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償い3
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「いいかげんにしてっ。
国宝魔術士であるモエに不敬な態度を取る事は、私が許しません」
今度はヴィオラが、慌てて庇うも。
「名ばかりの王太子妃に、何が出来るっていうの?
陛下はもちろん、ほとんどの貴族たちが私の味方だというのに。
それどころかサイフォス様も、私だけを優遇してくださってる状況だというのに」
そう嘲笑われる。
こんなにも力になってくれたモエを、守る事すら出来ない事に……
悪妃として振る舞って来た事を、改めて後悔すると同時。
悔しくて情けなくて、やり切れなくなるヴィオラ。
その上サイフォスまでもが、フラワベルだけを優遇している状況に……
側室になるいう話も、確実なのだろうと。
最近心を通わせ始めたばかりの自分より、婚約者だったフラワベルの方が心を許せるのだろうと。
さらには、2人の間に入り込めない絆を感じて。
完膚なきまでに打ちのめされていた。
しかもそのタイミングで、サイフォスの部屋からウォルター卿が出て来て。
姿を見られたヴィオラは、モエの提案まで台無しになってしまったと焦る。
「話し声が続いていたので、様子を見に来た次第ですが……
殿下のお部屋の御前で、何をなさっているのですか?」
「それがっ……
私がサイフォス様の部屋から出て来たので、妃殿下に問い詰められた挙句、許さないと言われてしまって」
すかさずそう弁明するフラワベル。
「なんとっ。
妃殿下!フラワベル様はっ……」
「いいんです!言わないでくださいっ。
知れば、妃殿下は傷付いてしまうと思うので……」
「いやしかし……」
それは、傷付く内容だと言っているも同然で。
聞くまでもなく、傷付くヴィオラ。
「お願いですっ、絶対に言わないでください!
私が消えれば済むのですからっ」
そう言ってフラワベルは、逃げるように去ってしまい……
「……フラワベル様の優しさに免じて、言及は致しませんが、お2人も早々にお引き取り願います」
そう言ってウォルター卿も、サイフォスの部屋に戻ろうとした。
「お待ちください!
フラワベル様の言い分には語弊がありますっ。
それに私たちも、殿下に公用があって来ております」
すぐさまモエが、そう引き止めるも。
「殿下は今、フラワベル様以外の方とはお会いしません。
たとえ公用であろうとも、まずは私がお伺いするよう申しつかっております」
と、付け入る隙まで潰されてしまう。
「納得いきません!
王太子妃である妃殿下を差し置いて、なぜフラワベル様だけなのですかっ?」
自分のために、こうも必死に抗ってくれるモエの姿に……
ヴィオラはそれだけ十分だと心を打たれ、「わかりました」と割って入った。
また、フラワベルは面会を許されている事や、その深刻さのない言動から。
ひとまず、サイフォスが無事だと判断したからでもあった。
とはいえ、心配な事に変わりはないため。
「今日のところは引き下がりますが、お会いしていただけるまで毎日通います」
そう、何度拒絶されようと諦める気などなかった。
サイフォスがそうしてくれたように……
「毎日通われたからといって、お会い出来るわけではないので、悪しからず」
ウォルター卿には、そうあしらわれたものの。
それからのヴィオラは……
モエからサイフォスの好物類を聞き出し、そんな事も知らなかった自分を情けなく思いながらも。
それらを差し入れに持参し、サイフォスの元へ通い続けた。
そして今まで以上に、公務に打ち込みつつ。
繰り返されるフラワベルの嫌がらせに堪えながら、ひたすら償いに奮闘し続けた。
ただただ、サイフォスを想う一心で……
国宝魔術士であるモエに不敬な態度を取る事は、私が許しません」
今度はヴィオラが、慌てて庇うも。
「名ばかりの王太子妃に、何が出来るっていうの?
陛下はもちろん、ほとんどの貴族たちが私の味方だというのに。
それどころかサイフォス様も、私だけを優遇してくださってる状況だというのに」
そう嘲笑われる。
こんなにも力になってくれたモエを、守る事すら出来ない事に……
悪妃として振る舞って来た事を、改めて後悔すると同時。
悔しくて情けなくて、やり切れなくなるヴィオラ。
その上サイフォスまでもが、フラワベルだけを優遇している状況に……
側室になるいう話も、確実なのだろうと。
最近心を通わせ始めたばかりの自分より、婚約者だったフラワベルの方が心を許せるのだろうと。
さらには、2人の間に入り込めない絆を感じて。
完膚なきまでに打ちのめされていた。
しかもそのタイミングで、サイフォスの部屋からウォルター卿が出て来て。
姿を見られたヴィオラは、モエの提案まで台無しになってしまったと焦る。
「話し声が続いていたので、様子を見に来た次第ですが……
殿下のお部屋の御前で、何をなさっているのですか?」
「それがっ……
私がサイフォス様の部屋から出て来たので、妃殿下に問い詰められた挙句、許さないと言われてしまって」
すかさずそう弁明するフラワベル。
「なんとっ。
妃殿下!フラワベル様はっ……」
「いいんです!言わないでくださいっ。
知れば、妃殿下は傷付いてしまうと思うので……」
「いやしかし……」
それは、傷付く内容だと言っているも同然で。
聞くまでもなく、傷付くヴィオラ。
「お願いですっ、絶対に言わないでください!
私が消えれば済むのですからっ」
そう言ってフラワベルは、逃げるように去ってしまい……
「……フラワベル様の優しさに免じて、言及は致しませんが、お2人も早々にお引き取り願います」
そう言ってウォルター卿も、サイフォスの部屋に戻ろうとした。
「お待ちください!
フラワベル様の言い分には語弊がありますっ。
それに私たちも、殿下に公用があって来ております」
すぐさまモエが、そう引き止めるも。
「殿下は今、フラワベル様以外の方とはお会いしません。
たとえ公用であろうとも、まずは私がお伺いするよう申しつかっております」
と、付け入る隙まで潰されてしまう。
「納得いきません!
王太子妃である妃殿下を差し置いて、なぜフラワベル様だけなのですかっ?」
自分のために、こうも必死に抗ってくれるモエの姿に……
ヴィオラはそれだけ十分だと心を打たれ、「わかりました」と割って入った。
また、フラワベルは面会を許されている事や、その深刻さのない言動から。
ひとまず、サイフォスが無事だと判断したからでもあった。
とはいえ、心配な事に変わりはないため。
「今日のところは引き下がりますが、お会いしていただけるまで毎日通います」
そう、何度拒絶されようと諦める気などなかった。
サイフォスがそうしてくれたように……
「毎日通われたからといって、お会い出来るわけではないので、悪しからず」
ウォルター卿には、そうあしらわれたものの。
それからのヴィオラは……
モエからサイフォスの好物類を聞き出し、そんな事も知らなかった自分を情けなく思いながらも。
それらを差し入れに持参し、サイフォスの元へ通い続けた。
そして今まで以上に、公務に打ち込みつつ。
繰り返されるフラワベルの嫌がらせに堪えながら、ひたすら償いに奮闘し続けた。
ただただ、サイフォスを想う一心で……
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