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第9章
第305話 -M's side 3-
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翌日。朝食を終えたミリィ達は2時間ほど経ってからユミルから呼び出される。一応、謁見の間に呼び出されたので全員が正装をしている。
「呼び出して悪いな」
全員が入室すると普段と変わらないユミルが立っており、手には小型の箱の様なものを持っていた。ミリィ達はユミルの元へと近寄ると頭を下げて挨拶をする。
「あぁ、そんな形式は要らん。この場には親父しか居ないからな」
ユミルは手振りで断ると箱を開け、中身を取り出す。
「お前らには地母神の所に飛行石で移動してもらうが…………そんな格好で大丈夫か?」
「謁見の間に呼び出されたんですもの。正装するのは当たり前ですわ」
「あー…そうだな。連絡しなかったオレが悪いわ。メイドに別室を案内させるから動き易い服装に着替えてくれるか?」
「分かりましたわ」
ミリィ達は別室で着替えを済ませると再びユミルの元へと戻る。マクネアは魔術師の様なローブを羽織り、ミリィは軽量の帷子を装備していた。どの装備も『あい君』が事前に準備していたもので有り、店売りの装備品よりも能力は高い。ヴァルキューレ達とインクリジットはそのままの格好だったが、彼女達には戦闘服は必要無い。ヴァルキューレとノルンは瞬時に聖装へと切り替える事が出来、インクリジットは本来の姿へと変われるからだ。
「おいおい……2人が持っている武器は誰が作ったんだよ?そんな立派なモンは見た事ねぇぞ?」
ユミルはミリィ達の武器を見ると驚いた表情を浮かべる。パッと見ただけで2人が持つ武器は国宝級であると分かったからだ。
「これはアルスがくれた武器ですわ」
「……なるほどな。なら納得だわ」
2人が持つロングソードと杖。見た目は何ら変哲も無いが、ドワーフという種族柄、違和感を感じたのだ。だが、『アルスがくれた』と言われ、ただの武器では無いと納得した。規格外の男が渡したのならば、その武器もまた規格外なのだろうと。
「んじゃさっさと移動させるぞ。移動先には地母神が待ってるって事だったから、用件は本人から聞いてくれ」
「分かりましたわ」
返事を聞いたユミルは飛行石で地面に円を描く。そして、新品の飛行石をマクネアに渡すと使用方法を説明する。
「これの使い方は大体分かると思うが、範囲内に居る者を移動させるんだ。描き終わった石を潰せば転移モドキが発動する」
「ええ。体験したから大丈夫ですわ」
「マクネアに渡したのは帰還用だからな。…んじゃ後はご自由に。役立てる話が聞ければいいな」
ユミルは使用した飛行石をマクネアに渡すと少し距離を取る。マクネアは全員が円の中にいる事を確認してから飛行石を潰す。すると瞬く間に全員がその場から消え、ユミルとユミルの父親だけが残った。
「……さて。オレ達は見学と洒落込むか」
鏡の前に椅子を二脚置くと2人は着席し、マクネア達を見学するのであった。
♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢
謁見の間から違う場所へと移動したミリィ達はすぐさま周囲を警戒する。厳かな雰囲気の広場へと移動したが、余りにも神々し過ぎる為であった。
「よく来たのぉ」
老婆の様な声が響き、マクネア達は更に警戒を強める。
「安心せぇ。危害を加えようとは一切思っておらんよ」
『どっこらせ』といった声と共に広場の中央に老婆が現れる。手にはジョッキを持ち、革張りの座り心地の良さそうな椅子に腰掛けていた。
「酒は呑むかぇ?」
「い、いえ……要りませんわ」
「そうかい。…ま、立ち話もなんじゃし、まずは座りんしゃい」
老婆の声と共に目の前に5人が座れるソファーが出現する。マクネア達は及び腰ながらもソファーへと向かい腰を下ろした。
「まずは初めましてじゃの。アタシがソチ達が会いたいと言っておった地母神じゃ」
地母神がしわくちゃの笑みを浮かべながら挨拶をする。それにマクネア達は各々挨拶する。
「………1つよろしいでしょうか?」
挨拶が終わると同時に口を開いたのはヴァルキューレであった。ただ、ヴァルキューレの声色にはいつもとは違う、どこかで感じた様な声色だった。
「なんだい?」
地母神は満面の笑みをヴァルキューレへと向けるが目だけは笑ってはいなかった。その目の意図はマクネア達には分からず、ヴァルキューレ達だけが理解した。
