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3-17離れ離れになりたくない
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「ここはもう危険だ!! 早くアクアたちに伝えて逃げよう!!」
俺はそう状況を確認するとすぐにアクアたちに合流した、バールゲルト国側の街の外壁に敵が押し寄せてきていた。まだ中には入られていないが、早くこの街を出ないと戦争に本格的に巻き込まれる恐れがあった。俺が空から舞い降りると真っ先にアクアに抱き着かれた、そんな可愛いアクアを抱きしめてから俺は今の状況を皆に伝えた。
「レン様にドラゴンになって貰い、乗せてもらって逃げるのはどうでしょう」
「『隠蔽』の魔法じゃ、ドラゴンの強い気配を消せない、それは最後の手段だな」
「……シエル」
「俺様は嫌だぜ、人間同士の争いごとはどうでもいいけど、ドラゴンが敵に背中を見せて逃げるなんて恥だ!!」
「それなら街の外壁は『浮遊』と『隠蔽』の魔法を使って乗り越えて……」
「そうだ、リッシュ。そこからは『飛翔』と『隠蔽』の魔法で逃げるのが一番良い」
「『飛翔』の魔法はシエルが一番上手く使えるの、レンも一応使えるの。でもアクアは使ったことがないの」
「リッシュは使えなかったよな、それじゃ俺様とシエルとで『飛翔』と『隠蔽』の魔法を使うか」
「それではそれぞれの体重を考えてシエル様が僕を、レン様がアクア様を『飛翔』で連れて飛んで頂きましょう」
「この戦場から早く逃れるにはそれしかないな。レン、アクアのことを頼んだぞ」
「……シエルと離れるの嫌なの、……でもそれしか今は方法がないの」
「おお、チビ偉いじゃねぇか。一応ってな、俺様もシエルと同じくらい速く飛べるさ。チビを絶対にシエルのところに帰してやるぜ」
そうして皆の意見をまとめた俺たちはまずは街の外壁を、『浮遊』と『隠蔽』の魔法を使って乗り越えた。それから近くの森にいってそれぞれが黒いローブを被り、念の為に顔も隠して空へと飛び立つことになった。離れる前にアクアは俺に一度だけぎゅっと抱き着いてきた、俺もアクアの無事を祈ってしっかりと抱きしめた、そうしてアクアを親友のレンに託した。
「行くぞ、リッシュ。『隠蔽』と『飛翔』!!」
「シエル様、アクア様たちに合わせて飛んでください」
「アクアとレンも行くの」
「おうチビ、心配すんな俺様が守ってやるぜ。『隠蔽』と『飛翔』!!」
こうして俺たちは戦場近くの森から空へと舞い上がった、目的地はとりあえず戦場から離れる必要があったので、近くにある第三国のフラワーリング国の街にしていた。俺が先頭になってアクアたちから離れ過ぎないように飛んでいった、飛んでいる間に横を向けば戦場を見ることになった。焼け焦げている荒野や傷だらけの岩と大地、それに沢山のボロボロになった遺体が地を埋め尽くし、それを踏み越えて敵国の人間がさっきまでいた街を襲おうとしていた。
「アクア!! レンにしっかり捕まって、戦場の方は見るな!!」
「うん!! 分かったの!!」
アクアは必死に戦場から目をそらしていた、レンもアクアのことをしっかり抱きしめて、そちらを見せないようにしていた。レンの『飛翔』は良く魔法制御ができていた。俺は決してアクアを置いていかないように飛び、絶対にアクアとレンの二人を置いて飛び過ぎたりしなかった。そうして昼になるまで飛び続けたら国境を越えていたその時だった、崖の隙間を飛んでいた俺たちはワイバーンの群れに襲われた。
「レン、アクアを頼んだ!! アクア、絶対にレンから離れるな!!」
「シエル様、奴らがきます。『風斬撃』!!」
俺とリッシュに近づいてくるワイバーンは、リッシュの『風斬撃』で切り裂かれて空から落ちることになった。とはいえどうしようもないことに数が多過ぎた、俺はアクアたちを見守りながら飛ばなければならなかった。だからワイバーンへの攻撃はリッシュに任せて、俺はアクアたちを見失わないように努めた。
「『聖なる守り』!! シエル!? レン、シエルたちから離れないで!!」
「そうしてるぜ!! でもちょっとこのワイバーンの数は厄介だ!!」
俺たちは全部で五十を超える数のワイバーンに一斉に襲われたのだ、アクアは攻撃の初級魔法しか使えなかったから、防御だけに専念して『聖なる守り』の魔法でレンと自分を守った。とはいえそれでは一時的な防御しかできず、敵の数が減っていかなかった。俺とリッシュは賭けに出ることにした、レンになるべく俺たちの傍に来てもらってからそうした。
「皆様、風の反動にお気をつけください!! 『抱かれよ煉獄の暴風撃』!!」
リッシュが風の上級魔法を使ったのだ、広範囲の風の上級魔法はやすやすと、ワイバーンたちの体を切り刻んだ。俺とレンは反動の風がくるから『飛翔』の魔法制御に精一杯に力を使っていた。リッシュの生み出した暴風の嵐はこっちにまで影響を及ぼした、そうして俺は見たレンの魔法制御を突破して風がアクアたちを飲み込むのを見た、レンとアクアはそうしてワイバーンたちと共に下へと落ちていった。
「アクア――!! レン――!!」
俺は『飛翔』の魔法を制御して、しばらく風の嵐がおさまるまで待った、そしてアクアたちの後を追って下へと落ちるように飛んだ。大丈夫、大丈夫だ。レンはきっとアクアを守ってくれる、そうレンはとても強いドラゴンなんだ。俺は自分に言い聞かせるようにそう思い続けた、リッシュも俺に落ち着いて飛ぶようにと注意してくれた。崖の下は川になっていた、そうして俺たちより先に落ちたはずの、アクアとレンの姿はどこにも見えなかった。
この崖の隙間はワイバーンたちの巣だったのだ、そんなやつらは無視して俺たちはアクアとレンを必死に探した。ここは川から外れた水場があるからか蚊が多くて、空を飛んでいる俺たちにも群がってきた。しかしどこにもアクアとレンは見当たらなかった、俺はアクアやレンが死ぬはずが無いと思った。アクアは防御の上級魔法まで使える賢い俺の大切な家族だ、それにドラゴンであるレンは強くて優しい俺の親友だ。
「シエル様、大丈夫です。レン様はドラゴンです、決してこの程度で死ぬわけがない。だから、アクア様もきっと無事です」
「ああ、リッシュ。そうだ、そのとおりだ。川に流されたのかもしれない、下流を探してみよう」
だからもし二人が川に流されたなら、下流を探すべきだと思って俺たちは『飛翔』の魔法で低く飛んでいった。ワイバーンたちの巣があっても、低く飛んでいる間は襲われなかった。そうしてとうとう海まで出てしまった、だがそこまで探してもアクアとレンの姿は見つからなかった。俺はアクアのことを想うと心臓が痛くなった、親友であるレンを信用していたが、できればアクアは俺自身で守ってやりたかった。
「シエル様、もう日が暮れます。夜の空を飛ぶのは危険です、どこかに降りて休息をとってください」
「リッシュ、アクアやレンは無事かな? きっと無事だよな?」
「もちろん無事ですとも、レン様は誇り高きドラゴンですよ!! きっとアクア様をお守りしています」
「ああ、そうだな。ちょっとだけ休もう、さすがに俺も疲れた」
そうして俺たちは海の近くの砂浜へと降りた、そこに簡単に天幕をリッシュが作ってくれた。その中で俺は眠ろうとしたが、アクアたちのことを思うと睡魔がやってこなかった。明日もアクアやレンを探して俺は飛ばなければならなかった、なのにどうしても眠ることができなかった。そんな俺を見かねてリッシュが俺に魔法を使った、『眠り』の魔法を使ってどうにか眠らせてくれた。
それでやっと俺は眠りに落ちることができた、夢の中ではアクアやレンの姿を見た。俺はその二人を一生懸命に追いかけたが、二人に追いつくとそれは俺の手の中で砂になった。そうして砂がどんどん増えてきて、俺の足元まで埋まってしまった。もう俺はここから動けない、大切なアクアを助けることもできないし、親友のレンを探すこともできなかった。
そんな恐ろしい夢を見て、俺は翌日飛び起きた。もうリッシュは起きていて、ちょうど朝日が顔を出すところだった。俺はその太陽の光を見て母さんを思い出した、母さんはいつも朝起きたら世界の大きな力と接続して、その日を生きていくための力を貰っていた。それならばレンもそうではないだろうか、俺は苦手だったが世界の大きな力と繋がってみた。
”レン、どこにいる? アクアも無事か?”
