上 下
8 / 11

ほんわか…から勝負の開幕

しおりを挟む

「うーん……聞いて貰ってばかりいるのもアレだからウィルの愚痴も聞くわよ?」

そういえば、いつも私ばかりでウィルの愚痴って聞いた事ないわね……

「そうですね……」

しばらく悩んでからウィルは

「特に無いので、お嬢様の愚痴を聞きたいです」

と笑顔で答えた。多分コレ、あるけど教えてはくれないって意味だよね?まぁ、話したく無いならそれで良いんだけね…

「そっかぁ…ケーキ食べながらでも良いかしら?」

そう言ったらウィルは直ぐにケーキの用意をしてくれた。今回は紅茶を飲みます。

「ケーキって確か1日寝かせて置くと、美味しくなるのよね?楽しみだわ」

確か前にウィルが言ってた気がする。ワクワクしながらケーキにフォークをさし、口に運んだ。

「……‼︎昨日より凄く美味しいわ…これからは我慢して、1日待ってから食べようかしら……」

そんな風に思うぐらい美味しい…
砂糖漬けの薔薇もスポンジも生クリームも果物も全部美味しくなってる。別に昨日のケーキが不味かった訳じゃ無い。寧ろ美味しかったのにあそこから更に美味しくなるのね……

そんな風に感激しながら食べていたら、前に座っていたウィルが嬉しそうな顔をして私を見ていた。

「…ウィルも食べたいの?」

「いえ、違いますよ。昨日よりも美味しいですか?」

「えぇ、凄く美味しいわ。昨日のも美味しかったのに、更に美味しくなるのね……」

そう言ったら、ウィルがさっきよりもニコニコしている。
もしかして……

「このケーキ、ウィルが作ったの?」

「はい」

そっかぁ、だから美味しいのね。って事は昨日のケーキもウィルが作ったって事かしら?

「昨日のケーキもウィルが?」

「いいえ、昨日のケーキをお嬢様が好きな味にアレンジして作りなおしました」

ウィルがドヤ顔している。ウィルって私の好きな味も知ってるのね…流石だわ。
あれ?それなら……

「ウィルが作ったケーキは1日我慢しなくても、良いのね!」

良かった良かった。ケーキが目の前にあるのに、我慢なんて出来ないもんね。
そんな風に思ってたらウィルが急に笑い出した。

「ちょ、ちょっとウィル?今の笑う所なかったでしょ、何で笑ってるのよ!」

「いや、だって…ふふ。その理論なら普通僕が作ったケーキも、1日置いて置くべきなのでは?」

あっ、確かに……1日置けばこの美味しいケーキがもっと美味しく…

「無理よ。ウィルのケーキを前にして1日我慢なんて……私死んじゃうわ」

無理。絶対無理よ。そんな事出来るはずないわ。

「ふふふ。知ってますよ?それにお嬢様に出す時は、1番美味しく食べれる様に計算して出してるんで、我慢する必要なんてないですよ」

ウィルったら楽しそうね……でも、それなら良かったわ。我慢しなくて良いのね!

「お嬢様、僕の作ったケーキ好き?」

「もちろん!それにケーキ以外も大好きよ」

クッキー、ドーナツ、プリン、昨日食べた抹茶パフェ、その他の物もウィルが作った物より美味しいものは食べた事がない。

「1番?」

「ええ、1番好きよ。ウィルより美味しいお菓子を作れる人は、この世に居ないって断言できるわ」

そう言い切ったら、ウィルが凄い嬉しそうな顔をして笑っている。

「えへへ、僕が1番かぁ。嬉しいです、ティアお嬢様」

待って…めっちゃ可愛いんだけど…ウィル紅茶で酔ったの?
昔の話し方に戻ってるわよ?私としては、その方が嬉しいけどね


ウィルの満遍の笑みを前に、黙々とケーキを食べているとコンコンと扉を叩く音が聞こえた。

「お嬢様、失礼します。アンナです。扉開けても大丈夫でしょうか?」

「えぇ、大丈夫よ」

そう答え、扉が開くまでの経った数秒でウィルはいつもの顔に戻り、席から立っていた。

「お嬢様、そろそろ殿下に会われる為の準備をしましょう」

「あら、もうそんな時間だったのね?」

慌てて時計を見たらもう10時30分を過ぎていた。お母様から逃げて自室に帰って来たのが7時半過ぎでそれから日記確認してだったから…って事は私ったら2時間半以上ウィルと話してたのね

