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ほんわか…から勝負の開幕
しおりを挟む「うーん……聞いて貰ってばかりいるのもアレだからウィルの愚痴も聞くわよ?」
そういえば、いつも私ばかりでウィルの愚痴って聞いた事ないわね……
「そうですね……」
しばらく悩んでからウィルは
「特に無いので、お嬢様の愚痴を聞きたいです」
と笑顔で答えた。多分コレ、あるけど教えてはくれないって意味だよね?まぁ、話したく無いならそれで良いんだけね…
「そっかぁ…ケーキ食べながらでも良いかしら?」
そう言ったらウィルは直ぐにケーキの用意をしてくれた。今回は紅茶を飲みます。
「ケーキって確か1日寝かせて置くと、美味しくなるのよね?楽しみだわ」
確か前にウィルが言ってた気がする。ワクワクしながらケーキにフォークをさし、口に運んだ。
「……‼︎昨日より凄く美味しいわ…これからは我慢して、1日待ってから食べようかしら……」
そんな風に思うぐらい美味しい…
砂糖漬けの薔薇もスポンジも生クリームも果物も全部美味しくなってる。別に昨日のケーキが不味かった訳じゃ無い。寧ろ美味しかったのにあそこから更に美味しくなるのね……
そんな風に感激しながら食べていたら、前に座っていたウィルが嬉しそうな顔をして私を見ていた。
「…ウィルも食べたいの?」
「いえ、違いますよ。昨日よりも美味しいですか?」
「えぇ、凄く美味しいわ。昨日のも美味しかったのに、更に美味しくなるのね……」
そう言ったら、ウィルがさっきよりもニコニコしている。
もしかして……
「このケーキ、ウィルが作ったの?」
「はい」
そっかぁ、だから美味しいのね。って事は昨日のケーキもウィルが作ったって事かしら?
「昨日のケーキもウィルが?」
「いいえ、昨日のケーキをお嬢様が好きな味にアレンジして作りなおしました」
ウィルがドヤ顔している。ウィルって私の好きな味も知ってるのね…流石だわ。
あれ?それなら……
「ウィルが作ったケーキは1日我慢しなくても、良いのね!」
良かった良かった。ケーキが目の前にあるのに、我慢なんて出来ないもんね。
そんな風に思ってたらウィルが急に笑い出した。
「ちょ、ちょっとウィル?今の笑う所なかったでしょ、何で笑ってるのよ!」
「いや、だって…ふふ。その理論なら普通僕が作ったケーキも、1日置いて置くべきなのでは?」
あっ、確かに……1日置けばこの美味しいケーキがもっと美味しく…
「無理よ。ウィルのケーキを前にして1日我慢なんて……私死んじゃうわ」
無理。絶対無理よ。そんな事出来るはずないわ。
「ふふふ。知ってますよ?それにお嬢様に出す時は、1番美味しく食べれる様に計算して出してるんで、我慢する必要なんてないですよ」
ウィルったら楽しそうね……でも、それなら良かったわ。我慢しなくて良いのね!
「お嬢様、僕の作ったケーキ好き?」
「もちろん!それにケーキ以外も大好きよ」
クッキー、ドーナツ、プリン、昨日食べた抹茶パフェ、その他の物もウィルが作った物より美味しいものは食べた事がない。
「1番?」
「ええ、1番好きよ。ウィルより美味しいお菓子を作れる人は、この世に居ないって断言できるわ」
そう言い切ったら、ウィルが凄い嬉しそうな顔をして笑っている。
「えへへ、僕が1番かぁ。嬉しいです、ティアお嬢様」
待って…めっちゃ可愛いんだけど…ウィル紅茶で酔ったの?
昔の話し方に戻ってるわよ?私としては、その方が嬉しいけどね
ウィルの満遍の笑みを前に、黙々とケーキを食べているとコンコンと扉を叩く音が聞こえた。
「お嬢様、失礼します。アンナです。扉開けても大丈夫でしょうか?」
「えぇ、大丈夫よ」
そう答え、扉が開くまでの経った数秒でウィルはいつもの顔に戻り、席から立っていた。
「お嬢様、そろそろ殿下に会われる為の準備をしましょう」
「あら、もうそんな時間だったのね?」
慌てて時計を見たらもう10時30分を過ぎていた。お母様から逃げて自室に帰って来たのが7時半過ぎでそれから日記確認してだったから…って事は私ったら2時間半以上ウィルと話してたのね
「では、お嬢様お皿下げさせて頂きます。」
ウィルがテキパキと片付けている。
はぁ、殿下さえ来なければもっと話せたのに…いや昼食の準備があるからどっちにしろ無理か
「では、失礼します」
そう言いながらウィルは、来た時と同じ様にキャスター付きの台車をゴロゴロさせながら出て行った。
何かアンナに言ってたけど、何かあったのかしら?
「じゃあ、早速準備のお手伝いお願いするわ。よろしくね、アンナ」
「かしこまりました、お嬢様」
アンナにお手伝いをお願いし準備を始めた。
「はぁ、一方的に手紙寄越したくせに30分立っても来ないなんて……何がしたい訳?」
「お嬢様……気持ちは分かりますし、私も同意見ですが堪えて下さい」
隣に居るウィルに注意されてしまった…
でも、気持ちは分かってくれるのね、ありがとう。
あのクソ殿下の為にこっちは、約束の2時間半前から準備して30分前から私は応接間、仕事で忙しいお父様が玄関で待機しているのよ!
何考えてるの、あのクソ殿下…
そういえば殿下って何であんなに、アンナの事怖がっているのかしら?
そのせいで殿下に会う時は今までお父様の侍従のオンルが、一緒だったのよね…
でも今回からは、オンルではなくウィルになったみたい。
ウィルには悪いけど、ただでさえお父様の仕事関係で忙しいのに、私の面倒まで見て貰ってオンルには申し訳ないと思っていたから丁度良かったわ。
「ねぇ、ウィル。どうして殿下はアンナの事を怖がってるのか知ってる?」
「……さぁ、何ででしょうね?」
やっぱりウィルも知らないかぁ。
アンナはこの国では珍しい黒髪の持ち主だからかなって思ってたんだけど、殿下の隣に居る護衛騎士のライドゥ様も黒髪なのよねぇ…
そういえばライドゥ様も攻略対象なのよね、確か…攻略対象なのは覚えて居るんだけど、名前と顔以外なぁんにも覚えてない…私はパンコツ記憶力の持ち主ですから、しょうがないですけどね
そんな事をウダウダ考えていたら外が急に騒がしくなった。
「やっと来たわね…」
「その様ですね、お嬢様」
はぁ、やっと来たかぁ……
でもここからが勝負なのよね。
やっぱり来ないでくれた方が良かった様な気が…
バン‼︎
「よう、来てやったぞ!きみわる女」
来やがったなクソ殿下……きみわる女ってまた変なあだ名ですこと……
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