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オオルリアゲハ4
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「示談金、300万で手を打ってあげるわ」
「300万っ!?
ふざけないでよ!そんなお金あるわけないしっ……
払うわけないでしょっ?」
「そう。
だったらあんたの情報を売るまでよ」
そう言って揚羽は、バッグから封書を取り出して。
記載されてる、毒女の戸籍や個人情報を読み始めた。
「ちょっ、やめてよ!
てゆうかバカじゃないっ?
そんなの大した金になんないし、それで300万は吹っ掛け過ぎでしょっ」
「だから、バカはあんたでしょ?
回収屋とか人身売買業者に売るに決まってるじゃない。
そしたらあんたは奴隷として、どこかの組織で一生飼い殺しされるかもね」
途端、怖気づく毒女。
「あと、あんたがやった今までの詐欺情報も入手してるから」
と、その封書をテーブルの上に投げつけると。
毒女は慌ててそれを確かめた。
「ウソでしょ、どうやって……」
「うちの組織にかかれば容易い事よ」
その情報は、鷹巨の携帯から毒女の携帯を介して、侵入したPCから入手していた。
といっても、毒女の携帯は詐欺用のレンタル携帯だったため。
鷹巨の携帯からウイルスを仕込んだ画像を送る事で……
聡子の情報を集めてるであろう毒女が、それを専用のPCに移動すると考え。
予想通り、そこから侵入出来たというわけだった。
「こっちは示談金もらうより、あんたごと全部売った方が儲かるんだけどね」
「でもそんなお金ほんとにないのっ!」
「あるじゃない。
依頼者の成りすまし口座に入れてた、偽治療費の300万が。
これでもお兄さんの介護費を考えて、格安の示談金にしてもらったのよ?
感謝してほしいくらいだわ」
「でもあのお金はっ……
依頼用に借りたものだし、もう返したし」
「じゃあまた借りれば?
あ、いいもの見せてあげる」
揚羽は携帯を手に取ると、鷹巨にURLを送り、それを開くよう指示した。
「えっ……
ウソ、待ってよ!」
表示されたのは、ダークウェブの人身売買サイトで。
すでに毒女の画像と下の名前が、Coming Soonと銘打って紹介されていたのだ。
もちろんそれは、実在するサイトに手を加えた偽サイトだが……
「刑務所で匿ってもらう手もあるけど、どうする?
警察に売られたい?
それともどこかの組織に売られたい?
どっちにしても、そうなったらお兄さんはどうなるのかしらね」
青ざめて何も言えなくなった毒女に……
揚羽はいっそう畳み掛ける。
「嫌なら示談金を払うしかないし、足りないなら急いで工面しなきゃね?
タイムリミットは、そのカウントダウンしてる数字だから」
それは毒女の画像下に表示されてる、売買が開始されるまでの時間で。
「そんなっ……」
「じゃあ入金先を指示するわ。
あ、下手に探り入れない方が身の為よ?
例えば、調べてウイルスに感染したりとか……
ほら、そんなふうに」
と、揚羽は毒女の携帯を指差した。
そこには鷹巨からのメッセージが届いていて。
「えっ」と隣を確認するも、当の本人は何の動きもなく。
戸惑いながらそれを開くと、入金先が表示され。
毒女は驚怖したと同時。
ここに呼び出された経緯に合点がいって、してやられたと頭を抱えた。
ま、調べられても情報操作してるから何も出ないけどね。
「言ったでしょ?逆恨みした相手が悪かったって。
うちは大きな組織だから、抵抗しても自分の首を絞めるだけよ?
