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深読み2
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翌日。
ヴィオラはサイフォスに掛け合って、接待役の了承を得ると。
「それと、昨日のご用命についてですが……
さっそく本日からでも、お受け致します」
と、有耶無耶になってしまった件を切り出した。
モエに対して、気が引ける思いはあるものの……
結局のところ、ニケの言う通り。
真意は分からないうえに、2人の関係も不確かなため。
それなら、自分に出来る限りを尽くそうと。
愛する人が望むのなら、何だって応えてあげたいと。
改めて思い直し、決断に至ったのだった。
ところが、今度はサイフォスが気兼ねする。
「……昨日はあれほど反論していたのに、どういう風の吹き回しだ?」
「申し訳ございません。
昨日は勝手な深読みをしてしまいましたが……
殿下が問題ないのであれば、ぜひお手伝いさせてください」
「俺は別に問題はないが……
すまない、昨日は俺もムキになりすぎていた。
軽はずみなどといった発言も、撤回させてくれ。
だからもう、無理をする必要はない」
「無理ではございませんっ。
それで少しでも殿下のお力になれるのなら、嬉しい限りてございます」
するとサイフォスは、少し考える素ぶりを見せ……
「ならば、今夜から頼む」
と、覚悟を決めたように言い放った。
「はい!かしこまりました」
しかしヴィオラは、そうやって自ら引き受けながらも……
ーーどうしよう、今さら緊張してきた。
サイフォス様の隣で寝るなんて、今となっては刺激が強すぎる!
そもそも、添い寝ってどうするの?
どんな体勢で寝ればいいのっ?
と、想像しただけで心臓が飛び出そうになっていた。
そしてとうとうその場を迎えると。
心臓はますます暴れ狂い、息をするのもままならなくなる。
ーーああもうどうして!?
かつては身体を重ねた間柄だというのにっ……
と、思わずそれを思い出し。
ーーあああっ!
待ってもうどうにかなりそうっ……
ベッド脇で悶えながら、いっそう動転する。
「……どうした。
なぜずっと立っている」
「えっ!いえそのっ……
どのような体勢を、取れば良いのかと……」
「……そうだな。
普通に隣で横になるだけでいい」
「わかりましたっ……
では、失礼いたします」
ぎこちない動きでベッドに入るも。
心臓の音がうるさすぎて、恥ずかしくて居た堪れなくなる。
ーーいつまでこうしてればいいのっ?
眠れるまでとは言ってたけど、どうやって見極めればいいのっ?
しかもこんな状態で、添い寝の効果があるのっ?
「……あの、殿下。
お眠りになったのを、どう確かめれば良いでしょうか?」
「あぁ、そうだな……
ならば俺が、10分ほど動かなかったら眠ったと判断してくれ」
「わかりました」
するとサイフォスは、すぐにその状態となり……
ーーうそ、もう眠れたのっ?
こんな添い寝でほんとに効果があるなんて……
と驚くヴィオラ。
しかし念のためと、もう少し様子を見ながら……
寝付きが悪い状態の人が、初めて一緒に寝る異性を横に、こうもすんなり眠れた事から。
廃妃かもしれないファラを、微塵も意識してない事が窺え。
だから好きな女性がいる状況で、侍女に添い寝をさせても問題ないのかと合点する。
つまり、ファラの事を女としてすら見てない事になるからだ。
ヴィオラはそれを、わかっていながらも。
自分の心境とあまりに掛け離れた、サイフォスの心境との温度差に……
やるせない思いで、そっとベッドを抜けたのだった。
ヴィオラはサイフォスに掛け合って、接待役の了承を得ると。
「それと、昨日のご用命についてですが……
さっそく本日からでも、お受け致します」
と、有耶無耶になってしまった件を切り出した。
モエに対して、気が引ける思いはあるものの……
結局のところ、ニケの言う通り。
真意は分からないうえに、2人の関係も不確かなため。
それなら、自分に出来る限りを尽くそうと。
愛する人が望むのなら、何だって応えてあげたいと。
改めて思い直し、決断に至ったのだった。
ところが、今度はサイフォスが気兼ねする。
「……昨日はあれほど反論していたのに、どういう風の吹き回しだ?」
「申し訳ございません。
昨日は勝手な深読みをしてしまいましたが……
殿下が問題ないのであれば、ぜひお手伝いさせてください」
「俺は別に問題はないが……
すまない、昨日は俺もムキになりすぎていた。
軽はずみなどといった発言も、撤回させてくれ。
だからもう、無理をする必要はない」
「無理ではございませんっ。
それで少しでも殿下のお力になれるのなら、嬉しい限りてございます」
するとサイフォスは、少し考える素ぶりを見せ……
「ならば、今夜から頼む」
と、覚悟を決めたように言い放った。
「はい!かしこまりました」
しかしヴィオラは、そうやって自ら引き受けながらも……
ーーどうしよう、今さら緊張してきた。
サイフォス様の隣で寝るなんて、今となっては刺激が強すぎる!
そもそも、添い寝ってどうするの?
どんな体勢で寝ればいいのっ?
と、想像しただけで心臓が飛び出そうになっていた。
そしてとうとうその場を迎えると。
心臓はますます暴れ狂い、息をするのもままならなくなる。
ーーああもうどうして!?
かつては身体を重ねた間柄だというのにっ……
と、思わずそれを思い出し。
ーーあああっ!
待ってもうどうにかなりそうっ……
ベッド脇で悶えながら、いっそう動転する。
「……どうした。
なぜずっと立っている」
「えっ!いえそのっ……
どのような体勢を、取れば良いのかと……」
「……そうだな。
普通に隣で横になるだけでいい」
「わかりましたっ……
では、失礼いたします」
ぎこちない動きでベッドに入るも。
心臓の音がうるさすぎて、恥ずかしくて居た堪れなくなる。
ーーいつまでこうしてればいいのっ?
眠れるまでとは言ってたけど、どうやって見極めればいいのっ?
しかもこんな状態で、添い寝の効果があるのっ?
「……あの、殿下。
お眠りになったのを、どう確かめれば良いでしょうか?」
「あぁ、そうだな……
ならば俺が、10分ほど動かなかったら眠ったと判断してくれ」
「わかりました」
するとサイフォスは、すぐにその状態となり……
ーーうそ、もう眠れたのっ?
こんな添い寝でほんとに効果があるなんて……
と驚くヴィオラ。
しかし念のためと、もう少し様子を見ながら……
寝付きが悪い状態の人が、初めて一緒に寝る異性を横に、こうもすんなり眠れた事から。
廃妃かもしれないファラを、微塵も意識してない事が窺え。
だから好きな女性がいる状況で、侍女に添い寝をさせても問題ないのかと合点する。
つまり、ファラの事を女としてすら見てない事になるからだ。
ヴィオラはそれを、わかっていながらも。
自分の心境とあまりに掛け離れた、サイフォスの心境との温度差に……
やるせない思いで、そっとベッドを抜けたのだった。
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