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129. 戦争勃発

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 生徒会室に行くと、そこには、アレキサンダー君を筆頭に、国王代理のルイ王子、ホエール侯爵、それからグリズリー公爵等々、国のお歴々が勢揃いしていた。

「我が友、いや、我が親友ヨナンよ、待っていたぞ!」

 いつ親友になったか分かんないが、相変わらず、アレキサンダー君が馴れ馴れしく話掛けてくる。

 というか、国の一大事なのに、学生気分で話し掛けてきてふざけてるのか?

「あの……閣下……私達に、どのような話が有るのでしょうか?」

 何も知らないカレンが、アレキサンダー君に質問する。
 まあ、突然、国の重要人物の歴々が、学校の生徒会室に集まってるなんて普通じゃないと、流石に脳筋のカレンにでも分かるのだろう。

「フム。アンガス神聖国が攻めて来たのじゃ」

 アレキサンダー君は、平然と答える。

「あ。そうですか」

 カレンも、平然に返事をする。
 というか、何故に?
 普通、カレンは慌てる所だろ?

『ご主人様。多分、カレンさん、いつもの感じでアンガス神聖国が攻めて来たと勘違いしてますよ!
 僕のデータベースによると、カレンさんが生まれてから、既に3回、イーグル辺境伯とアンガス神聖国は、小競り合いしてますから!』

 だよな……じゃなければ、普通、10万の大軍が押し寄せて来てるというのに、ビックリしない筈ないのだ。

「じゃあ、私、もう帰っていいですか?アンガス神聖国ぐらいなら、お爺ちゃんが、コテンパンにやっつけてくれると思うので!」

 カレンは、イーグル辺境伯が、余裕でアンガス神聖国を退けると疑わない。

「だといいんじゃがな。今回ばかりはそうもいくまい。今回、アンガス神聖国は10万の兵を率い、イーグル辺境伯領都イグノーブル城塞都市を包囲しておる!」

 アレキサンダー君が、本題に入る。

「え!? 何かの間違いじゃないですか?いつも、200か300人でしか攻めてきませんよ!
 それに、険しいアンガス山脈を、10万の兵士を引き連れて越えられる筈ありません!」

 カレンは反論する。
 普通、そう思うよね。だけれども、アンガス神聖国は山脈にトンネルを掘ったのだ。
 一体、何年かかったのだろう。

『あの、1ヶ月ですね!』

 ここで、黙って聞いていた鑑定スキルが口を挟む。
 というか、俺の心の中を読んで勝手に答える。

『カレンさん。アンガス神聖国は山脈にトンネルを掘って、イーグル辺境伯領に、10万の大群を率いて攻めてきたんですよ!』

 鑑定スキルが、勝手に話を先に進めてしまった。
 多分、アレキサンダー君は、順を追ってカレンに説明しようとしてたのに、鑑定スキルは、話を聞くのが面倒臭くなったのだろう。

 知ってる事を、知らないフリして黙って聞いてるのってイライラするしね。

「なんと! たった1ヶ月で、トンネルを完成させたじゃと!」

 これには、カレンより、アレキサンダー君と国の重鎮達が驚いている。

「鑑定スキルよ! そんな事、人間に可能なのか?」

 アレキサンダー君は、鑑定スキルに質問する。

『普通は無理ですね! 国家事業として、人を何百人も使って、およそ、50年は掛かります。それも成功するかどうかも分かりません!どうやら、アンガス山脈には、緩い地盤の場所もあるようですので!』

 鑑定スキルは、詳しい内容を教える。

「なんじゃと?! それなら一体?」

『多分、敵に、穴掘りスキルとか、持ってる人が居るかもしれません!しかも、1ヶ月で掘ったとなると、Lv.5以上が妥当ですね!』

「Lv.5じゃと! 穴掘りスキルLv.5の者など、この世に存在するのか?!」

『多分、居ないと思いますけど……でも、それしか考えられないですね。それか敵にも、ご主人様のような特別な存在が居るとか?まあ、ご主人様なら、1時間で、トンネル完成させちゃいますけど!』

 何故か、鑑定スキルがドヤ顔。まあ、スキルだから本当に顔がドヤ顔してるか分かんないけど。

 そんな感じで、鑑定スキルが、アレキサンダー君と話してる間も、カレンはソワソワしている。
 そりゃあ、自分の生まれ故郷が、10万の敵に攻められてると聞いたら、オチオチ話なんか聞いていられないだろう。

「あの……もういいですか? 私、急いでイーグル辺境伯領に戻りたいんで!」

 カレンは、敵が10万も居るというのに、1人で戦いに行ってしまいそうだ。

「現在、イーグル辺境伯は劣勢。お主が一人で行っても、どうする事もできんぞ!」

 アレキサンダー君が、はやるカレンを窘める。

「あの……閣下? カララム王国から、兵は出せないんですか?」

 俺は、痺れを切らせて聞いてみる。
 攻められてるなら、普通、増援を送るのが正解だし。

「出せぬ! 現在、サラス帝国の国境に、兵の大半を常駐させておるのでな!
 そして、その兵を、イーグル辺境伯領に廻してしまえば、スグにサラス帝国が、カララム王国に攻め込んで来る!」

 まさかの答え。確かに、アスカとトップバリュー男爵の件もあって、現在、サラス帝国とはピリピリしているのだ。

「あの……もう、詰んでません?」

「ウム。詰んでおるな。そこでじゃ!我が友ヨナン・グラスホッパーよ!
 そなたに頼みがあるのじゃ!」

「絶対に嫌です!」

 言われる事は、分かりきっている。
 俺に、イーグル辺境伯領に行って、アンガス神聖国を倒せとか言うんだろ?
 でもって、俺とお前は親友だから、どうにかしてお願いと、このズル賢い国王は言ってるのだ。

「そこを、何とか頼まれてくれぬか?お主とワシの仲ではないか?」

 アレキサンダー君は、下手に出てくる。
 これは、いつものやり方だ。
 そして、俺は、無償でカララム王国学園の校舎を、全て建て替えさせられたのだ。しかも、材料費まで込みで。

「誰が、助けにいかないと言いました?言われなくても、助けに行きますよ!イーグル辺境伯は、嫌いじゃないですし!
 俺が言いたいのは、俺は、陛下の友達でも親友でもないから、陛下の頼みは聞きませんけど、カララム王国国王の命令とあらば、這ってでも行くつもりですから!」

 そう。俺は、やたらと友達ヅラされるのが、どうしてもイヤなのである。
 だって、友達だと認めちゃうと、ドンドン図に乗って、無理難題を押し付けてくると思うから。しかも、タダで。

「ならば、カララム第15代国王として頼もう! ヨナン・グラスホッパーよ、直ちに、イーグル辺境伯領に赴いて、アンガス神聖国の兵士を打ちのめして参れ!」

 アレキサンダー君は、尊大に威厳に満ちた態度で、ヨナンに命令する。
 まあ、領地も爵位を貰ってるから、これは断る訳にはいかない。

「ハッ! ヨナン・グラスホッパー! 慎んで、命令に従います!」

 今更、領地を取り上げられたら、新グラスホッパー領の開発を頑張ってる、シスが可哀想だし。
 結構、金も使ってるので、領地取り上げられたら、ドブ川に金を捨てるようなもんだし。

 俺は、そんなこんなで、まだ14歳の未成年だというのに、戦争に駆り出される羽目になったのだった。
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