120 / 198
混血系大公編:第一部
02
しおりを挟む
で、通信相手の皇帝陛下なんですけれども。
あんまり皇室のドロドロ劇とか興味ないから詳しくないけど、皇配であるお父さんが力の弱い公国の王子だったらしくて、継承権も皇帝の実子の中では最下位くらいだったらしい。だから皇子だけど随分自由に過ごしてたみたいで、貴族の中でも同じような立場の人たちとつるんで、傭兵団を立ち上げていたみたい。魔獣の被害が徐々に増え始めてた時だったから、腕っぷしに自信さえあれば仕事には困らなかったしね。
名付け親なせいかちょこちょこ気にかけて可愛がってくれてたんだけど、私が附術を使えるようになってからはヘッドハンティングも何回かされたんだよね。全部断ったけれども。気さくな人ばかりだったけど、お貴族サマの中に身を置くなんて気が引けるっつーの。
それから『ボナ・ノクテム』が起きて、混乱の中で後継者争いも起きて、最終的にはヴァレさんの兄である皇帝と、その後継者たちもほとんど亡くなってしまって。唯一生き残ったのがヴァレさんと、前皇帝の遺児である、未成年の皇子だった。そこで権力には興味のなかったヴァレさんだけど、皇子が成人するまでは自分が守ってやらなきゃと、中継ぎ皇帝として就任したんだよね。うん、男前である。
そんなわけで。
皇帝陛下としてこの国で一番エライお方ではあるんだけど、団こそ違えど元傭兵仲間なんて気安さがあるから、今も親しく交流を続けている。昔がどうであれ現皇帝陛下に敬語を取っ払って文句を言うなんてありえないんだけど、ヴァレさん自身がそれを望んでるみたいだしね。陛下のご意向に従いマスワー。
あ、ちなみにお察しの方もいらっしゃると思うけれど、以前からちょくちょく出ていたオトモダチ(権力者)はこの方です。帝国最高峰の権力者だから、最終的には誰も敵わねーのよねフハハハハ!!最強すぎて滅多に切れないカードではあるけどね。
「ま。とりあえず婚約おめでとう。3人だって?ビョルンとロルフと、イスハーク。やるじゃないか」
「何がよ。お宅のお兄様も、お妃様3人いらっしゃいましたよねぇ」
「兄は少ない方だったな。母は皇配が6人いたぞ。2人は女性だったが」
「すげーなヴァレ母…ある意味尊敬します」
「アッハッハ!お前にかかれば、母も片無しだ。だが皇帝や貴族の結婚は、そのまま権力に直結するからな。バランスを取るためにも、増やさざるを得ないのだよ。お前もどうだい、もう1人くらい?2人は民間、1人はサークルとなれば、貴族か皇族から1人くらい娶ってほしいものだが」
「いらねー、私たち、バランス取るために結婚するんじゃないんで。だいたい、私に何のバランスが必要なのさ」
「いるだろう、これから権力を持つのだから」
ヴァレさんの言葉に、ムスっと黙り込む。
そう、私たちが婚姻手続きができず、婚約状態に踏みとどまっている原因。ビョルンとロルフと結婚するって決めて、初夜的なアレを済ませて。傭兵団に出勤したその日の朝。皇室から傭兵団に使者が来てたのよねぇ…『ボヌ・ディエヌの英雄達に叙勲・褒賞授与式典の内示兼案内』ってやつが…。
あ、『ボヌ・ディエヌ』ってのは、『ボナ・ノクテム』の反対語ね。『対するもの(コントラ)』の襲来を『ボナ・ノクテム』と言うんだけど、その襲来を終わらせることを『ボヌ・ディエヌ』と言うんだって。
で、終わらせるために多大な貢献をした人たちを『ボヌ・ディエヌの英雄』と呼ぶんだけど、その人達への褒章は復興を優先するために延び延びになってたのよね。とりあえずは英雄名鑑を作成して広く告示して、名誉だけ授けてたって感じだったんだけど。
復興が進んで資金にも多少余裕が出来たのと、英雄達にそろそろキチンとした褒章を用意しなきゃいけないのと、ここらで経済発展させる添加剤を投入したいのと。様々な理由が重なって、式典&復興祭が決定したんだそうだ。
で、開催は全然いいんですよ。苦労した後のお祭り騒ぎは必要だと思うし。ただねぇ、内示の内容ってヤツがねぇ。
「貴族の仲間入りとか、なんの冗談かと思ったわ…」
なんとビックリ、私に爵位を授けるって書いてあったんですよ!このド平民の私に!魔王を退けた英雄だからって!恐れ多い!