「…いえ。やっぱり何でもないです」
「そうかい?それじゃ……ソチらが聞きたいこととは何じゃ?」
マクネアが姿勢を正してから咳払いを軽くして喋り始める。
「ンンッ……聞きたい事とは『黒琥珀』という石についてです」
「ほう?黒琥珀とな?」
「はい。…その前にどういう経緯でここに来たのか説明をしても宜しいですか?」
「あー、要らん要らん。アタシは耳と目がとても優れておってな?マクネア達が何を求めて来たのかはじゅーーーーぶんに知っておるよ」
「……じゃあ何で聞き返したんだろ?」
ミリィがボソッと呟くと地母神は口角を上げてミリィを向く。
「そりゃアタシがお茶目だからじゃよ。少しは気が抜けたじゃろ?」
『カカカッ』と地母神は笑うと酒をあおる。酒臭い息を吐くとマクネアとミリィに目を向ける。
「その質問の答えじゃが、アタシはどうすれば良いか、を知っておる----
「「本当ですかッ?!!!」」
「---が、その答えはアタシが渡せる、扱えるモノでは無いのじゃよ」
ミリィ達の言葉に地母神は両手を『ひの字』にし、ヤレヤレと首を振った。
「…一体どういう事ですか?」
「簡単な話じゃよ。それはアタシの問題では無く、マクネアとミリィ2人の問題なのじゃよ」
「「????」」
「分からんか?ならばこう言えば分かるじゃろう。………マクネアはその眼を完璧に扱える様に、ミリィは自身の中に溜め込まれたチカラを発掘し扱える様にならんとアルスを助ける事は出来んじゃろうなぁ」
地母神の世間話をする様な口調にマクネア達は目を丸くして言葉を失う。地母神の話に質問をぶつけようとマクネアが喋り出そうとする。
「それはどう----
「要は役不足なのじゃよ。アルスの目醒めにはソチらが自分自身の役割をしっかりと認識しなければ繋がらぬ。この世界は今や混沌の時期。アルス一人のチカラでは全てに手を広げる事は無理じゃろうて」
「………それは一体どういう意味なのですか?地母神様には何が視えておられるのですか!?」
「アタシはそこのないすばでぇーの女神とは違い先を見通す事は出来ぬ。じゃが、今起きている事は見透す事ができる。世界は今混沌へと踏み出しておるのじゃ」
「「……………」」
地母神の話にマクネア達は口を閉ざす。彼女が何を見ているのかは全く理解出来ないが、言われている内容は少しだけなら理解出来る。だがそれは『実力不足』なのか、『理解不足』の何方なのかは分からない。
「………つまり、地母神様がお話するのはこの二人が力をつけてから…という事でしょうか?」
ノルンが言葉を選びながら話の要点を述べる。地母神は『ヒヒッ』と笑うとそれに付け加える。
「いや。アタシはそこに辿り着けるように案内するだけじゃ。そして、何をどう理解し、どう受け止めるかはこの子ら次第じゃ。………まぁ、聡明な子らじゃから答えはすぐに見つけるじゃろうがの」
地母神は再び酒をあおると、どこからかビーフジャーキーのような食べ物を取り出しハムハムと食べ始める。
しばらくの間、静寂に包まれるがその時間はマクネア達にとって思案を巡らせる時間であった。地母神が何を言おうとしているのかを考える為であった。
「………つまり、私達がその役割に気付かなければ進展出来ない。その為に地母神様は何かをしてくださる……という事でしょうか?」
神に対して『してくれる』という表現は滑稽だ。神は全てを聞き入れたり、全てに応えたりはしない。気まぐれに反応するだけなので、求めるという事は図々しいことでもある。だが、地母神の言い方は、その気まぐれが起きたのではないかとマクネアは読み、そのような言葉になったのだ。
「そうじゃ。アタシが手を差し伸べるなんぞ黒琥珀の何十倍も貴重じゃぞ?……ま、アタシの縄張りが汚れるのが嫌という側面もあるが」
「…ならば何をすれば良いのでしょう?」
「簡単なことじゃ。マクネアはそのチカラを完璧に使いこなせ。覚醒したと言ってもそれはまだ序の口でしか無い。肌に水が染み渡るようにそのチカラを物にするのじゃ」
マクネアは地母神の言葉に目を見張る。それは自分の能力を知っているという事ではなく、彼女が更なる先を知っているという事に対して。
「ミリィも同様じゃ。じゃが、ソチはまだ気付いておらなんだ。ソチの中には眠りに眠ったチカラが存在する。それを見つけ出し、日常的に使いこなせる様に追い込まなければならぬ」
「えっ……?そ、そんなのがあたしにあるんですか?」
「あるとも。ソチらの保護者は言わなんだが、ソチらは鍵であるのじゃ。その鍵で重要な鍵穴を開錠していくのがソチらの役目なのじゃよ」
「地母神様……」
