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第4章 王宮学園--長期休暇編--
第090話
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♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎
「うーん……………」
翌日。ジリジリと肌が焼けるような感覚で目を覚ます。
「…………あれ?」
目を覚ますと知らない天井が見えた。起き上がって見ると巨大なベッドに横たわっていたのが理解出来た。
「……………ここは?……俺の部屋じゃねぇよな…」
キョロキョロと室内を見回すが、俺の部屋には無い物が多く置かれていた。
「あるぇ?マジで何処だよここ……」
巨大なベッドから降りようと布団をめくり、とあるモノを見てゆっくりと元に戻す。
「……………………………は?????」
見間違いかと思い、慎重に布団をめくる。
「……ブハッ!!」
あまりの衝撃に唾飛沫が飛ぶ。そして、状況が理解出来た俺はおそるおそるベッドから降りようとする。
「………どうなってんだ?」
とあるモノを起こさないように反対側から降りようとすると、柔らかい何かを押した。
「うぇっ?!」
慌てて手を退かして、布団の隙間から覗き込む。そして、押し付けたモノを視認する。
「………待て待て待て。どういうことだ?!」
焦りながらも本能が『二度見しろ』と訴えるのでもう一度確認する。
「…………」
とあるモノを無言で迂回し、ベッドから降りる。そして俺が下着姿である事を理解し、元気なモノを見ながら冷静に記憶を探る。
「………事後……じゃないよね?!」
とあるモノを思い出しながら狼狽する。
「…いやいやいや。それは無い。だって俺童貞だし。そんな度胸無いし」
ベッド横に置かれている椅子に座りながら腕組みをし、冷静になるよう努める。
「…落ち着け。きっとこれは夢だ。俺の煩悩が『創造』を刺激して、夢を見せてくれてるだけなんだ。じゃなきゃこんな状況はあり得ない……」
自分自身を言い聞かせ、周囲を確認する。ベッド周りには女性用の衣服が散乱しており、遠目からでもハッキリと分かる物があった。
「…嘘……だろ?」
近くに行かなくても分かる。アレは俺がマクネアさんに聞かれたモノだった。
(あああああああ!!なんて事だ!!)
頭を抱え愚痴を漏らす。
「…クソゥ……なんで覚えてないんだ…」
女性物の服が散乱し、俺は下着姿。そして、ベッドの中にはたわわな物がたわわしていた。そして俺の息子が立派になっている。それらから考えられる答えは1つ。………………うん。間違いなく事後だ。
「………ちくしょう…」
貴重な初体験が覚えてないとかあんまりにも残酷過ぎんよー。しかも相手は前世では見向きもされなかった絶世の美女だぜ?……情け無いわぁー。
「………もう一回見とこ」
記憶に無いのは仕方ない。ならば新しく記憶に残すまで!本能に従い慎重にベッドに近寄り、布団をそっとめくり覗き込もうとする。
「んっ……………」
「うひゃっ?!」
布団の中で声が聞こえ慌ててしゃがむ。
「…………っぶねぇー!!」
ベッドの縁から顔を覗かせ、起きていない事を確認する。ベッドの上を視認する限り、小さく動いているのが分かる。
「ほっ……。起きては無いみたいだ…」
本能の塊となった俺は再度挑戦する。無駄に頭を回転させながら、慎重に…そう、慎重に布団をめくる。もちろん俺は紳士なので、全部をめくるという暴挙は行わない。コッソリと見えるぐらいをめくるのが素敵な事だと思うんだ。
「………そぉーっと……そぉーっとだぞアルス……」
布団の中にいる生物の呼吸音が微かに聞こえ、深呼吸をする。『何やってんだ?』と思うかも知れないが、童貞には刺激が強すぎるんだよ!心構えってのが必要なんです!!
「……フゥーーー………よし!!」
頭は冷静、下半身は興奮しながら、いざ無限の彼方へ!!さぁ!桃源郷は目の前だ!!
「……………………………………あ」
「…………何してんの?」
任務失敗!任務失敗!!直ちに帰還せよ!!
脳内でアラートが鳴り響く。覗いた瞬間に布団の中の生物と目が合ってしまった。
「………………」
某不良教師漫画のように満面の笑みでその場を過ごそうとする。………が、それは悪手だった。布団の中の生物は俺の目線を辿り、生物自身の体を見る。そして-----
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
絶叫と共に俺にも察知出来ない攻撃が飛んでくる。
「ま、待て!これには理由が-ーブベッ?!?!」
生物の痛恨の一撃が俺の頬に当たり、俺の意識は遠ざかるのであった。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎
「-----い!---きて!!」
「う、うーん………」
誰かが俺の頬を叩く感覚がする。……が、俺は夢にまで見た桃源郷が広がっている状況から出たくない。
「……もうっ!---起きなさいってば!!」
「いでぇ!!!」
頬に力強い衝撃を受け夢から覚めると、ミリィが目の前に立っていた。
「……へ?ミ、ミリィ…?」
「あら?やっと目が覚めたの?」
声のする方へ目を向けると、優雅に飲み物を飲んでいるマクネアさんがいた。
「……………やっと?」
呆然となりながらマクネアさんとミリィを交互に見る。
「そうよ?凄い音がしたと思って目を覚ましたらアルスがベッドの下で気を失ってたのよ」
「気を失って?………寝相が悪くて落ちたんですかね?」
「さぁ?」
意味有りげな笑みを浮かべるマクネアさん。………なんかそうじゃない気がするのは気のせいだろうか?
「……なぁーんか大事な事…忘れちゃいけない出来事があったような…」
腕組みをし記憶を遡る。ベッドから落ちたにしては、何故か頬がメチャクチャ痛い気がする。……すんげー貴重なモノを見た記憶があるんだよなぁ…。なんだっけ??
「べ、別に何も無かったわよ!ただ、アルスが思いっきり落ちただけなんだから!」
「え?……そうなのか?」
「そ、そうよ!」
何故か顔を赤らめているミリィが、『ベッドから落ちた』と言い張るので、腑に落ちないながらも『寝相が悪かったんだなぁ…』と反省する。一人で寝てる時は落ちた事無いんだけど…まぁこんな風にベッドが広けりゃ落ちるのも無理はないか。
「……ってか、ここどこ?」
その話は解決したので、とりあえずここは何処なのかをミリィに問う。
「覚えてないの?ここはマクネアの屋敷よ?」
「…………は??」
どうやら俺はマクネアさんの屋敷にいるらしい。だが、何故居るのかが分からない。
「…なんで?」
「なんでって……。昨日スサノオ様と呑んだ後、マクネアが呑み足りないって言ってここに来たのよ?」
「……全然覚えてない…」
「それでマクネアの部屋で呑み始めたの」
「そ、そうなのか…」
「覚えてないの?アルスの前で着せ替えを沢山したんだけれど?」
「き、着せ替え……?」
ミリィとの会話にマクネアさんも混ざり、昨日何があったのかを話してくれる。
「昨日買った服を覚えてる?アレが届いてたから早速着替えたのよ。そしたらミリィが『あたしも着てみたい!』って言うから、2人で新品を着てたのよ」
「そ、そうなんですか…」
「あ、アルスは審査員だったわよ?」
「は?し、審査員?!」
「ええ。私やミリィが着てるのを真剣に評価していたわ。……ね?ミリィ」
「……うん」
な……なんだと?!そんなパラダイスが起きてたと言うのか!?
「私のサイズがミリィに合ってたみたいで、私も色々と服を引っ張り出したわ。それでミリィが色々と組み合わせて着るのをアルスは審査してたってわけ」
「……くっ。全然覚えてない!」
「フフッ…」
なんて事だ。そんな目の前でファッションショーをしてただなんて!!クゥゥゥゥゥ!!なんで覚えてないんだコンチクショウ!!
「……あの時のアルスは少し気持ち悪かった」
「えっ?!」
ミリィが静かに漏らした言葉に俺は敏感に反応する。
「き、気持ち悪い……?」
「うん……。だってあたしやマクネアが着替えるのを食い入る様に見つめてたんだもん。しかも姿勢良く真面目な表情でさ……」
前言撤回。覚えてなくて良かった。
「あら?でも、ミリィも満更でも無い顔してたわよ?」
「ち、ちょっとマクネア?!」
「残念ねぇ…。アルスが昨日の事を覚えてないだなんて…。………私やミリィに言ったことも……覚えてないの?」
マクネアさんが小悪魔的な笑みで俺へと問う。俺はというと、何か失言したのかと思い、ハラハラしていた。
「お…覚えてないです……。俺、何か失礼な事言いましたかね?」
「失礼…では無いわね。むしろ逆ね。……あ、ミリィにとっては失礼に当たるのかしら?」
「そ、そんな事無い!!」
ミリィが焦った表情でマクネアさんの言葉を否定する。
(……俺、一体何を言ったんだ?)
不安が渦巻く中、勇気を出してマクネアさんへ問いかける。
「あの……それで俺何言ったんですかね…?」
「……私の口から言わせる気?」
「えっ?!」
悪戯っ子のような笑みでマクネアさんは返答する。
(おいおい……。こりゃあガチめに失言だったんじゃねぇか?)
「…ミリィに聞いてみたらどうかしら?ねぇ、ミリィ?」
「ヤ、ヤダ!……恥ずかしいよぉ……」
(は、恥ずかしいだって?!…な、なんだよ…俺マジで何を言ったんだよ!)
顔を赤くしたミリィが首を振るのを見ながら自責の念に駆られる。一生懸命に思い出そうとするが、モヤがかかっていて思い出す事が出来ない。
「……な、何を言ったか覚えてないすけど……。失礼な事言ってたかも知れないんで、すいません!!!」
土下座の姿勢をとり2人に謝罪する。
「失礼な事は言ってないわよ?……そうねぇ。ただ…思い出すと恥ずかしくなるわね」
「すいません!すいません!!」
絶世の美女達のファッションショーが記憶に無いというのは非常に、そう非常に残念ではあったが、それよりもまずは謝罪の方が先だ。『覚えてないです』とか言い訳にならないからな。
結局、俺が何を仕出かした、あるいは失言したかは教えて貰えず、顔を赤くしたミリィと悪戯っ子のように笑っているマクネアさんにひたすら頭を下げ続けるのだった。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎
時は戻り昨夜にて。アルス達3人はマクネアの部屋に居た。アルスはベッドで胡座をかいており、マクネア達は地べたに座っていた。そして、3人の足元には酒瓶が数本置かれていた。
「ねぇミリィ。アナタってスタイル良いわよね」
「な、なによ突然…」
「んー…ミリィが良ければなんだけど、私の服を貰ってくれないかしら?」
「え?」
「今日ね、アルスと買い物に行ったんだけど、新しく服を新調したから古いのを捨てないといけないのよ。けど、古いと言ってもそんなに着てないし、まだ新品みたいな状態なんだけど……」
「それで何であたしに…?」
「…ほら、私って人よりちょっと大きいじゃない?色んな子に譲ってはいるんだけど…丈も幅も合わないから仕立てが必要なのよ」
「あー……そうね。マクネアはちょっと大きいもんね…」
「でもミリィも私と同じぐらいじゃない?だから、仕立てが必要無いと思って……。ミリィさえ良ければ譲りたいんだけど…」
「うーん……。でもあたしドレスとか着る機会は無いよ?」
「大丈夫よぉー。ドレス以外もたぁーくさんあるの!」
「そ、そうなの?」
「そうだ!ちょっと試着してみなさいよ!それで気に入ったのがあったら譲るからさ!」
「え?えっ?」
酔っているマクネアが手を叩くと、夜遅くにも関わらず使用人--メイドである--が入ってきた。
「遅くにごめんね?私の服をここに持ってきてくれないかしら?いつもの所にあるやつ全部」
「ぜ、全部ですか?…かしこまりました。少々お待ちください」
メイドは頭を軽く下げると部屋から出て行く。
「ねぇマクネア…。あのメイドの顔が引きつってたんだけど…」
「沢山あるからね…。でも捨てるよりかはマシなのよ!」
「…金持ちの考えは、あたしには分かんないなぁ…」
ミリィ達はメイドが来るまでお喋りを続けている。アルスはというと、ボーッとしながらミリィ達を視姦していた。
(……良い。凄く良いな…)
アルスの視線はミリィ達を隅々まで行き来する。それもそのはず。ミリィ達の格好はかなりラフなものとなっており、美しい素足が無防備に晒されているからだ。
この世界にも寝巻きのようなものがあり、女性用のそれはモコモコとしたものであった。色も淡いピンクであり、男であればグッとくる格好であった。
(…ミリィもマクネアさんもすげーエロい。あの太もも触らせてくれねぇかな…)
泥酔とは行かないまでも、ある程度場に酔っているアルスは欲望を前面に出している。
「お、お待たせしました!」
「ごめんねぇ…」
メイドが大きな手編みのカゴ一杯に服を持ってきた。メイドの後ろには他の使用人もおり、その使用人達も両手一杯に服を持って来ていた。
「マクネア様。こちらが本日届いた物になります」
「ありがと。申し訳ないけど、朝に後片付けをお願いしてもいいかしら?」
「ええ。それが私達の仕事ですから」
メイド達は一礼すると部屋から出て行く。入り口に置かれたカゴからマクネアは一枚の服を選び、それをミリィへと渡す。
「ミリィにこれが似合うと思うんだけど……着てみない?」
「…これを?」
「そっ。このドレスなんだけど、ちょっと着てみてよ」
「……仕方ないなぁ…」
ミリィは渋々ながらもマクネアから渡されたドレスに着替えようとする。その時ミリィはアルスの存在を忘れており、また、マクネアもアルスが寝ているものだと思っていた。
(おおっ!!!!!!)
下着姿となったミリィにアルスは内心で雄叫びをあげる。たわわな果実に目が行きがちではあるが、ミリィは腰もくびれており、お尻も小ぶりで美しかった。
「ど、どう?」
「似合うわ!!」
ミリィが着たドレスはエメラルドグリーンの『フィット&フレアー』シルエットであった。
「キツかったりしない?」
「……大丈夫」
「私の見立ての通りね……。じゃ、次はこれ着てみてよ!」
数種類のドレスを試着し終え、次にマクネアの私服へと移る。アルスはというと生着替えを目の当たりにし、『このまま死んでもいい』という満足感に包まれていた。
「次はねー……これ!」
「あっ!これ知ってる!可愛いよねー!」
「私も最初に見た時ビビッと来たんだけど……。ちょっと大きくなっちゃって……」
「…マクネアってあたしから見ても大きいよね?どのくらいあるの?」
「……昨日測ったばっかりなんだけど…G…」
「ええっ?!大っきすぎだよ!!」
(ほほう……Gとな?)
ミリィ達の会話を一言一句逃さないように、耳を大きく広げ会話を拾う。このアルファベットだけでアルスは満足出来る。
「ミリィも似たようなものでしょ?」
「あたしはそこまで大きくないもーん」
「…サイズは?」
「F」
「似たような物じゃない…」
「全然違うよぉー!…でもマクネアの服がブカブカじゃないから、あたしも大きくなってるのかな?」
「ねっ。今度一緒に買い物行きましょうよ!」
「うん!……あ、でもマクネアが行くような所は遠慮する…」
「なんで?」
「だってマクネアが行く所って高いんでしょ?あたし、あんまりお金持ってないからさ…」
「そんな事無いわよ。ドレスとかパーティー用は高いけど、比較的安い所でいつも買っているわよ?」
「そうなの?」
「ええ。私だって無駄遣いはしたくないからね」
「そっか……。ならついでに街の案内も頼んでいい?」
「私もそこまで街を出歩いた事無いのよね……。一緒にブラブラ街歩きをしない?」
「いいね!そうしよう!」
「楽しみだわ。……じゃ、着てみてよ」
マクネア達は同性同士楽しげにお喋りをする。そこに変態ムッツリ助平が耳を大きくしているとは知らずに。
「………うーん……下は丁度いいけど、上がちょっとキツイかな…」
(なんだその格好は!!なんだよ!!この世界にもそんなのあるのか?!)
ミリィの生着替えを視姦しながら、アルスは叫ぶ。ミリィが着替えた服はショートパンツに肩が見えるオフショルダートップスであった。
たわわな果実が激しく主張しており、アルスの目はそこにしか行かない。童貞の悲しき性と言うべきか、服装よりも露出している部分に視線が行く。
「似合ってるわ!……ミリィはやっぱりスタイルが良いのねぇ…」
「マクネアには言われたく無いなぁ…。マクネアもスタイル良いじゃん!」
「そこまで良くは無いわよ?」
「…それあんまり言わない方が良いかも。他の人から反感買いそう…」
「そうかしら?」
「そうだよ!……所でマクネアはどんなの買ったの?見せてよー!」
「え?……私も着た方が良いの?」
「あたしばっかり着替えるのは恥ずかしいじゃん!それにどんなの買ったのかみてみたい!」
「わ、分かったわ…。ちょっと待ってね…」
そう言うと、マクネアは今日買った服を手に取り、着ている服を脱ぐ。
(……ここが極楽か!!!!)
マクネアの生着替えを視姦しながらアルスは昇天しそうになる。ミリィと同じぐらいスタイルが良く、凶暴性を秘めたたわわな果実がアルスの視線を独り占めする。
(な…なん……だと!?)
舐めるような目付きでアルスはマクネアを視姦していると、お尻の部分に注目した。なんとマクネアは男が選ぶ大好きな下着を着用していたのだ。しかもアルスがいる事を忘れているマクネアは下着姿のままアルスに背を向ける。
(うひゃあっ!!!ありがとう神様仏様!!!)
アルスの興奮が絶頂する。アルスの興奮具合は反り立つ壁と連動しており、いつ暴発してもおかしくないくらいだった。
「……ど、どうかしら…」
「うわぁー!可愛いっ!」
新しい服に着替えたマクネアが照れながらミリィへと尋ねる。それを見たミリィは素直な感想をマクネアへと伝える。
「うんうん……。すっごい似合ってる!」
「て、照れるわ…」
「……あれ?マクネア、そのカゴに入ってるのって……」
ミリィが何かに気付きマクネアへと問う。
「あ、これは下着よ?ドレスを着たときに履くものよ?」
「………凄いヒラヒラ…。これ履く意味ある?」
「あるわよ!下着の線が見えたりしたら恥ずかしいじゃない!」
「…あたしドレスなんか着る機会ないから分かんないけど……そういうものなの?」
「……だって分かるじゃない。『あ、この人見てる…』って……」
「あー!分かる分かる!!男ってどこ見てんのかすぐ分かるよね!」
「だから恥ずかしいのよ……」
「…………ねぇマクネア。信じたくないけど……それもアルスと一緒に選んだの?」
「え?………そ、そんな恥ずかしい真似出来るわけ無いじゃない!これは流石に1人で選んだわよ!」
「ふぅん……。なぁーんか怪しいなぁ……」
「あ、怪しくなんか無いわよ……」
疑うような目付きをしているミリィに対し、マクネアは目を泳がせながら否定する。
「そ、それよりも今度はこれを着てみてよ!」
それからはミリィとマクネアは互いの品評会をする。ミリィはマクネアのお下がりを。マクネアはアルスと選んだ服を。……マクネアの場合は下着も含めてだが。
「………これ着たらどんな反応するかなぁ?」
ミリィが試着した服を下着姿で畳みながらポツリと漏らす。
「明日にでも聞いてみたら?」
「そ、そんなの恥ずかしくて聞けないよ…」
「恥ずかしがっちゃダメよ?素直にならなきゃ」
「……じゃあマクネアは今の格好で似合ってるかどうか聞けるの?」
「そ、それは……」
互いに下着姿になりながら話し合う。その様子をアルスは冷静な目で視姦していた。
(……ふぅ。魔力が無限でよかったよ。おかげで臭いはしてないもんな)
胡座から体操座り、そして正座へと姿勢を変え、アルスは目の前で繰り広げられる出来事に本能と理性がようやく落ち着いていた。
(……つか、この2人俺の存在忘れてないか?絶対気付いてたら生着替えなんかしねーだろ…)
その時、ふとマクネア達と目線が合う。賢者になったアルスは冷静に思考を回転させることが出来た。
「…………何してんの?」
「い、いつから……?」
「騒がしかったから起きたんだけど……」
「ア、アルス?!いつから起きてたの!?」
「…ついさっきだけど?」
マクネアとミリィは素早くそこら辺に落ちている服を羽織る。両者とも顔を赤くし今にでも噴火しそうだ。
「そ、そう……」
「ほ、ほんと??」
「……で?何してたの?」
「「……………」」
賢者となっているお陰で、アルスは嘘をすんなりと吐けた。無論、素直に『最初っから起きてました。いやー!ごちそうさまです!』なんて言ってしまえば、2人から手酷い仕打ちを受ける事には間違いないだろう。
「え、えと……その……今日買った服の試着を……」
顔を赤くしながらマクネアさんが答えてくれる。
「あ、そうなんですか?」
「うん……。あとミリィも私の服を着てもらってて…」
「ちょっ?!」
「あー………もしかして俺お邪魔しましたかね?」
「「……………」」
賢者のアルスが最優先すべきことは、この場を無事にやり過ごす事であった。名残惜しいが、見なかったことにすればアルスの平穏は保たれるからだ。
「……あっ!そうだ!」
マクネアが何かを閃いたかのように言葉を発する。
「ミリィ。アルスに聞いてみたら?似合ってるかどうか」
「えっ?!」
「……ほう…」
マクネアの言葉にアルスは思考を巡らせる。アルスとしてはこのファッションショーが続くというのは嬉しい限りだ。しかもその流れを作ったのはマクネアだ。『この大波を逃すわけにはいかない』とアルスは考える。
だが、アルスが歓迎するよりも先にミリィが拒否する。
「イヤよ!!」
ミリィの拒否が入った事により、アルスの欲望の波はベタ凪となる。だがそれは一瞬の事で、再び波が押し寄せる。
「なんで?似合ってるかどうかアルスの意見を聞いた方が早くないかしら?」
