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006話
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「すみませーん、これをギルドマスターへお願いします」
フィンに連れられギルドの中に入ると、ゲームのような世界が広がっていた。大きな部屋の中に、沢山の丸机と椅子。それと酒場が併設してあり、昼間から飲んでいる人もいる。…あー酒旨そうだなぁ。飲みたいなぁー。……味覚無いけどね。
おっさんから渡された書状をフィンが受付に渡してくれた。道中、話を聞いたがギルドマスターとおっさんは幼馴染らしく、仲が良いそうだ。
しばらくお待ちくださいと言われたので、とりあえず椅子に座る。しかし、ゲームのような光景に俺は興奮を抑えきれずフィンを連れてギルド内をウロウロと徘徊する。チカ達は喉が渇いたらしく、机で飲み物を飲んでいる。お金はフィンがいつのまにか出していたみたいで、お礼を言っておいた。
「なーなー。この絵に書かれてるのなんだ?」
「これですか?これは『勇者 アルマ』の肖像画です。かなり大昔、魔王と戦い世界を救った英雄なんですよ」
「へぇー。勇者ねぇ…」
(まんまRPGじゃねーか!!しかもこの紋章、見たことあるぞ!)
カセットのパッケージに描かれているような姿を見ながら一人ツッコミを入れていた。その動きを不審な目で見られたが、気にしない事にした。
室内を充分に探索した俺はチカ達の所へ戻った。椅子に座るなり、ウェイトレスさんが飲み物を俺とフィンに渡してくれる。……フィン、お前は絶対モテるヤツだな。
フィンに奢って貰った味のしない飲み物を飲んでいると、受付から声をかけられる。
「フィンさーん!ギルドマスターがお呼びです。お連れの方を連れて執務室へ向かってください」
「よーやくだな。結構待たされたな」
「忙しい方ですからね。…それじゃ、執務室へ行きましょうか」
♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎
「失礼します」
ドアをノックしたフィンの後に続き、俺達も部屋へと入る。豪勢な部屋かと思ったが、意外と質素な部屋だった。しかし、色合い的に質素という意味であり、調度品の数々は絶対に高いヤツだなと普通にわかる。…絶対、このギルドマスターはセンスいいな。
「やぁ、フィン。元気にしてるかい?」
「ええ、コンラッドさんもお元気そうで」
「はは、元気では無いんだけどね。……それで?後ろの方々が書状に書いてある人たちかい?」
「はい。僕たちを救ってくれたアルスさん達です」
「そうかそうか。それでは皆様方、こちらにお座りください」
ギルドマスター、コンラッドが俺達をソファーへ案内すると単刀直入に聞いてきた。
「いきなりで申し訳ないんだが…。本当に皆様方は砂漠大蜘蛛複数体を相手に勝利したのですか?」
(でざーとすぱいだー???…ああ、あの気色悪い大蜘蛛の事か!)
「は、はい。何匹いたのかはわかんないですけど、とりあえず全部倒したと思います」
「あたし2匹倒したよ!」
「ボクは3匹」
「私は2匹ですわね」
「だそうです」
「………信じられん。砂漠大蜘蛛ですよ?それを5匹以上、倒したのですか…」
「チカさん達のは見ていないですけど、アルスさんは一撃で倒してました!頭と胴体がスパーンって切断されてました!」
「何だと!?一撃でだと!?……いやいや、本当に信じられんぞ…」
「え…?そんなにあの大蜘蛛強いんですか?」
コンラッドとフィンが異常者を見るような目付きで俺を見ている。…そんな目で見ないでおくれ。
フィンにあの大蜘蛛について詳しく聞いてみた。すると、あの蜘蛛、砂漠大蜘蛛はBランクの魔物であり、同ランクの冒険者5人パーティで1体を倒せるかどうかとの話だった。
…なるほどな。そんな魔物を俺達が4人で5匹以上倒したって事はそりゃ信じられないわ。しかも、俺以外女の子だしね。
「でも、コンラッドさん。僕以外にも証人はいますよ?呼んできましょうか?」
「いや、大丈夫だよ。一応ギルマスだからね。君の目が嘘をついてないって事ぐらいわかるよ…。そうかぁ…そういう事かぁー…」
コンラッドさんがため息と共に頭を抱えている。一体どうしたんだ??
