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交渉4
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「ですからっ……
肩代わりされてる事が不愉快なのです!
私の公務を横取りしないでくださいっ」
「もう既に、俺が取り仕切っている俺の公務だ。
だから、肩代わりされてるとは思わないでくれ」
そう、ヴィオラを思うがゆえに……
なかなか譲ってくれないサイフォスに。
「ですからそういう事ではなくてっ……
私は殿下に、もう無理をさせたくないんですっ!」
返す言葉をなくして、思わず本音がこぼれてしまう。
「っっ!」
その不意打ちに、サイフォスは思い切り胸を掴まれる。
「……っありがとう。
だが俺も、ヴィオラには微塵も無理をさせたくないんだ」
「無理ではありませんっ」
昂った感情と、サイフォスの思いに、今にも泣きそうになるヴィオラ。
「出来ないと言ってるわけじゃない。
ただ俺がやりたいという、我儘でしかないんだ。
俺がヴィオラの力になれてる事は、これくらいしかないから……
だからせめて、これくらいはさせてもらえないか?」
「でしたらせめてっ、剣術の鍛練はおやめください!
その熱意と努力は、十分心に届きましたからっ」
「そうなのかっ?
……だがすまない。
それも、俺の問題だから譲れない」
「では1つも譲歩してくださらないという事ですかっ!?
そもそも私は、何1つ殿下のお力になれていないというのにっ……
私だけ力になっていただくわけにはいきません!
逆に負担に感じますっ」
「それは違う。
ヴィオラは俺の何倍も、いや計り知れないほど、俺の力になっている。
ヴィオラが妃になってくれただけで、こうしてその顔を見れるだけで。
俺はいくらでも力が湧いてきて、なんだって乗り越えられるんだ」
そんなサイフォスに、その思いに……
堪らずヴィオラは、「ううっ」と嗚咽を漏らしてしまう。
そしてサイフォスも、そんなヴィオラが愛おしくてたまらなくて……
思わず抱き寄せてしまう。
しかしすぐに、またやってしまった!と我に返り。
「っすまない」
不快な思いをさせないように、離れると。
「……構いません」
ーー構わない!?
その返事に、期待が一気に膨れ上がる。
「ならば……
涙が収まるまで、抱きしめてもいいか?」
そう訊かれて、戸惑うヴィオラ。
抱き寄せられても、抵抗する気さえ起きなかった事に。
むしろ、離れて淋しく感じた事に。
自分でも驚きながら、構いませんと答えたわけだが……
改めて許可を求められると、今さら胸が騒ぎ出し。
だけど応じるわけにはいかないと、葛藤していたからだ。
そこで、これを交渉の手段にすれば!と思い付く。
「……でしたら、私にも公務をさせてください。
お聞きいただけるのなら、いくらでもそうして構いません」
ーーいくらでも!?
その夢のような甘い誘惑に、目が眩み。
なにより。
そこまで望むのなら、聞くしかないなと降参し。
せめて負担が軽いものを任せようと、折り合いを付けるなり。
「わかった」
ぐいと抱きしめるサイフォス。
瞬時に、ヴィオラの胸は跳ね上がり。
その高鳴りに動揺し……
慌ててそれを誤魔化すように、確かめた。
「ではっ、公務をさせてくださるのですねっ?」
「ああ、頼む」
そう応えながらも、サイフォスはそれどころではなく。
ずっと触れる事すら拒んでいた妻が、ようやくそれを受け入れてくれた事に。
そうまでして、力になりたいと思ってくれた事に。
それほど心配してくれた事に、感激し。
その愛しい温もりを噛み締めるように……
ぎゅっと、ぎゅううと抱きしめた。
ヴィオラの胸は、ますます高鳴り。
そんなサイフォスに、どうしようもなく愛しさが込み上げて……
思わず抱き返してしまうと。
瞬間、ぶわりと。
サイフォスは求める気持ちが暴発し……
「嫌なら突き飛ばしてくれ」
そう告げるや否や。
体勢をずらして、口付けを交わそうとした。
当然ヴィオラは、えっ!と驚くも。
なぜか突き飛ばす気にも、避ける気にもなれず……
ーーだめ、しちゃだめっ。
ラピズを裏切るような事、するわけにはいかない!