(いいぞ。もっと言うんだマクネアさん」
「? 何か言った?」
「いいえ。何も」
内心が漏れていたアルスだったが冷静に対処する。マクネアも酔っているため、いつものようにアルスを疑うような事はしなかった。
「男の意見って貴重でしょ?………ね?ミ リ ィ ??」
酔っているとはいえ、マクネアは含みを持たせながらミリィへと問う。
「…………恥ずかしいよ。だって……目の前で着替えるんでしょ?」
「……それもそうね」
(おっと………。こりゃ波に乗り損ねたか?…いや、まだだ。まだ慌てるような時間じゃない……)
至福の時が訪れるならばアルスは口八丁で誘導する事を固く決意している。全てはエロの為。男はエロの為ならば如何なる困難にも立ち向かえる。
「………あー……なんか俺は寝てた方が良いかもな…」
押すか引くかで迷ったが、自分の直感を信じ引く事にする。仮に失敗したとしても、軌道修正は余裕で出来る。そんな意味不明な自信を持ちながらアルスは2人へと問いかける。
「「……………」」
2人の反応を伺いながら次の一手を打とうとする。今アルスに脳内メーカーを試してみれば『性欲』の二文字で埋め尽くされているだろう。
「……おやすみなさ--
「やる……」
布団に潜ろうとした時、か細いながらもミリィの声が聞こえた。
(簡単に釣れちゃったぜ…)
しめしめと思いつつもアルスは『やるって何を?』と、白々しく尋ねる。
「…試着したのが似合うかどうか教えて」
「……いいのか?」
「……その代わり、着替えてる所は絶対に見ないで!」
ミリィは色々考え、条件を出す。マクネアの言う通り、アルスに試着姿を見てもらえればアルスの好みが判明する…と。だが、それと引き換えに恥ずかしい思いをしなければならない。その両方を天秤にかけた時、ふとフランが言った言葉を思い出したのだ。
(……素直にならなきゃ!それに着替えている所を見られなきゃ恥ずかしくないし!)
「じゃあ私もそれに参加しようかなぁ…」
ミリィの決断にマクネアがひょっこり便乗する。
(うひょー!!まさかの一荷だと!?)
「マ…マクネアも?」
「だってミリィだけだと恥ずかしいでしょ?私もすれば恥ずかしくないだろうし…」
嘘である。マクネアが言ったのは建前であり、本音はアルスの好みを知る為に便乗しただけである。
「あー………えと?じゃあ俺は何をすれば………」
押すでも引くでもなく、相手に委ねるような返答をするアルス。あくまでも『アナタ達の命令に従いますよ』という姑息なアピールである。
「………とりあえず、あたし達が試着する服が似合ってるかどうかを教えて。アルスの好みじゃなくて、世間一般的な感想を!」
ミリィの悪い癖が出てしまう。折角フランに言われた事を思い出したのに、正反対の言葉を言ってしまう。
「私は率直な感想を求めるわ?」
マクネアは平然とアルスに伝える。それはマクネア達の間に差をつける言葉であった。
「?! や、やっぱりあたしも!」
『抜け駆けは許さない!』と言わんばかりにミリィもマクネアの言葉に続く。
(……えーと……普通に似合ってるかどうかを言えばいいんだよな?)
女同士の水面下の戦いに気付く事なく、アルスは『わかりました』と返事をする。アルスの返事を聞いた2人はすぐに服を着替える。その間アルスは後ろを向くように言われ、許可が出るまできぬ擦れの音だけを聞くだけであった。
「うーん……なんか惜しいね」
「おっ!中々似合ってますね!」
「おー……結構良いな…」
「……ちょっと雰囲気が…」
「あ。それ好みだわ」
「良いですね!ラインがはっきりしてます!」
「ブハッ!!ち、ちょっと…それは刺激が強すぎる…。まぁ好きだけど…」
「ブフッー!……こ、これは反則だ………」
ミリィ達のファッションショーを見ながらアルスは次々と感想を述べていく。ミリィ達も最初は恥ずかしそうにしていたのだが、段々と楽しくなってきたのか次から次へと試着していく。
ミリィが可愛らしいのを着ればマクネアは綺麗目な格好をする。ミリィが綺麗目な格好をすればマクネアはセクシーな格好をする。お互いがアルスの好みを知ろうとして躍起になる。
そんな状況を見ながらアルスは酒を呑みながら感想を述べていく。遂には2人ともセクシー路線に走り出したことにより、アルスの下半身が反応し始める。
(アカン!!このままじゃ何回目かも分からん暴発を迎えてしまう!!……落ち着け。落ち着くんだ息子よ。あとで慰めてやるから……)
ここまで来たら素数を数えてなどはいられない。そんな暇があれば脳内メモリにこの至福の光景をインプットしておいた方がいい。アルスはそう考えながらも、腕と股で暴徒化しそうな粗末な物を抑え込む。
「「これならどっち!?」」
「へ?…………ブハァッ!!!!!」
ミリィとマクネアのあられもない姿に、アルスは全てをヤラれる。鼻血を噴き出す事は無かったが、童貞には致命的なダメージであった。そのまま唾飛沫を噴きながら布団に倒れ込み、意識を失う前に最後の足掻きをする。
「……ひ、紐……最高……」
親指を立てながらアルスは素晴らしい笑みを浮かべ意識を失う。……童貞には耐え切れるはずのない格好を2人がしているのだから仕方がない。そもそもアルスは免疫というものが無いのだ。画像や映像とは違い、これは現実なのだ。
「…………アルス?」
親指を立てるという謎のポーズを見たミリィがアルスに近寄る。この時アルスにまだ意識があれば確実に手を出していただろう。……勇気があればの話だが。
「…スーーーーッ……スーーーーーーッ………」
「寝ちゃった…………」
幸せそうな顔でアルスは寝息を立てている。
「寝ちゃったの?」
マクネアもアルスの元へと近寄り寝息を確認する。
「……いきなり寝ちゃったね…」
「無理も無いわ…。ずっとお酒を呑んでいたもの……」
「……………あたし達も寝よっか」
「……そうね」
スヤスヤと寝息を立てているアルスに触発されたのか、ミリィ達もアクビが出た。アルスを二人掛かりで布団に入れ、着替えるのも面倒だったのでそのままアルスの隣に潜り込む。
そして、そのまま夢の世界へと旅立ち、冒頭へと戻るのであった。
「うーん……………」
翌日。ジリジリと肌が焼けるような感覚で目を覚ます。
「…………あれ?」
目を覚ますと知らない天井が見えた。起き上がって見ると巨大なベッドに横たわっていたのが理解出来た。
「……………ここは?……俺の部屋じゃねぇよな…」
キョロキョロと室内を見回すが、俺の部屋には無い物が多く置かれていた。
「あるぇ?マジで何処だよここ……」
巨大なベッドから降りようと布団をめくり、とあるモノを見てゆっくりと元に戻す。
「……………………………は?????」
見間違いかと思い、慎重に布団をめくる。
「……ブハッ!!」
あまりの衝撃に唾飛沫が飛ぶ。そして、状況が理解出来た俺はおそるおそるベッドから降りようとする。
「………どうなってんだ?」
とあるモノを起こさないように反対側から降りようとすると、柔らかい何かを押した。
「うぇっ?!」
慌てて手を退かして、布団の隙間から覗き込む。そして、押し付けたモノを視認する。
「………待て待て待て。どういうことだ?!」
焦りながらも本能が『二度見しろ』と訴えるのでもう一度確認する。
「…………」
とあるモノを無言で迂回し、ベッドから降りる。そして俺が下着姿である事を理解し、元気なモノを見ながら冷静に記憶を探る。
「………事後……じゃないよね?!」
とあるモノを思い出しながら狼狽する。
「…いやいやいや。それは無い。だって俺童貞だし。そんな度胸無いし」
ベッド横に置かれている椅子に座りながら腕組みをし、冷静になるよう努める。
「…落ち着け。きっとこれは夢だ。俺の煩悩が『創造』を刺激して、夢を見せてくれてるだけなんだ。じゃなきゃこんな状況はあり得ない……」
自分自身を言い聞かせ、周囲を確認する。ベッド周りには女性用の衣服が散乱しており、遠目からでもハッキリと分かる物があった。
「…嘘……だろ?」
近くに行かなくても分かる。アレは俺がマクネアさんに聞かれたモノだった。
(あああああああ!!なんて事だ!!)
頭を抱え愚痴を漏らす。
「…クソゥ……なんで覚えてないんだ…」
女性物の服が散乱し、俺は下着姿。そして、ベッドの中にはたわわな物がたわわしていた。そして俺の息子が立派になっている。それらから考えられる答えは1つ。………………うん。間違いなく事後だ。
「………ちくしょう…」
貴重な初体験が覚えてないとかあんまりにも残酷過ぎんよー。しかも相手は前世では見向きもされなかった絶世の美女だぜ?……情け無いわぁー。
「………もう一回見とこ」
記憶に無いのは仕方ない。ならば新しく記憶に残すまで!本能に従い慎重にベッドに近寄り、布団をそっとめくり覗き込もうとする。
「んっ……………」
「うひゃっ?!」
布団の中で声が聞こえ慌ててしゃがむ。
「…………っぶねぇー!!」
ベッドの縁から顔を覗かせ、起きていない事を確認する。ベッドの上を視認する限り、小さく動いているのが分かる。
「ほっ……。起きては無いみたいだ…」
本能の塊となった俺は再度挑戦する。無駄に頭を回転させながら、慎重に…そう、慎重に布団をめくる。もちろん俺は紳士なので、全部をめくるという暴挙は行わない。コッソリと見えるぐらいをめくるのが素敵な事だと思うんだ。
「………そぉーっと……そぉーっとだぞアルス……」
布団の中にいる生物の呼吸音が微かに聞こえ、深呼吸をする。『何やってんだ?』と思うかも知れないが、童貞には刺激が強すぎるんだよ!心構えってのが必要なんです!!
「……フゥーーー………よし!!」
頭は冷静、下半身は興奮しながら、いざ無限の彼方へ!!さぁ!桃源郷は目の前だ!!
「……………………………………あ」
「…………何してんの?」
任務失敗!任務失敗!!直ちに帰還せよ!!
脳内でアラートが鳴り響く。覗いた瞬間に布団の中の生物と目が合ってしまった。
「………………」
某不良教師漫画のように満面の笑みでその場を過ごそうとする。………が、それは悪手だった。布団の中の生物は俺の目線を辿り、生物自身の体を見る。そして-----
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
絶叫と共に俺にも察知出来ない攻撃が飛んでくる。
「ま、待て!これには理由が-ーブベッ?!?!」
生物の痛恨の一撃が俺の頬に当たり、俺の意識は遠ざかるのであった。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎
「-----い!---きて!!」
「う、うーん………」
誰かが俺の頬を叩く感覚がする。……が、俺は夢にまで見た桃源郷が広がっている状況から出たくない。
「……もうっ!---起きなさいってば!!」
「いでぇ!!!」
頬に力強い衝撃を受け夢から覚めると、ミリィが目の前に立っていた。
「……へ?ミ、ミリィ…?」
「あら?やっと目が覚めたの?」
声のする方へ目を向けると、優雅に飲み物を飲んでいるマクネアさんがいた。
「……………やっと?」
呆然となりながらマクネアさんとミリィを交互に見る。
「そうよ?凄い音がしたと思って目を覚ましたらアルスがベッドの下で気を失ってたのよ」
「気を失って?………寝相が悪くて落ちたんですかね?」
「さぁ?」
意味有りげな笑みを浮かべるマクネアさん。………なんかそうじゃない気がするのは気のせいだろうか?
「……なぁーんか大事な事…忘れちゃいけない出来事があったような…」
腕組みをし記憶を遡る。ベッドから落ちたにしては、何故か頬がメチャクチャ痛い気がする。……すんげー貴重なモノを見た記憶があるんだよなぁ…。なんだっけ??
「べ、別に何も無かったわよ!ただ、アルスが思いっきり落ちただけなんだから!」
「え?……そうなのか?」
「そ、そうよ!」
何故か顔を赤らめているミリィが、『ベッドから落ちた』と言い張るので、腑に落ちないながらも『寝相が悪かったんだなぁ…』と反省する。一人で寝てる時は落ちた事無いんだけど…まぁこんな風にベッドが広けりゃ落ちるのも無理はないか。
「……ってか、ここどこ?」
その話は解決したので、とりあえずここは何処なのかをミリィに問う。
「覚えてないの?ここはマクネアの屋敷よ?」
「…………は??」
どうやら俺はマクネアさんの屋敷にいるらしい。だが、何故居るのかが分からない。
「…なんで?」
「なんでって……。昨日スサノオ様と呑んだ後、マクネアが呑み足りないって言ってここに来たのよ?」
「……全然覚えてない…」
「それでマクネアの部屋で呑み始めたの」
「そ、そうなのか…」
「覚えてないの?アルスの前で着せ替えを沢山したんだけれど?」
「き、着せ替え……?」
ミリィとの会話にマクネアさんも混ざり、昨日何があったのかを話してくれる。
「昨日買った服を覚えてる?アレが届いてたから早速着替えたのよ。そしたらミリィが『あたしも着てみたい!』って言うから、2人で新品を着てたのよ」
「そ、そうなんですか…」
「あ、アルスは審査員だったわよ?」
「は?し、審査員?!」
「ええ。私やミリィが着てるのを真剣に評価していたわ。……ね?ミリィ」
「……うん」
な……なんだと?!そんなパラダイスが起きてたと言うのか!?