「あのー。どうかしました?」
「ああ、すまない。ちょっとカーバインの書状で悩んでいてね…」
「カーバイン??誰ですかそれ?」
「……アルスさん。カーバインは僕の叔父です」
「ああっ!あのおっさんカーバインって言うのか!名前聞いてなかったからわかんなかったよ…」
「…しっかり覚えてくださいね?この街の兵士団総長なんですから」
フィンの呆れ声に俺は、てへへと舌を出しながら頭をかく。だって!名前聞くタイミングなかったから仕方ないじゃん!
「カーバイン…カーバイン…。よし、覚えた!…それで、カーバインさんからの書状がどうかしたんですか?」
「ああ、アイツの書状には『アルス殿達は兵士団に勧誘するから横取りするな』と書かれていてね…。それならば何で私に紹介したのだろうかって思ってね…。まぁ、嫌味なんだろうけど」
コンラッドが苦笑いするが、俺には全く意味がわからなかった。とりあえず、俺はギルド証さえ貰えれば良いんだけど。
「…ちょっと考える時間をくれるかい?」
「ええ。別に良いですけど…」
コンラッドが頭を抱えながら、ブツブツと独り言を言っている。…少しだけだが怖い。
あまりコンラッドを見ないように待っていると、結論が出たのかコンラッドが顔を上げる。
「…アルス殿、あなたは『冒険者』と『兵士団』どちらを選びますか?どちらかを選んでください」
「は?へっ?いきなりなんですか?」
「カーバインのヤツはどうしてもあなた達を兵士団に入れたいようだ。もちろん、魔物との戦闘の話は聞いているでしょう…。しかし、私も戦力増強と言う意味では、あなたに冒険者になって貰いたい。私たちはお互いにアルス殿を求めているのです!…………急な話ではあるが、今どちらかを決めて頂きたい」
…全然話についていけないんですけどー!!!え?なになに?どっちか選べって事?急に言われても決めれる訳ねーだろ!!
「……ちょっと時間貰ってもいいですか?」
「ええ、もちろんですとも。ゆっくり考えて下さい」
席を立った俺はチカ達を連れ廊下へ出る。結局の所、俺だけの問題じゃないんだよね。…こうなったら、多数決だ!
「…なぁ、チカ達は『冒険者』と『兵士団』どっちがいい?」
「どちらでも構いません。アルス様に従いますわ」
「どちらでも。マスターについていく」
「ご主人様が一緒ならどっちでもー!」
……ああ、お前らのその気持ちはめちゃくちゃ嬉しいよ。めちゃくちゃ嬉しいけどな?今はそうじゃねーんだよ!お前らの意見聞きたいんだよ!!…まぁ、無理か。そんな設定無いし、俺優先だもんな…。
冒険者と兵士団のメリット、デメリットを考えていると意外な一言が飛び出てきた。
「ご主人様ぁー。選べないなら、どっちもすればいいんじゃない?」
ローリィの言葉に俺は衝撃を受けた。選べないならどっちもすればいいじゃん!2人とも俺を欲しがってるみたいだし、そうなれば丸く収まるだろ!