それに私はただの実行犯、つまり組織の使いっ走りでしかないから、何の譲歩も出来ないわ。
ついでに言っとくと、あんたのお兄さんを騙したのも私じゃない。
その時の実行犯は足を洗おうとして、とっくに組織に潰されてるわ」
もちろんそれは、再犯防止用の嘘だ。
「当時はサイトを運営してる組織に上納金を納めるだけで、詐欺の手口は実行犯に一任されてたから……
情報の出所はサイトの事しか知らない、あんたが交際してたヤクザね?」
当然その答えは噤まれる。
「あのね……
こっちは調べがついてて確認してるの。
もし共謀して誰かを庇ってるんだとしたら、あんたを尋問屋に飛ばさなきゃなんないからね」
そう脅迫めいたカマをかけると。
毒女は思わずゾッとした。
「もう一度聞くわ。
情報の出所は……」
と揚羽はヤクザの名前を口にして、入手した情報を確認すると。
渋々「そうよ」と返事をもらう。
よし、裏取れた。
これでシラを切られずに、ヤクザの口も封じれるわね。
「じゃあもう帰っていいけど。
これに懲りたら、二度と逆恨みなんかしない事ね。
あんたみたいなバカは、また返り討ちに遭うだけだし。
あんたもお兄さんも、全部自業自得なんだから。
わかったら、急いでお金を用意するのね。
私みたいに一生組織に飼い殺しされるよりマシよ?
お金なんてまた稼げばいいし、それで解決するならラッキーなんだから。
そうだ、いい機会だしこの際カタギにでもなったら?
いつか復讐されてお兄さんの二の舞になる前に、足を洗った方が賢明よ」
そう、私みたいに人生諦めてなければね。
そうして、毒女が個室から立ち去ると……
揚羽は悲しげに座り込んでる鷹巨に近付き、180万を収めた封筒を差し出した。
「……えっ?」
「これはあんたのお金だし、あんたが1番の被害者だからね」
「でもこの分は後で返ってくるし……」
「返ってくるわけないでしょ?
どこまで人がいいのよ」
「でも俺も、聡子さんを……」
「何の被害も受けてないけど?
それにあんたは犯行に消極的だったじゃない」
優しくて間抜けで、復讐する気あんの?ってくらい……
「でもあんたも、これに懲りたら簡単に人を信じない事ね。
信じていいのは、裏切られてもいい時だけよ」
そう、裏切られても大したダメージにならない時や。
裏切られてもいいくらい、自己犠牲出来る愛があるならね。
「聡子さん、俺……」
「もう行きなさい。
さようなら、2度と会う事はないわ」
操作により、すでに鷹巨の携帯から聡子の連絡先は消去されていた。
鷹巨は、上手く言葉に出来ない様子で戸惑いながらも……
ペコリと頭を下げて、揚羽の前から去って行った。
「無事に終わって良かったけど、全然出番なかったし」
「なに言ってんの、ずっと出番だったわよ?
倫太郎が側にいてくれたから、安心して挑発出来たし、強気でハッタリかませたんじゃない」
「つか煽りすぎだろ。
こっちは気が気じゃなかったし」
「騙してなんぼだからね。
でも気を張って疲れたでしょ?
すぐ料理運んでもらうから、くつろいでて」
「え、俺も?」
「当たり前でしょ?
外で一緒に食事するなんて滅多にないんだし、たまには私とデートしたっていいでしょ?」
デート!?
その3文字に嬉しい衝撃を食らう倫太郎。
「じゃあ俺が払う。
女に奢られんの、シャクだし?」
「くだらな……
でもそう言うなら、素直に甘えさせてもらうわ」
「好きなだけ甘えろよ。
……や、せっかくだし?」
思わずドキリとしたものの、揚羽はそれを冗談で誤魔化す。
「へぇ、ずいぶんデカい口叩くじゃない。
じゃあ思いっきり飲んで、酔ったら介抱してもらわなきゃね」
介抱!?
今度はその2文字の衝撃に、胸が膨らむ倫太郎。
「別にいいけど……
襲われても文句ゆうなよ?」
「そんな気さらさらないくせに」
鼻で笑った揚羽に。
「……よくわかってんじゃん。
アンタには絶対手ぇ出さねぇから、安心して飲めよ」
同じく鼻で笑って、心を潰しながらそう返す倫太郎。
「じゃあ倫太郎も付き合ってよ」
「いや車だし俺のが弱いのに、介抱出来なくなるだろ」
「だったら逆に介抱してあげようか?」
「ふざけんなよ。
こっちは襲われたくねぇし」
「は?あんた殺されたいの?」
ハハッと、楽しそうに笑う倫太郎。
そして揚羽も、倫太郎の言葉を寂しく感じながらも。
こうやってふざけ合う時間を楽しく思っていた。
そして……
安心出来るその存在を、信じられるかけがえのない居場所に思えていた。
「300万っ!?
