27 / 123
代価2
しおりを挟む
「……それでも俺は、ヴィオラを守りたい。
それに、無駄になるのはお金だけじゃないから」
「どういう事?」
「代価が無駄になるんだ」
「代価?」
そこでヴィオラは……
~「足を治してやってくれ。
代価で頼む」~
そのサイフォスの言葉を思い出す。
ラピズの説明によると……
魔法には、魔術士のスキルの他に。
原動力となる、エネルギーが必要だという。
そのエネルギーは、魔法をかける対象によって異なり。
動物には生命エネルギー、植物には自然のエネルギー、無生物には物質のエネルギーを要すとの事。
そしてそれらのエネルギーは、適した物を選べるといった理由で、魔術士が用意するのが通例で。
その用意したエネルギー代も含めて、対価として請求していた。
ちなみに生命エネルギーとは、命や寿命の事で。
生贄として、家畜や小生物が使われていた。
そんな中。
生贄を利用せず、または金銭的に利用出来ず。
自らの寿命をエネルギーとし、魔術士への報酬のみを支払うケースを、代価と呼んでいるとの事だった。
「待って、それじゃあ……
殿下は私の足を治すために、自分の寿命を使ったって事っ?」
そう訊いた途端。
「また殿下かよっ!」
苛立ちを吐き出すラピズに。
ビクリと慄くヴィオラ。
「……ごめん。
けど今は、俺の話をしてただろ?」
「ごめんなさい……
でも誰かに聞かれるかもしれないから、大声を出すのはやめて?」
「……ん、気を付ける」
ラピズは片手で頭を抱えて、そう自己嫌悪した。
「じゃあ話に戻るけど……
確かに殿下も、ヴィオラのために自分の寿命を使ってた」
ーーやっぱり!
どうしてそこまでっ……
胸が切り裂かれるヴィオラ。
と同時に、その時の疑問も解消される。
そう、生贄を利用しないサイフォスは……
剣術大会での大怪我を治すのに、自分の寿命を使う事になるため、本末転倒になるからだ。
そこでラピズから、さらなるショックを打ち明けられる。
「だけど、あれくらいの代価なら大した事ないよ。
だって俺は、ヴィオラを守るために……
この伝説魔法に寿命を注ぎ込んでるんだからっ」
そう、ただでさえ伝説魔法は高額なのに。
これほど持続時間を要すとなれば……
騎士でしかないラピズに、生贄の分まで支払う余裕など、あるはずもなかったのだ。
「っっ、嘘でしょ……
どうしてそんな事っ!
それで私が、平気だと思ったのっ!?」
「思ってないよ!
だから今まで黙ってたんだっ。
けどあの程度の代価で、殿下だけ格好付けられたらたまんないしっ……
すでに払った代価を無駄にしないためにも、護衛騎士を辞めるわけにはいかないんだ!」
「っ、だからって……
今回はどれくらいの期間、その魔法をかけたのっ?」
「とりあえず3ヶ月。
けど状況次第で、俺はいくらでも延長するから」
それは3ヶ月以内に離婚が成立しなければ、さらに寿命と大金を消費すると脅しているようなもので……
「そんなっ……
延長だけは、もう絶対しないでとお願いしても?」
「……ごめん、これは俺の問題だから。
それにその願いを聞いたら、離婚しないような気がするから」
「ラピズ……」
ヴィオラは困惑しながらも。
その予想はあながち間違っていないかもと、返す言葉をなくした。
自分の一存ではどうにもならない上に。
これまでの状況から、サイフォスが離婚を切り出すとは思えなかったからだ。
それでも3ヶ月という、差し迫ったタイムリミットがあれば。
どんな手を使ってでも、離婚に漕ぎ着けるしかないだろうが……
それがなければ、逆にどんどんサイフォスに絆されそうな気がしていたのだ。
結局ヴィオラは、ラピズの命を守るために……
心を鬼にして、悪妃に徹するしかなかった。
それに、無駄になるのはお金だけじゃないから」
「どういう事?」
「代価が無駄になるんだ」
「代価?」
そこでヴィオラは……
~「足を治してやってくれ。
代価で頼む」~
そのサイフォスの言葉を思い出す。
ラピズの説明によると……
魔法には、魔術士のスキルの他に。
原動力となる、エネルギーが必要だという。
そのエネルギーは、魔法をかける対象によって異なり。
動物には生命エネルギー、植物には自然のエネルギー、無生物には物質のエネルギーを要すとの事。
そしてそれらのエネルギーは、適した物を選べるといった理由で、魔術士が用意するのが通例で。
その用意したエネルギー代も含めて、対価として請求していた。
ちなみに生命エネルギーとは、命や寿命の事で。
生贄として、家畜や小生物が使われていた。
そんな中。
生贄を利用せず、または金銭的に利用出来ず。
自らの寿命をエネルギーとし、魔術士への報酬のみを支払うケースを、代価と呼んでいるとの事だった。
「待って、それじゃあ……
殿下は私の足を治すために、自分の寿命を使ったって事っ?」
そう訊いた途端。
「また殿下かよっ!」
苛立ちを吐き出すラピズに。
ビクリと慄くヴィオラ。
「……ごめん。
けど今は、俺の話をしてただろ?」
「ごめんなさい……
でも誰かに聞かれるかもしれないから、大声を出すのはやめて?」
「……ん、気を付ける」
ラピズは片手で頭を抱えて、そう自己嫌悪した。
「じゃあ話に戻るけど……
確かに殿下も、ヴィオラのために自分の寿命を使ってた」
ーーやっぱり!
どうしてそこまでっ……
胸が切り裂かれるヴィオラ。
と同時に、その時の疑問も解消される。
そう、生贄を利用しないサイフォスは……
剣術大会での大怪我を治すのに、自分の寿命を使う事になるため、本末転倒になるからだ。
そこでラピズから、さらなるショックを打ち明けられる。
「だけど、あれくらいの代価なら大した事ないよ。
だって俺は、ヴィオラを守るために……
この伝説魔法に寿命を注ぎ込んでるんだからっ」
そう、ただでさえ伝説魔法は高額なのに。
これほど持続時間を要すとなれば……
騎士でしかないラピズに、生贄の分まで支払う余裕など、あるはずもなかったのだ。
「っっ、嘘でしょ……
どうしてそんな事っ!
それで私が、平気だと思ったのっ!?」
「思ってないよ!
だから今まで黙ってたんだっ。
けどあの程度の代価で、殿下だけ格好付けられたらたまんないしっ……
すでに払った代価を無駄にしないためにも、護衛騎士を辞めるわけにはいかないんだ!」
「っ、だからって……
今回はどれくらいの期間、その魔法をかけたのっ?」
「とりあえず3ヶ月。
けど状況次第で、俺はいくらでも延長するから」
それは3ヶ月以内に離婚が成立しなければ、さらに寿命と大金を消費すると脅しているようなもので……
「そんなっ……
延長だけは、もう絶対しないでとお願いしても?」
「……ごめん、これは俺の問題だから。
それにその願いを聞いたら、離婚しないような気がするから」
「ラピズ……」
ヴィオラは困惑しながらも。
その予想はあながち間違っていないかもと、返す言葉をなくした。
自分の一存ではどうにもならない上に。
これまでの状況から、サイフォスが離婚を切り出すとは思えなかったからだ。
それでも3ヶ月という、差し迫ったタイムリミットがあれば。
どんな手を使ってでも、離婚に漕ぎ着けるしかないだろうが……
それがなければ、逆にどんどんサイフォスに絆されそうな気がしていたのだ。
結局ヴィオラは、ラピズの命を守るために……
心を鬼にして、悪妃に徹するしかなかった。
10
お気に入りに追加
145
あなたにおすすめの小説
全てを諦めた令嬢の幸福
セン
恋愛
公爵令嬢シルヴィア・クロヴァンスはその奇異な外見のせいで、家族からも幼い頃からの婚約者からも嫌われていた。そして学園卒業間近、彼女は突然婚約破棄を言い渡された。
諦めてばかりいたシルヴィアが周りに支えられ成長していく物語。
※途中シリアスな話もあります。
国王陛下、私のことは忘れて幸せになって下さい。
ひかり芽衣
恋愛
同じ年で幼馴染のシュイルツとアンウェイは、小さい頃から将来は国王・王妃となり国を治め、国民の幸せを守り続ける誓いを立て教育を受けて来た。
即位後、穏やかな生活を送っていた2人だったが、婚姻5年が経っても子宝に恵まれなかった。
そこで、跡継ぎを作る為に側室を迎え入れることとなるが、この側室ができた人間だったのだ。
国の未来と皆の幸せを願い、王妃は身を引くことを決意する。
⭐︎2人の恋の行く末をどうぞ一緒に見守って下さいませ⭐︎
※初執筆&投稿で拙い点があるとは思いますが頑張ります!
うたた寝している間に運命が変わりました。
gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。
三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃
紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。
【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。
心の鍵は開かない〜さようなら、殿下。〈第一章完・第二章開始〉
詩海猫
恋愛
侯爵令嬢フィオナ・ナスタチアムは五歳の時に初めて出会った皇弟フェアルドに見初められ、婚約を結ぶ。
侯爵家でもフェアルドからも溺愛され、幸せな子供時代を経たフィオナはやがて誰もが見惚れる美少女に成長した。
フェアルドとの婚姻も、そのまま恙無く行われるだろうと誰もが信じていた。
だが違った。
ーーー自分は、愛されてなどいなかった。
☆エールくださった方ありがとうございます!
*後宮生活 5 より閲覧注意報発令中
*前世話「心の鍵は壊せない」完結済み、R18にあたる為こちらとは別の作品ページとなっています。
*感想大歓迎ですが、先の予測書き込みは出来るだけ避けてくださると有り難いです。
*ハッピーエンドを目指していますが人によって受け止めかたは違うかもしれません。
*作者の適当な世界観で書いています、史実は関係ありません*
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる