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第6章 王都動乱編
第221話 -アーサー・アリスside 7-
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「…大人しくしとけって言ったでしょ?」
ケビンの首を刎ねたテクートリはアーサーへと話しかける。そして、ケビンの頭を掴むとアーサーへと投げつける。
「あああああああああああああああああああああああ!!」
自分の足元に投げつけられた頭を直視したアーサーは悲痛な叫びをあげケビンの頭を抱える。
「………おや?中々に絶望を感じてるみたいだね」
涙の出ていないアーサーの表情を見ながら、テクートリは『これはこれでアリだ』と感じる。アーサーの内面は、現状を理解しておらず、友人の死と生首という衝撃が駆け巡っていた。それによりアーサーの心は弱っており、テクートリが最初にイメージしていた状態に近付いていた。
だが、今更遅いとテクートリは感じている。もう自分の指針は決まったのだ。今更変更するのは面倒くさい。大鎌を振るい、ケビンの血を振り払うとアーサーへ向け魔法を放つ。
「『祭壇』」
怪しげな魔法陣がアーサー中心に浮かび上がるとテクートリは自身の親指を大鎌の先端へと当て血を流す。この行為は正当な贄の儀式の手順であり、本来ならばこれを使用しなければなかった。この儀式を経由する事により、テスカポリトカへの供物となりその贄のチカラを十分に使うことが可能だ。しかし、テペヨロトル達はそれをしなかった。その理由としては相手が相手だったからなのだが、儀式を通さずとも十分なチカラを持っていたので順序を飛ばしたのだった。
「…………………うん?」
血を魔法陣に混ぜ、次の段階へと移行させようとした時、テクートリはアーサーに不思議な物を感じた。
「………これは、ヤツの魔力?」
魔法陣を通して違和感の正体が分かった。アーサーの魔力にはサタナキアの魔力が流れていたのだ。
「チッ……厄介な……」
テクートリは魔法陣に違う魔法を付与しようとする。しかし…。
(いや……ちょっと待てよ?)
手の動きを止め、テクートリは順序を思い出す。そして、目の前の子供がテクートリにとって好都合な状態な事に気付く。
(……フフフッ。なんて幸運なんだろう!)
新たな指針を再び変更するテクートリ。指針は元に戻っただけであるが、アーサーをそのまま持ち帰る事で一石二鳥となることを理解したからだった。
「『昏睡』」
掛けようとした魔法を取りやめ、アーサーへと状態異常の魔法を放つ。魔法陣の効果により魔法を受けたアーサーはケビンの頭を抱いたまま地に伏すはずだった。
「………はぁ?」
予定とは違う状況にテクートリは腑抜けた声を出してしまう。魔法陣により身動きが取れない筈のアーサーが、顔を伏せたまま立ち上がったからだ。そして、アーサーはケビンの頭を優しく地面に置くと顔を上げテクートリを睨み付ける。
「ッ!!!?」
テクートリはアーサーと目があった瞬間に迎撃の構えを取る。何故ならば、自分と同等の殺気をアーサーから感じたからだ。
(……何だ?)
テクートリのこめかみから一雫の汗が流れ、頬へと流れる感覚にテクートリは冷や汗をかいていると理解する。
(ボクが今の殺気にビビっている?)