「私のサイズがミリィに合ってたみたいで、私も色々と服を引っ張り出したわ。それでミリィが色々と組み合わせて着るのをアルスは審査してたってわけ」
「……くっ。全然覚えてない!」
「フフッ…」
なんて事だ。そんな目の前でファッションショーをしてただなんて!!クゥゥゥゥゥ!!なんで覚えてないんだコンチクショウ!!
「……あの時のアルスは少し気持ち悪かった」
「えっ?!」
ミリィが静かに漏らした言葉に俺は敏感に反応する。
「き、気持ち悪い……?」
「うん……。だってあたしやマクネアが着替えるのを食い入る様に見つめてたんだもん。しかも姿勢良く真面目な表情でさ……」
前言撤回。覚えてなくて良かった。
「あら?でも、ミリィも満更でも無い顔してたわよ?」
「ち、ちょっとマクネア?!」
「残念ねぇ…。アルスが昨日の事を覚えてないだなんて…。………私やミリィに言ったことも……覚えてないの?」
マクネアさんが小悪魔的な笑みで俺へと問う。俺はというと、何か失言したのかと思い、ハラハラしていた。
「お…覚えてないです……。俺、何か失礼な事言いましたかね?」
「失礼…では無いわね。むしろ逆ね。……あ、ミリィにとっては失礼に当たるのかしら?」
「そ、そんな事無い!!」
ミリィが焦った表情でマクネアさんの言葉を否定する。
(……俺、一体何を言ったんだ?)
不安が渦巻く中、勇気を出してマクネアさんへ問いかける。
「あの……それで俺何言ったんですかね…?」
「……私の口から言わせる気?」
「えっ?!」
悪戯っ子のような笑みでマクネアさんは返答する。
(おいおい……。こりゃあガチめに失言だったんじゃねぇか?)
「…ミリィに聞いてみたらどうかしら?ねぇ、ミリィ?」
「ヤ、ヤダ!……恥ずかしいよぉ……」
(は、恥ずかしいだって?!…な、なんだよ…俺マジで何を言ったんだよ!)
顔を赤くしたミリィが首を振るのを見ながら自責の念に駆られる。一生懸命に思い出そうとするが、モヤがかかっていて思い出す事が出来ない。
「……な、何を言ったか覚えてないすけど……。失礼な事言ってたかも知れないんで、すいません!!!」
土下座の姿勢をとり2人に謝罪する。
「失礼な事は言ってないわよ?……そうねぇ。ただ…思い出すと恥ずかしくなるわね」
「すいません!すいません!!」
絶世の美女達のファッションショーが記憶に無いというのは非常に、そう非常に残念ではあったが、それよりもまずは謝罪の方が先だ。『覚えてないです』とか言い訳にならないからな。
結局、俺が何を仕出かした、あるいは失言したかは教えて貰えず、顔を赤くしたミリィと悪戯っ子のように笑っているマクネアさんにひたすら頭を下げ続けるのだった。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎
時は戻り昨夜にて。アルス達3人はマクネアの部屋に居た。アルスはベッドで胡座をかいており、マクネア達は地べたに座っていた。そして、3人の足元には酒瓶が数本置かれていた。
「ねぇミリィ。アナタってスタイル良いわよね」
「な、なによ突然…」
「んー…ミリィが良ければなんだけど、私の服を貰ってくれないかしら?」
「え?」
「今日ね、アルスと買い物に行ったんだけど、新しく服を新調したから古いのを捨てないといけないのよ。けど、古いと言ってもそんなに着てないし、まだ新品みたいな状態なんだけど……」
「それで何であたしに…?」
「…ほら、私って人よりちょっと大きいじゃない?色んな子に譲ってはいるんだけど…丈も幅も合わないから仕立てが必要なのよ」
「あー……そうね。マクネアはちょっと大きいもんね…」
「でもミリィも私と同じぐらいじゃない?だから、仕立てが必要無いと思って……。ミリィさえ良ければ譲りたいんだけど…」
「うーん……。でもあたしドレスとか着る機会は無いよ?」
「大丈夫よぉー。ドレス以外もたぁーくさんあるの!」
「そ、そうなの?」
「そうだ!ちょっと試着してみなさいよ!それで気に入ったのがあったら譲るからさ!」
「え?えっ?」
酔っているマクネアが手を叩くと、夜遅くにも関わらず使用人--メイドである--が入ってきた。
「遅くにごめんね?私の服をここに持ってきてくれないかしら?いつもの所にあるやつ全部」
「ぜ、全部ですか?…かしこまりました。少々お待ちください」
メイドは頭を軽く下げると部屋から出て行く。
「ねぇマクネア…。あのメイドの顔が引きつってたんだけど…」
「沢山あるからね…。でも捨てるよりかはマシなのよ!」
「…金持ちの考えは、あたしには分かんないなぁ…」
ミリィ達はメイドが来るまでお喋りを続けている。アルスはというと、ボーッとしながらミリィ達を視姦していた。
(……良い。凄く良いな…)
アルスの視線はミリィ達を隅々まで行き来する。それもそのはず。ミリィ達の格好はかなりラフなものとなっており、美しい素足が無防備に晒されているからだ。
この世界にも寝巻きのようなものがあり、女性用のそれはモコモコとしたものであった。色も淡いピンクであり、男であればグッとくる格好であった。
(…ミリィもマクネアさんもすげーエロい。あの太もも触らせてくれねぇかな…)
泥酔とは行かないまでも、ある程度場に酔っているアルスは欲望を前面に出している。
「お、お待たせしました!」
「ごめんねぇ…」
メイドが大きな手編みのカゴ一杯に服を持ってきた。メイドの後ろには他の使用人もおり、その使用人達も両手一杯に服を持って来ていた。
「マクネア様。こちらが本日届いた物になります」
「ありがと。申し訳ないけど、朝に後片付けをお願いしてもいいかしら?」
「ええ。それが私達の仕事ですから」
メイド達は一礼すると部屋から出て行く。入り口に置かれたカゴからマクネアは一枚の服を選び、それをミリィへと渡す。
「ミリィにこれが似合うと思うんだけど……着てみない?」
「…これを?」
「そっ。このドレスなんだけど、ちょっと着てみてよ」
「……仕方ないなぁ…」
ミリィは渋々ながらもマクネアから渡されたドレスに着替えようとする。その時ミリィはアルスの存在を忘れており、また、マクネアもアルスが寝ているものだと思っていた。
(おおっ!!!!!!)
下着姿となったミリィにアルスは内心で雄叫びをあげる。たわわな果実に目が行きがちではあるが、ミリィは腰もくびれており、お尻も小ぶりで美しかった。
「ど、どう?」
「似合うわ!!」
ミリィが着たドレスはエメラルドグリーンの『フィット&フレアー』シルエットであった。
「キツかったりしない?」
「……大丈夫」
「私の見立ての通りね……。じゃ、次はこれ着てみてよ!」
数種類のドレスを試着し終え、次にマクネアの私服へと移る。アルスはというと生着替えを目の当たりにし、『このまま死んでもいい』という満足感に包まれていた。
「次はねー……これ!」
「あっ!これ知ってる!可愛いよねー!」
「私も最初に見た時ビビッと来たんだけど……。ちょっと大きくなっちゃって……」
「…マクネアってあたしから見ても大きいよね?どのくらいあるの?」
「……昨日測ったばっかりなんだけど…G…」
「ええっ?!大っきすぎだよ!!」
(ほほう……Gとな?)
