠告はしなきゃな」
「それじゃ、俺様はまだ少し宿屋で休むぜ」
「僕もレン様と一緒におります、少し眠っておきたいです」
それから俺とアクアは何人もの医者に会ってみた、でも病気の原因が蚊だというと俺たちの話は笑い飛ばされた。中には真剣に話を聞く医者もいたが、治療法については俺もアクアも黙っていた。ただ俺は商業ギルドで人を何人か雇った、そうしてキナの木の種を買い占めた。そして買い占めたキナの木の種を、森に丁寧に植えていくように雇った人間に頼んだ。
こうしておけば時間はかかるが、もっと先の未来でキナの木の樹皮が薬だと分かり、薬として皆に使ってもらえるかもしれなかったからだ。木が育つのには時間がかかるから気の長い話だった、でも確実に未来への希望を残していく作業でもあった。俺のしたことにアクアはとても喜んだ、商業ギルドで雇った人間と一緒になって、アクアはキナの種をまいて丁寧に埋めていた。
そうして宿屋に帰るとまた問題が起きていた、俺たちが病人を連れてきたはずなのに治っている、そう宿屋の主人や奉公人が言ってまわったようだった。だから俺たちの部屋には流行り病の重病人の家族がきていた、彼らは涙を流しながら薬をくれるように俺たちに訴えた。俺はもうこの街を出ると言って、レンやリッシュを起こして旅支度をさせた。
「流行り病にかかっているなら、医者に頼め。俺たちは医者じゃないんだ、俺たちの仲間の病気は流行り病に似ていただけだ」
そう言って俺たちは宿屋を裏口から出ていった、口の軽い宿屋の店主や奉公人が噂を流していたからだった。裏口にも何人か人がいたが、俺はアクアを連れて強引にここを出ていった。そして街の門からも出て、そこからアクアを背負って少し早く皆でこの街から離れた。そうして旅をはじめたらなんとあの街から追っ手がかかった、俺たちは追ってくる馬に乗った人間を避けて山道を進んで歩いていった。
「キナの木がいっぱいあったら良かったのに……」
「アクア、ないものは仕方ない。レンも言ったろ、アクアは偉い。俺たちはできるだけのことはしたんだ」
「神殿の病院、流行り病の人でいっぱいだったの」
「ああ、いつかあの木が十分に育った時、その時に治療法として気づいて貰えると良いな」
フラワーリング国にいる間は流行り病がどこでも流行っていた、アクアは森を調べて十分にキナの木がある時には、医者に薬だと言ってみたがほとんどの医者は本気にしなかった。俺はどの街の森でも人を雇ってキナの木の種を植えさせた、こうしておけばキナの木は増えるし、どうしてこんなことをしたのか不思議に思う人間もいたはずだ。実際に俺がしていることを、そう不思議に思っている人間はいた。
「なんだ、坊主。キナの木の種なんて買ってどうする?」
「今は分からなくていんだ、そのうちに分かるさ」
「それに人を雇ってまでして、その種を森にまいてどうするんだ?」
「もっと時間が経って医者が気づけば、きっとあんたの孫あたりで分かることさ」
「一体何が分かるって言うんだ?」
「それは秘密だ、今はまだな」
そういう人間たちからキナの木が治療法だと、そう気がついて貰えれば良かった。俺の行為は一見すると無駄な行為にみえたが、数十年後にはキナの木が流行り病の薬になると気がついて貰えた。それからはフラワーリング国ではキナの木を大切にするようになり、そして病気を運ぶ蚊は憎まれて退治されるようになった。そうなればキナの木を植えた聖人などと、俺のことを歌う吟遊詩人までいるようになったそうだ。
「ふうっ、やっとフラワーリング国を抜けたか」
「シエルいっぱい頑張ったの、偉い、偉い」
「チビだって頑張ってたよな、偉いぞ、チビ」
「ええ、シエル様もアクア様もレン様も頑張っておられました」
「次はどんな国だっけ?」
「えっと、聞いた話だとチヤナ国なの」
「なんでも文化が変わってんだとさ」
「確か、ドラゴンの姿が違うそうです」
「え? 俺たちドラゴン族がか?」
「シエルとレン、違うドラゴンに変身できるの?」
「いや、できねぇよ!!」
「なんでもチヤナ国では、ドラゴンは蛇のように長い体を持つそうです」
俺とレンはまたため息をついた、トカゲと呼ばれたと思ったら今度は蛇だ。一体人間はドラゴンを何だと思っているのか、ドラゴンは聖獣や魔物の頂点に君臨する最強の生き物だ。世界の大きな力とも繋がっていて長い時を生きるものだ。この世で一番に恐ろしいのはドラゴンだった、俺はこの間の世界の大きな力で話をした母さんを思い出した。
あの時はレンを探す為に急いでいたから、あかり姉さんのことなど何も伝えられなかった。あれから世界の大きな力と接続する練習をしているのだが、母さんとは会えなかったからちょっと遠くに離れ過ぎていた。もしくは俺の世界の大きな力の使い方が下手なのだ、こっちの可能性の方が高かった。あれから世界の大きな力に接続しようと、毎朝試しているが俺は本当にできそこないのドラゴンで上手くいかなかった。
「なぁ、レン。世界の大きな力への接続ってどうするんだ?」
「はぁ!? そんなもんちょっと繋げて力を貰うだけだ」
「そのちょっと繋げての部分を詳しく!!」
「そんな簡単で基本的なこと言われてもな、そうだな大きな力に体を突っ込むようなもんじゃねぇか」
「なるほど、そうか試してみよう」
「でも世界の大きな力へと接続はドラゴンによって様々だ、中には夜にそれを必ずする奴もいる」
ドラゴンの本来の食事である世界の大きな力への接続方法、それはドラゴンによって違うそうだった。俺の母さんは大体朝にそうしていたが、レンの養い親のドラゴンは必ず夜にしていたそうだ。世界の大きな力はいつだってあるのだから、朝でも夜でも好きな時に繋がることができるのだった。それを聞いたアクアはこんびにみたいと言っていた、こんびにとはそんなに大きな力なのだろうかと俺は思った。
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