そのせいで、私たちの結婚にも弊害が出た。爵位授与予定者についての情報が公的機関にはちゃんと通達されてたみたいで、戸籍管理してる役所に婚姻届を出そうとしたら断られたのよねー。近いうちに爵位が授けられる予定なんだから、民間人用のとこじゃ受けられないんだって。
じゃあしょうがないってんで貴族の戸籍管理してる部署(IN皇城)まで出向いて問い合わせしたら、貴族の婚姻について色々説明された。
曰く、婚姻届の前に婚約届を出さなきゃいけないこと。且つ婚約期間を半年から1年くらい設けなきゃいけないこと。それが終わった後に婚姻許可申請を皇帝陛下&貴族院(主に政治を動かしてる貴族の人たちの集まりね)に出して、許可されないといけないこと。そこから国教の教会で結婚式をやって、ようやっと婚姻届が出せるんだってさ!
めんどくせぇぇぇ!!民間の身分の間に婚姻済みだったり、先に子どもができちゃった場合は、いくつか省略してくれるらしいんだけれども!!シウの言ってた既成事実ってのがホント理解できたわ…。
同席してくれたシウが上手いこと役人さんを説得して、なんとか婚約届は受け付けてもらったけれども。正式に爵位をもらった後じゃないと婚姻許可申請もできないから、結局宙ぶらりん状態なのよねぇ…。しかも貴族院の中にも私を政治的に取り込みたい人がいるらしく、婚姻許可申請も邪魔してくる可能性があるんだとか…。
…クソが!
あんまり皇室のドロドロ劇とか興味ないから詳しくないけど、皇配であるお父さんが力の弱い公国の王子だったらしくて、継承権も皇帝の実子の中では最下位くらいだったらしい。だから皇子だけど随分自由に過ごしてたみたいで、貴族の中でも同じような立場の人たちとつるんで、傭兵団を立ち上げていたみたい。魔獣の被害が徐々に増え始めてた時だったから、腕っぷしに自信さえあれば仕事には困らなかったしね。
名付け親なせいかちょこちょこ気にかけて可愛がってくれてたんだけど、私が附術を使えるようになってからはヘッドハンティングも何回かされたんだよね。全部断ったけれども。気さくな人ばかりだったけど、お貴族サマの中に身を置くなんて気が引けるっつーの。
それから『ボナ・ノクテム』が起きて、混乱の中で後継者争いも起きて、最終的にはヴァレさんの兄である皇帝と、その後継者たちもほとんど亡くなってしまって。唯一生き残ったのがヴァレさんと、前皇帝の遺児である、未成年の皇子だった。そこで権力には興味のなかったヴァレさんだけど、皇子が成人するまでは自分が守ってやらなきゃと、中継ぎ皇帝として就任したんだよね。うん、男前である。
そんなわけで。
皇帝陛下としてこの国で一番エライお方ではあるんだけど、団こそ違えど元傭兵仲間なんて気安さがあるから、今も親しく交流を続けている。昔がどうであれ現皇帝陛下に敬語を取っ払って文句を言うなんてありえないんだけど、ヴァレさん自身がそれを望んでるみたいだしね。陛下のご意向に従いマスワー。
あ、ちなみにお察しの方もいらっしゃると思うけれど、以前からちょくちょく出ていたオトモダチ(権力者)はこの方です。帝国最高峰の権力者だから、最終的には誰も敵わねーのよねフハハハハ!!最強すぎて滅多に切れないカードではあるけどね。
「ま。とりあえず婚約おめでとう。3人だって?ビョルンとロルフと、イスハーク。やるじゃないか」
「何がよ。お宅のお兄様も、お妃様3人いらっしゃいましたよねぇ」
「兄は少ない方だったな。母は皇配が6人いたぞ。2人は女性だったが」
「すげーなヴァレ母…ある意味尊敬します」
「アッハッハ!お前にかかれば、母も片無しだ。だが皇帝や貴族の結婚は、そのまま権力に直結するからな。バランスを取るためにも、増やさざるを得ないのだよ。お前もどうだい、もう1人くらい?2人は民間、1人はサークルとなれば、貴族か皇族から1人くらい娶ってほしいものだが」
「いらねー、私たち、バランス取るために結婚するんじゃないんで。だいたい、私に何のバランスが必要なのさ」
「いるだろう、これから権力を持つのだから」
ヴァレさんの言葉に、ムスっと黙り込む。
そう、私たちが婚姻手続きができず、婚約状態に踏みとどまっている原因。ビョルンとロルフと結婚するって決めて、初夜的なアレを済ませて。傭兵団に出勤したその日の朝。皇室から傭兵団に使者が来てたのよねぇ…『ボヌ・ディエヌの英雄達に叙勲・褒賞授与式典の内示兼案内』ってやつが…。
あ、『ボヌ・ディエヌ』ってのは、『ボナ・ノクテム』の反対語ね。『対するもの(コントラ)』の襲来を『ボナ・ノクテム』と言うんだけど、その襲来を終わらせることを『ボヌ・ディエヌ』と言うんだって。
で、終わらせるために多大な貢献をした人たちを『ボヌ・ディエヌの英雄』と呼ぶんだけど、その人達への褒章は復興を優先するために延び延びになってたのよね。とりあえずは英雄名鑑を作成して広く告示して、名誉だけ授けてたって感じだったんだけど。
復興が進んで資金にも多少余裕が出来たのと、英雄達にそろそろキチンとした褒章を用意しなきゃいけないのと、ここらで経済発展させる添加剤を投入したいのと。様々な理由が重なって、式典&復興祭が決定したんだそうだ。
で、開催は全然いいんですよ。苦労した後のお祭り騒ぎは必要だと思うし。ただねぇ、内示の内容ってヤツがねぇ。
「貴族の仲間入りとか、なんの冗談かと思ったわ…」
なんとビックリ、私に爵位を授けるって書いてあったんですよ!このド平民の私に!魔王を退けた英雄だからって!恐れ多い!
