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苦しめたら許さない3
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案の定。
「何で約束を破るの?」
閉店と同時に、再び玉城さんがやって来た。
「風人が1人で泊まってるはずがないと思って、チェックアウトの時間まで見張ってもらったら……
あなたを見つけた」
と、今度はあたしがホテルから出て来た所の写真を突きつけられる。
だからって,それだけじゃ一緒に泊まった証拠にはならないから。
誤解を突き通そうとしたところで。
「ねえっ、これを見て私がどれだけショックだったかわかるっ?
信じてたのにっ……
こんな遠くまで会いに来た私を置き去りにして、2人で裏切ってたって知った時のっ、私の苦しみがわかるっ!?」
考えないようにしてたその現実を突きつけられて。
泣きじゃくってた話とリンクしたあたしは、罪悪感に襲われて何も言えなくなる。
「だから、あなたが約束を守ってくれないからっ、親に言うしかなかったのにっ……
あの男もグルだったんだね?
ほんとは彼氏じゃないんでしょっ?
ねぇっ、親まで騙してなんとも思わないのっ!?」
なんとも思わないわけなくて……
心苦しさで、思わず顔を歪めると。
「やっぱりね」
カマをかけたと言わんばかりの言葉がこぼされる。
しまった!どうしようっ……
「こうなったらすぐにでも、風人を今の仕事から外してもらわなきゃね」
「っ、待ってよ!
あたしはほんとにっ、」
「今さらシラを切っても遅いからっ。
残念だけど、浮気の事を父に話すわ。
そしたら風人だけじゃなく、おじさまもおばさまもめちゃくちゃ責められると思う。
空人くん、まだ小学生なのに……
おじさま、仕事失っちゃうかもね」
「お願い!
家族まで巻き込まないでっ」
家族に罪はないし、そんな事になったら風人がどんなに苦しむか……
「あなたのせいでしょ!?
風人も、風人の家族も、みんなあなたの犠牲になってるんじゃないっ。
あなたは疫病神なの!
あなたがみんなを不幸にしてるのっ!」
胸が、ザクリと切り付けられる。
それでもなお、玉城さんはますます感情を爆発させた。
「私は、あなたが現れる前からっ……
ずっと前から!風人だけを見てきたのにっ。
同じ高校まで行って、振り向いてもらえるように頑張ってきたのに!
あなたなんかより、何倍も愛してるのにっ!
なのにあなたに邪魔されて……
やっと想いが報われたのに、また邪魔されて!
ねぇいつまで邪魔すれば気がすむのっ!?
お願いだからいなくなってよ!
あなたさえいなければ、誰も苦しまないのにっ。
風人だって、また苦しむ羽目にならなかったのに!」
また苦しむ?
そっか……
あたしは結局、また板挟みで苦しめてる。
胸がいっそう切り刻まれる。
「言っとくけど、私は絶対に別れないから。
あなたが関係を終わらせないなら、父に話して。
風人を家族ごと追い詰めたり、一生償わせるしかないっ。
だから、これ以上風人を苦しめたくなかったらっ、今すぐ風人の前からいなくなってよ!」
やっぱりあたしは疫病神で……
どうやったって、風人を苦しめてしまうんだ。
涙がぼろぼろとこぼれた。
そして、一線引けなかった自分に。
やり直したいと近づいた自分に、激しい後悔が押し寄せる。
なのにまだ、諦められない自分がいて……
だけどもう、身を引くしかないと思った。
宣言通り、玉城さんは絶対に別れないだろう。
だからって、今すぐいなくなるのは無理に決まってて。
そのあと玉城さんから、新たな条件を出される。
あたしは、どうしよう!と追い詰められて……
ただでさえ時間がないのに、締め作業に身が入らず。
その日は、決められた時間内に終わる事が出来なかった。
それにより、また始末書を書く事になり。
つくづく自分は周りに迷惑をかける存在なんだと、心底嫌気がさしていた。