ミリィ達の会話を一言一句逃さないように、耳を大きく広げ会話を拾う。このアルファベットだけでアルスは満足出来る。
「ミリィも似たようなものでしょ?」
「あたしはそこまで大きくないもーん」
「…サイズは?」
「F」
「似たような物じゃない…」
「全然違うよぉー!…でもマクネアの服がブカブカじゃないから、あたしも大きくなってるのかな?」
「ねっ。今度一緒に買い物行きましょうよ!」
「うん!……あ、でもマクネアが行くような所は遠慮する…」
「なんで?」
「だってマクネアが行く所って高いんでしょ?あたし、あんまりお金持ってないからさ…」
「そんな事無いわよ。ドレスとかパーティー用は高いけど、比較的安い所でいつも買っているわよ?」
「そうなの?」
「ええ。私だって無駄遣いはしたくないからね」
「そっか……。ならついでに街の案内も頼んでいい?」
「私もそこまで街を出歩いた事無いのよね……。一緒にブラブラ街歩きをしない?」
「いいね!そうしよう!」
「楽しみだわ。……じゃ、着てみてよ」
マクネア達は同性同士楽しげにお喋りをする。そこに変態ムッツリ助平が耳を大きくしているとは知らずに。
「………うーん……下は丁度いいけど、上がちょっとキツイかな…」
(なんだその格好は!!なんだよ!!この世界にもそんなのあるのか?!)
ミリィの生着替えを視姦しながら、アルスは叫ぶ。ミリィが着替えた服はショートパンツに肩が見えるオフショルダートップスであった。
たわわな果実が激しく主張しており、アルスの目はそこにしか行かない。童貞の悲しき性と言うべきか、服装よりも露出している部分に視線が行く。
「似合ってるわ!……ミリィはやっぱりスタイルが良いのねぇ…」
「マクネアには言われたく無いなぁ…。マクネアもスタイル良いじゃん!」
「そこまで良くは無いわよ?」
「…それあんまり言わない方が良いかも。他の人から反感買いそう…」
「そうかしら?」
「そうだよ!……所でマクネアはどんなの買ったの?見せてよー!」
「え?……私も着た方が良いの?」
「あたしばっかり着替えるのは恥ずかしいじゃん!それにどんなの買ったのかみてみたい!」
「わ、分かったわ…。ちょっと待ってね…」
そう言うと、マクネアは今日買った服を手に取り、着ている服を脱ぐ。
(……ここが極楽か!!!!)
マクネアの生着替えを視姦しながらアルスは昇天しそうになる。ミリィと同じぐらいスタイルが良く、凶暴性を秘めたたわわな果実がアルスの視線を独り占めする。
(な…なん……だと!?)
舐めるような目付きでアルスはマクネアを視姦していると、お尻の部分に注目した。なんとマクネアは男が選ぶ大好きな下着を着用していたのだ。しかもアルスがいる事を忘れているマクネアは下着姿のままアルスに背を向ける。
(うひゃあっ!!!ありがとう神様仏様!!!)
アルスの興奮が絶頂する。アルスの興奮具合は反り立つ壁と連動しており、いつ暴発してもおかしくないくらいだった。
「……ど、どうかしら…」
「うわぁー!可愛いっ!」
新しい服に着替えたマクネアが照れながらミリィへと尋ねる。それを見たミリィは素直な感想をマクネアへと伝える。
「うんうん……。すっごい似合ってる!」
「て、照れるわ…」
「……あれ?マクネア、そのカゴに入ってるのって……」
ミリィが何かに気付きマクネアへと問う。
「あ、これは下着よ?ドレスを着たときに履くものよ?」
「………凄いヒラヒラ…。これ履く意味ある?」
「あるわよ!下着の線が見えたりしたら恥ずかしいじゃない!」
「…あたしドレスなんか着る機会ないから分かんないけど……そういうものなの?」
「……だって分かるじゃない。『あ、この人見てる…』って……」
「あー!分かる分かる!!男ってどこ見てんのかすぐ分かるよね!」
「だから恥ずかしいのよ……」
「…………ねぇマクネア。信じたくないけど……それもアルスと一緒に選んだの?」
「え?………そ、そんな恥ずかしい真似出来るわけ無いじゃない!これは流石に1人で選んだわよ!」
「ふぅん……。なぁーんか怪しいなぁ……」
「あ、怪しくなんか無いわよ……」
疑うような目付きをしているミリィに対し、マクネアは目を泳がせながら否定する。
「そ、それよりも今度はこれを着てみてよ!」
それからはミリィとマクネアは互いの品評会をする。ミリィはマクネアのお下がりを。マクネアはアルスと選んだ服を。……マクネアの場合は下着も含めてだが。
「………これ着たらどんな反応するかなぁ?」
ミリィが試着した服を下着姿で畳みながらポツリと漏らす。
「明日にでも聞いてみたら?」
「そ、そんなの恥ずかしくて聞けないよ…」
「恥ずかしがっちゃダメよ?素直にならなきゃ」
「……じゃあマクネアは今の格好で似合ってるかどうか聞けるの?」
「そ、それは……」
互いに下着姿になりながら話し合う。その様子をアルスは冷静な目で視姦していた。
(……ふぅ。魔力が無限でよかったよ。おかげで臭いはしてないもんな)
胡座から体操座り、そして正座へと姿勢を変え、アルスは目の前で繰り広げられる出来事に本能と理性がようやく落ち着いていた。
(……つか、この2人俺の存在忘れてないか?絶対気付いてたら生着替えなんかしねーだろ…)
その時、ふとマクネア達と目線が合う。賢者になったアルスは冷静に思考を回転させることが出来た。
「…………何してんの?」
「い、いつから……?」
「騒がしかったから起きたんだけど……」
「ア、アルス?!いつから起きてたの!?」
「…ついさっきだけど?」
マクネアとミリィは素早くそこら辺に落ちている服を羽織る。両者とも顔を赤くし今にでも噴火しそうだ。
「そ、そう……」
「ほ、ほんと??」
「……で?何してたの?」
「「……………」」
賢者となっているお陰で、アルスは嘘をすんなりと吐けた。無論、素直に『最初っから起きてました。いやー!ごちそうさまです!』なんて言ってしまえば、2人から手酷い仕打ちを受ける事には間違いないだろう。
「え、えと……その……今日買った服の試着を……」
顔を赤くしながらマクネアさんが答えてくれる。
「あ、そうなんですか?」
「うん……。あとミリィも私の服を着てもらってて…」
「ちょっ?!」
「あー………もしかして俺お邪魔しましたかね?」
「「……………」」
賢者のアルスが最優先すべきことは、この場を無事にやり過ごす事であった。名残惜しいが、見なかったことにすればアルスの平穏は保たれるからだ。
「……あっ!そうだ!」
マクネアが何かを閃いたかのように言葉を発する。
「ミリィ。アルスに聞いてみたら?似合ってるかどうか」
「えっ?!」
「……ほう…」
マクネアの言葉にアルスは思考を巡らせる。アルスとしてはこのファッションショーが続くというのは嬉しい限りだ。しかもその流れを作ったのはマクネアだ。『この大波を逃すわけにはいかない』とアルスは考える。
