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3-15その傭兵団は女しかいない

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「はん、口ほどにもない男どもだねぇ」

 レンが倒してしまった傭兵たちを見て、そう言い放った美しい女性たちがいた。彼女たちは皆が鍛えられた体を持ち、そしてそれぞれ武器を持っていた。それから俺たちの泊まっている宿屋に入ってきた、五十人を超えていてここの宿屋だけでは泊まれなかった。彼女たちはそれぞれ準備よく何人かに別れ、そしてこの宿屋にも十人ほど泊まることになった。そして彼女たちはレンに向かって愛想良く話しかけてきた、なかでも癖のついた赤い髪に同じ色の瞳を持つ女性がこう言った。

「あたしはアクシス、どうだい坊や。今夜あたしのベッドにこないかい?」
「はぁ!?」

「簡単な話だろ、子種をくれってことさ」
「ええ!?」

「あたしじゃ不満かい、それじゃ他の子でも大歓迎さ」
「いや、その……あっ、シエル!! アクア!!」

 レンは俺とアクアを見つけると助けを求めてきた、レンの顔は真っ赤になっていて、少しずつ今やってきた女性たちの部屋に連れ込まれようとしていた。俺は仕方がなくアクアをつれて、レンを助けようとアクシスという女性の前に出た。アクシスは俺には興味を持たなかったようで、はぁ~とため息までつかれてしまった。

「すみません、アクシス。レンには心に決めた女性がいるんです、ですから勘弁してやってください」
「そうなの、それにレンはシエルより弱いの」
「シエル、助かるぜ!! チビはちょっと俺様の扱いが悪くねぇか?」

 レンは俺たちが傍にくると素早く俺を盾にした、女性に対して少し恥ずかしがり屋なレン、彼ではアクシスの相手は無理そうだった。アクシスは最初は俺には興味を持ってなかったが、レンよりも強いと聞いて笑い出した。アクシスと一緒に来た女性たちまで笑い出した、確かに俺は大人だったが体が小さくて、レンに比べるとただの十三歳くらいの子どもに見えた。アクシスは俺がレンより強いという言葉に納得できず、こう俺に言って勝負を挑んできた。

「そうかい、それじゃあシエルとやらあたしと勝負しな」
「勝負してもいいけど、俺が欲しいのは俺たち全員の安眠だからな」
「夜はぐっすりふかふかベッドで寝たいの」

「こっちに来な、冒険者ギルドの鍛練場を借りるよ」
「ああ、分かった。いいか、俺たちが欲しいのは安眠だけだからな」
「そうなの、シエルの言う通りなの」

 そうして俺たちは冒険者ギルドの鍛練場に移動した、俺は木剣を持ってアクシスに渡そうとしたが、アクシスはそれを笑って断った。どうやら真剣勝負をするつもりのようだった、アクアをレンに預けていたら、冒険者ギルドで情報を集めていたのだろう、リッシュも慌てて鍛練場へやってきた。そうして俺とアクシスとの勝負が始まった、俺はいつものショートソードを使ってアクシスが動くのを待った。

「それじゃあ、行くよ!!」
「いつでも、どうぞ」

 アクシスが使っていたのは斧だった、鍛えられている筋肉が滑らかに動き、俺に向かって正面から斧を振り下した。俺も正面から力でもってアクシスと戦うことにした、多分だがこういう強さに重きをおく女性は、それが一番お互いに理解し合えると思ったからだ。アクシスの斧を俺のショートソードは受け止めた、確かに重い一撃だったが俺からすれば、まだレンの攻撃のほうが油断できなかった。

「それじゃ、こっちから!!」
「面白いじゃないか、来な坊や!!」

 俺はショートソードでアクシスの左わき腹を狙った、俺の力をかなり上乗せした重い一撃だった。アクシスはそれをどうにか斧で受け止めた、俺はそれが防がれると次は右肩を狙ってみた。それもアクシスはなんとか防いでみせた、そうしてわざを隙を見せて俺は誘った。その隙にアクシスが斧をまた振り下した、俺はその攻撃を避けてその場にわざとショートソードを捨て、アクシスに向かって素早く近づいてその鍛えられた腹を力一杯に殴った。