そのせいで、私たちの結婚にも弊害が出た。爵位授与予定者についての情報が公的機関にはちゃんと通達されてたみたいで、戸籍管理してる役所に婚姻届を出そうとしたら断られたのよねー。近いうちに爵位が授けられる予定なんだから、民間人用のとこじゃ受けられないんだって。
じゃあしょうがないってんで貴族の戸籍管理してる部署(IN皇城)まで出向いて問い合わせしたら、貴族の婚姻について色々説明された。
曰く、婚姻届の前に婚約届を出さなきゃいけないこと。且つ婚約期間を半年から1年くらい設けなきゃいけないこと。それが終わった後に婚姻許可申請を皇帝陛下&貴族院(主に政治を動かしてる貴族の人たちの集まりね)に出して、許可されないといけないこと。そこから国教の教会で結婚式をやって、ようやっと婚姻届が出せるんだってさ!
めんどくせぇぇぇ!!民間の身分の間に婚姻済みだったり、先に子どもができちゃった場合は、いくつか省略してくれるらしいんだけれども!!シウの言ってた既成事実ってのがホント理解できたわ…。
同席してくれたシウが上手いこと役人さんを説得して、なんとか婚約届は受け付けてもらったけれども。正式に爵位をもらった後じゃないと婚姻許可申請もできないから、結局宙ぶらりん状態なのよねぇ…。しかも貴族院の中にも私を政治的に取り込みたい人がいるらしく、婚姻許可申請も邪魔してくる可能性があるんだとか…。
…クソが!
10
お気に入りに追加
1,041
あなたにおすすめの小説
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
最愛の番~300年後の未来は一妻多夫の逆ハーレム!!? イケメン旦那様たちに溺愛されまくる~
ちえり
恋愛
幼い頃から可愛い幼馴染と比較されてきて、自分に自信がない高坂 栞(コウサカシオリ)17歳。
ある日、学校帰りに事故に巻き込まれ目が覚めると300年後の時が経ち、女性だけ死に至る病の流行や、年々女子の出生率の低下で女は2割ほどしか存在しない世界になっていた。
一妻多夫が認められ、女性はフェロモンだして男性を虜にするのだが、栞のフェロモンは世の男性を虜にできるほどの力を持つ『α+』(アルファプラス)に認定されてイケメン達が栞に番を結んでもらおうと近寄ってくる。
目が覚めたばかりなのに、旦那候補が5人もいて初めて会うのに溺愛されまくる。さらに、自分と番になりたい男性がまだまだいっぱいいるの!!?
「恋愛経験0の私にはイケメンに愛されるなんてハードすぎるよ~」
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
【R18】人気AV嬢だった私は乙ゲーのヒロインに転生したので、攻略キャラを全員美味しくいただくことにしました♪
奏音 美都
恋愛
「レイラちゃん、おつかれさまぁ。今日もよかったよ」
「おつかれさまでーす。シャワー浴びますね」
AV女優の私は、仕事を終えてシャワーを浴びてたんだけど、石鹸に滑って転んで頭を打って失神し……なぜか、乙女ゲームの世界に転生してた。
そこで、可愛くて美味しそうなDKたちに出会うんだけど、この乙ゲーって全対象年齢なのよね。
でも、誘惑に抗えるわけないでしょっ!
全員美味しくいただいちゃいまーす。
女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる