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共同作戦1
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ラピズの協力方法は、こうだった。
不満を募らせてた侍女たちの一部が、ヴィオラへの嫌がらせを企んでいたらしく……
それから守ると同時、それに加担した侍女たちを手荒く取り押さえたり。
剣を突き付けて、「妃殿下に不届きを働いた者は、次は容赦なく斬る」と脅したり。
悪い噂を広めてる侍女たちにも同様に、恐怖心を植え付けて。
後宮の秩序や雰囲気を悪くしていったのだった。
それなら護衛騎士としての役目を果たしてるに過ぎないため、処罰は免れるうえに。
その対策として、一刻も早く見限ろうとするはずだと考えたからだ。
それにより。
怖がった侍女たちは、極力ヴィオラに近寄らなくなり……
その隙を狙って、再びフラワベルがやって来た。
そう、初見の一件以来。
この部屋に通さないようにと、ヴィオラが侍女たちに言いつけていたため。
これまで門前払いされていたのだ。
「お久しぶりです。
何度もこちらに伺ったのに、一度も会ってくださらないなんて。
相変わらず酷いお方ですのね」
「それ以前に、ここへの来訪は禁じたはずですが……
物覚えが悪いのですか?」
「それはこちらの台詞ですわ。
あなたの指図は受けないと言ったはずです。
それと、サイフォス様に酷い事をなさったら、再びお邪魔するとも」
「部外者のあなたから、夫婦の問題に口を出される筋合いはありません」
その言葉が胸に刺さって。
フラワベルとともに、ラピズも秘かに唇を噛む。
「っ、部外者じゃないわっ。
だいたい!公務を妨害するなんて、夫婦の問題じゃ済まされないわっ。
しかもそのせいでサイフォス様が、ずっと昼食も休憩も取れなかった事をご存知っ!?」
その情報に、今度はヴィオラが胸を痛めて。
平静を装いながらも、微かに唇を噛んでしまう。
「それどころか剣術大会の大怪我もっ、あなたのせいって話じゃない!」
「……落ち着いてください。
まず部外者じゃないとは、どういう意味ですか?」
「っ、それはっ……」
フラワベルは一瞬ためらうも。
意を決したように、ヴィオラを睨みつけ。
「この事は公にされてないから。
教える代わりに、私たちだけの秘密にしてちょうだい」
そう言って。
リモネとランド・スピアーズに視線を向けた。
それは2人をこの場から外すよう、促す仕草だったが……
「私は護衛騎士なので、妃殿下のお側を離れるわけにはいきません。
他言は致しませんので、ご心配なく」
ランド・スピアーズは、ヴィオラを守るためにそう断った。
しかしヴィオラは、1人で立ち向かって来たフラワベルに対して卑怯だと考え。
「大丈夫よ。
何かあったらすぐに呼ぶから、部屋の外で待機しててちょうだい」
と、2人を立ち去らせたのだった。
「では教えてください」
「わかったわ。
実は私、サイフォス様の婚約者だったの」
「っ、えっ?」
思わぬ関係に、驚きを隠しきれないヴィオラ。
婚約者がいれば、社交会で知れ渡ってるはずだからだ。
「公にされなかったのはっ……
知ってると思うけど、我がビグストン家は最大の権力を握ってるから。
王族と結婚すれば、当然権力が集中する事になるでしょう?
だからそれを恐れた貴族たちに、妨害される恐れがあったからよっ」
それはもっともな理由だったが……
「……ではどうして殿下は、私に求婚を?」
ヴィオラがそう思うのも当然で。
婚約者がいながら他の令嬢に求婚するなど、ありえないからだ。
ところがフラワベルの答えは、ヴィオラをいっそう驚かせた。
「あなたに心変わりしたからでしょう!?
そのせいで私は、婚約破棄されたの!」
ーー嘘でしょ……
酷い!
そんな事が許されるのっ?