でも今はそれどころじゃなくて。
出された条件は……
一週間以内に関係を終わらせなければ、通告通り父に話して追い詰める。
といった内容で。
他にも、次に泊まったり。
前回同様、このやり取りを風人に話した場合も、通告が適用される。
とはいえ……
ー「けど俺、月奈ちゃんに彼氏が出来るまで諦めないから」
「そーやって諦めさせようとしても無駄だから!」
「1%でも可能性があれば、なんだって犠牲にしてやる」ー
玉城さんの事を話さずに、そんな風人を納得させるのは困難で。
誉に協力してもらって、付き合う事になったと嘘をつくにしても……
風人じゃなきゃダメまで言っといて、それなりの理由もなく急に心変わりするなんて、納得してくれるわけがない。
そもそも一週間で納得させるのは、よほどの事がない限り無理な気がした。
だとしても、どんな手段を使っても、風人を守りたくて……
もうほんとに、いなくなるしかないかと思った。
それなら納得してくれなくても、強制的に関係を終わらせる事が出来る。
ただ、お世話になった会社に迷惑はかけたくないし。
風人が責任を感じないような、いなくなる理由が思いつかない。
もうどうすればいいのか判らなくて、ひとりじゃ抱えきれなくて……
あたしは今の状況を唯一話せる、誉に相談する事にした。
ところが誉はこの土・日、県外イベントで忙しいらしく。
相談したい事があるから、帰ってきたら時間を作ってもらえないか訊いてみると。
〈明日、月奈の仕事が終わる頃までには帰れるようにするよ。
すぐに聞いてあげれなくてごめん〉
その優しい気持ちが……
弱ってる心に沁み込んで、涙がこぼれた。
そうして次の日。
昨日迷惑をかけた分、必死に仕事に集中していたあたしは……
締め作業が終わったと同時。
「誉っ」
現れたその姿を前に、張り詰めてた気持ちがぷつりと切れて、泣きそうになる。
当然誉は驚いて……
あたしから相談を頼んだのも初めてだったから、すごく心配してくれたんだろう。
すぐにぎゅうっと抱きしめられる。
「何があったんだっ?」
いくら身を引くと決めても。
本音は風人と離れたくなくて、辛くて堪らなかったあたしは……
もうどうすればいいのか、いっぱいいっぱいだったあたしは……
ぶわりと涙があふれて、思わず寄りかかってしまう。
「玉城さんが来てっ……
あたしのせいで、風人の人生がめちゃくちゃになってしまう!
だからっ、一週間以内に関係を終わらせないといけないのにっ……
もうどうしたらいいかわかんなくて!
あたしが消えるしかなくてっ」
感情があふれて、支離滅裂な説明になってしまうと。
「っ、月奈っ?
少し落ち着こっか」
焦った様子でなだめられる。
「とりあえず店を閉めて。
それから、」
とそこで。
「何してんだよっ!」
いきなり風人が現れる。
うそ、なんでっ!?
玉城さんと一緒じゃないのっ?
実は風人から……
〈彼女明日仕事みたいで、今帰ったから〉
と連絡が入ってたのに。
締め作業に集中してたあたしは、それを見逃してしまってたのだ。
でもその時は知る由もなく、それどころじゃなかったあたしは……
誉に抱きしめられてる事や、どこから聞いてたのかという事に焦った。
だけど風人の様子から、あたしのセリフまでは聞いてないようで……
誉との状態も、関係を終わらせる絶好の手段になるんじゃないかと思った。
「つーか、離れろよっ」
そばに来た風人が、誉の肩を掴むも。
すぐにそれが振り払われる。
「お前はそんな事言える立場じゃないだろっ」
「っ、そーだけどっ。
お前だって、もうそんな事出来る立場じゃねぇだろっ。
いいから離せよ!」
とまた、誉の肩に掴みかかろうとした矢先。
「誰のせいで!月奈が泣いてると思ってるんだっ」
そう一喝されて。
風人は自分のせいだったのかと言わんばかりに、目を見開いて。
掴みかけた手をぼとりと落として、うつむいた。
「ごめん、月奈……
ほんとにごめんっ。
けど俺、絶対にちゃんとするから!
月奈のためなら、なんだってするからさっ……
こっちおいでっ?」
辛そうに顔を歪めて、そう手を差し伸べる風人に……
胸が壊れそうなくらい締め付けられて、再びぶわりと涙がこぼれた。
だけどあたしは首を横に振って、誉にぎゅっと抱きついた。
「何で約束を破るの?」
閉店と同時に、再び玉城さんがやって来た。
「風人が1人で泊まってるはずがないと思って、チェックアウトの時間まで見張ってもらったら……
あなたを見つけた」
と、今度はあたしがホテルから出て来た所の写真を突きつけられる。
だからって,それだけじゃ一緒に泊まった証拠にはならないから。
誤解を突き通そうとしたところで。
「ねえっ、これを見て私がどれだけショックだったかわかるっ?
信じてたのにっ……
こんな遠くまで会いに来た私を置き去りにして、2人で裏切ってたって知った時のっ、私の苦しみがわかるっ!?」
考えないようにしてたその現実を突きつけられて。
泣きじゃくってた話とリンクしたあたしは、罪悪感に襲われて何も言えなくなる。
「だから、あなたが約束を守ってくれないからっ、親に言うしかなかったのにっ……
あの男もグルだったんだね?
ほんとは彼氏じゃないんでしょっ?
ねぇっ、親まで騙してなんとも思わないのっ!?」
なんとも思わないわけなくて……
心苦しさで、思わず顔を歪めると。
「やっぱりね」
カマをかけたと言わんばかりの言葉がこぼされる。
しまった!どうしようっ……
「こうなったらすぐにでも、風人を今の仕事から外してもらわなきゃね」
「っ、待ってよ!
あたしはほんとにっ、」
「今さらシラを切っても遅いからっ。
残念だけど、浮気の事を父に話すわ。
そしたら風人だけじゃなく、おじさまもおばさまもめちゃくちゃ責められると思う。
空人くん、まだ小学生なのに……
おじさま、仕事失っちゃうかもね」
「お願い!
家族まで巻き込まないでっ」
家族に罪はないし、そんな事になったら風人がどんなに苦しむか……
「あなたのせいでしょ!?
風人も、風人の家族も、みんなあなたの犠牲になってるんじゃないっ。
あなたは疫病神なの!
あなたがみんなを不幸にしてるのっ!」
胸が、ザクリと切り付けられる。
それでもなお、玉城さんはますます感情を爆発させた。
「私は、あなたが現れる前からっ……
ずっと前から!風人だけを見てきたのにっ。
同じ高校まで行って、振り向いてもらえるように頑張ってきたのに!
あなたなんかより、何倍も愛してるのにっ!
なのにあなたに邪魔されて……
やっと想いが報われたのに、また邪魔されて!
ねぇいつまで邪魔すれば気がすむのっ!?
お願いだからいなくなってよ!
あなたさえいなければ、誰も苦しまないのにっ。
風人だって、また苦しむ羽目にならなかったのに!」
また苦しむ?
そっか……
あたしは結局、また板挟みで苦しめてる。
胸がいっそう切り刻まれる。
「言っとくけど、私は絶対に別れないから。
あなたが関係を終わらせないなら、父に話して。
風人を家族ごと追い詰めたり、一生償わせるしかないっ。
だから、これ以上風人を苦しめたくなかったらっ、今すぐ風人の前からいなくなってよ!」
やっぱりあたしは疫病神で……
どうやったって、風人を苦しめてしまうんだ。
涙がぼろぼろとこぼれた。
そして、一線引けなかった自分に。
やり直したいと近づいた自分に、激しい後悔が押し寄せる。
なのにまだ、諦められない自分がいて……
だけどもう、身を引くしかないと思った。
宣言通り、玉城さんは絶対に別れないだろう。
だからって、今すぐいなくなるのは無理に決まってて。
そのあと玉城さんから、新たな条件を出される。
あたしは、どうしよう!と追い詰められて……
ただでさえ時間がないのに、締め作業に身が入らず。
その日は、決められた時間内に終わる事が出来なかった。
それにより、また始末書を書く事になり。
つくづく自分は周りに迷惑をかける存在なんだと、心底嫌気がさしていた。
でも今はそれどころじゃなくて。
出された条件は……
一週間以内に関係を終わらせなければ、通告通り父に話して追い詰める。
といった内容で。
他にも、次に泊まったり。
前回同様、このやり取りを風人に話した場合も、通告が適用される。
とはいえ……
ー「けど俺、月奈ちゃんに彼氏が出来るまで諦めないから」
「そーやって諦めさせようとしても無駄だから!」
「1%でも可能性があれば、なんだって犠牲にしてやる」ー
玉城さんの事を話さずに、そんな風人を納得させるのは困難で。
誉に協力してもらって、付き合う事になったと嘘をつくにしても……
風人じゃなきゃダメまで言っといて、それなりの理由もなく急に心変わりするなんて、納得してくれるわけがない。
そもそも一週間で納得させるのは、よほどの事がない限り無理な気がした。
だとしても、どんな手段を使っても、風人を守りたくて……
もうほんとに、いなくなるしかないかと思った。
それなら納得してくれなくても、強制的に関係を終わらせる事が出来る。
ただ、お世話になった会社に迷惑はかけたくないし。
風人が責任を感じないような、いなくなる理由が思いつかない。
もうどうすればいいのか判らなくて、ひとりじゃ抱えきれなくて……
あたしは今の状況を唯一話せる、誉に相談する事にした。
ところが誉はこの土・日、県外イベントで忙しいらしく。
相談したい事があるから、帰ってきたら時間を作ってもらえないか訊いてみると。
〈明日、月奈の仕事が終わる頃までには帰れるようにするよ。
すぐに聞いてあげれなくてごめん〉
その優しい気持ちが……
弱ってる心に沁み込んで、涙がこぼれた。
そうして次の日。
昨日迷惑をかけた分、必死に仕事に集中していたあたしは……
締め作業が終わったと同時。
「誉っ」
現れたその姿を前に、張り詰めてた気持ちがぷつりと切れて、泣きそうになる。
当然誉は驚いて……
あたしから相談を頼んだのも初めてだったから、すごく心配してくれたんだろう。
すぐにぎゅうっと抱きしめられる。
「何があったんだっ?」
いくら身を引くと決めても。
本音は風人と離れたくなくて、辛くて堪らなかったあたしは……
もうどうすればいいのか、いっぱいいっぱいだったあたしは……
ぶわりと涙があふれて、思わず寄りかかってしまう。
「玉城さんが来てっ……
あたしのせいで、風人の人生がめちゃくちゃになってしまう!
だからっ、一週間以内に関係を終わらせないといけないのにっ……
もうどうしたらいいかわかんなくて!
あたしが消えるしかなくてっ」
感情があふれて、支離滅裂な説明になってしまうと。
「っ、月奈っ?
少し落ち着こっか」
焦った様子でなだめられる。
「とりあえず店を閉めて。
それから、」
とそこで。
「何してんだよっ!」
いきなり風人が現れる。
うそ、なんでっ!?
玉城さんと一緒じゃないのっ?
実は風人から……
〈彼女明日仕事みたいで、今帰ったから〉
と連絡が入ってたのに。
締め作業に集中してたあたしは、それを見逃してしまってたのだ。
でもその時は知る由もなく、それどころじゃなかったあたしは……
誉に抱きしめられてる事や、どこから聞いてたのかという事に焦った。
だけど風人の様子から、あたしのセリフまでは聞いてないようで……
誉との状態も、関係を終わらせる絶好の手段になるんじゃないかと思った。
「つーか、離れろよっ」
そばに来た風人が、誉の肩を掴むも。
すぐにそれが振り払われる。
「お前はそんな事言える立場じゃないだろっ」
「っ、そーだけどっ。
お前だって、もうそんな事出来る立場じゃねぇだろっ。
いいから離せよ!」
とまた、誉の肩に掴みかかろうとした矢先。
「誰のせいで!月奈が泣いてると思ってるんだっ」
そう一喝されて。
風人は自分のせいだったのかと言わんばかりに、目を見開いて。
掴みかけた手をぼとりと落として、うつむいた。
「ごめん、月奈……
ほんとにごめんっ。
けど俺、絶対にちゃんとするから!
月奈のためなら、なんだってするからさっ……
こっちおいでっ?」
辛そうに顔を歪めて、そう手を差し伸べる風人に……
胸が壊れそうなくらい締め付けられて、再びぶわりと涙がこぼれた。
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