「では、お嬢様お皿下げさせて頂きます。」

ウィルがテキパキと片付けている。
はぁ、殿下さえ来なければもっと話せたのに…いや昼食の準備があるからどっちにしろ無理か

「では、失礼します」

そう言いながらウィルは、来た時と同じ様にキャスター付きの台車をゴロゴロさせながら出て行った。
何かアンナに言ってたけど、何かあったのかしら?

「じゃあ、早速準備のお手伝いお願いするわ。よろしくね、アンナ」

「かしこまりました、お嬢様」

アンナにお手伝いをお願いし準備を始めた。



「はぁ、一方的に手紙寄越したくせに30分立っても来ないなんて……何がしたい訳?」

「お嬢様……気持ちは分かりますし、私も同意見ですが堪えて下さい」

隣に居るウィルに注意されてしまった…
でも、気持ちは分かってくれるのね、ありがとう。
あのクソ殿下の為にこっちは、約束の2時間半前から準備して30分前から私は応接間、仕事で忙しいお父様が玄関で待機しているのよ!
何考えてるの、あのクソ殿下…

そういえば殿下って何であんなに、アンナの事怖がっているのかしら?
そのせいで殿下に会う時は今までお父様の侍従のオンルが、一緒だったのよね…
でも今回からは、オンルではなくウィルになったみたい。
ウィルには悪いけど、ただでさえお父様の仕事関係で忙しいのに、私の面倒まで見て貰ってオンルには申し訳ないと思っていたから丁度良かったわ。

「ねぇ、ウィル。どうして殿下はアンナの事を怖がってるのか知ってる?」

「……さぁ、何ででしょうね?」

やっぱりウィルも知らないかぁ。
アンナはこの国では珍しい黒髪の持ち主だからかなって思ってたんだけど、殿下の隣に居る護衛騎士のライドゥ様も黒髪なのよねぇ…
そういえばライドゥ様も攻略対象なのよね、確か…攻略対象なのは覚えて居るんだけど、名前と顔以外なぁんにも覚えてない…私はパンコツ記憶力の持ち主ですから、しょうがないですけどね

そんな事をウダウダ考えていたら外が急に騒がしくなった。

「やっと来たわね…」

「その様ですね、お嬢様」

はぁ、やっと来たかぁ……
でもここからが勝負なのよね。
やっぱり来ないでくれた方が良かった様な気が…

バン‼︎

「よう、来てやったぞ!きみわる女」

来やがったなクソ殿下……きみわる女ってまた変なあだ名ですこと……
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後

空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。 魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。 そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。 すると、キースの態度が豹変して……?

愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。

石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。 ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。 それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。 愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。

それぞれのその後

京佳
恋愛
婚約者の裏切りから始まるそれぞれのその後のお話し。 ざまぁ ゆるゆる設定

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

番を辞めますさようなら

京佳
恋愛
番である婚約者に冷遇され続けた私は彼の裏切りを目撃した。心が壊れた私は彼の番で居続ける事を放棄した。私ではなく別の人と幸せになって下さい。さようなら… 愛されなかった番 すれ違いエンド ざまぁ ゆるゆる設定

私の恋が消えた春

豆狸
恋愛
「愛しているのは、今も昔も君だけだ……」 ──え? 風が運んできた夫の声が耳朶を打ち、私は凍りつきました。 彼の前にいるのは私ではありません。 なろう様でも公開中です。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

処理中です...