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意識1
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ヴィオラが立ち去った後。
「どういう事ですか?
まさか、妃殿下が公務に携わる事になったのですかっ?」
2人のやり取りに、そう食いつくウォルター卿。
「ああそうだ。
俺を心配して、何度断っても懇願して来たんだ。
いい妃だろう?」
と、誇らしげなサイフォスに反して。
絶対何か企んでいるに決まってます!と、言いそうになるウォルター卿。
先程は微塵も心配していなかったヴィオラが、それどころかヴィオラのような悪妃が、心配して自ら公務を懇願するとは思えなかったからだ。
「はあ、しかし……大丈夫でしょうか?」
「……どういう意味だ」
「いえその、不備なく従事していただけるのかと……」
その途端、ビシリ!と目に見えて空気が凍りつく。
「ヴィオラに公務をさせろと再三言っていたお前が、そんな不合理な事を言うとはな」
戦慄が走るほどの、怒りを帯びた重低音が響き渡り……
「もっ、申し訳ございません!」
慌てて深謝するウォルター卿。
「最終通告だ。
ヴィオラを軽んじた言動や、不敬な言動等をした場合。
いくらお前でも、金輪際許さない」
それはつまり、次にそのような事があれば、容赦なく解雇するといった主旨で……
「はい!肝に銘じておきますっ」
そんな言動のせいで、サイフォスまで非難される羽目になった事を思い出し。
改めて反省するウォルター卿。
「頼んだぞ。
それと、慈善活動関連の書類をまとめておいてくれ」
「かしこまりました」
そうして。
1人になったサイフォスは、身支度を始めると。
不意に、先ほどのヴィオラとのスキンシップを思い出し……
ガシャーンと。
意識を囚われて、装身具を落としてしまう。
ハッとして、それを拾いながらも……
ーーヴィオラとキスした!
ヴィオラとキスした!!
甦る感触と、夢のような出来事に。
口元を手で覆いながら、堪らなく悶えていた。
一方、自室に戻ったヴィオラも……
ーー殿下とキスした!
殿下とキスした!!
唇に残る感触と、流されてしまった背徳感に。
口元に手を当てながら、どうしようもなく胸を締め付けられていた。
とはいえ、後悔や嫌悪感は微塵もなく。
むしろ、続きを期待している感覚に度々襲われ……
その都度ヴィオラは、それを振り払うように首を振っていた。
さらには、後でその人が来ると思うと、胸が高鳴る一方で……
そわそわと落ち着かない様子を見せていた。
すると当然ながら。
「妃殿下、どうされました?」
見かねたリモネに、そう心配されてしまう。
「っううん、何でもないの。
気にしないでっ?
それより、気分転換したいから、着替えと化粧直しを手伝ってちょうだい?」
そうやって、何とか気を紛らわすも……
「ねぇ、変じゃない?
似合ってるかしら……」
「はいとても、いつも以上に素敵です。
ですが、妃殿下が見た目を気にされるなんて、珍しいですね」
そう言われて、ハッとする。
ーー本当だ、私……
どうしてそんな事気にしてるのっ?
そもそも、なんでこんなにきめ込んでるのっ?
しかも着替えたドレスは、以前サイフォスからプレゼントされた、青のドレスの中から選んだもので。
化粧も昨日の舞踏会より、念入りに施していた。
ーーこれじゃあ殿下を意識してるって、言ってるようなものじゃない!
「ねぇやっぱり、他のドレスにっ」
慌てて着替えようとしたところで。
コンコン、と扉がノックされ。
「ヴィオラ、入ってもいいか?」
サイフォスがやって来てしてまった。
ーーどうしよう!
かといって忙しい殿下を、もう待たせるわけにはいかないし……
仕方なくヴィオラは、「どうぞ」と扉を開けさせた。
「遅くなってすまない。
先に片付けるべき公務があって、」
そう言ったところで。
ヴィオラの姿に、胸を撃ち抜かれるサイフォス。
いつも以上に美しいのは、もちろんの事。
自分が来るとわかっている状況下で、こんなにも粧し込んでくれて。
さらには自分がプレゼントしたもので、身を包んでくれていたからだ。
「っっ……よく似合っている。
とても綺麗だ」
「~~っっ、ありがとうございます。
ではさっそく、公務の説明をお願いします」
嬉しい反面、恥ずかしくて。
すぐさま本題に入るヴィオラ。
「その前に。
人払いをしているようだが、何かあったのか?」
「っ、別に何もありません。
ただその、公務に集中したかったので」
舞踏会での一件が申し訳なくて、泣いていたからだと言えるはずもなく。
そう理由をこじつけると。
「だから、リモネももう下がってちょうだい」
もっともらしく、そう取り繕った。
また、それには他の理由もあった。
サイフォスとのやり取りを、見られたくなかったからだ。
というのも、リモネもラピズとは長年の付き合いで……
当然、ラピズとやり直せるよう応援しており。
ヴィオラの悪妃作戦にも、色々と協力してくれたため。
サイフォスとの現状に、後ろめたさを感じていたのだ。
「どういう事ですか?
まさか、妃殿下が公務に携わる事になったのですかっ?」
2人のやり取りに、そう食いつくウォルター卿。
「ああそうだ。
俺を心配して、何度断っても懇願して来たんだ。
いい妃だろう?」
と、誇らしげなサイフォスに反して。
絶対何か企んでいるに決まってます!と、言いそうになるウォルター卿。
先程は微塵も心配していなかったヴィオラが、それどころかヴィオラのような悪妃が、心配して自ら公務を懇願するとは思えなかったからだ。
「はあ、しかし……大丈夫でしょうか?」
「……どういう意味だ」
「いえその、不備なく従事していただけるのかと……」
その途端、ビシリ!と目に見えて空気が凍りつく。
「ヴィオラに公務をさせろと再三言っていたお前が、そんな不合理な事を言うとはな」
戦慄が走るほどの、怒りを帯びた重低音が響き渡り……
「もっ、申し訳ございません!」
慌てて深謝するウォルター卿。
「最終通告だ。
ヴィオラを軽んじた言動や、不敬な言動等をした場合。
いくらお前でも、金輪際許さない」
それはつまり、次にそのような事があれば、容赦なく解雇するといった主旨で……
「はい!肝に銘じておきますっ」
そんな言動のせいで、サイフォスまで非難される羽目になった事を思い出し。
改めて反省するウォルター卿。
「頼んだぞ。
それと、慈善活動関連の書類をまとめておいてくれ」
「かしこまりました」
そうして。
1人になったサイフォスは、身支度を始めると。
不意に、先ほどのヴィオラとのスキンシップを思い出し……
ガシャーンと。
意識を囚われて、装身具を落としてしまう。
ハッとして、それを拾いながらも……
ーーヴィオラとキスした!
ヴィオラとキスした!!
甦る感触と、夢のような出来事に。
口元を手で覆いながら、堪らなく悶えていた。
一方、自室に戻ったヴィオラも……
ーー殿下とキスした!
殿下とキスした!!
唇に残る感触と、流されてしまった背徳感に。
口元に手を当てながら、どうしようもなく胸を締め付けられていた。
とはいえ、後悔や嫌悪感は微塵もなく。
むしろ、続きを期待している感覚に度々襲われ……
その都度ヴィオラは、それを振り払うように首を振っていた。
さらには、後でその人が来ると思うと、胸が高鳴る一方で……
そわそわと落ち着かない様子を見せていた。
すると当然ながら。
「妃殿下、どうされました?」
見かねたリモネに、そう心配されてしまう。
「っううん、何でもないの。
気にしないでっ?
それより、気分転換したいから、着替えと化粧直しを手伝ってちょうだい?」
そうやって、何とか気を紛らわすも……
「ねぇ、変じゃない?
似合ってるかしら……」
「はいとても、いつも以上に素敵です。
ですが、妃殿下が見た目を気にされるなんて、珍しいですね」
そう言われて、ハッとする。
ーー本当だ、私……
どうしてそんな事気にしてるのっ?
そもそも、なんでこんなにきめ込んでるのっ?
しかも着替えたドレスは、以前サイフォスからプレゼントされた、青のドレスの中から選んだもので。
化粧も昨日の舞踏会より、念入りに施していた。
ーーこれじゃあ殿下を意識してるって、言ってるようなものじゃない!
「ねぇやっぱり、他のドレスにっ」
慌てて着替えようとしたところで。
コンコン、と扉がノックされ。
「ヴィオラ、入ってもいいか?」
サイフォスがやって来てしてまった。
ーーどうしよう!
かといって忙しい殿下を、もう待たせるわけにはいかないし……
仕方なくヴィオラは、「どうぞ」と扉を開けさせた。
「遅くなってすまない。
先に片付けるべき公務があって、」
そう言ったところで。
ヴィオラの姿に、胸を撃ち抜かれるサイフォス。
いつも以上に美しいのは、もちろんの事。
自分が来るとわかっている状況下で、こんなにも粧し込んでくれて。
さらには自分がプレゼントしたもので、身を包んでくれていたからだ。
「っっ……よく似合っている。
とても綺麗だ」
「~~っっ、ありがとうございます。
ではさっそく、公務の説明をお願いします」
嬉しい反面、恥ずかしくて。
すぐさま本題に入るヴィオラ。
「その前に。
人払いをしているようだが、何かあったのか?」
「っ、別に何もありません。
ただその、公務に集中したかったので」
舞踏会での一件が申し訳なくて、泣いていたからだと言えるはずもなく。
そう理由をこじつけると。
「だから、リモネももう下がってちょうだい」
もっともらしく、そう取り繕った。
また、それには他の理由もあった。
サイフォスとのやり取りを、見られたくなかったからだ。
というのも、リモネもラピズとは長年の付き合いで……
当然、ラピズとやり直せるよう応援しており。
ヴィオラの悪妃作戦にも、色々と協力してくれたため。
サイフォスとの現状に、後ろめたさを感じていたのだ。
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