『あり得ない』と自身を納得させようとするテクートリであったが、構えは解除せず、また、先程までの余裕が消えている事に気付く。
「『炎爪』」
アーサーはテクートリへ向け炎の魔法を放つ。その炎は獣の爪の様で地面に爪痕を残しながらテクートリへと走る。
「ッ!!」
テクートリは大鎌を振るい炎を打ち消す。だが、アーサーの攻撃は単発で終わらず、四方八方へと炎の爪が飛来する。『攻撃を受ける』という行動をテクートリの本能が拒否し、テクートリはその場で打ち消す事になった。理由は分からないが、テクートリの本能は『危険』と認識している様だった。
「『炎の輪舞曲』」
アーサーは両手を交差させる。すると炎爪がアーサーの手の動きに従う様にテクートリの背後から襲い掛かる。
「『死の舞踊』」
テクートリは後方の攻撃に対応する為、踊りを始める。だが、アーサーの攻撃は爪だけでなく、炎の蛇の様なモノまで出現させテクートリへと牙を剥く。
「爆ぜろ」
後手になっていると感じているテクートリはアーサーがポツリと呟いた言葉を聞き逃さなかった。多少の被弾を覚悟しつつ、炎から抜け出す。すると、直後に炎の蛇が爆発し、熱波がテクートリを襲う。
抜け出した直後に爆ぜた為、バランスが崩れたテクートリであったが、空中で姿勢を戻すとやや滑りながら地面へと着地する。
「………一体何がどうなってるんだい?」
アーサーを警戒しながらテクートリは熟考する。能力はあるがまだ芽吹いていない状態だったはずだ。だが、ここに来てあの子供は能力を開花させつつある。何が要因なのかを考えようとするが、その答えは瞬時に出た。
「………そうか。絶望が故に…か」
テクートリの考えは正解であった。元々アーサーには才能があった。だが、その才能は何かのきっかけにより芽吹く物も存在していた。それはアーサーが大人になるにつれ、何を学び、何を犠牲にして、何を受け入れるかによって芽吹くものだった。
余談になるが、この世界では『死』という物がより身近にある。街などもそうだが村々になればいつ何時魔物が襲ってくるかの恐怖に怯えている。外に出れば魔物と遭遇する事もあるし、魔法というモノが存在するので喧嘩になれば重傷を負う事だってある。アルスの前世とは違い、銃社会ならぬ魔法社会で成り立っているからだ。
話は元に戻るが、アーサーはその『より身近な死』を受け入れなかった。病気、怪我、寿命等で死ぬ人は見てきているが、それは受け入れられるモノであった。だが、今回のは違う。アルスと合宿の時にも体験しなかった初めての死だ。それもよりによって友人であるケビンの死を目の当たりにした事により、時間をかけて芽吹く筈であった才能が急激に開いてしまったのだ。
その肥料となったのは『怒り』と『絶望』。まだ若いアーサーには到底受け入れられぬ感情であった。そして、水の代わりとなったのが『己の責任』。自らの行動がケビンを殺してしまったと理解しているからだった。
「『焔獄』」
アーサーは上級の一つ上の超級の魔法を詠唱する。その魔法はアーサーの年齢では発動する事が無理な魔法である。魔術団の中でも詠唱出来るかどうかというレベルの魔法をアーサーはテクートリへと放つ。
アーサーの放った魔法は赤色ではなく黒色であり、空気を焦がすほどの熱量を持っていた。事実、アーサーとテクートリ周辺の温度は急激に上がり、舗装されている地面はヒビ割れが起きている。
「ッ?!」
テクートリはアーサーの魔法を打ち消そうとはせずに回避を選択する。何故ならばアーサーが放った魔法には仕える主人と同じ様な臭いがした為だ。
「『焔獄・悪魔』」
アーサーの魔法を避けたテクートリであったが、まだ危機は去ってないと悟る。アーサーの魔法はサタナキアの様な姿へと変化すると、そのままテクートリへと突撃してきたからだ。
「『チャンティコ』」
テクートリは全力の炎をぶつける。テクートリの放った魔法は犬を擬人化した様な姿でアーサーの魔法と肉弾戦を始める。
「『霞斬り』」
「ッ!!」
迎撃をしたテクートリの隙をつき、アーサーが剣技をテクートリへと放つ。だが、テクートリもそれに反応し大鎌で受け止めた。
「----ッ!!」
その攻撃は複数のアーサーがテクートリへと襲い掛かる。どの一撃にも殺気が込められており、テクートリは全てに対応するしか無かった。