「おうおう、遅かれ早かれこの子らには気付かせるつもりじゃったろ?ならばアタシが言えば良い。さすれば狂わんじゃろうて」
ノルンの嗜める様な口調に地母神は真面目な表情で返す。2人は目で会話をするとノルンは目を伏せてこれ以上は何も言わなかった。
「私達が鍵…?」
「アルスを助ける鍵ってことだよね?」
マクネアとミリィは互いに会話をするが、神独特の言い回しが引っ掛かり、思考の沼へと足を踏み入れ始める。
「……さて。一先ず出せる情報はこれだけじゃな。後はソチらがどう捉えるか次第じゃ」
地母神は指を鳴らすとジョッキが酒で満ちる。ツマミで濃くなった口を酒で洗うと腕で口を拭い、ヴァルキューレへと話しかける。
「この世界の管理者よ。この子らは戦える準備はしておるのか?」
「え?あ、はい…。ここに来る前に済ませております」
地母神にヴァルキューレが返事をする。武器も防具もユミルの時に済ませたのを確認していた。
「ならば良し。あとは流れに身を任せるのみであるのぉ」
「? それはどういう----
地母神が頷くと両手をパンッと鳴らす。するとミリィとマクネアがこの場から一瞬にして消え去った。一瞬の事にヴァルキューレは言葉途中で息を呑み、ノルンやインクリジットは目を見張っていた。
「え、えっ!??」
ヴァルキューレとノルンが驚くのも無理はなかった。彼女達は不測の事態に備えてミリィ達には転移阻害の魔法を掛けていた。なのに2人が一瞬にして消え去った事態に口をあんぐりと広げたのだ。
「……いや、驚く事は無いじゃろ?ここはアタシの領域じゃぞ?ソチらが如何に優れようとも、領域内では主人の方が上に立つのは知っておるじゃろ」
呆れた様に地母神は説明すると、インクリジットを手招きする。インクリジットは指で自分を指し、『私?』という表情を浮かべるが、地母神は頷いてチョイチョイと更に手招く。
「前に会った時はただの魔物じゃと思うておったが………不思議な事もあるよのぉ」
地母神はインクリジットを観察しながらポツリと呟く。アルスと初めて会った時、この魔物は一介の魔物であった。しかし、アルスの情によりこの魔物は生かされ、キルリアへと連れ帰り、そこで生きて行く事を許された。
インクリジットの種族特性を消し、どうやって生活していくのかを地を伝って観察していたが、そこからの展開は流石の地母神も予想外であった。驚いた理由は複数あるが、その中でもとびきり驚いたのがインクリジットの知能指数であった。会った時には並の知能だと思っていたが、キルリアに着いた途端にグンッと急激に伸びたのだ。
それからはアレヨアレヨと物事を次々に吸収し、遂にはヒトの世界での役職まで手に入れた。こんな上手い話があるはずないと神である地母神は思ったほどのシンデレラストーリーだ。
だが、地母神はインクリジットをしっかりと観察して理由が分かった。この魔物は、いや、彼女はアルスによって高みへと昇ったのだと。その証拠はアルスが制約として彼女に着用させた漆黒の首輪であり、アルスの命令通り、常に着用していた事が彼女を高みへと昇らせた原因でもあった。
(普通ならば他種族の魔力は相反するものであるが………元々アルスにはこの娘を殺す縛りは無かった訳じゃな。首輪に備わっているアルスの魔力が、この娘に浸透した様じゃの)
地母神は首輪から漏れるアルスの魔力と、インクリジットに流れている魔力が似たようなものになっているのを観察すると鼻で笑う。それはアルスの適当さの中に秘められた優しさを見抜いて。
(……一度アルスには話しておく必要があるのぅ。無意識下でその様な慈悲を込められたら世界は虜になってしまう。アルスがそう望んでおるのならば話は別じゃが…………あの様子からじゃ面倒くさい事はしたくない感じじゃからの)
「あ、あの…………」
地母神が物思いに耽っているとインクリジットがキョドキョドしながら話しかけた。
「ん?あぁ…すまないね。ちぃーとばっかし考え事をしてたんでね」
「あ……そ、それは邪魔してすみません……」
「よいよい。…さて、ソチを呼んだのには理由があっての。マクネアやミリィとは違うが、ソチもまたアルスの目醒めに必要な欠片であるのじゃ」
「えっ……私がですか?」
「そうじゃ。ソチは魔族であるが、少しばかり特殊な状態となっている。ちぃとばかし----
「あのぉー………お話し中に申し訳ないのですが…」
「………なんじゃ?」
地母神がインクリジットへ何かを話そうとした時、ヴァルキューレが申し訳無さそうに話を遮る。
「ミリィ達はどこへ行ったのか教えて頂けないでしょうか?私とミリィは繋がっているはずなのですが、探しても見つからなくて…」
