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夜這い3
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そうして、夜が明けた頃。
「ん、んん……」
ぼんやりと目を覚ましたヴィオラは……
自分を抱き包んでいる逞しい体に、ドキリと心臓が跳ね上がる。
と同時に。
「気が付いたか?」
そう声かけられ。
「っっ!サイフォス様っ……」
愛しすぎるその姿に。
その人と激しく愛し合ったばかりの状況に。
そして把握出来ない現状に、動転するヴィオラ。
「あのっ、私……」
「すまない。
激しく求めすぎて、気絶させてしまったんだ。
身体は大丈夫か?」
ーー嘘でしょっ!?
気絶してしまうなんて!
ヴィオラは一気に、恥ずかしくてたまらなくなる。
「っ、はい……
その、心配をかけてすみません」
「ヴィオラ何も悪くないっ。
全て、俺の責任だ」
「いえっ、サイフォス様も悪くありませんっ。
私がそうしてと言ったのですから」
そこで今更のように、視界が明るい事に気付くヴィオラ。
「待って、嘘でしょっ……
もう夜が明けてるじゃないですか!
どうしてここにいるんですかっ?
夜明け前には戻るよう、お願いしたでしょうっ!?」
「すまない、だが……
気絶している妻を、放って行けるわけがないだろう?」
そう、自分のせいだと思っていれば尚更で。
さらには、夜這いだからといった他愛のない理由しか告げられず。
本当の理由を知らないサイフォスからすれば、当然の行動だった。
「それはっ、そうかもしれませんが……
でしたら、起こしてくだされば良かったのに!」
「すまない。
ぐったりしてたし、服を着せても起きなかったから、もう少し休ませてあげたくて……
頃合いを見計らっていた」
言われてみれば!と。
またしても今更のように、服を着せられている事に気付いたヴィオラは……
「もうっ、嘘でしょう?
恥ずかしくて死にそうですっ」
隠れるように、サイフォスの胸に顔を埋めた。
その言動にサイフォスは、心臓を完膚なきまでに撃ち抜かれて……
「俺は、ヴィオラが可愛いすぎて死にそうだっ」
と、その身体をむぎゅうと抱き締めた。
「っっ、イチャついてる場合じゃありません!
そんな格好でこの明るい中、どうやって帰るおつもりですかっ?」
「大丈夫だ。
頃合いを見計らっていたと言っただろう?
明るいと言っても、まだ皆が起きる前だから問題ない」
ヴィオラは、ほっと胸を撫で下ろすも。
その言葉が指し示す状況に、今頃「えっ」と驚く。
「……まさかサイフォス様、一睡もしてないんじゃ?」
「……ああ、だが1日くらい問題ない」
「そんなわけないでしょうっ!?
もう無理をさせたくないと言ったのにっ……」
するとサイフォスは酷く愛しげに、ヴィオラの頭を撫でた。
「本当に大丈夫だ。
部屋に戻ったら、公務の時間まで仮眠を取るし。
その公務も、今日は昼過ぎで終わる予定だから問題ない」
「……本当ですか?」
「ああ、だからヴィオラも今日はゆっくりしていてくれ。
でなければ俺も、心配で眠れない」
「……わかりました。
じゃあ早く、部屋に戻ってください」
愛しい人の温もりから、離れ難かったものの……
少しでも長く寝かせてあげたくて。
なにより、ラピズに見つからないように。
そう急かすヴィオラ。
「……わかった。
その代わり、今夜も夜這いに来ていいか?」
「今夜もっ?」
一瞬、嬉しさで胸が弾むも。
「っ、今日はダメです!
ちゃんとしっかり寝てください」
「違うっ、今日は何もしないと約束する。
ただ最初に言ったように、せめて一緒に眠りたいんだ」
一緒に眠れるのは嬉しい反面、何もしないのは寂しく感じるヴィオラ。
「……わかりました。
でも別に、そこまでは……
何もしないとまでは、約束しなくて、いいです」
それはつまり、少しくらいなら手を出してもいいと言っているようなもので……
キスくらいはして欲しいと思っていたヴィオラは、自ら催促しているような状況に、言いながら恥ずかしくてたまらなくなる。
そしてそんなヴィオラが、またしても死にそうなほど可愛いすぎて……
その唇を奪わずにはいられなくなるサイフォス。
して欲しいと思った事を、いきなりされて。
その不意打ちと、昨夜を思い出させる甘い熱に……
身も心も、どうしようもなく蕩けるヴィオラ。
しかも。
「……離れたくない」
キスの合間に、そう囁かれ。
ーーっっ、私もです……
言えない代わりに、ぎゅっとしがみついてしまう。
当然サイフォスは、ますます離れ難くなり。
いっそう唇を貪ると……
甘い毒に侵されるように、ヴィオラもますます離れられなくなる。
しかしそうしてる間にも、日は登っていく一方で……
ーーどうしようっ、早く離れなきゃ……
……っダメ!もう離れなきゃ!!
必死に感情を振り切って、キスから逃れるヴィオラ。
「っ、いい加減にしてください!
また夜に出来るでしょうっ?