「それだっ!!ローリィありがとな!」
ローリィの頭を撫でると物凄く嬉しそうな表情になる。…やっぱ可愛いなぁ。
「…ずるい。ボクもマスターの役に立ってナデナデして貰う」
「私もよ。アルス様にナデナデして貰いたいわ」
コソコソとチカ達が話していたようだが、聞き取れなかった。ローリィを撫でるのをやめ、俺はコンラッドの部屋へと戻った。
「お待たせしてすいません。話し合いの結果が出ました」
「…もうですか?…もう少し話し合ってもいいんですよ?」
「いえ、大丈夫です。全員同じ気持ちですから」
「…わかりました。では…お聞かせください」
「はい、僕たちが選んだのは--」
ゴクリと唾を飲み込む音が聞こえる。
「--兵士団
コンラッドの表情が失望へと変わる。
「と冒険者、両方を選びます!」
俺の答えにコンラッドは大きく口を開ける。…なんだよ。そんなに面白かったか?まぁ、俺お笑いのセンスは有--
「両方ですか!?そんなの無理に決まってます!!」
なんだよ。最後まで言わせろよ。……まぁ、そう言うと思ってたけど。
「フィンから来る途中、色々と話を聞きましたけど、どちらともこの街の住民を守る為にあるんですよね?」
「そ、それはそうですが…。しかし…」
「だって、2人とも俺達が欲しいんですよね?正直、どちらか選べと言われても角が立つんですよ。それなら、両方を選んだ方が丸く収まるかなーって」
「うむむ…。それは確かにそうですが…」
「ならこうしましょう。俺達の事はカーバインさん達の秘密にしておいて、まず冒険者登録します。それで、依頼や討伐をこなして、ランクアップしていきます。俺達の名前が周囲に知れ渡った時、兵士団とギルドの両方に所属するってのはどうでしょう?」
「…………………………………」
コンラッドは目を閉じ、俺の意見を検討している。我ながら良い案だと思うんだけどなぁ。それでもダメって言うなら、ギルド証だけ作ってこの街から出て行こう。
しばらくの間、部屋には静寂が漂っていたが、深い溜息と共に静寂は霧散していった。
「……わかりました。こちらとしても有難いですので、その案に乗りましょう」
「ふぅ…よかった」
「カーバインには私から説明しておきます。……さて、堅苦しい口調は辞めてもいいですか?」
「ええ、普通に喋ってください。あと呼び捨てで構いません」
「それじゃ、アルス。君達には今から冒険者登録をして貰う。…正直言えば、Cランクからでも良いとは思うがギルドの決まりだからな。……まずはEランクから始めてもらおうか」
「わかりました。コンラッドさん、これからよろしくお願いしますね」
「こちらこそだよ。…あと特別に普通の口調で話して良いよ。勿論、誰も居ない時に限るがね?」
「え?いいの?それじゃ、そうします」
こうして、俺達は色々な出来事に巻き込まれながらも一息つける場所を手に入れた。
俺にとって、初めての世界、初めての街、初めての冒険者登録。初めて尽くしであったが、落ち着くという意味では非常に助かる。まだ分からない事も多すぎるし、色々と考えを整理しないといけない。けれども、少しだけ高揚している自分もいる。とりあえず寝て、明日から考えよーっと!
かくして、俺にとって非常に長い長い1日が終わるのであった。
フィンに連れられギルドの中に入ると、ゲームのような世界が広がっていた。大きな部屋の中に、沢山の丸机と椅子。それと酒場が併設してあり、昼間から飲んでいる人もいる。…あー酒旨そうだなぁ。飲みたいなぁー。……味覚無いけどね。
おっさんから渡された書状をフィンが受付に渡してくれた。道中、話を聞いたがギルドマスターとおっさんは幼馴染らしく、仲が良いそうだ。
しばらくお待ちくださいと言われたので、とりあえず椅子に座る。しかし、ゲームのような光景に俺は興奮を抑えきれずフィンを連れてギルド内をウロウロと徘徊する。チカ達は喉が渇いたらしく、机で飲み物を飲んでいる。お金はフィンがいつのまにか出していたみたいで、お礼を言っておいた。
「なーなー。この絵に書かれてるのなんだ?」
「これですか?これは『勇者 アルマ』の肖像画です。かなり大昔、魔王と戦い世界を救った英雄なんですよ」
「へぇー。勇者ねぇ…」
(まんまRPGじゃねーか!!しかもこの紋章、見たことあるぞ!)
カセットのパッケージに描かれているような姿を見ながら一人ツッコミを入れていた。その動きを不審な目で見られたが、気にしない事にした。
室内を充分に探索した俺はチカ達の所へ戻った。椅子に座るなり、ウェイトレスさんが飲み物を俺とフィンに渡してくれる。……フィン、お前は絶対モテるヤツだな。
フィンに奢って貰った味のしない飲み物を飲んでいると、受付から声をかけられる。
「フィンさーん!ギルドマスターがお呼びです。お連れの方を連れて執務室へ向かってください」
「よーやくだな。結構待たされたな」
「忙しい方ですからね。…それじゃ、執務室へ行きましょうか」
♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎
「失礼します」
ドアをノックしたフィンの後に続き、俺達も部屋へと入る。豪勢な部屋かと思ったが、意外と質素な部屋だった。しかし、色合い的に質素という意味であり、調度品の数々は絶対に高いヤツだなと普通にわかる。…絶対、このギルドマスターはセンスいいな。
「やぁ、フィン。元気にしてるかい?」
「ええ、コンラッドさんもお元気そうで」
「はは、元気では無いんだけどね。……それで?後ろの方々が書状に書いてある人たちかい?」
「はい。僕たちを救ってくれたアルスさん達です」
「そうかそうか。それでは皆様方、こちらにお座りください」
ギルドマスター、コンラッドが俺達をソファーへ案内すると単刀直入に聞いてきた。
「いきなりで申し訳ないんだが…。本当に皆様方は砂漠大蜘蛛複数体を相手に勝利したのですか?」
(でざーとすぱいだー???…ああ、あの気色悪い大蜘蛛の事か!)
「は、はい。何匹いたのかはわかんないですけど、とりあえず全部倒したと思います」
「あたし2匹倒したよ!」
「ボクは3匹」
「私は2匹ですわね」
「だそうです」
「………信じられん。砂漠大蜘蛛ですよ?それを5匹以上、倒したのですか…」
「チカさん達のは見ていないですけど、アルスさんは一撃で倒してました!頭と胴体がスパーンって切断されてました!」
「何だと!?一撃でだと!?……いやいや、本当に信じられんぞ…」
「え…?そんなにあの大蜘蛛強いんですか?」
コンラッドとフィンが異常者を見るような目付きで俺を見ている。…そんな目で見ないでおくれ。
フィンにあの大蜘蛛について詳しく聞いてみた。すると、あの蜘蛛、砂漠大蜘蛛はBランクの魔物であり、同ランクの冒険者5人パーティで1体を倒せるかどうかとの話だった。
…なるほどな。そんな魔物を俺達が4人で5匹以上倒したって事はそりゃ信じられないわ。しかも、俺以外女の子だしね。
「でも、コンラッドさん。僕以外にも証人はいますよ?呼んできましょうか?」
「いや、大丈夫だよ。一応ギルマスだからね。君の目が嘘をついてないって事ぐらいわかるよ…。そうかぁ…そういう事かぁー…」
コンラッドさんがため息と共に頭を抱えている。一体どうしたんだ??
「あのー。どうかしました?」
「ああ、すまない。ちょっとカーバインの書状で悩んでいてね…」
「カーバイン??誰ですかそれ?」
「……アルスさん。カーバインは僕の叔父です」
「ああっ!あのおっさんカーバインって言うのか!名前聞いてなかったからわかんなかったよ…」
「…しっかり覚えてくださいね?この街の兵士団総長なんですから」
フィンの呆れ声に俺は、てへへと舌を出しながら頭をかく。だって!名前聞くタイミングなかったから仕方ないじゃん!
「カーバイン…カーバイン…。よし、覚えた!…それで、カーバインさんからの書状がどうかしたんですか?」
「ああ、アイツの書状には『アルス殿達は兵士団に勧誘するから横取りするな』と書かれていてね…。それならば何で私に紹介したのだろうかって思ってね…。まぁ、嫌味なんだろうけど」
コンラッドが苦笑いするが、俺には全く意味がわからなかった。とりあえず、俺はギルド証さえ貰えれば良いんだけど。
「…ちょっと考える時間をくれるかい?」
「ええ。別に良いですけど…」
コンラッドが頭を抱えながら、ブツブツと独り言を言っている。…少しだけだが怖い。
あまりコンラッドを見ないように待っていると、結論が出たのかコンラッドが顔を上げる。
「…アルス殿、あなたは『冒険者』と『兵士団』どちらを選びますか?どちらかを選んでください」
「は?へっ?いきなりなんですか?」
「カーバインのヤツはどうしてもあなた達を兵士団に入れたいようだ。もちろん、魔物との戦闘の話は聞いているでしょう…。しかし、私も戦力増強と言う意味では、あなたに冒険者になって貰いたい。私たちはお互いにアルス殿を求めているのです!…………急な話ではあるが、今どちらかを決めて頂きたい」
…全然話についていけないんですけどー!!!え?なになに?どっちか選べって事?急に言われても決めれる訳ねーだろ!!
「……ちょっと時間貰ってもいいですか?」
「ええ、もちろんですとも。ゆっくり考えて下さい」
席を立った俺はチカ達を連れ廊下へ出る。結局の所、俺だけの問題じゃないんだよね。…こうなったら、多数決だ!