アーサーが放った剣技『霞斬り』はサタナキアに教えてもらった技である。マナスキンを利用した技で、斬撃に魔力を乗せ相手にダメージを与えるというモノだった。だが、本来の『霞斬り』とは違い、芽吹く筈では無かった才能が芽吹いた為に、アーサーは『霞斬り』を新たなモノへと昇華させた。
アーサーの才能、そしてアルスの余計な知恵を合宿中に聞いていたアーサーは分身を創り出した。その分身は残像では無くしっかりとした気配を漂わせていた。テクートリはアーサーの分身全てに気配があり、尚且つ威力もしっかりとある為、対応するしかなかったのだ。
もちろん、それは主人と似た臭いを感じなければ受けていただろう。だが、アーサーの魔法と自らに向けられた殺気により、テクートリはアーサーを『手強い敵』と認識し、全力を出すのだった。
「『蜘蛛の児戯』」
流石に全てを捌き切れないと理解したテクートリは自らに魔法を掛ける。テクートリの背中から8本の蜘蛛の脚が現れると、アーサーの分身へと牙を剥く。
「『戦鎚』」
「グハッ!!」
後手となっていたテクートリに衝撃が走る。吹っ飛ばされたテクートリは校舎へとぶつかり瓦礫が崩れる。アーサーが放った技はテミスが得意とする技だ。本来の用途は振り下ろす技であるが、アーサーは分身の中に気配を薄めて混じり、その拳をテクートリに喰らわせる。テミスほどの威力は出せないが、それでも中々に高い威力を誇る。それはテクートリがモロに衝撃を受け吹っ飛ばされた事から人外に通用すると理解できる。
(………………)
瓦礫に埋まっているテクートリはアーサーの認識を改める。『手強い相手』と考えていたが、それは甘い評価だったと。今の一撃を受けてアーサーの実力が理解出来たテクートリは何かをポツリと呟くと瓦礫を弾き飛ばし、遠くでこちらを無表情で睨んでいるアーサーと目を合わせる。
「……君はヤツに教育を受けたんだね?それじゃあ、ボクも本気を出さないといけないね…」
地面に落ちた大鎌を拾うと、埃を払うかの様に振り下ろす。するとアーサーが何かを払うかの様な仕草をすると形容し難い音が響いた。
「……うん。やっぱり見えているんだね」
テクートリが放ったのは過去の戦いに使用した技である。過去というのはサタナキアとの戦いを意味する。それを防いだアーサーはサタナキアと同格であるとテクートリは認識し、『強敵』へと格上げする。
「それじゃあ……………殺り合おうか?」
再び斬撃を放つと、それが次の開戦の合図となり壮絶な戦いが繰り広げられるのであった。
ケビンの首を刎ねたテクートリはアーサーへと話しかける。そして、ケビンの頭を掴むとアーサーへと投げつける。
「あああああああああああああああああああああああ!!」
自分の足元に投げつけられた頭を直視したアーサーは悲痛な叫びをあげケビンの頭を抱える。
「………おや?中々に絶望を感じてるみたいだね」
涙の出ていないアーサーの表情を見ながら、テクートリは『これはこれでアリだ』と感じる。アーサーの内面は、現状を理解しておらず、友人の死と生首という衝撃が駆け巡っていた。それによりアーサーの心は弱っており、テクートリが最初にイメージしていた状態に近付いていた。
だが、今更遅いとテクートリは感じている。もう自分の指針は決まったのだ。今更変更するのは面倒くさい。大鎌を振るい、ケビンの血を振り払うとアーサーへ向け魔法を放つ。
「『祭壇』」
怪しげな魔法陣がアーサー中心に浮かび上がるとテクートリは自身の親指を大鎌の先端へと当て血を流す。この行為は正当な贄の儀式の手順であり、本来ならばこれを使用しなければなかった。この儀式を経由する事により、テスカポリトカへの供物となりその贄のチカラを十分に使うことが可能だ。しかし、テペヨロトル達はそれをしなかった。その理由としては相手が相手だったからなのだが、儀式を通さずとも十分なチカラを持っていたので順序を飛ばしたのだった。
「…………………うん?」
血を魔法陣に混ぜ、次の段階へと移行させようとした時、テクートリはアーサーに不思議な物を感じた。
「………これは、ヤツの魔力?」
魔法陣を通して違和感の正体が分かった。アーサーの魔力にはサタナキアの魔力が流れていたのだ。
「チッ……厄介な……」
テクートリは魔法陣に違う魔法を付与しようとする。しかし…。
(いや……ちょっと待てよ?)
手の動きを止め、テクートリは順序を思い出す。そして、目の前の子供がテクートリにとって好都合な状態な事に気付く。
(……フフフッ。なんて幸運なんだろう!)