早く、戻ってくださいっ……」
自分に言い聞かせるように、そしてサイフォスが興醒めするように、そう怒るも。
それは、続きは夜にと言っているようなもので……
「わかった」
サイフォスは愛しそうにそう微笑んだ。
「ん、んん……」
ぼんやりと目を覚ましたヴィオラは……
自分を抱き包んでいる逞しい体に、ドキリと心臓が跳ね上がる。
と同時に。
「気が付いたか?」
そう声かけられ。
「っっ!サイフォス様っ……」
愛しすぎるその姿に。
その人と激しく愛し合ったばかりの状況に。
そして把握出来ない現状に、動転するヴィオラ。
「あのっ、私……」
「すまない。
激しく求めすぎて、気絶させてしまったんだ。
身体は大丈夫か?」
ーー嘘でしょっ!?
気絶してしまうなんて!
ヴィオラは一気に、恥ずかしくてたまらなくなる。
「っ、はい……
その、心配をかけてすみません」
「ヴィオラ何も悪くないっ。
全て、俺の責任だ」
「いえっ、サイフォス様も悪くありませんっ。
私がそうしてと言ったのですから」
そこで今更のように、視界が明るい事に気付くヴィオラ。
「待って、嘘でしょっ……
もう夜が明けてるじゃないですか!
どうしてここにいるんですかっ?
夜明け前には戻るよう、お願いしたでしょうっ!?」
「すまない、だが……
気絶している妻を、放って行けるわけがないだろう?」
そう、自分のせいだと思っていれば尚更で。
さらには、夜這いだからといった他愛のない理由しか告げられず。
本当の理由を知らないサイフォスからすれば、当然の行動だった。
「それはっ、そうかもしれませんが……
でしたら、起こしてくだされば良かったのに!」
「すまない。
ぐったりしてたし、服を着せても起きなかったから、もう少し休ませてあげたくて……
頃合いを見計らっていた」
言われてみれば!と。
またしても今更のように、服を着せられている事に気付いたヴィオラは……
「もうっ、嘘でしょう?
恥ずかしくて死にそうですっ」
隠れるように、サイフォスの胸に顔を埋めた。
その言動にサイフォスは、心臓を完膚なきまでに撃ち抜かれて……
「俺は、ヴィオラが可愛いすぎて死にそうだっ」
と、その身体をむぎゅうと抱き締めた。
「っっ、イチャついてる場合じゃありません!
そんな格好でこの明るい中、どうやって帰るおつもりですかっ?」
「大丈夫だ。
頃合いを見計らっていたと言っただろう?
明るいと言っても、まだ皆が起きる前だから問題ない」
ヴィオラは、ほっと胸を撫で下ろすも。
その言葉が指し示す状況に、今頃「えっ」と驚く。
「……まさかサイフォス様、一睡もしてないんじゃ?」
「……ああ、だが1日くらい問題ない」
「そんなわけないでしょうっ!?
もう無理をさせたくないと言ったのにっ……」
するとサイフォスは酷く愛しげに、ヴィオラの頭を撫でた。
「本当に大丈夫だ。
部屋に戻ったら、公務の時間まで仮眠を取るし。
その公務も、今日は昼過ぎで終わる予定だから問題ない」
「……本当ですか?」
「ああ、だからヴィオラも今日はゆっくりしていてくれ。
でなければ俺も、心配で眠れない」
「……わかりました。
じゃあ早く、部屋に戻ってください」
愛しい人の温もりから、離れ難かったものの……
少しでも長く寝かせてあげたくて。
なにより、ラピズに見つからないように。
そう急かすヴィオラ。
「……わかった。
その代わり、今夜も夜這いに来ていいか?」
「今夜もっ?」
一瞬、嬉しさで胸が弾むも。
「っ、今日はダメです!
ちゃんとしっかり寝てください」
「違うっ、今日は何もしないと約束する。
ただ最初に言ったように、せめて一緒に眠りたいんだ」
一緒に眠れるのは嬉しい反面、何もしないのは寂しく感じるヴィオラ。
「……わかりました。
でも別に、そこまでは……
何もしないとまでは、約束しなくて、いいです」
それはつまり、少しくらいなら手を出してもいいと言っているようなもので……
キスくらいはして欲しいと思っていたヴィオラは、自ら催促しているような状況に、言いながら恥ずかしくてたまらなくなる。
そしてそんなヴィオラが、またしても死にそうなほど可愛いすぎて……
その唇を奪わずにはいられなくなるサイフォス。
して欲しいと思った事を、いきなりされて。
その不意打ちと、昨夜を思い出させる甘い熱に……
身も心も、どうしようもなく蕩けるヴィオラ。
しかも。
「……離れたくない」
キスの合間に、そう囁かれ。
ーーっっ、私もです……
言えない代わりに、ぎゅっとしがみついてしまう。
当然サイフォスは、ますます離れ難くなり。
いっそう唇を貪ると……
甘い毒に侵されるように、ヴィオラもますます離れられなくなる。
しかしそうしてる間にも、日は登っていく一方で……
ーーどうしようっ、早く離れなきゃ……
……っダメ!もう離れなきゃ!!
必死に感情を振り切って、キスから逃れるヴィオラ。
「っ、いい加減にしてください!
また夜に出来るでしょうっ?
早く、戻ってくださいっ……」
自分に言い聞かせるように、そしてサイフォスが興醒めするように、そう怒るも。
それは、続きは夜にと言っているようなもので……
「わかった」
サイフォスは愛しそうにそう微笑んだ。
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