「……………あぁ!そうじゃそうじゃ。それをまずは言うべきじゃったの。ミリィ達はアタシが特別に創り上げたお部屋に移動させておるよ。まぁ簡単に言えば稽古部屋じゃがな」
「け、稽古部屋??」
「そうじゃ。あの子らはまだまだ足りぬからの。簡単かつ迅速な運びをした方が良いと思うてな」
「………それってどんな稽古なんですか?」
「ん?アタシが飼い慣らしている魔物と取っ組み合いじゃ。アタシが創り上げた空間じゃからどんな事になっても死ぬこたぁ無いぞ」
ニッコリと笑みを浮かべる地母神に、ヴァルキューレとノルンは顔を青ざめて絶叫する。
「えええええええええ!!!!?そ、それは不味いですってばぁ!!!!ま、地母神様!!早く私達もミリィ達の元へ飛ばして下さい!!!」
「おぉうっ?!!だ、大丈夫じゃて…。手っ取り早く鍛えるだけなのじゃから…」
「そういう問題じゃないんです!!特にマクネアは暴走したりしたら大変なんです!!!」
「良いから早く!!私達も飛ばして下さい!!」
ヴァルキューレとノルンの剣幕に圧された地母神は慌てて2人をミリィ達の元へと送る。
「……おー、怖かった。神なんぞ怒らせるモンじゃないのぉ」
「…ヴァルキューレ様方が慌てるのはしょうがないと思いますけど……。あ、それよりも1つ聞いてよろしいでしょうか?」
「ん?なんじゃ?」
「……地母神様はヴァルキューレ様方の事をお知りだったんでしょうか?お二人のご様子から初対面では無い様な気がしまして…」
「…………それはどうじゃろうな?じゃが、神は意外にも側におるモンじゃ。管理者としてアタシのことを知ってたのかもしれんぞ?」
「うーん……なんとなくそんな感じじゃなかったんですけどね」
インクリジットは先程までの会話を思い出しながら感想を述べる。地母神はその様子にクスリと笑うと、声の質を変えて話し掛ける。
「さて…その話は今からする事には関係無い。本題へと移ろうか」
インクリジットは地母神の声質の変化を瞬時に感じ取り佇まいを直す。
「インクリジットよ。今から行うはソチを更なる高みへと押し上げるモノとなる。それは将来を見越してソチを戦力として見ているからである」
地母神の言葉にインクリジットは何も言わない。質問をしたいが、今までの傾向から答える事は無いだろうと思ってだ。
「よって、ソチにはアルスの片割れの様な存在になってもらう。その為の試練は過酷で死を望みたくなるものであるが、それを越えなければならぬ」
「……一つだけ質問をお許し下さい」
「よかろう」
「それは……アルスの力になれますか?」
「なれるとも」
「ではそれを喜んでお受けします」
余りにも返事が早い為、地母神は一瞬訝しむが、インクリジットの忠義の底にあるモノを考えると納得した。
「……ふむ。では今から扉を開く。そこに入った瞬間から試練が始まる」
地母神は地面に手を当てると渦巻き状へと変化する。大きさはヒト一人が座れる椅子のサイズだ。
「試練を無事突破出来れば戻ってこれる。失敗したとしても戻ってこれるが、代償としてソチの魔力の大半が封印される」
地母神の言葉は後出しであったが、インクリジットは全く気にしなかった。
「戦闘になる可能性はありますか?」
「無いとも有るとも言えぬ。入ればわかるぞ。……じゃが、ヒントを与えるならば試練にはソチの直感で動くべきじゃ」
「直感で……。わかりました」
インクリジットは一瞬考え込んだが、内容を整理すると大きく頷く。そして、深々と深呼吸をした後に渦巻き状の地面へと飛び込んでいった。
インクリジットが居なくなり、1人となった地母神は椅子へと腰を下ろすと大きな鏡を2枚創り出した。片方にはマクネア達、もう片方にはインクリジットが映されており、片方では戦いが起きている様子であった。
「……ふぅーむ。ここまで簡単に物事が上手く運ぶとは思いもよらなんだ。普通なら考える時間をくれと言うはずなのじゃが…………」
地母神は先程のインクリジットとの返答を思い返しながら呟く。だが、外には見せないが、インクリジットもまたアルスを救いたいと強く想っているのだろう。そう結論付けた地母神は意地の悪い笑みを浮かべる。
「それはそれであの者にとっては進化の種となるだろうなぁ。どの様な進化を遂げるか楽しみじゃて」
地母神はクククと笑うとジョッキを創り出しそれを呑む。これから先の事は地母神だけが知っている。その種に地母神は肥料と水を与えたのだ。そして、マクネア達が受けている試練が日光の役割をし、彼女達を成長させようとしていた。