「…なぁ、チカ達は『冒険者』と『兵士団』どっちがいい?」
「どちらでも構いません。アルス様に従いますわ」
「どちらでも。マスターについていく」
「ご主人様が一緒ならどっちでもー!」
……ああ、お前らのその気持ちはめちゃくちゃ嬉しいよ。めちゃくちゃ嬉しいけどな?今はそうじゃねーんだよ!お前らの意見聞きたいんだよ!!…まぁ、無理か。そんな設定無いし、俺優先だもんな…。
冒険者と兵士団のメリット、デメリットを考えていると意外な一言が飛び出てきた。
「ご主人様ぁー。選べないなら、どっちもすればいいんじゃない?」
ローリィの言葉に俺は衝撃を受けた。選べないならどっちもすればいいじゃん!2人とも俺を欲しがってるみたいだし、そうなれば丸く収まるだろ!
「それだっ!!ローリィありがとな!」
ローリィの頭を撫でると物凄く嬉しそうな表情になる。…やっぱ可愛いなぁ。
「…ずるい。ボクもマスターの役に立ってナデナデして貰う」
「私もよ。アルス様にナデナデして貰いたいわ」
コソコソとチカ達が話していたようだが、聞き取れなかった。ローリィを撫でるのをやめ、俺はコンラッドの部屋へと戻った。
「お待たせしてすいません。話し合いの結果が出ました」
「…もうですか?…もう少し話し合ってもいいんですよ?」
「いえ、大丈夫です。全員同じ気持ちですから」
「…わかりました。では…お聞かせください」
「はい、僕たちが選んだのは--」
ゴクリと唾を飲み込む音が聞こえる。
「--兵士団
コンラッドの表情が失望へと変わる。
「と冒険者、両方を選びます!」
俺の答えにコンラッドは大きく口を開ける。…なんだよ。そんなに面白かったか?まぁ、俺お笑いのセンスは有--
「両方ですか!?そんなの無理に決まってます!!」
なんだよ。最後まで言わせろよ。……まぁ、そう言うと思ってたけど。
「フィンから来る途中、色々と話を聞きましたけど、どちらともこの街の住民を守る為にあるんですよね?」
「そ、それはそうですが…。しかし…」
「だって、2人とも俺達が欲しいんですよね?正直、どちらか選べと言われても角が立つんですよ。それなら、両方を選んだ方が丸く収まるかなーって」
「うむむ…。それは確かにそうですが…」
「ならこうしましょう。俺達の事はカーバインさん達の秘密にしておいて、まず冒険者登録します。それで、依頼や討伐をこなして、ランクアップしていきます。俺達の名前が周囲に知れ渡った時、兵士団とギルドの両方に所属するってのはどうでしょう?」
「…………………………………」
コンラッドは目を閉じ、俺の意見を検討している。我ながら良い案だと思うんだけどなぁ。それでもダメって言うなら、ギルド証だけ作ってこの街から出て行こう。
しばらくの間、部屋には静寂が漂っていたが、深い溜息と共に静寂は霧散していった。
「……わかりました。こちらとしても有難いですので、その案に乗りましょう」
「ふぅ…よかった」
「カーバインには私から説明しておきます。……さて、堅苦しい口調は辞めてもいいですか?」
「ええ、普通に喋ってください。あと呼び捨てで構いません」
「それじゃ、アルス。君達には今から冒険者登録をして貰う。…正直言えば、Cランクからでも良いとは思うがギルドの決まりだからな。……まずはEランクから始めてもらおうか」
「わかりました。コンラッドさん、これからよろしくお願いしますね」
「こちらこそだよ。…あと特別に普通の口調で話して良いよ。勿論、誰も居ない時に限るがね?」
「え?いいの?それじゃ、そうします」
こうして、俺達は色々な出来事に巻き込まれながらも一息つける場所を手に入れた。
俺にとって、初めての世界、初めての街、初めての冒険者登録。初めて尽くしであったが、落ち着くという意味では非常に助かる。まだ分からない事も多すぎるし、色々と考えを整理しないといけない。けれども、少しだけ高揚している自分もいる。とりあえず寝て、明日から考えよーっと!
かくして、俺にとって非常に長い長い1日が終わるのであった。
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