転生チートで夢生活

にがよもぎ

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第4章 王宮学園--長期休暇編--

第122話

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♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎

時は流れ数日。俺は欠員が出た為、武闘場へと向かっていた。

(……はぁ。メンドクセーメンドクセー。……なんでこんなややこしい事になってんだよ…)

朝日の心地よい光を浴びながらも、憂鬱な気持ちでトボトボと歩く。

あの後、ミネルヴァ様から呼び出され『他言無用』との事で話があった。しかし、俺に話せる内容はほんの少ししかなく深々と頭を下げられた。

納得は当然する筈もなく、『なぜ?』とミネルヴァ様に尋ねるが『時期尚早』、『国家間の合意』『許せ』の回答で拉致があかなかった。しかし、肝心な部分では『言えない』と言っていたくせに、ややこしい言い回しでヒントを与えてくれた。

そのヒントを元に『あい君』に情報の整理を頼むと3つの事が出てきた。

1つは『俺の処遇』についてだ。どうやら俺は『キルリア国の後継者」だと各国に通達されているらしい。これはミネルヴァ様が悔しがっていたが、どうやらこの世界でのルールに則ってのになるらしい。仕組みについては分からないが、クソ野郎に先手を打たれた事でミネルヴァ様達は後手に回ってしまったらしい。

マクネアさん曰く、『アルスが後継者と言われた時に動かなかったお爺様達が悪い』と言っていたが、要は原因は俺と言うことだ。俺の存在がミネルヴァ様達にとっては重要らしく、クソ野郎の思い通りにさせない為に動いているとの事だった。なぜ重要なのかは教えて貰えなかったが。

2つ目は『シュピー共和国との関係』だ。これまた意味は分からないのだが、俺はどうやらシュピー共和国との親善大使という役職を与えられたらしい。だからといって給料が発生する訳では無いのだが、シュピー共和国に気軽に入国出来るようになったらしい。……あ、俺って事ね?連れがいる場合はソイツは手続きをしないといけないらしい。要は俺だけフリーで動けるって事。………だからといって得とか何も無いんだけど。

そして3つ目。これが俺が今憂鬱な気持ちを持っている理由だ。ミネルヴァ様が笑いを噛み殺しながら教えてくれたんだけど、どうやら俺はシュピー共和国の姫様?に気に入られたらしい。しかも相当に。

2つ目の理由に被るんだけど、俺を親善大使に推薦したのはあのロリっ子らしい。ミネルヴァ様が言うには『アルスの監視とより親密な関係を結びたいのではないか?』という事らしいんだけど……それを聞いていたマクネアさんが凄い冷たい声で『…親密とはどの様な意味合いですか?』と取ってつけたような笑みでミネルヴァ様に聞いていた。

その質問にミネルヴァ様は面白そうに『マクネアの敵が増えたという事じゃな』と言っていた。敵とはどういう意味なのだろうか?…いや、まぁ何となく理解はしているけど、『エロゲじゃあるまいし…』とご都合展開は自分自身で否定した。

んで、面倒なのが『定期的にシュピー共和国の妾の元へ会いに来い』という事だった。もちろん手土産持参で。……いや、まぁ後から決定事項を伝えられるのも何だけど、出来れば俺の意見も聞いてから決めて欲しかったな…。普通聞くだろ?…………まぁ断れる自信は無いけど。

そしてこの『定期的』と言うのが非常に厄介だった。ミネルヴァ様から聞いた話では『アルスに任せる』との事だった。ロリっ子曰く『アルスの頻度によっては親交を考えるやも知れんのぅ?』と言ったみたいで、そのまま俺に伝えられた。『あい君』が弾き出した結論は『可能な限り日参するべき』との考えが出た。しかし、俺は学園でも働いているし、アーサーやアリスさんの教育もある。……それに忘れてたけどヴァルからの頼みもある。意外と忙しいんだよ?俺も。

まぁヴァルの頼みは報告待ちだとして……アーサーやアリスさんの教育が最優先される。しかし、その事項に割り込んできたのが『シュピー共和国との親善大使』という役目だ。ミネルヴァ様とマクネアさんに一応聞いてみたんだけど、アーサーとアリスさんを連れて行くってのは許可が出た。けど、アリスさんは冒険者登録をしていないので、その手続きを済ませ、親の承諾がおりない限り連れていけないとの事だった。マクネアさん曰く、『アリスさんの返事は良いものが返ってくると思うけど……親はどうかしらね?』と言っていた。