ふざけないでよ!そんなお金あるわけないしっ……
払うわけないでしょっ?」
「そう。
だったらあんたの情報を売るまでよ」
そう言って揚羽は、バッグから封書を取り出して。
記載されてる、毒女の戸籍や個人情報を読み始めた。
「ちょっ、やめてよ!
てゆうかバカじゃないっ?
そんなの大した金になんないし、それで300万は吹っ掛け過ぎでしょっ」
「だから、バカはあんたでしょ?
回収屋とか人身売買業者に売るに決まってるじゃない。
そしたらあんたは奴隷として、どこかの組織で一生飼い殺しされるかもね」
途端、怖気づく毒女。
「あと、あんたがやった今までの詐欺情報も入手してるから」
と、その封書をテーブルの上に投げつけると。
毒女は慌ててそれを確かめた。
「ウソでしょ、どうやって……」
「うちの組織にかかれば容易い事よ」
その情報は、鷹巨の携帯から毒女の携帯を介して、侵入したPCから入手していた。
といっても、毒女の携帯は詐欺用のレンタル携帯だったため。
鷹巨の携帯からウイルスを仕込んだ画像を送る事で……
聡子の情報を集めてるであろう毒女が、それを専用のPCに移動すると考え。
予想通り、そこから侵入出来たというわけだった。
「こっちは示談金もらうより、あんたごと全部売った方が儲かるんだけどね」
「でもそんなお金ほんとにないのっ!」
「あるじゃない。
依頼者の成りすまし口座に入れてた、偽治療費の300万が。
これでもお兄さんの介護費を考えて、格安の示談金にしてもらったのよ?
感謝してほしいくらいだわ」
「でもあのお金はっ……
依頼用に借りたものだし、もう返したし」
「じゃあまた借りれば?
あ、いいもの見せてあげる」
揚羽は携帯を手に取ると、鷹巨にURLを送り、それを開くよう指示した。
「えっ……
ウソ、待ってよ!」
表示されたのは、ダークウェブの人身売買サイトで。
すでに毒女の画像と下の名前が、Coming Soonと銘打って紹介されていたのだ。
もちろんそれは、実在するサイトに手を加えた偽サイトだが……
「刑務所で匿ってもらう手もあるけど、どうする?
警察に売られたい?
それともどこかの組織に売られたい?
どっちにしても、そうなったらお兄さんはどうなるのかしらね」
青ざめて何も言えなくなった毒女に……
揚羽はいっそう畳み掛ける。
「嫌なら示談金を払うしかないし、足りないなら急いで工面しなきゃね?
タイムリミットは、そのカウントダウンしてる数字だから」
それは毒女の画像下に表示されてる、売買が開始されるまでの時間で。
「そんなっ……」
「じゃあ入金先を指示するわ。
あ、下手に探り入れない方が身の為よ?
例えば、調べてウイルスに感染したりとか……
ほら、そんなふうに」
と、揚羽は毒女の携帯を指差した。
そこには鷹巨からのメッセージが届いていて。
「えっ」と隣を確認するも、当の本人は何の動きもなく。
戸惑いながらそれを開くと、入金先が表示され。
毒女は驚怖したと同時。
ここに呼び出された経緯に合点がいって、してやられたと頭を抱えた。
ま、調べられても情報操作してるから何も出ないけどね。
「言ったでしょ?逆恨みした相手が悪かったって。
うちは大きな組織だから、抵抗しても自分の首を絞めるだけよ?