俺はそう状況を確認するとすぐにアクアたちに合流した、バールゲルト国側の街の外壁に敵が押し寄せてきていた。まだ中には入られていないが、早くこの街を出ないと戦争に本格的に巻き込まれる恐れがあった。俺が空から舞い降りると真っ先にアクアに抱き着かれた、そんな可愛いアクアを抱きしめてから俺は今の状況を皆に伝えた。
「レン様にドラゴンになって貰い、乗せてもらって逃げるのはどうでしょう」
「『隠蔽』の魔法じゃ、ドラゴンの強い気配を消せない、それは最後の手段だな」
「……シエル」
「俺様は嫌だぜ、人間同士の争いごとはどうでもいいけど、ドラゴンが敵に背中を見せて逃げるなんて恥だ!!」
「それなら街の外壁は『浮遊』と『隠蔽』の魔法を使って乗り越えて……」
「そうだ、リッシュ。そこからは『飛翔』と『隠蔽』の魔法で逃げるのが一番良い」
「『飛翔』の魔法はシエルが一番上手く使えるの、レンも一応使えるの。でもアクアは使ったことがないの」
「リッシュは使えなかったよな、それじゃ俺様とシエルとで『飛翔』と『隠蔽』の魔法を使うか」
「それではそれぞれの体重を考えてシエル様が僕を、レン様がアクア様を『飛翔』で連れて飛んで頂きましょう」
「この戦場から早く逃れるにはそれしかないな。レン、アクアのことを頼んだぞ」
「……シエルと離れるの嫌なの、……でもそれしか今は方法がないの」
「おお、チビ偉いじゃねぇか。一応ってな、俺様もシエルと同じくらい速く飛べるさ。チビを絶対にシエルのところに帰してやるぜ」
そうして皆の意見をまとめた俺たちはまずは街の外壁を、『浮遊』と『隠蔽』の魔法を使って乗り越えた。それから近くの森にいってそれぞれが黒いローブを被り、念の為に顔も隠して空へと飛び立つことになった。離れる前にアクアは俺に一度だけぎゅっと抱き着いてきた、俺もアクアの無事を祈ってしっかりと抱きしめた、そうしてアクアを親友のレンに託した。
「行くぞ、リッシュ。『隠蔽』と『飛翔』!!」
「シエル様、アクア様たちに合わせて飛んでください」
「アクアとレンも行くの」
「おうチビ、心配すんな俺様が守ってやるぜ。『隠蔽』と『飛翔』!!」
こうして俺たちは戦場近くの森から空へと舞い上がった、目的地はとりあえず戦場から離れる必要があったので、近くにある第三国のフラワーリング国の街にしていた。俺が先頭になってアクアたちから離れ過ぎないように飛んでいった、飛んでいる間に横を向けば戦場を見ることになった。焼け焦げている荒野や傷だらけの岩と大地、それに沢山のボロボロになった遺体が地を埋め尽くし、それを踏み越えて敵国の人間がさっきまでいた街を襲おうとしていた。
「アクア!! レンにしっかり捕まって、戦場の方は見るな!!」
「うん!! 分かったの!!」
アクアは必死に戦場から目をそらしていた、レンもアクアのことをしっかり抱きしめて、そちらを見せないようにしていた。レンの『飛翔』は良く魔法制御ができていた。俺は決してアクアを置いていかないように飛び、絶対にアクアとレンの二人を置いて飛び過ぎたりしなかった。そうして昼になるまで飛び続けたら国境を越えていたその時だった、崖の隙間を飛んでいた俺たちはワイバーンの群れに襲われた。
「レン、アクアを頼んだ!! アクア、絶対にレンから離れるな!!」
「シエル様、奴らがきます。『風斬撃』!!」
俺とリッシュに近づいてくるワイバーンは、リッシュの『風斬撃』で切り裂かれて空から落ちることになった。とはいえどうしようもないことに数が多過ぎた、俺はアクアたちを見守りながら飛ばなければならなかった。だからワイバーンへの攻撃はリッシュに任せて、俺はアクアたちを見失わないように努めた。
「『聖なる守り』!! シエル!? レン、シエルたちから離れないで!!」
「そうしてるぜ!! でもちょっとこのワイバーンの数は厄介だ!!」
俺たちは全部で五十を超える数のワイバーンに一斉に襲われたのだ、アクアは攻撃の初級魔法しか使えなかったから、防御だけに専念して『聖なる守り』の魔法でレンと自分を守った。とはいえそれでは一時的な防御しかできず、敵の数が減っていかなかった。俺とリッシュは賭けに出ることにした、レンになるべく俺たちの傍に来てもらってからそうした。
「皆様、風の反動にお気をつけください!! 『抱かれよ煉獄の暴風撃』!!」
リッシュが風の上級魔法を使ったのだ、広範囲の風の上級魔法はやすやすと、ワイバーンたちの体を切り刻んだ。俺とレンは反動の風がくるから『飛翔』の魔法制御に精一杯に力を使っていた。リッシュの生み出した暴風の嵐はこっちにまで影響を及ぼした、そうして俺は見たレンの魔法制御を突破して風がアクアたちを飲み込むのを見た、レンとアクアはそうしてワイバーンたちと共に下へと落ちていった。
「アクア――!! レン――!!」
俺は『飛翔』の魔法を制御して、しばらく風の嵐がおさまるまで待った、そしてアクアたちの後を追って下へと落ちるように飛んだ。大丈夫、大丈夫だ。レンはきっとアクアを守ってくれる、そうレンはとても強いドラゴンなんだ。俺は自分に言い聞かせるようにそう思い続けた、リッシュも俺に落ち着いて飛ぶようにと注意してくれた。崖の下は川になっていた、そうして俺たちより先に落ちたはずの、アクアとレンの姿はどこにも見えなかった。
この崖の隙間はワイバーンたちの巣だったのだ、そんなやつらは無視して俺たちはアクアとレンを必死に探した。ここは川から外れた水場があるからか蚊が多くて、空を飛んでいる俺たちにも群がってきた。しかしどこにもアクアとレンは見当たらなかった、俺はアクアやレンが死ぬはずが無いと思った。アクアは防御の上級魔法まで使える賢い俺の大切な家族だ、それにドラゴンであるレンは強くて優しい俺の親友だ。
「シエル様、大丈夫です。レン様はドラゴンです、決してこの程度で死ぬわけがない。だから、アクア様もきっと無事です」
「ああ、リッシュ。そうだ、そのとおりだ。川に流されたのかもしれない、下流を探してみよう」
だからもし二人が川に流されたなら、下流を探すべきだと思って俺たちは『飛翔』の魔法で低く飛んでいった。ワイバーンたちの巣があっても、低く飛んでいる間は襲われなかった。そうしてとうとう海まで出てしまった、だがそこまで探してもアクアとレンの姿は見つからなかった。俺はアクアのことを想うと心臓が痛くなった、親友であるレンを信用していたが、できればアクアは俺自身で守ってやりたかった。
「シエル様、もう日が暮れます。夜の空を飛ぶのは危険です、どこかに降りて休息をとってください」
「リッシュ、アクアやレンは無事かな? きっと無事だよな?」
「もちろん無事ですとも、レン様は誇り高きドラゴンですよ!! きっとアクア様をお守りしています」
「ああ、そうだな。ちょっとだけ休もう、さすがに俺も疲れた」
そうして俺たちは海の近くの砂浜へと降りた、そこに簡単に天幕をリッシュが作ってくれた。その中で俺は眠ろうとしたが、アクアたちのことを思うと睡魔がやってこなかった。明日もアクアやレンを探して俺は飛ばなければならなかった、なのにどうしても眠ることができなかった。そんな俺を見かねてリッシュが俺に魔法を使った、『眠り』の魔法を使ってどうにか眠らせてくれた。
それでやっと俺は眠りに落ちることができた、夢の中ではアクアやレンの姿を見た。俺はその二人を一生懸命に追いかけたが、二人に追いつくとそれは俺の手の中で砂になった。そうして砂がどんどん増えてきて、俺の足元まで埋まってしまった。もう俺はここから動けない、大切なアクアを助けることもできないし、親友のレンを探すこともできなかった。
そんな恐ろしい夢を見て、俺は翌日飛び起きた。もうリッシュは起きていて、ちょうど朝日が顔を出すところだった。俺はその太陽の光を見て母さんを思い出した、母さんはいつも朝起きたら世界の大きな力と接続して、その日を生きていくための力を貰っていた。それならばレンもそうではないだろうか、俺は苦手だったが世界の大きな力と繋がってみた。
”レン、どこにいる? アクアも無事か?”
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