まぁ確かに話を聞く限りではアリスさんの親って前世でいう『モンスターペアレント』なんだろ?俺もイミフに怒られるのは嫌だから、すんなり解決することを祈っておく。これに関してはマクネアさんとミネルヴァ様が『どうにかする』と言っていた。その時に黒い笑みを浮かべていたミネルヴァ様が少し気になったけど……。

トボトボと歩いていると、後ろから衝撃を受ける。

「アルスおはよー!」

「うおっ?!………なんだ、スサノオさんですか…」

「なんだとはなんだ!…って、なんだか元気無いねー?どうしたの?」

「面倒事が沢山あるなぁ…って考えてて…」

「あー……ボクもマクネア様から聞いたけど、アルスも中々大変な状況にいるみたいだね。…ま、頑張って!」

「頑張れないすよ……。今から依頼ですか?」

朝早くからスサノオさんと出会ったので、依頼を朝から受けるのだろうと思って尋ねる。

「違うよー!今日はアルスの手伝いに来たの!」

しかし、予期せぬ言葉が返ってきた。

「へ?俺の手伝いすか?……どういう事すか?」

「昨日マクネア様から連絡があってねー。アルスの指導の手伝いをしてくれって!」

「……俺が出る事になるって知ってたのかな?マクネアさん…」

「さぁ?それは知らないけれど、暇だったら手伝ってあげてって言われたー!」

「それは助かりますけど……でもスサノオさんが来ても指導することは無いんじゃ……」

「ああ、ボクが指導するのはだよ。マクネア様から聞いたよー?アーサー君とアリスさんを鍛えてるんだって?」

「鍛えてはいますけど……。でも、今日はそんな予定は入ってな---
「大丈夫!さっきアーサー君と会ったから!そしたら午後から訓練所を予約してるんだって!アルスも午後は暇でしょ?だから一緒に行こうと思って!」

「…なんでアーサーが俺の予定を管理しているんですかねぇ…」

「まぁまぁ!忙しいって事は良いことだよ!それじゃボクを武闘場に案内してよ!」

「俺が担当する所で良いんですか?アリスさんが居るかは分からないですよ?」

「大丈夫!アルスの担当場所に来るようにマクネア様から連絡が行ってるはずだから!」

「……………」

スサノオさんと共に武闘場へと入る。今日の俺の担当場所は『6ー3』である。

「へぇー!こんな感じになってるんだねぇ!」

「スサノオさんは学園出身じゃないんですか?」

「違うよー!ボクは平民の出だからこっちじゃないね!」

「へぇー」

「意外だった?」

「まぁ意外っちゃー意外すね。俺、出会った人って大体貴族級の人達ばかりなんで」

「それは凄い幸運だね!しかも嫌われてないみたいだし……。アルスは豪運の持ち主なのかもね!」

「ハハハ…。豪運ならもっと良い感じに物事が進むはずなんですけどね…」

「それは難しいねぇー。…ま、人とのが生きる上では大事だから。そういった意味ではアルスは豪運だと思うよ?だって、普通に生きてたらミネルヴァ様や陛下にお会いする事なんてあり得ないからね!」

魔法陣を利用し担当場所に着くと室内には30人程しか居なかった。『いつもは多いけど、珍しい事もあるもんだ』と思い中に入ると生徒達の目が一斉にこちらを向いたのが分かった。