「さてさて…どうなるかの。見事に大輪の花を咲かせて貰いたいが……」
地母神は鏡を交互に見ながら、未来へと繋がるかを楽しみにしているのであった。
「呼び出して悪いな」
全員が入室すると普段と変わらないユミルが立っており、手には小型の箱の様なものを持っていた。ミリィ達はユミルの元へと近寄ると頭を下げて挨拶をする。
「あぁ、そんな形式は要らん。この場には親父しか居ないからな」
ユミルは手振りで断ると箱を開け、中身を取り出す。
「お前らには地母神の所に飛行石で移動してもらうが…………そんな格好で大丈夫か?」
「謁見の間に呼び出されたんですもの。正装するのは当たり前ですわ」
「あー…そうだな。連絡しなかったオレが悪いわ。メイドに別室を案内させるから動き易い服装に着替えてくれるか?」
「分かりましたわ」
ミリィ達は別室で着替えを済ませると再びユミルの元へと戻る。マクネアは魔術師の様なローブを羽織り、ミリィは軽量の帷子を装備していた。どの装備も『あい君』が事前に準備していたもので有り、店売りの装備品よりも能力は高い。ヴァルキューレ達とインクリジットはそのままの格好だったが、彼女達には戦闘服は必要無い。ヴァルキューレとノルンは瞬時に聖装へと切り替える事が出来、インクリジットは本来の姿へと変われるからだ。
「おいおい……2人が持っている武器は誰が作ったんだよ?そんな立派なモンは見た事ねぇぞ?」
ユミルはミリィ達の武器を見ると驚いた表情を浮かべる。パッと見ただけで2人が持つ武器は国宝級であると分かったからだ。
「これはアルスがくれた武器ですわ」
「……なるほどな。なら納得だわ」
2人が持つロングソードと杖。見た目は何ら変哲も無いが、ドワーフという種族柄、違和感を感じたのだ。だが、『アルスがくれた』と言われ、ただの武器では無いと納得した。規格外の男が渡したのならば、その武器もまた規格外なのだろうと。
「んじゃさっさと移動させるぞ。移動先には地母神が待ってるって事だったから、用件は本人から聞いてくれ」
「分かりましたわ」
返事を聞いたユミルは飛行石で地面に円を描く。そして、新品の飛行石をマクネアに渡すと使用方法を説明する。
「これの使い方は大体分かると思うが、範囲内に居る者を移動させるんだ。描き終わった石を潰せば転移モドキが発動する」
「ええ。体験したから大丈夫ですわ」
「マクネアに渡したのは帰還用だからな。…んじゃ後はご自由に。役立てる話が聞ければいいな」
ユミルは使用した飛行石をマクネアに渡すと少し距離を取る。マクネアは全員が円の中にいる事を確認してから飛行石を潰す。すると瞬く間に全員がその場から消え、ユミルとユミルの父親だけが残った。
「……さて。オレ達は見学と洒落込むか」
鏡の前に椅子を二脚置くと2人は着席し、マクネア達を見学するのであった。
♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢
謁見の間から違う場所へと移動したミリィ達はすぐさま周囲を警戒する。厳かな雰囲気の広場へと移動したが、余りにも神々し過ぎる為であった。
「よく来たのぉ」
老婆の様な声が響き、マクネア達は更に警戒を強める。
「安心せぇ。危害を加えようとは一切思っておらんよ」
『どっこらせ』といった声と共に広場の中央に老婆が現れる。手にはジョッキを持ち、革張りの座り心地の良さそうな椅子に腰掛けていた。
「酒は呑むかぇ?」
「い、いえ……要りませんわ」
「そうかい。…ま、立ち話もなんじゃし、まずは座りんしゃい」
老婆の声と共に目の前に5人が座れるソファーが出現する。マクネア達は及び腰ながらもソファーへと向かい腰を下ろした。
「まずは初めましてじゃの。アタシがソチ達が会いたいと言っておった地母神じゃ」
地母神がしわくちゃの笑みを浮かべながら挨拶をする。それにマクネア達は各々挨拶する。
「………1つよろしいでしょうか?」
挨拶が終わると同時に口を開いたのはヴァルキューレであった。ただ、ヴァルキューレの声色にはいつもとは違う、どこかで感じた様な声色だった。
「なんだい?」
地母神は満面の笑みをヴァルキューレへと向けるが目だけは笑ってはいなかった。その目の意図はマクネア達には分からず、ヴァルキューレ達だけが理解した。
「…いえ。やっぱり何でもないです」
「そうかい?それじゃ……ソチらが聞きたいこととは何じゃ?」
マクネアが姿勢を正してから咳払いを軽くして喋り始める。
「ンンッ……聞きたい事とは『黒琥珀』という石についてです」
「ほう?黒琥珀とな?」
「はい。…その前にどういう経緯でここに来たのか説明をしても宜しいですか?」
「あー、要らん要らん。アタシは耳と目がとても優れておってな?マクネア達が何を求めて来たのかはじゅーーーーぶんに知っておるよ」
「……じゃあ何で聞き返したんだろ?」
ミリィがボソッと呟くと地母神は口角を上げてミリィを向く。
「そりゃアタシがお茶目だからじゃよ。少しは気が抜けたじゃろ?」
『カカカッ』と地母神は笑うと酒をあおる。酒臭い息を吐くとマクネアとミリィに目を向ける。
「その質問の答えじゃが、アタシはどうすれば良いか、を知っておる----
「「本当ですかッ?!!!」」
「---が、その答えはアタシが渡せる、扱えるモノでは無いのじゃよ」
ミリィ達の言葉に地母神は両手を『ひの字』にし、ヤレヤレと首を振った。
「…一体どういう事ですか?」
「簡単な話じゃよ。それはアタシの問題では無く、マクネアとミリィ2人の問題なのじゃよ」
「「????」」
「分からんか?ならばこう言えば分かるじゃろう。………マクネアはその眼を完璧に扱える様に、ミリィは自身の中に溜め込まれたチカラを発掘し扱える様にならんとアルスを助ける事は出来んじゃろうなぁ」
地母神の世間話をする様な口調にマクネア達は目を丸くして言葉を失う。地母神の話に質問をぶつけようとマクネアが喋り出そうとする。
「それはどう----
「要は役不足なのじゃよ。アルスの目醒めにはソチらが自分自身の役割をしっかりと認識しなければ繋がらぬ。この世界は今や混沌の時期。アルス一人のチカラでは全てに手を広げる事は無理じゃろうて」
「………それは一体どういう意味なのですか?地母神様には何が視えておられるのですか!?」
「アタシはそこのないすばでぇーの女神とは違い先を見通す事は出来ぬ。じゃが、今起きている事は見透す事ができる。世界は今混沌へと踏み出しておるのじゃ」
「「……………」」
地母神の話にマクネア達は口を閉ざす。彼女が何を見ているのかは全く理解出来ないが、言われている内容は少しだけなら理解出来る。だがそれは『実力不足』なのか、『理解不足』の何方なのかは分からない。
「………つまり、地母神様がお話するのはこの二人が力をつけてから…という事でしょうか?」
ノルンが言葉を選びながら話の要点を述べる。地母神は『ヒヒッ』と笑うとそれに付け加える。
「いや。アタシはそこに辿り着けるように案内するだけじゃ。そして、何をどう理解し、どう受け止めるかはこの子ら次第じゃ。………まぁ、聡明な子らじゃから答えはすぐに見つけるじゃろうがの」
地母神は再び酒をあおると、どこからかビーフジャーキーのような食べ物を取り出しハムハムと食べ始める。
しばらくの間、静寂に包まれるがその時間はマクネア達にとって思案を巡らせる時間であった。地母神が何を言おうとしているのかを考える為であった。
「………つまり、私達がその役割に気付かなければ進展出来ない。その為に地母神様は何かをしてくださる……という事でしょうか?」
神に対して『してくれる』という表現は滑稽だ。神は全てを聞き入れたり、全てに応えたりはしない。気まぐれに反応するだけなので、求めるという事は図々しいことでもある。だが、地母神の言い方は、その気まぐれが起きたのではないかとマクネアは読み、そのような言葉になったのだ。
「そうじゃ。アタシが手を差し伸べるなんぞ黒琥珀の何十倍も貴重じゃぞ?……ま、アタシの縄張りが汚れるのが嫌という側面もあるが」
「…ならば何をすれば良いのでしょう?」
「簡単なことじゃ。マクネアはそのチカラを完璧に使いこなせ。覚醒したと言ってもそれはまだ序の口でしか無い。肌に水が染み渡るようにそのチカラを物にするのじゃ」
マクネアは地母神の言葉に目を見張る。それは自分の能力を知っているという事ではなく、彼女が更なる先を知っているという事に対して。
「ミリィも同様じゃ。じゃが、ソチはまだ気付いておらなんだ。ソチの中には眠りに眠ったチカラが存在する。それを見つけ出し、日常的に使いこなせる様に追い込まなければならぬ」
「えっ……?そ、そんなのがあたしにあるんですか?」
「あるとも。ソチらの保護者は言わなんだが、ソチらは鍵であるのじゃ。その鍵で重要な鍵穴を開錠していくのがソチらの役目なのじゃよ」
「地母神様……」
「おうおう、遅かれ早かれこの子らには気付かせるつもりじゃったろ?ならばアタシが言えば良い。さすれば狂わんじゃろうて」
ノルンの嗜める様な口調に地母神は真面目な表情で返す。2人は目で会話をするとノルンは目を伏せてこれ以上は何も言わなかった。
「私達が鍵…?」
「アルスを助ける鍵ってことだよね?」
マクネアとミリィは互いに会話をするが、神独特の言い回しが引っ掛かり、思考の沼へと足を踏み入れ始める。
「……さて。一先ず出せる情報はこれだけじゃな。後はソチらがどう捉えるか次第じゃ」
地母神は指を鳴らすとジョッキが酒で満ちる。ツマミで濃くなった口を酒で洗うと腕で口を拭い、ヴァルキューレへと話しかける。
「この世界の管理者よ。この子らは戦える準備はしておるのか?」
「え?あ、はい…。ここに来る前に済ませております」
地母神にヴァルキューレが返事をする。武器も防具もユミルの時に済ませたのを確認していた。
「ならば良し。あとは流れに身を任せるのみであるのぉ」
「? それはどういう----
地母神が頷くと両手をパンッと鳴らす。するとミリィとマクネアがこの場から一瞬にして消え去った。一瞬の事にヴァルキューレは言葉途中で息を呑み、ノルンやインクリジットは目を見張っていた。
「え、えっ!??」
ヴァルキューレとノルンが驚くのも無理はなかった。彼女達は不測の事態に備えてミリィ達には転移阻害の魔法を掛けていた。なのに2人が一瞬にして消え去った事態に口をあんぐりと広げたのだ。
「……いや、驚く事は無いじゃろ?ここはアタシの領域じゃぞ?ソチらが如何に優れようとも、領域内では主人の方が上に立つのは知っておるじゃろ」
呆れた様に地母神は説明すると、インクリジットを手招きする。インクリジットは指で自分を指し、『私?』という表情を浮かべるが、地母神は頷いてチョイチョイと更に手招く。
「前に会った時はただの魔物じゃと思うておったが………不思議な事もあるよのぉ」
地母神はインクリジットを観察しながらポツリと呟く。アルスと初めて会った時、この魔物は一介の魔物であった。しかし、アルスの情によりこの魔物は生かされ、キルリアへと連れ帰り、そこで生きて行く事を許された。
インクリジットの種族特性を消し、どうやって生活していくのかを地を伝って観察していたが、そこからの展開は流石の地母神も予想外であった。驚いた理由は複数あるが、その中でもとびきり驚いたのがインクリジットの知能指数であった。会った時には並の知能だと思っていたが、キルリアに着いた途端にグンッと急激に伸びたのだ。
それからはアレヨアレヨと物事を次々に吸収し、遂にはヒトの世界での役職まで手に入れた。こんな上手い話があるはずないと神である地母神は思ったほどのシンデレラストーリーだ。
だが、地母神はインクリジットをしっかりと観察して理由が分かった。この魔物は、いや、彼女はアルスによって高みへと昇ったのだと。その証拠はアルスが制約として彼女に着用させた漆黒の首輪であり、アルスの命令通り、常に着用していた事が彼女を高みへと昇らせた原因でもあった。
(普通ならば他種族の魔力は相反するものであるが………元々アルスにはこの娘を殺す縛りは無かった訳じゃな。首輪に備わっているアルスの魔力が、この娘に浸透した様じゃの)
地母神は首輪から漏れるアルスの魔力と、インクリジットに流れている魔力が似たようなものになっているのを観察すると鼻で笑う。それはアルスの適当さの中に秘められた優しさを見抜いて。
(……一度アルスには話しておく必要があるのぅ。無意識下でその様な慈悲を込められたら世界は虜になってしまう。アルスがそう望んでおるのならば話は別じゃが…………あの様子からじゃ面倒くさい事はしたくない感じじゃからの)
「あ、あの…………」
地母神が物思いに耽っているとインクリジットがキョドキョドしながら話しかけた。
「ん?あぁ…すまないね。ちぃーとばっかし考え事をしてたんでね」
「あ……そ、それは邪魔してすみません……」
「よいよい。…さて、ソチを呼んだのには理由があっての。マクネアやミリィとは違うが、ソチもまたアルスの目醒めに必要な欠片であるのじゃ」
「えっ……私がですか?」
「そうじゃ。ソチは魔族であるが、少しばかり特殊な状態となっている。ちぃとばかし----
「あのぉー………お話し中に申し訳ないのですが…」
「………なんじゃ?」
地母神がインクリジットへ何かを話そうとした時、ヴァルキューレが申し訳無さそうに話を遮る。
「ミリィ達はどこへ行ったのか教えて頂けないでしょうか?私とミリィは繋がっているはずなのですが、探しても見つからなくて…」
「……………あぁ!そうじゃそうじゃ。それをまずは言うべきじゃったの。ミリィ達はアタシが特別に創り上げたお部屋に移動させておるよ。まぁ簡単に言えば稽古部屋じゃがな」
「け、稽古部屋??」
