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089話 -ジュエリア王国 1-
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アルス達が六道ダンジョンへと潜っている頃、ジュエリア王国では静かに異変が起きていた。その異変は王城で働く兵士達は全員が知っているモノであった。
「…おい、今日もソニア様は来ないのか?」
「みてぇだな…。ま、ソニア様も向こうで疲れたんだろ。復興作業を手伝ったらしいぞ?」
「姫様に力仕事を手伝わせるなんて、サガンの奴らは礼儀知らずだな」
「いや、それは違うぞ?姫様が自らやったらしい」
「……流石姫様だ。一つ一つの行動が慈愛に満ちている」
「……お前の手のひらの返し具合は尊敬するぜ…」
「貴様ら!!何を喋っておる!!訓練に集中せんか!!」
「「すいやせーんっ!!!」」
隊長の怒号が無駄話をしていた兵士へと届き、怒られた兵士は表情も真面目なモノにし訓練を行う。その様子を王城から見ている人物がいた。
「……ソニア様。身体を動かさなくても大丈夫なんですか?」
「んー………今日はいいや」
「今日もでしょうに………」
ニリキナは溜息を吐きながら窓の梁に腕を置いているソニアへと話しかける。
「そんなにアルスさんが恋しいんですか?」
「バッ?!そ、そんな事考えてない!!」
「ハァー……」
どうやら図星の様だとニリキナは思う。サガンから帰ってきてからソニアは物思いにふける時間が多くなった。ミレーユは色々と仕事があり、ソニアもそれを手伝ったりはしているが、元来身体を動かすのが好きなソニアが稽古に出ないという事は王城内では噂となっていた。その噂とは『サガンでソニアが強烈な心の傷を負ったのではないか?』というモノであった。
その噂はニリキナも耳にしている。だが、あながち間違いでは無いのでソニアと仲の良いニリキナは、質問される度に否定はしなかった。
「ソニア、入るわよ?」
扉が開き、ミレーユが中へと入ってくる。そして、ソニアのいつもの光景を目にしたミレーユは小さく溜息を吐き、ニリキナへと話しかける。
「ニリキナ、お父様の所へ行くのだけれど、この後時間はあるかしら?」
「ありますけど……サガンの報告はもう済ませましたよね?」
「それじゃなくて彼の事よ」
「………あれ?まだ言ってなかったんですか?」
「お父様もお忙しいからね。……それにソニアがこんなんじゃ話せないでしょ?」
「あー………まぁ確かに。アルスさんの名前を出しただけで--
「えっ?!アルスが来ているのか!?」
「………………………こうなるもんなぁ…」
ここまで来れば恋などではなくもはや病気だ。帰ってからアルスの事を事細かくニリキナはソニアから聞かれていた。『アルスはどんな女性が好みなのか』、『アルスはどのような格好が好きなのか』、『アルスの好きな食べ物は何なのか?』、『アルスの、アルスの、アルスの』---
ニリキナ自身、アルスとは色々と話した事はあるが、そこまでアルスの事を詳しくは知らない。それをソニアに伝えても『男同士なら色々と話すこともあるだろ?ん??』と面倒臭い状態へとソニアはなっていた。
「ソニア、アルスさんの事を思うのも良いけれど、ちょっと手伝ってくれないかしら?」
「……何を?」
「お父様に報告しに行くわよ。アルスさんの事について」
「………えっ!?ね、姉さん……あたしとアルスはまだそんな関係じゃないっていうか………」
何やらソニアはモジモジとしおらしい態度を取る。
「…え?」
「いや…俺に聞かれても……」
突如変貌したソニアにミレーユ達は少しだけ恐怖を覚える。ミレーユが目配せをニリキナにするが、ニリキナも原因が分からないので首を振る。
「と、とりあえずお父様へ報告に行くわよ。ソニアも良いわよね?」
「こ、心の準備が………」
