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黒海
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私が自由を得てから既に十五日が過ぎた。
ふと気が付けば、周囲の様子が尋常でない。
海というものは障害物が無い為に、直射日光の強さが際立っているものだ。
特に生まれつきメラニン色素を持たない私などは日光がきつすぎて、完全防備しないと後で酷い事になってしまう。
と、いう訳でフルフェイスヘッドセット(目隠しに使われた奴だ)と拘束服を改造して、あれこれ紫外線その他をカットしたりしてた訳なのだけど……
……照り返しがまったく無くなっていた。
と言うより、海面真っ黒ですよ?
いつからだろう?
ん~
まあ、照り返しが無いなら、それはそれで助かるんだけど。
どれどれ?
掬った海水は真っ黒。
これ……色じゃ無いな。
海水成分に未知の何かが混じってる。
光を反射せずに、ほぼ100%吸収する粒子?かな?
面白いなぁ
他にどんな特性が……
…………ヤバい!
なんか上がってくる!
水深800メルから、凄い勢いだ
ちょっ、水圧とか耐圧とか減圧とかはどうなってるの!?
緊急出力アップ!
速度マシマシで全力エスケープ!
………うぇあ!?
揺れる床に倒れないで済んだのは僥倖だった。
元々が全長6メル有るか無いかの小型船だけど、まさしく木っ端の様に翻弄される。
うそ~ん。
20メル以上の巨体が、海面から完全に飛び上がってるよ。
『海竜』
空中で器用に身をくねらせて、こっちに頭を向けながら豪快に着水!
衝撃でちょっとした津波が押し寄せてくる。
ヤバい、ヤバい。
船がひっくり返ったら、一巻の終わりだ。
水中翼を伸ばして安定性を取りたいけど、ここは逆に抵抗を減らして海面を加速一択。
だって津波はヤバいけど、津波を起こした奴はもっとヤバいからね!
四枚のヒレを総動員して追い掛けてくる鰐面の、ゾロリと並ぶ牙の剣呑さは夢に見るね。絶対。
水切りよろしく海面を跳ねる様に疾駆するこっちに、流石に追い付けずに徐々に離れていってるけど、水中で生物が出せる速度じゃ無いよね~
って。
風と、水の魔力が収束されて……
これ、竜の息吹きの前兆!?
ヤバヤバヤバ!
ん~
でっかいなぁ……体長27メルとちょっと。
目は退化していて存在せず。頭蓋骨、分厚いな~。眼窩に当たる部分は頭蓋骨の厚さは均一だけど、そこの体表面には神経細胞が集まってる。
ロレンチーニ器官?
いやぁ、鼻の中にあるその器官とは違うね。
これはどっちかというと音を聴く為の器官じゃないかな?
四枚のヒレの腹側には、吸盤?
尾は長いな~
先端は縦に平たい。これ、尾を一打ちで加速出来る身体構造だな。
それにしても、でっかいなぁ……
一体、ナニ食ってこんな巨体を維持してるんだろう?
どれどれ?胃の中身は~?
うぇっ!?
………これ、同種だ。こいつ、共食い習性があるのか……
あれ?
これは……生殖器。
なっが!?
膨張しないで畳まれてるけど、これ、何メルある?ええと、伸ばすとおよそ80メル……先端部の他に何ヵ所もある感覚器と、この神経塊は簡易な脳だな。
細かな襞で張り付いて、這い進める構造だし……
……………これは、雌がもっと巨大な可能性がある?
ありそうだな。
ぜ、全速離脱~~~!!
【海竜】
帝国近海では体長10メル
最大で15メルが記録されている海洋爬虫類型の魔物。
鰐の様な頭部と胴部、オールに似たヒレ状の四肢を有し、尾は短い、
肉食。
水の魔力と親和性が高く、風の魔力もある程度有する。
体格の大きな雄個体と、二回り程小型の雌十頭程度が群れを作り、歌うような音でコミュニケーションを取ることで集団で狩りを行う場合がある。
黒海で遭遇した海竜は環境の為か目が退化しており、エコーロケーション能力を獲得していた。
水と風の魔力を収束させた高周波+高圧水流の竜の息吹きも、恐らくはエコーロケーション能力の応用だろう。
尾は長く、先端部はヒレ状となっていて大きな推進力を生める構造となっている。
胃の中に同種が入っていた事から共食いの習性があるか、もしくは『動くもの=獲物』である可能性もある。
解剖出来たのは27メルサイズの成熟した雄個体のみである為、確定ではないが四肢の腹側に吸盤状の器官があり、何かに身体を吸着固定出来る様になっている他、生殖器の形状と長さから雄が雌の身体に吸い付いて、フェロモンの誘導に沿って生殖器を伸ばす構造であると考えられる。
当然ながら、雌の個体は雄より遥かに大きくないと成り立たない理論であるが、おそらく更に深海に潜むであろう巨獣をいたずらに刺激するのは自殺行為であると判断した。
もしも興味があるのなら、黒海に行くと良い。
私は二度と行きたくないが。
ふと気が付けば、周囲の様子が尋常でない。
海というものは障害物が無い為に、直射日光の強さが際立っているものだ。
特に生まれつきメラニン色素を持たない私などは日光がきつすぎて、完全防備しないと後で酷い事になってしまう。
と、いう訳でフルフェイスヘッドセット(目隠しに使われた奴だ)と拘束服を改造して、あれこれ紫外線その他をカットしたりしてた訳なのだけど……
……照り返しがまったく無くなっていた。
と言うより、海面真っ黒ですよ?