「……おい!!あの人って!!」
「キャーーーッ!!」
「うへっ?!ななな何であの人が?!」
「アルス先生の知り合いなのか!?」

スサノオさんを見て生徒達は興奮した面持ちでヒソヒソと声を漏らす。その様子に『やっぱりスサノオさんは有名なんだなー』と思った。

「みんなおはよー!」

スサノオさんは元気良く生徒達に挨拶する。すると、生徒達からは元気良く返事が返ってきて、すぐさま生徒達に囲まれる。その大波を俺だけ潜り抜け目的の人物へと辿り着く。

「よっ!久しぶり!」

「久々ですが、馴れ馴れしくありませんか?」

「…お久しぶりですアリスさん」

「お久しぶりですアルス先生。……ところで、なぜスサノオ様と一緒に?」

「? 来る途中に会っただけだよ?」

「ふーん……。ところで長い間会わなかったけど何してたの?」

「んー……話せば長くなるけど色々あったんだよ…」

「その理由でわたくしやケビン、シュナを放置してた……と言えるの?」

「放置…ではねーよ。けど、忙しくてなかなか構ってやれなかったんだよ」

「呆れた。それでも教師なの?教師が生徒を贔屓ひいきしても良いと思って?」

「……いや、贔屓してるつもりは無いし、それ言ったらアリスさん達も贔屓されてる側になるぞ?普通の生徒達よりも俺の指導とか入ってる訳だし…」

「それはアルス先生が教えてくれたからでしょ?私から教えを請う姿勢は見せていませんわ?」

「……………………いや、教えろって---
「と に か く !今まで放置してた分しっかり働いてもらいますからね!」

久々に会ったアリスさんであるが、相変わらずの性格であった。『ツンデレは二次元に限る』との言葉を聞いた事があるが、まさにその通りだと思う。…まぁ見た目だけは二次元よりも凄いが、やっぱりリアルで会話をするのは少し面倒だ。これでデレッデレになるってなら分かる気持ちがあるけど……まぁ、期待するのは野暮だな。

「あ、そうそう。マクネアさんから連絡来てる?」

腰に手を当てているアリスさんに尋ねる。

「来たわ。…『特別ゲストを用意したわ』って言われたけど……もしかしてスサノオ様?」

「うん。スサノオさんがアリスさんに指導してくれるってさ。………あ、午後からの予定---
「ウソォ?!ね、ね!!そ、それホント?!」

声を裏返し俺に摑みかかるアリスさん。その豹変ぶりに俺は目を見開いて驚く。

「お、おう……」

「スサノオ様に指導して貰えるだなんて………」

嬉しそうにしているアリスさんを横目に、置いてけぼりにしてきたスサノオさんの元へと向かう。生徒達を掻き分けながらスサノオさんの所に着くと始業の金が丁度鳴った。

「はいはーい!んじゃ、クラブの時間だぞー!スサノオさんに聞きたいだろうけどそれは後で受け付けるからなー!まずは自分の練習をしろよー!」

俺の言葉でスサノオさんの周りに居た生徒達は散らばる。だが、やはりスサノオさんと喋りたい、もしくは指導を受けたいと思っているのか、生徒達はあまり広がらずスサノオさんに近い場所で練習を始めていた。

「…人気っすねぇ」

「まぁボクは有名人だからね。知らなかった人もいたけどねぇ……」

「…俺のことですか?」

「さぁ?…んじゃ、ボクは何をすれば良いの?」

「んー……生徒達が怪我をしないように室内をグルグル回って、生徒達からの質問に答える……ぐらいですかね」

「それはボクから話しかけるなってこと?」

「んー…スサノオさんは教師じゃないんで分かんねーすけど……苦情が来たら嫌なんで、こちらからはしないで下さい」

「わかった!なら質問が来た時だけ答えるよ!」

「あ、あとあんまり難しい事は教えない様にお願いしますね」

「難しい事?…マクネア様から聞いてるけど、アルスは最初っからそうだったって聞いたよ?」

「……うん。すいません。ご自由にどうぞ」

始業の鐘も鳴り終わっているので、俺達は巡回を始める。流石王国一の冒険者とあってスサノオさんは、一歩進めばすぐさま生徒達に声をかけられる。時折『0歩エンカウント』もしたりするが、それほどまでにスサノオさんの事を皆知っているのだろう。

スサノオさんも嫌な顔1つ見せずにニコニコと生徒達の質問に答える。その様子を後ろから見ているとまるで母親みたいに見えるが、それは失礼な事だと思いその考えを頭から捨てる。…いくら中性的な顔立ちだからって男性に『母親みたいですね』と言うのは失礼だ。

生徒達の『スサノオさんフィーバー』を横目に見ながら俺は自分の仕事をちゃんとするのであった。
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