上 下
137 / 177

137. 勃起兄貴

しおりを挟む
 
 カララム王国学園に入学してから1年が過ぎて、今は春休み。

 ヨナンは、初めて、元トップバリュー男爵領が、正式にグラスホッパー伯爵領に変わってから、足を踏み入れる事にしたのだ。

 で、現在は、グラスホッパー伯爵領に向かうキャンピングキッチン荷馬車の中。

『ご主人様……ナナさんと会うの避けてますよね?
 僕、てっきり、ナナさんもグラスホッパー伯爵領に連れてくと思ってたんですけど?』

 窓の外を、ぼんやり眺めてると、鑑定スキルが、突拍子もなく聞いてくる。
 多分、きっと気になってたのだろう。

「お前……俺が平気な顔して、ナナと会える訳ないだろ。
 俺は、ナナが、トップバリュー男爵に犯されてる所を見せつけられたりしてたんだぞ!
 そして、その時、助ける事も出来ずに、ただ見てるだけしか出来なかった俺が、どんな顔して、ナナに顔向け出来るって言うんだよ!」

 そう、俺は怖いのだ。ナナを目の前にすると、あの時の事を思い出してしまうのだ。
 そして、癪罪の気持ちで耐えられなくなってしまうのである。

『あの……ご主人様……そんなこと気にしてたんですか……そもそも、今回のナナさんは、トップバリュー男爵の性〇隷になってませんから、ご主人様が癪罪しなくてもいいと思うんですが……』

 鑑定スキルが、最もな事を言ってくる。

「だとしても、俺は、ナナを見ると、トップバリュー男爵に犯されてる所を思い出してしまって、どうしても会う事が出来ないんだよ!本当に、自分が不甲斐なさ過ぎて、情けな過ぎて……そして……変態過ぎて……」

 ヨナンは、少しナナの事を考えただけで、ナナがトップバリュー男爵に犯されてた場面を思い出してしまい、思わず勃起してしまう自分自身にも、心底幻滅してしまっていたりするのだ。

『これ、完全にトラウマになってしまってますね……』

 鑑定スキルが、勝手に分析する。
 俺だって、ナナに再び会うまで、こんな風に自分がなるとは考えてなかったのだ。
 変に意識すれば、するほど、何故かレイプシーンが頭によぎってしまうのである。

「だから、無理なんだって! ナナと面と向かって会う事なんか!
 俺は、変態兄貴なんかになりたくないんだよ!」

 そう。ヨナンは変態兄貴になりたくないのだ。できれば、カッコ良いお兄ちゃんになりたいし。

『確かに、妹さんに会う度に勃起するお兄ちゃんとか、考えるだけでキモイですからね!』

 鑑定スキルが、酷い事を言ってくる。
 俺は、真剣に悩んでいるというのに。

「キモイ言うな! 俺は真剣に悩んでるんだぞ!」

 鑑定スキルは、無神経過ぎる。
 俺だって好きで勃起してしまう訳ではないのだ。
 でも、何故か、ナナを見ると緊張し、顔が真っ赤になってしまうし、股間のテントまで張ってしまうし。
 そもそも、股間がテント張ってる状態で、最愛の妹に会えるかよ!

『だから、ナナさんに、自分が本当のお兄ちゃんだと告白しなかったんですね!
 エリザベスさんとかにも、絶対に言わないでと、口止めしてましたし!』

「言える訳ねーだろ!妹見て、勃起する兄ちゃんなんて!
 俺は、ナナを見ても勃起しなくなって、初めて、俺が実の兄ちゃんだって、ナナに告白するつもりなんだよ!
 それまでは、極力近づかないようにするの!」

『なるほど。だから必死に、ナナさんを1年生に入学させるよう画策したんですね!
 ココノエさんの護衛目的という建前なら、同じ2年生に編入させるのが筋ですもん!
 だけど、同じクラスになってしまうと、勃起してるの、ナナさんに見られちゃうから!』