いつからだろう?
ん~
まあ、照り返しが無いなら、それはそれで助かるんだけど。
どれどれ?
掬った海水は真っ黒。
これ……色じゃ無いな。
海水成分に未知の何かが混じってる。
光を反射せずに、ほぼ100%吸収する粒子?かな?
面白いなぁ
他にどんな特性が……
…………ヤバい!
なんか上がってくる!
水深800メルから、凄い勢いだ
ちょっ、水圧とか耐圧とか減圧とかはどうなってるの!?
緊急出力アップ!
速度マシマシで全力エスケープ!
………うぇあ!?
揺れる床に倒れないで済んだのは僥倖だった。
元々が全長6メル有るか無いかの小型船だけど、まさしく木っ端の様に翻弄される。
うそ~ん。
20メル以上の巨体が、海面から完全に飛び上がってるよ。
『海竜』
空中で器用に身をくねらせて、こっちに頭を向けながら豪快に着水!
衝撃でちょっとした津波が押し寄せてくる。
ヤバい、ヤバい。
船がひっくり返ったら、一巻の終わりだ。
水中翼を伸ばして安定性を取りたいけど、ここは逆に抵抗を減らして海面を加速一択。
だって津波はヤバいけど、津波を起こした奴はもっとヤバいからね!
四枚のヒレを総動員して追い掛けてくる鰐面の、ゾロリと並ぶ牙の剣呑さは夢に見るね。絶対。
水切りよろしく海面を跳ねる様に疾駆するこっちに、流石に追い付けずに徐々に離れていってるけど、水中で生物が出せる速度じゃ無いよね~
って。
風と、水の魔力が収束されて……
これ、竜の息吹きの前兆!?
ヤバヤバヤバ!
ん~
でっかいなぁ……体長27メルとちょっと。
目は退化していて存在せず。頭蓋骨、分厚いな~。眼窩に当たる部分は頭蓋骨の厚さは均一だけど、そこの体表面には神経細胞が集まってる。
ロレンチーニ器官?
いやぁ、鼻の中にあるその器官とは違うね。
これはどっちかというと音を聴く為の器官じゃないかな?
四枚のヒレの腹側には、吸盤?
尾は長いな~
先端は縦に平たい。これ、尾を一打ちで加速出来る身体構造だな。
それにしても、でっかいなぁ……
一体、ナニ食ってこんな巨体を維持してるんだろう?
どれどれ?胃の中身は~?
うぇっ!?
………これ、同種だ。こいつ、共食い習性があるのか……
あれ?
これは……生殖器。
なっが!?
膨張しないで畳まれてるけど、これ、何メルある?ええと、伸ばすとおよそ80メル……先端部の他に何ヵ所もある感覚器と、この神経塊は簡易な脳だな。
細かな襞で張り付いて、這い進める構造だし……
……………これは、雌がもっと巨大な可能性がある?
ありそうだな。
ぜ、全速離脱~~~!!
【海竜】
帝国近海では体長10メル
最大で15メルが記録されている海洋爬虫類型の魔物。
鰐の様な頭部と胴部、オールに似たヒレ状の四肢を有し、尾は短い、
肉食。
水の魔力と親和性が高く、風の魔力もある程度有する。
体格の大きな雄個体と、二回り程小型の雌十頭程度が群れを作り、歌うような音でコミュニケーションを取ることで集団で狩りを行う場合がある。
黒海で遭遇した海竜は環境の為か目が退化しており、エコーロケーション能力を獲得していた。
水と風の魔力を収束させた高周波+高圧水流の竜の息吹きも、恐らくはエコーロケーション能力の応用だろう。
尾は長く、先端部はヒレ状となっていて大きな推進力を生める構造となっている。
胃の中に同種が入っていた事から共食いの習性があるか、もしくは『動くもの=獲物』である可能性もある。
解剖出来たのは27メルサイズの成熟した雄個体のみである為、確定ではないが四肢の腹側に吸盤状の器官があり、何かに身体を吸着固定出来る様になっている他、生殖器の形状と長さから雄が雌の身体に吸い付いて、フェロモンの誘導に沿って生殖器を伸ばす構造であると考えられる。
当然ながら、雌の個体は雄より遥かに大きくないと成り立たない理論であるが、おそらく更に深海に潜むであろう巨獣をいたずらに刺激するのは自殺行為であると判断した。
もしも興味があるのなら、黒海に行くと良い。
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