新たな指針を再び変更するテクートリ。指針は元に戻っただけであるが、アーサーをそのまま持ち帰る事で一石二鳥となることを理解したからだった。
「『昏睡』」
掛けようとした魔法を取りやめ、アーサーへと状態異常の魔法を放つ。魔法陣の効果により魔法を受けたアーサーはケビンの頭を抱いたまま地に伏すはずだった。
「………はぁ?」
予定とは違う状況にテクートリは腑抜けた声を出してしまう。魔法陣により身動きが取れない筈のアーサーが、顔を伏せたまま立ち上がったからだ。そして、アーサーはケビンの頭を優しく地面に置くと顔を上げテクートリを睨み付ける。
「ッ!!!?」
テクートリはアーサーと目があった瞬間に迎撃の構えを取る。何故ならば、自分と同等の殺気をアーサーから感じたからだ。
(……何だ?)
テクートリのこめかみから一雫の汗が流れ、頬へと流れる感覚にテクートリは冷や汗をかいていると理解する。
(ボクが今の殺気にビビっている?)
『あり得ない』と自身を納得させようとするテクートリであったが、構えは解除せず、また、先程までの余裕が消えている事に気付く。
「『炎爪』」
アーサーはテクートリへ向け炎の魔法を放つ。その炎は獣の爪の様で地面に爪痕を残しながらテクートリへと走る。
「ッ!!」
テクートリは大鎌を振るい炎を打ち消す。だが、アーサーの攻撃は単発で終わらず、四方八方へと炎の爪が飛来する。『攻撃を受ける』という行動をテクートリの本能が拒否し、テクートリはその場で打ち消す事になった。理由は分からないが、テクートリの本能は『危険』と認識している様だった。
「『炎の輪舞曲』」
アーサーは両手を交差させる。すると炎爪がアーサーの手の動きに従う様にテクートリの背後から襲い掛かる。
「『死の舞踊』」
テクートリは後方の攻撃に対応する為、踊りを始める。だが、アーサーの攻撃は爪だけでなく、炎の蛇の様なモノまで出現させテクートリへと牙を剥く。
「爆ぜろ」
後手になっていると感じているテクートリはアーサーがポツリと呟いた言葉を聞き逃さなかった。多少の被弾を覚悟しつつ、炎から抜け出す。すると、直後に炎の蛇が爆発し、熱波がテクートリを襲う。
抜け出した直後に爆ぜた為、バランスが崩れたテクートリであったが、空中で姿勢を戻すとやや滑りながら地面へと着地する。
「………一体何がどうなってるんだい?」
アーサーを警戒しながらテクートリは熟考する。能力はあるがまだ芽吹いていない状態だったはずだ。だが、ここに来てあの子供は能力を開花させつつある。何が要因なのかを考えようとするが、その答えは瞬時に出た。
「………そうか。絶望が故に…か」
テクートリの考えは正解であった。元々アーサーには才能があった。だが、その才能は何かのきっかけにより芽吹く物も存在していた。それはアーサーが大人になるにつれ、何を学び、何を犠牲にして、何を受け入れるかによって芽吹くものだった。
余談になるが、この世界では『死』という物がより身近にある。街などもそうだが村々になればいつ何時魔物が襲ってくるかの恐怖に怯えている。外に出れば魔物と遭遇する事もあるし、魔法というモノが存在するので喧嘩になれば重傷を負う事だってある。アルスの前世とは違い、銃社会ならぬ魔法社会で成り立っているからだ。
話は元に戻るが、アーサーはその『より身近な死』を受け入れなかった。病気、怪我、寿命等で死ぬ人は見てきているが、それは受け入れられるモノであった。だが、今回のは違う。アルスと合宿の時にも体験しなかった初めての死だ。それもよりによって友人であるケビンの死を目の当たりにした事により、時間をかけて芽吹く筈であった才能が急激に開いてしまったのだ。
その肥料となったのは『怒り』と『絶望』。まだ若いアーサーには到底受け入れられぬ感情であった。そして、水の代わりとなったのが『己の責任』。自らの行動がケビンを殺してしまったと理解しているからだった。
「『焔獄』」