「がはっ!?」
「どうする? まだやる? ……無理そうだな、アクア来てくれ!!」

 俺の殴った一撃はアクシスの肋骨まで折ってしまっていた、もしかしたら内臓も傷ついているかもしれなかった。だから俺はアクアに素早く来てもらった、アクアはいつものように回復の中級魔法を使った。『大治癒グレイトヒール』の魔法でアクシスの傷は綺麗に癒えた、そうして俺とアクシスとの決闘は終わった。アクシスは負けたのに上機嫌だった、負けたことさえ誇らしげにしていた。

「あっはははっ、シエル。なんて強い男だい!!」
「どうも、ありがと」

「今夜あたしのベッドに来てもいいよ」
「申し訳ないが、俺はアクアと一緒に眠るんだ」

「チッ、つまらないねぇ、あんたなら良い子種をくれそうなのに」
「それに俺たちが欲しかったのは、俺たち全員の安眠だ」

 それから俺たちは宿屋に帰って何となく、アクシスたちと一緒に酒を飲もうということになった。彼女たちは豪快に酒を飲みよく食べた、でも礼儀は守っているようで他の傭兵のように店を困らせたりはしなかった。アクシスたちは俺とアクアに興味を持っていた、言うまでもなく俺はアクシスに勝ったからだが、アクアは女性で回復の中級魔法を使えたからだった。

「綺麗な顔をしてるのに、やるじゃないか。シエル」
「俺も旅をしているからな、そこそこは強くないとな」
「シエルが仲間では一番強いの」

「それに回復魔法の使い手は貴重だ、うちの傭兵団に入らないかい? アクア?」
「アクアは俺たちと旅をするから駄目だ」
「そうなの、アクアはシエルと一緒にいるの」

「そうかい、そういやベッドも一緒だったね。あっはははっ、野暮なことを言っちまったよ」
「何だか誤解されてる気がする」
「いいの、シエルと一緒に寝てるのは確かなの」

 レンやリッシュも俺たちの仲間だったので、ベッドに誘われることはなくなった。リッシュは凄く気をつけて酒を飲んでいた、この前酔っぱらったばかりだったのでその飲み方は慎重だった。一方でレンは貞操の心配がなくなったので酒を美味そうに飲んでいた、そして彼女たち傭兵団と結構仲良くなっていた。

「あの女の人、左の乳房がないの? 怪我したの?」
「ああ、あれは違うんだよ。弓矢を使うのに邪魔だったから切除したのさ」

 アクアはふと左の乳房がないアクシスの仲間に気づいて、そうして質問したが答えは俺も驚くようなものだった。弓矢を使うリッシュもこの返事には驚いていた、リッシュは男だから邪魔な乳房は無いが、リッシュが女性だったら同じことをしてそうだと俺は思った。そうして夜中になり酒場も閉められて、それぞれの部屋に帰ることになった。

「なぁ、アクア。俺もよく考えたんだが」
「シエル、なぁに? 何を考えたの?」

「アクアも背が伸びたし、そろそろ俺と一緒に寝るのは止めないか?」
「どうしてそんな酷いこと言うの、アクアはシエルと離れて眠るのは嫌!!」

 俺はアクアにちょっと気になって聞いてみた、もうアクアも俺と同じくらい大きくなったから、男女で一緒に寝ていてもいいのかと聞いてみたのだ。軽い気持ちで聞いてみた質問だったが、アクアからはそれに対して激しい反発があった。以前に大きい盗賊団退治だったから、アクアを宿屋に置いていった時のように俺の言うことを嫌がった。いやあの時とはまた違ってアクアは目に涙を浮かべて、そう頬を赤くしてまるで俺に告白するみたいにこう言った。

「アクアがシエルといられる時間は短いの、だからアクアは大好きなシエルとずうっと一緒にいたいの!!」
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