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剣術大会3

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 そうして、剣術大会が始まると……
会場は活気に満ちあふれ、ヴィオラは胸を躍らせた。

ーーすごい!
今の剣さばき、かなりの達人ねっ。

 とそこで、視線を感じて。
そちらの方に目を向けると……
剣士の一人が、ヴィオラを熱い視線で見つめていた。

 美しいヴィオラにとって、そういった視線を向けられる事は、日常茶飯事だったが……
その剣士の視線は格別で、どこか思い詰めてるようだった。

ーーなんなの?
怪訝に思いながらも、釘づけになっていると。

「……どうした、ヴィオラ」
サイフォスに声かけられる。

「っ、いえ。
本当に凄腕の剣士たちばかりで、夢中になっていました。
これほどの剣士たちを、よく集めましたね」

「ああ。
上位10人の剣士には、順位に応じた高額の賞金と、名誉称号も与える事にしているからだ。
そのため、類を見ないほどの参加者が募り。
事前に予選も行ったから、こうも強者ばかりなのだ。
おかげでヴィオラを夢中にさせることが出来て、なりよりだ」

 その言葉で、ヴィオラはウォルター卿の言葉を思い出す。

~「殿下は妃殿下を喜ばせようと、忙しい最中寝る間も惜しんで、このために奔走していたのですよっ?」~

ーーこんな非礼な妃のために、これほど大規模な事をしてくれてたなんて……
胸がぎゅっと締め付けられる。

「それよりヴィオラは、なぜ剣術観戦が好きなのだ?」

「……剣術は、私には決して出来ない事なので。
出来る者に憧れているからです」

 憧れるようになったのは、当然ラピズがきっかけだったが……
事実、のろまで不器用なヴィオラは、華麗な剣さばきを熟せる剣士たちに惚れ惚れしていた。

「憧れの的……
となるとヴィオラは、剣術に長けてる男が好きなのか?」

「……もちろんです。
凄腕の剣士でなければ、男として見る事すら出来ません」

 というのは、もちろん嘘で。
悪妃としてサイフォスに、対象外通告を突き付けたのだった。

 ところがサイフォスは、落ち込んだ素振りを見せるどころか。

「ならば逆に、ヴィオラは凄腕の剣士に好意を抱くのだな?」
そう目を輝かせた。

ーーまさか、殿下も剣術を嗜んでるの?
でも、たとえそうだとしても……
公務に追われてる王族が、そこまで強いはずがない。

 そもそも、最強の王宮騎士たちに護られている王族は、剣術を鍛える必要などなかったのだ。
そのため歴代でも、剣術に長けてる王族など一人もいなかった。

「そうとは限りませんが……
この大会で優勝するほどの腕前なら、憧れはするでしょう」

「そうか……」
そう呟くとサイフォスは、ウォルター卿を呼びつけて。
コソコソと推し問答を始めたが……

 ヴィオラは歓声に惹き寄せられて、再び観戦に夢中になった。


 すると、先程ヴィオラを熱い視線で見つめていた男が、戦う番になった。

ーーさっきの人だ。
そう思ったところで。
その男が、サイフォスとヴィオラに向かって敬礼をした。

 と、周りや遠目にはそう見えていたが……
実際はヴィオラに、意味深な視線を送っていて。
ヴィオラも先程の一件から、それに気付いていた。

ーー本当に、一体なんなの?
もしかして、ラピズの知り合いっ?
そう思いついて。
行方を知る手掛かりになるかもしれないと、胸が騒ぎ始めた。

 そしてすぐさま。
その男の鮮やかな剣さばきに、衝撃を受ける。

ーー待って、凄腕なんてレベルじゃない!
しかもあの太刀筋といい、身のこなしといい……
あの体型といい、既視感のある眼光といい……

 そうそれは、ラピズのそれとそっくりだったのだ。

 だがその男は、茶髪にブラウンアイで……
顔も甘いマスクではあるものの、ラピズのヴィジュアルとは違っていた。

ーーどういう事?
でも私がラピズを間違うはずがない!

 そう、シュトラント公爵は、似ている事にまったく気付いてなかったが……
ずっとラピズの太刀筋を見てきて、その剣さばきに惚れ込んでいたヴィオラは、絶対に間違わない自信があったのだ。

 とはいえ、別人だと認めざるを得ない状況に……
混乱の最中。
試合はあっという間に、その男の勝利で終わった。

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