アーサーは上級の一つ上の超級の魔法を詠唱する。その魔法はアーサーの年齢では発動する事が無理な魔法である。魔術団の中でも詠唱出来るかどうかというレベルの魔法をアーサーはテクートリへと放つ。
アーサーの放った魔法は赤色ではなく黒色であり、空気を焦がすほどの熱量を持っていた。事実、アーサーとテクートリ周辺の温度は急激に上がり、舗装されている地面はヒビ割れが起きている。
「ッ?!」
テクートリはアーサーの魔法を打ち消そうとはせずに回避を選択する。何故ならばアーサーが放った魔法には仕える主人と同じ様な臭いがした為だ。
「『焔獄・悪魔』」
アーサーの魔法を避けたテクートリであったが、まだ危機は去ってないと悟る。アーサーの魔法はサタナキアの様な姿へと変化すると、そのままテクートリへと突撃してきたからだ。
「『チャンティコ』」
テクートリは全力の炎をぶつける。テクートリの放った魔法は犬を擬人化した様な姿でアーサーの魔法と肉弾戦を始める。
「『霞斬り』」
「ッ!!」
迎撃をしたテクートリの隙をつき、アーサーが剣技をテクートリへと放つ。だが、テクートリもそれに反応し大鎌で受け止めた。
「----ッ!!」
その攻撃は複数のアーサーがテクートリへと襲い掛かる。どの一撃にも殺気が込められており、テクートリは全てに対応するしか無かった。
アーサーが放った剣技『霞斬り』はサタナキアに教えてもらった技である。マナスキンを利用した技で、斬撃に魔力を乗せ相手にダメージを与えるというモノだった。だが、本来の『霞斬り』とは違い、芽吹く筈では無かった才能が芽吹いた為に、アーサーは『霞斬り』を新たなモノへと昇華させた。
アーサーの才能、そしてアルスの余計な知恵を合宿中に聞いていたアーサーは分身を創り出した。その分身は残像では無くしっかりとした気配を漂わせていた。テクートリはアーサーの分身全てに気配があり、尚且つ威力もしっかりとある為、対応するしかなかったのだ。
もちろん、それは主人と似た臭いを感じなければ受けていただろう。だが、アーサーの魔法と自らに向けられた殺気により、テクートリはアーサーを『手強い敵』と認識し、全力を出すのだった。
「『蜘蛛の児戯』」
流石に全てを捌き切れないと理解したテクートリは自らに魔法を掛ける。テクートリの背中から8本の蜘蛛の脚が現れると、アーサーの分身へと牙を剥く。
「『戦鎚』」
「グハッ!!」
後手となっていたテクートリに衝撃が走る。吹っ飛ばされたテクートリは校舎へとぶつかり瓦礫が崩れる。アーサーが放った技はテミスが得意とする技だ。本来の用途は振り下ろす技であるが、アーサーは分身の中に気配を薄めて混じり、その拳をテクートリに喰らわせる。テミスほどの威力は出せないが、それでも中々に高い威力を誇る。それはテクートリがモロに衝撃を受け吹っ飛ばされた事から人外に通用すると理解できる。
(………………)
瓦礫に埋まっているテクートリはアーサーの認識を改める。『手強い相手』と考えていたが、それは甘い評価だったと。今の一撃を受けてアーサーの実力が理解出来たテクートリは何かをポツリと呟くと瓦礫を弾き飛ばし、遠くでこちらを無表情で睨んでいるアーサーと目を合わせる。
「……君はヤツに教育を受けたんだね?それじゃあ、ボクも本気を出さないといけないね…」
地面に落ちた大鎌を拾うと、埃を払うかの様に振り下ろす。するとアーサーが何かを払うかの様な仕草をすると形容し難い音が響いた。
「……うん。やっぱり見えているんだね」
テクートリが放ったのは過去の戦いに使用した技である。過去というのはサタナキアとの戦いを意味する。それを防いだアーサーはサタナキアと同格であるとテクートリは認識し、『強敵』へと格上げする。
「それじゃあ……………殺り合おうか?」
再び斬撃を放つと、それが次の開戦の合図となり壮絶な戦いが繰り広げられるのであった。
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