そう思いながらも、不可抗力に惹きつけられて……
唇が触れた瞬間。
「失礼します!」
そう扉がノックされ。
ビクリ!と2人は、咄嗟に離れた。
すると間髪入れずに、ウォルター卿が入って来て。
「許可してないだろうっ……」
そう吐き出しながら、サイフォスは片手で頭を抱えた。
「申し訳ございません」
頭を下げながらも、強攻して正解だったと思うウォルター卿。
そう、いくら体調が治ったとはいえ。
舞踏会での一件やヴィオラの立ち聞き等で、心労がピークに達しているサイフォスを。
ヴィオラがまたしても追い詰めるのではないかと、心配していたからだ。
そのためモエの時間稼ぎにも応じず、急いで戻って来たわけだが……
2人の気まずそうな雰囲気から、予想通りだと判断し。
強攻しなければ、まだ文句や罵倒が続いていただろうと思ったのだった。
一方ヴィオラは、ウォルター卿の突入で我に返り。
ーー私は今っ……何て事を!!
そう動揺すると共に、恥ずかしくてたまらなくなり……
「っっ、では私はっ、失礼します!」
早々に立ち去ろうとした。
その途端。
「待ってくれっ」
サイフォスに手首を掴まれて。
胸が思い切り弾けるヴィオラ。
「っな、なんですかっ?」
必死に平静を装うも、顔すら見れず……
「いやそのっ……
後で部屋に、行ってもいいか?」
そう訊かれて、いっそう胸が騒ぎ出す。
しかし。
「公務の説明をする」
そう続いた言葉で、一気に気持ちが引き締まり。
新たな恥ずかしさに襲われる。
ーー私ったら、何想像してるのっ!?
キスの続きをするつもりなのかと勘違いして、居た堪れなくなったヴィオラは、「お待ちしてます」と答えて。
逃げるように、サイフォスの寝室を後にしたのだった。
肩代わりされてる事が不愉快なのです!
私の公務を横取りしないでくださいっ」
「もう既に、俺が取り仕切っている俺の公務だ。
だから、肩代わりされてるとは思わないでくれ」
そう、ヴィオラを思うがゆえに……
なかなか譲ってくれないサイフォスに。
「ですからそういう事ではなくてっ……
私は殿下に、もう無理をさせたくないんですっ!」
返す言葉をなくして、思わず本音がこぼれてしまう。
「っっ!」
その不意打ちに、サイフォスは思い切り胸を掴まれる。
「……っありがとう。
だが俺も、ヴィオラには微塵も無理をさせたくないんだ」
「無理ではありませんっ」
昂った感情と、サイフォスの思いに、今にも泣きそうになるヴィオラ。
「出来ないと言ってるわけじゃない。
ただ俺がやりたいという、我儘でしかないんだ。
俺がヴィオラの力になれてる事は、これくらいしかないから……
だからせめて、これくらいはさせてもらえないか?」
「でしたらせめてっ、剣術の鍛練はおやめください!
その熱意と努力は、十分心に届きましたからっ」
「そうなのかっ?
……だがすまない。
それも、俺の問題だから譲れない」
「では1つも譲歩してくださらないという事ですかっ!?
そもそも私は、何1つ殿下のお力になれていないというのにっ……
私だけ力になっていただくわけにはいきません!
逆に負担に感じますっ」
「それは違う。
ヴィオラは俺の何倍も、いや計り知れないほど、俺の力になっている。
ヴィオラが妃になってくれただけで、こうしてその顔を見れるだけで。
俺はいくらでも力が湧いてきて、なんだって乗り越えられるんだ」
そんなサイフォスに、その思いに……
堪らずヴィオラは、「ううっ」と嗚咽を漏らしてしまう。
そしてサイフォスも、そんなヴィオラが愛おしくてたまらなくて……
思わず抱き寄せてしまう。
しかしすぐに、またやってしまった!と我に返り。
「っすまない」
不快な思いをさせないように、離れると。
「……構いません」
ーー構わない!?
その返事に、期待が一気に膨れ上がる。
「ならば……
涙が収まるまで、抱きしめてもいいか?」
そう訊かれて、戸惑うヴィオラ。
抱き寄せられても、抵抗する気さえ起きなかった事に。
むしろ、離れて淋しく感じた事に。
自分でも驚きながら、構いませんと答えたわけだが……
改めて許可を求められると、今さら胸が騒ぎ出し。
だけど応じるわけにはいかないと、葛藤していたからだ。
そこで、これを交渉の手段にすれば!と思い付く。
「……でしたら、私にも公務をさせてください。
お聞きいただけるのなら、いくらでもそうして構いません」
ーーいくらでも!?
その夢のような甘い誘惑に、目が眩み。
なにより。
そこまで望むのなら、聞くしかないなと降参し。
せめて負担が軽いものを任せようと、折り合いを付けるなり。
「わかった」
ぐいと抱きしめるサイフォス。
瞬時に、ヴィオラの胸は跳ね上がり。
その高鳴りに動揺し……
慌ててそれを誤魔化すように、確かめた。
「ではっ、公務をさせてくださるのですねっ?」
「ああ、頼む」
そう応えながらも、サイフォスはそれどころではなく。
ずっと触れる事すら拒んでいた妻が、ようやくそれを受け入れてくれた事に。
そうまでして、力になりたいと思ってくれた事に。
それほど心配してくれた事に、感激し。
その愛しい温もりを噛み締めるように……
ぎゅっと、ぎゅううと抱きしめた。
ヴィオラの胸は、ますます高鳴り。
そんなサイフォスに、どうしようもなく愛しさが込み上げて……
思わず抱き返してしまうと。
瞬間、ぶわりと。
サイフォスは求める気持ちが暴発し……
「嫌なら突き飛ばしてくれ」
そう告げるや否や。
体勢をずらして、口付けを交わそうとした。
当然ヴィオラは、えっ!と驚くも。
なぜか突き飛ばす気にも、避ける気にもなれず……
ーーだめ、しちゃだめっ。
ラピズを裏切るような事、するわけにはいかない!
そう思いながらも、不可抗力に惹きつけられて……
唇が触れた瞬間。
「失礼します!」
そう扉がノックされ。
ビクリ!と2人は、咄嗟に離れた。
すると間髪入れずに、ウォルター卿が入って来て。
「許可してないだろうっ……」
そう吐き出しながら、サイフォスは片手で頭を抱えた。
「申し訳ございません」
頭を下げながらも、強攻して正解だったと思うウォルター卿。
そう、いくら体調が治ったとはいえ。
舞踏会での一件やヴィオラの立ち聞き等で、心労がピークに達しているサイフォスを。
ヴィオラがまたしても追い詰めるのではないかと、心配していたからだ。
そのためモエの時間稼ぎにも応じず、急いで戻って来たわけだが……
2人の気まずそうな雰囲気から、予想通りだと判断し。
強攻しなければ、まだ文句や罵倒が続いていただろうと思ったのだった。
一方ヴィオラは、ウォルター卿の突入で我に返り。
ーー私は今っ……何て事を!!
そう動揺すると共に、恥ずかしくてたまらなくなり……
「っっ、では私はっ、失礼します!」
早々に立ち去ろうとした。
その途端。
「待ってくれっ」
サイフォスに手首を掴まれて。
胸が思い切り弾けるヴィオラ。
「っな、なんですかっ?」
必死に平静を装うも、顔すら見れず……
「いやそのっ……
後で部屋に、行ってもいいか?」
そう訊かれて、いっそう胸が騒ぎ出す。
しかし。
「公務の説明をする」
そう続いた言葉で、一気に気持ちが引き締まり。
新たな恥ずかしさに襲われる。
ーー私ったら、何想像してるのっ!?
キスの続きをするつもりなのかと勘違いして、居た堪れなくなったヴィオラは、「お待ちしてます」と答えて。
逃げるように、サイフォスの寝室を後にしたのだった。
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