「ああ! そうだよ! その通りだよ!俺は、いつまでも、尊敬されるお兄ちゃんでありたいんだよ!」

 もう、俺は開き直る。
 妹を見て勃起して、何が悪い!
 別にナナに欲情してる訳ではないのだ。
 ただ、ナナに会うと、ナナがトップバリュー男爵に犯されてる場面が、フラッシュバックして、思わず勃起してしまうのであって、その場面を思い出すたびに、トップバリュー男爵を殺してやりたいと思うし。

 というか、ナナと再会したら、益々、トップバリューをぶち殺したくなってきてたりする。

『多分、トップバリュー男爵にリベンジザマーするまで、勃起は治らないんじゃないですか?』

「ああ。サラス帝国が、もしカララム帝国にちょっかい出してきたら、陛下に命令されなくても、トップバリュー男爵を見つけ出しボコボコにして、チ○コを切り落としてやる!」

『何もなくても、普通に、サラス帝国に乗りこんで、トップバリュー男爵を捕まえて、ボコボコにしちゃえばいいんじゃないですか?』

「何をするにも、大義名分が必要なんだよ!今回の時間軸では、別に、ナナは、トップバリュー男爵に性〇隷にされた訳じゃないんだからな!
 逆に、俺とグラスホッパー商会が、一方的に、アスカとトップバリュー男爵に、嫌がらせしてるだけだし!」

『言われてみれば、確かにそうですね……まあ、一度、殺し屋を差し向けられた事はありましたが、それ以降は、こっちが一方的にボコボコにしてますからね……』

「そうなんだよ。それで困ってんだよ。なんか嫌がらせでもされて、やり返すなら世間の人も納得するかもしれんけど、俺達って、アスカを退学に追い込んで、しかもAV女優に仕立てあげたんだぞ。
 しかも、トップバリュー領を奪った形になっちゃってるし……」

『う~ん……これは、ご主人様が、勃起を克服する未来は遠いですね……トップバリューのチ○コを切り落とさないと、ご主人様の勃起は治らない訳ですし……』

 鑑定スキルは、真面目に考えてくれている。
 というか、本当に、トップバリュー男爵のチ○コを切れば勃起が治るか謎だけど。
 まあ、思い込む事も大事なのである。

「遠くてもいいんだよ! 変態と思われるくらいなら!
 ナナを、目の届く所に置いてるから、何も問題無いし!
 毎日、監視カメラで見張ってるし!」

『それって、ただのストーカーじゃないですか?』

 鑑定スキルが、とても酷い事を言ってきた。
 自分も、学園中に設置してある監視カメラの映像を見てる癖に。スーザンのオ○ニーシーンも毎日監視してるのに。しかも、データーベースに保存してるし。

「お前も覗き見してるだろうがよ! それから、ストーカーじゃなくて、見守ってるって言え! ただ見守ってる訳で、襲うわけでもなんでもないんだからな!」

 俺は、しっかりと訂正する。
 妹を、ただ見守ってるだけなのに、ストーカーとか言われたら、心外なのである。

『確かに、ご主人様のナナさんの溺愛ぶりは凄いですもんね……いつでもナナさんの服を1000着用意しろ!って、あれなんですか?1年365日って、分かってます?
 しかも、春からカララム王国学園に入学するから、そもそも普段着なんか、滅多に着なくなるのに』

「それでもいいんだよ! ナナは今まで苦労して来たんだから、これからは、思う存分楽させて、贅沢させてやるんだからな!」

『あの……ココノエさんがやってた孤児院は、結構、設備が整ってたみたいですよ?
 そりゃあ、ご主人様の御屋敷みたいに居たせり尽くせりじゃありませんけど、それなりな生活も出来て、楽しく生きてたみたいですし?』

「うっせーやい! 俺が知ってるナナは、トップバリュー男爵にいつも犯されてたナナなんだ! 俺の思い出を勝手に汚すな!」

『ご主人様の思い出の方が、物凄く汚れてるように思うんですが……』

 鑑定スキルが、最もな事を言った。
しおりを挟む
感想 191

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

幼女と執事が異世界で

天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。 当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった! 謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!? おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。 オレの人生はまだ始まったばかりだ!

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

処理中です...