「そうじゃ。あの子らはまだまだ足りぬからの。簡単かつ迅速な運びをした方が良いと思うてな」
「………それってどんな稽古なんですか?」
「ん?アタシが飼い慣らしている魔物と取っ組み合いじゃ。アタシが創り上げた空間じゃからどんな事になっても死ぬこたぁ無いぞ」
ニッコリと笑みを浮かべる地母神に、ヴァルキューレとノルンは顔を青ざめて絶叫する。
「えええええええええ!!!!?そ、それは不味いですってばぁ!!!!ま、地母神様!!早く私達もミリィ達の元へ飛ばして下さい!!!」
「おぉうっ?!!だ、大丈夫じゃて…。手っ取り早く鍛えるだけなのじゃから…」
「そういう問題じゃないんです!!特にマクネアは暴走したりしたら大変なんです!!!」
「良いから早く!!私達も飛ばして下さい!!」
ヴァルキューレとノルンの剣幕に圧された地母神は慌てて2人をミリィ達の元へと送る。
「……おー、怖かった。神なんぞ怒らせるモンじゃないのぉ」
「…ヴァルキューレ様方が慌てるのはしょうがないと思いますけど……。あ、それよりも1つ聞いてよろしいでしょうか?」
「ん?なんじゃ?」
「……地母神様はヴァルキューレ様方の事をお知りだったんでしょうか?お二人のご様子から初対面では無い様な気がしまして…」
「…………それはどうじゃろうな?じゃが、神は意外にも側におるモンじゃ。管理者としてアタシのことを知ってたのかもしれんぞ?」
「うーん……なんとなくそんな感じじゃなかったんですけどね」
インクリジットは先程までの会話を思い出しながら感想を述べる。地母神はその様子にクスリと笑うと、声の質を変えて話し掛ける。
「さて…その話は今からする事には関係無い。本題へと移ろうか」
インクリジットは地母神の声質の変化を瞬時に感じ取り佇まいを直す。
「インクリジットよ。今から行うはソチを更なる高みへと押し上げるモノとなる。それは将来を見越してソチを戦力として見ているからである」
地母神の言葉にインクリジットは何も言わない。質問をしたいが、今までの傾向から答える事は無いだろうと思ってだ。
「よって、ソチにはアルスの片割れの様な存在になってもらう。その為の試練は過酷で死を望みたくなるものであるが、それを越えなければならぬ」
「……一つだけ質問をお許し下さい」
「よかろう」
「それは……アルスの力になれますか?」
「なれるとも」
「ではそれを喜んでお受けします」
余りにも返事が早い為、地母神は一瞬訝しむが、インクリジットの忠義の底にあるモノを考えると納得した。
「……ふむ。では今から扉を開く。そこに入った瞬間から試練が始まる」
地母神は地面に手を当てると渦巻き状へと変化する。大きさはヒト一人が座れる椅子のサイズだ。
「試練を無事突破出来れば戻ってこれる。失敗したとしても戻ってこれるが、代償としてソチの魔力の大半が封印される」
地母神の言葉は後出しであったが、インクリジットは全く気にしなかった。
「戦闘になる可能性はありますか?」
「無いとも有るとも言えぬ。入ればわかるぞ。……じゃが、ヒントを与えるならば試練にはソチの直感で動くべきじゃ」
「直感で……。わかりました」
インクリジットは一瞬考え込んだが、内容を整理すると大きく頷く。そして、深々と深呼吸をした後に渦巻き状の地面へと飛び込んでいった。
インクリジットが居なくなり、1人となった地母神は椅子へと腰を下ろすと大きな鏡を2枚創り出した。片方にはマクネア達、もう片方にはインクリジットが映されており、片方では戦いが起きている様子であった。
「……ふぅーむ。ここまで簡単に物事が上手く運ぶとは思いもよらなんだ。普通なら考える時間をくれと言うはずなのじゃが…………」
地母神は先程のインクリジットとの返答を思い返しながら呟く。だが、外には見せないが、インクリジットもまたアルスを救いたいと強く想っているのだろう。そう結論付けた地母神は意地の悪い笑みを浮かべる。
「それはそれであの者にとっては進化の種となるだろうなぁ。どの様な進化を遂げるか楽しみじゃて」
地母神はクククと笑うとジョッキを創り出しそれを呑む。これから先の事は地母神だけが知っている。その種に地母神は肥料と水を与えたのだ。そして、マクネア達が受けている試練が日光の役割をし、彼女達を成長させようとしていた。
「さてさて…どうなるかの。見事に大輪の花を咲かせて貰いたいが……」
地母神は鏡を交互に見ながら、未来へと繋がるかを楽しみにしているのであった。
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