だが、アルスが歓迎するよりも先にミリィが拒否する。
「イヤよ!!」
ミリィの拒否が入った事により、アルスの欲望の波はベタ凪となる。だがそれは一瞬の事で、再び波が押し寄せる。
「なんで?似合ってるかどうかアルスの意見を聞いた方が早くないかしら?」
(いいぞ。もっと言うんだマクネアさん」
「? 何か言った?」
「いいえ。何も」
内心が漏れていたアルスだったが冷静に対処する。マクネアも酔っているため、いつものようにアルスを疑うような事はしなかった。
「男の意見って貴重でしょ?………ね?ミ リ ィ ??」
酔っているとはいえ、マクネアは含みを持たせながらミリィへと問う。
「…………恥ずかしいよ。だって……目の前で着替えるんでしょ?」
「……それもそうね」
(おっと………。こりゃ波に乗り損ねたか?…いや、まだだ。まだ慌てるような時間じゃない……)
至福の時が訪れるならばアルスは口八丁で誘導する事を固く決意している。全てはエロの為。男はエロの為ならば如何なる困難にも立ち向かえる。
「………あー……なんか俺は寝てた方が良いかもな…」
押すか引くかで迷ったが、自分の直感を信じ引く事にする。仮に失敗したとしても、軌道修正は余裕で出来る。そんな意味不明な自信を持ちながらアルスは2人へと問いかける。
「「……………」」
2人の反応を伺いながら次の一手を打とうとする。今アルスに脳内メーカーを試してみれば『性欲』の二文字で埋め尽くされているだろう。
「……おやすみなさ--
「やる……」
布団に潜ろうとした時、か細いながらもミリィの声が聞こえた。
(簡単に釣れちゃったぜ…)
しめしめと思いつつもアルスは『やるって何を?』と、白々しく尋ねる。
「…試着したのが似合うかどうか教えて」
「……いいのか?」
「……その代わり、着替えてる所は絶対に見ないで!」
ミリィは色々考え、条件を出す。マクネアの言う通り、アルスに試着姿を見てもらえればアルスの好みが判明する…と。だが、それと引き換えに恥ずかしい思いをしなければならない。その両方を天秤にかけた時、ふとフランが言った言葉を思い出したのだ。
(……素直にならなきゃ!それに着替えている所を見られなきゃ恥ずかしくないし!)
「じゃあ私もそれに参加しようかなぁ…」
ミリィの決断にマクネアがひょっこり便乗する。
(うひょー!!まさかの一荷だと!?)
「マ…マクネアも?」
「だってミリィだけだと恥ずかしいでしょ?私もすれば恥ずかしくないだろうし…」
嘘である。マクネアが言ったのは建前であり、本音はアルスの好みを知る為に便乗しただけである。
「あー………えと?じゃあ俺は何をすれば………」
押すでも引くでもなく、相手に委ねるような返答をするアルス。あくまでも『アナタ達の命令に従いますよ』という姑息なアピールである。
「………とりあえず、あたし達が試着する服が似合ってるかどうかを教えて。アルスの好みじゃなくて、世間一般的な感想を!」
ミリィの悪い癖が出てしまう。折角フランに言われた事を思い出したのに、正反対の言葉を言ってしまう。
「私は率直な感想を求めるわ?」
マクネアは平然とアルスに伝える。それはマクネア達の間に差をつける言葉であった。
「?! や、やっぱりあたしも!」
『抜け駆けは許さない!』と言わんばかりにミリィもマクネアの言葉に続く。
(……えーと……普通に似合ってるかどうかを言えばいいんだよな?)
女同士の水面下の戦いに気付く事なく、アルスは『わかりました』と返事をする。アルスの返事を聞いた2人はすぐに服を着替える。その間アルスは後ろを向くように言われ、許可が出るまできぬ擦れの音だけを聞くだけであった。
「うーん……なんか惜しいね」
「おっ!中々似合ってますね!」
「おー……結構良いな…」
「……ちょっと雰囲気が…」
「あ。それ好みだわ」
「良いですね!ラインがはっきりしてます!」
「ブハッ!!ち、ちょっと…それは刺激が強すぎる…。まぁ好きだけど…」
「ブフッー!……こ、これは反則だ………」
ミリィ達のファッションショーを見ながらアルスは次々と感想を述べていく。ミリィ達も最初は恥ずかしそうにしていたのだが、段々と楽しくなってきたのか次から次へと試着していく。
ミリィが可愛らしいのを着ればマクネアは綺麗目な格好をする。ミリィが綺麗目な格好をすればマクネアはセクシーな格好をする。お互いがアルスの好みを知ろうとして躍起になる。
そんな状況を見ながらアルスは酒を呑みながら感想を述べていく。遂には2人ともセクシー路線に走り出したことにより、アルスの下半身が反応し始める。
(アカン!!このままじゃ何回目かも分からん暴発を迎えてしまう!!……落ち着け。落ち着くんだ息子よ。あとで慰めてやるから……)
ここまで来たら素数を数えてなどはいられない。そんな暇があれば脳内メモリにこの至福の光景をインプットしておいた方がいい。アルスはそう考えながらも、腕と股で暴徒化しそうな粗末な物を抑え込む。
「「これならどっち!?」」
「へ?…………ブハァッ!!!!!」
ミリィとマクネアのあられもない姿に、アルスは全てをヤラれる。鼻血を噴き出す事は無かったが、童貞には致命的なダメージであった。そのまま唾飛沫を噴きながら布団に倒れ込み、意識を失う前に最後の足掻きをする。
「……ひ、紐……最高……」
親指を立てながらアルスは素晴らしい笑みを浮かべ意識を失う。……童貞には耐え切れるはずのない格好を2人がしているのだから仕方がない。そもそもアルスは免疫というものが無いのだ。画像や映像とは違い、これは現実なのだ。
「…………アルス?」
親指を立てるという謎のポーズを見たミリィがアルスに近寄る。この時アルスにまだ意識があれば確実に手を出していただろう。……勇気があればの話だが。
「…スーーーーッ……スーーーーーーッ………」
「寝ちゃった…………」
幸せそうな顔でアルスは寝息を立てている。
「寝ちゃったの?」
マクネアもアルスの元へと近寄り寝息を確認する。
「……いきなり寝ちゃったね…」
「無理も無いわ…。ずっとお酒を呑んでいたもの……」
「……………あたし達も寝よっか」
「……そうね」
スヤスヤと寝息を立てているアルスに触発されたのか、ミリィ達もアクビが出た。アルスを二人掛かりで布団に入れ、着替えるのも面倒だったのでそのままアルスの隣に潜り込む。
そして、そのまま夢の世界へと旅立ち、冒頭へと戻るのであった。
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アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
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