それに私はただの実行犯、つまり組織の使いっ走りでしかないから、何の譲歩も出来ないわ。
ついでに言っとくと、あんたのお兄さんを騙したのも私じゃない。
その時の実行犯は足を洗おうとして、とっくに組織に潰されてるわ」
もちろんそれは、再犯防止用の嘘だ。
「当時はサイトを運営してる組織に上納金を納めるだけで、詐欺の手口は実行犯に一任されてたから……
情報の出所はサイトの事しか知らない、あんたが交際してたヤクザね?」
当然その答えは噤まれる。
「あのね……
こっちは調べがついてて確認してるの。
もし共謀して誰かを庇ってるんだとしたら、あんたを尋問屋に飛ばさなきゃなんないからね」
そう脅迫めいたカマをかけると。
毒女は思わずゾッとした。
「もう一度聞くわ。
情報の出所は……」
と揚羽はヤクザの名前を口にして、入手した情報を確認すると。
渋々「そうよ」と返事をもらう。
よし、裏取れた。
これでシラを切られずに、ヤクザの口も封じれるわね。
「じゃあもう帰っていいけど。
これに懲りたら、二度と逆恨みなんかしない事ね。
あんたみたいなバカは、また返り討ちに遭うだけだし。
あんたもお兄さんも、全部自業自得なんだから。
わかったら、急いでお金を用意するのね。
私みたいに一生組織に飼い殺しされるよりマシよ?
お金なんてまた稼げばいいし、それで解決するならラッキーなんだから。
そうだ、いい機会だしこの際カタギにでもなったら?
いつか復讐されてお兄さんの二の舞になる前に、足を洗った方が賢明よ」
そう、私みたいに人生諦めてなければね。
そうして、毒女が個室から立ち去ると……
揚羽は悲しげに座り込んでる鷹巨に近付き、180万を収めた封筒を差し出した。
「……えっ?」
「これはあんたのお金だし、あんたが1番の被害者だからね」
「でもこの分は後で返ってくるし……」
「返ってくるわけないでしょ?
どこまで人がいいのよ」
「でも俺も、聡子さんを……」
「何の被害も受けてないけど?
それにあんたは犯行に消極的だったじゃない」
優しくて間抜けで、復讐する気あんの?ってくらい……
「でもあんたも、これに懲りたら簡単に人を信じない事ね。
信じていいのは、裏切られてもいい時だけよ」
そう、裏切られても大したダメージにならない時や。
裏切られてもいいくらい、自己犠牲出来る愛があるならね。
「聡子さん、俺……」
「もう行きなさい。
さようなら、2度と会う事はないわ」
操作により、すでに鷹巨の携帯から聡子の連絡先は消去されていた。
鷹巨は、上手く言葉に出来ない様子で戸惑いながらも……
ペコリと頭を下げて、揚羽の前から去って行った。
「無事に終わって良かったけど、全然出番なかったし」
「なに言ってんの、ずっと出番だったわよ?
倫太郎が側にいてくれたから、安心して挑発出来たし、強気でハッタリかませたんじゃない」
「つか煽りすぎだろ。
こっちは気が気じゃなかったし」
「騙してなんぼだからね。
でも気を張って疲れたでしょ?
すぐ料理運んでもらうから、くつろいでて」
「え、俺も?」
「当たり前でしょ?
外で一緒に食事するなんて滅多にないんだし、たまには私とデートしたっていいでしょ?」
デート!?
その3文字に嬉しい衝撃を食らう倫太郎。
「じゃあ俺が払う。
女に奢られんの、シャクだし?」
「くだらな……
でもそう言うなら、素直に甘えさせてもらうわ」
「好きなだけ甘えろよ。
……や、せっかくだし?」
思わずドキリとしたものの、揚羽はそれを冗談で誤魔化す。
「へぇ、ずいぶんデカい口叩くじゃない。
じゃあ思いっきり飲んで、酔ったら介抱してもらわなきゃね」
介抱!?
今度はその2文字の衝撃に、胸が膨らむ倫太郎。
「別にいいけど……
襲われても文句ゆうなよ?」
「そんな気さらさらないくせに」
鼻で笑った揚羽に。
「……よくわかってんじゃん。
アンタには絶対手ぇ出さねぇから、安心して飲めよ」
同じく鼻で笑って、心を潰しながらそう返す倫太郎。
「じゃあ倫太郎も付き合ってよ」
「いや車だし俺のが弱いのに、介抱出来なくなるだろ」
「だったら逆に介抱してあげようか?」
「ふざけんなよ。
こっちは襲われたくねぇし」
「は?あんた殺されたいの?」
ハハッと、楽しそうに笑う倫太郎。
そして揚羽も、倫太郎の言葉を寂しく感じながらも。
こうやってふざけ合う時間を楽しく思っていた。
そして……
安心出来るその存在を、信じられるかけがえのない居場所に思えていた。
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