というのも王族や貴族の結婚は、家同士の繋がりに重きを置いているからだ。
だからヴィオラも、この結婚を受け入れるしかなかったし。
政略結婚も多かったのだ。
それでも心変わりの相手と愛し合っていれば、あり得るケースではあったが……
一度も交流がない片思いの相手のために、重要な婚約を破棄するなど、信じられない事だった。
それならフラワベルを正妃に、ヴィオラを側妃に迎え入れれば済むのだから。
不満を募らせてた侍女たちの一部が、ヴィオラへの嫌がらせを企んでいたらしく……
それから守ると同時、それに加担した侍女たちを手荒く取り押さえたり。
剣を突き付けて、「妃殿下に不届きを働いた者は、次は容赦なく斬る」と脅したり。
悪い噂を広めてる侍女たちにも同様に、恐怖心を植え付けて。
後宮の秩序や雰囲気を悪くしていったのだった。
それなら護衛騎士としての役目を果たしてるに過ぎないため、処罰は免れるうえに。
その対策として、一刻も早く見限ろうとするはずだと考えたからだ。
それにより。
怖がった侍女たちは、極力ヴィオラに近寄らなくなり……
その隙を狙って、再びフラワベルがやって来た。
そう、初見の一件以来。
この部屋に通さないようにと、ヴィオラが侍女たちに言いつけていたため。
これまで門前払いされていたのだ。
「お久しぶりです。
何度もこちらに伺ったのに、一度も会ってくださらないなんて。
相変わらず酷いお方ですのね」
「それ以前に、ここへの来訪は禁じたはずですが……
物覚えが悪いのですか?」
「それはこちらの台詞ですわ。
あなたの指図は受けないと言ったはずです。
それと、サイフォス様に酷い事をなさったら、再びお邪魔するとも」
「部外者のあなたから、夫婦の問題に口を出される筋合いはありません」
その言葉が胸に刺さって。
フラワベルとともに、ラピズも秘かに唇を噛む。
「っ、部外者じゃないわっ。
だいたい!公務を妨害するなんて、夫婦の問題じゃ済まされないわっ。
しかもそのせいでサイフォス様が、ずっと昼食も休憩も取れなかった事をご存知っ!?」
その情報に、今度はヴィオラが胸を痛めて。
平静を装いながらも、微かに唇を噛んでしまう。
「それどころか剣術大会の大怪我もっ、あなたのせいって話じゃない!」
「……落ち着いてください。
まず部外者じゃないとは、どういう意味ですか?」
「っ、それはっ……」
フラワベルは一瞬ためらうも。
意を決したように、ヴィオラを睨みつけ。
「この事は公にされてないから。
教える代わりに、私たちだけの秘密にしてちょうだい」
そう言って。
リモネとランド・スピアーズに視線を向けた。
それは2人をこの場から外すよう、促す仕草だったが……
「私は護衛騎士なので、妃殿下のお側を離れるわけにはいきません。
他言は致しませんので、ご心配なく」
ランド・スピアーズは、ヴィオラを守るためにそう断った。
しかしヴィオラは、1人で立ち向かって来たフラワベルに対して卑怯だと考え。
「大丈夫よ。
何かあったらすぐに呼ぶから、部屋の外で待機しててちょうだい」
と、2人を立ち去らせたのだった。
「では教えてください」
「わかったわ。
実は私、サイフォス様の婚約者だったの」
「っ、えっ?」
思わぬ関係に、驚きを隠しきれないヴィオラ。
婚約者がいれば、社交会で知れ渡ってるはずだからだ。
「公にされなかったのはっ……
知ってると思うけど、我がビグストン家は最大の権力を握ってるから。
王族と結婚すれば、当然権力が集中する事になるでしょう?
だからそれを恐れた貴族たちに、妨害される恐れがあったからよっ」
それはもっともな理由だったが……
「……ではどうして殿下は、私に求婚を?」
ヴィオラがそう思うのも当然で。
婚約者がいながら他の令嬢に求婚するなど、ありえないからだ。
ところがフラワベルの答えは、ヴィオラをいっそう驚かせた。
「あなたに心変わりしたからでしょう!?
そのせいで私は、婚約破棄されたの!」
ーー嘘でしょ……
酷い!
そんな事が許されるのっ?
というのも王族や貴族の結婚は、家同士の繋がりに重きを置いているからだ。
だからヴィオラも、この結婚を受け入れるしかなかったし。
政略結婚も多かったのだ。
それでも心変わりの相手と愛し合っていれば、あり得るケースではあったが……
一度も交流がない片思いの相手のために、重要な婚約を破棄するなど、信じられない事だった。
それならフラワベルを正妃に、ヴィオラを側妃に迎え入れれば済むのだから。
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