「何の準備なのよ………。良いから行くわよ」
未だモジモジとしているソニアの手を引っ張り、ミレーユ達は父親の部屋へと足を運ぶのであった。
「…おい、今日もソニア様は来ないのか?」
「みてぇだな…。ま、ソニア様も向こうで疲れたんだろ。復興作業を手伝ったらしいぞ?」
「姫様に力仕事を手伝わせるなんて、サガンの奴らは礼儀知らずだな」
「いや、それは違うぞ?姫様が自らやったらしい」
「……流石姫様だ。一つ一つの行動が慈愛に満ちている」
「……お前の手のひらの返し具合は尊敬するぜ…」
「貴様ら!!何を喋っておる!!訓練に集中せんか!!」
「「すいやせーんっ!!!」」
隊長の怒号が無駄話をしていた兵士へと届き、怒られた兵士は表情も真面目なモノにし訓練を行う。その様子を王城から見ている人物がいた。
「……ソニア様。身体を動かさなくても大丈夫なんですか?」
「んー………今日はいいや」
「今日もでしょうに………」
ニリキナは溜息を吐きながら窓の梁に腕を置いているソニアへと話しかける。
「そんなにアルスさんが恋しいんですか?」
「バッ?!そ、そんな事考えてない!!」
「ハァー……」
どうやら図星の様だとニリキナは思う。サガンから帰ってきてからソニアは物思いにふける時間が多くなった。ミレーユは色々と仕事があり、ソニアもそれを手伝ったりはしているが、元来身体を動かすのが好きなソニアが稽古に出ないという事は王城内では噂となっていた。その噂とは『サガンでソニアが強烈な心の傷を負ったのではないか?』というモノであった。
その噂はニリキナも耳にしている。だが、あながち間違いでは無いのでソニアと仲の良いニリキナは、質問される度に否定はしなかった。
「ソニア、入るわよ?」
扉が開き、ミレーユが中へと入ってくる。そして、ソニアのいつもの光景を目にしたミレーユは小さく溜息を吐き、ニリキナへと話しかける。
「ニリキナ、お父様の所へ行くのだけれど、この後時間はあるかしら?」
「ありますけど……サガンの報告はもう済ませましたよね?」
「それじゃなくて彼の事よ」
「………あれ?まだ言ってなかったんですか?」
「お父様もお忙しいからね。……それにソニアがこんなんじゃ話せないでしょ?」
「あー………まぁ確かに。アルスさんの名前を出しただけで--
「えっ?!アルスが来ているのか!?」
「………………………こうなるもんなぁ…」
ここまで来れば恋などではなくもはや病気だ。帰ってからアルスの事を事細かくニリキナはソニアから聞かれていた。『アルスはどんな女性が好みなのか』、『アルスはどのような格好が好きなのか』、『アルスの好きな食べ物は何なのか?』、『アルスの、アルスの、アルスの』---
ニリキナ自身、アルスとは色々と話した事はあるが、そこまでアルスの事を詳しくは知らない。それをソニアに伝えても『男同士なら色々と話すこともあるだろ?ん??』と面倒臭い状態へとソニアはなっていた。
「ソニア、アルスさんの事を思うのも良いけれど、ちょっと手伝ってくれないかしら?」
「……何を?」
「お父様に報告しに行くわよ。アルスさんの事について」
「………えっ!?ね、姉さん……あたしとアルスはまだそんな関係じゃないっていうか………」
何やらソニアはモジモジとしおらしい態度を取る。
「…え?」
「いや…俺に聞かれても……」
突如変貌したソニアにミレーユ達は少しだけ恐怖を覚える。ミレーユが目配せをニリキナにするが、ニリキナも原因が分からないので首を振る。
「と、とりあえずお父様へ報告に行くわよ。ソニアも良いわよね?」
「こ、心の準備が………」
「何の準備なのよ………。良いから行くわよ」
未だモジモジとしているソニアの手を引っ張り、ミレーユ達は父親の部屋へと足を運ぶのであった。
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