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123. 100倍返し
しおりを挟む以外にアッサリ、カレンがアレキサンダー君に勝ってしまった事により、次の試合まで1時間ほど余剰時間が出来てしまったので、可愛い弟のコナンに学園内を案内する事にした。
俺は、いつでも、頼りになる優しいコナンのお兄ちゃんでありたいのだ。
「よし! コナン。何でも買ってやるからな!
何せ、俺は、このカララム王国学園剣術祭の実行委員長で、出店も、この会場にある全ての店が、グラスホッパー商会の息が掛かったお店だからな!」
俺は、ここぞとばかり、凄いお兄ちゃんをアピールしてやる。
「ウン。ありがとう。だけど、僕、お小遣い、結構貰ってるんだよね……しかも、一応、まだ、グラスホッパー商会の取締役だから、グラスホッパー商会が経営してる出店で売ってるもの、何でもタダで貰えちゃうし……」
コナンが、申し訳なさそうに、俺に言ってくる。
出店を、全てグラスホッパー商会にしてしまった事により、何でも好きな物を買ってやって、凄いお兄ちゃんをアピールする計画が出来なくなってしまった。
俺は、ただ、公爵芋の焼き芋を売ってた、まだまだ貧乏だった頃、カナワン城塞都市でやった成功体験を、もう一度やりたいかっただけなのだ。
あの時、俺が、「何でも好きな物を買っていいぞ!」と言うと、コナンとシスが遠慮気味に、串肉を買って喜んで食べてたのが、今でも忘れられない思い出だったのである。
『あの、ご主人様、分かってます? 今のグラスホッパー家って、この国有数のお金持ちなんですよ。そんなグラスホッパー家のコナン君が、奢って貰ったくらいで、今更、喜ぶ訳ないじゃないですか!』
鑑定スキルが、ここぞとばかりに駄目出ししてくる。
「ええと。違うよ。ヨナン兄ちゃんに貰えるものは、何でも嬉しいよ!
ただ、グラスホッパー商会のものは、いつでも手に入っちゃうから、要らない訳で、ヨナン兄ちゃんの手作りのものなら、今でも貰ったら物凄く嬉しいかな?」
コナンが、慌てて、フォローを入れる。
俺の弟は、どこまでも優しい子なのである。
「なるほど。出店じゃなくて、俺が作ったものを食べたい訳か?」
「そうそう! また、公爵芋の石焼き芋とか! 今じゃ、ヨナン兄ちゃんが、直接作ったのって、絶対に食べられないし!」
「そんなものなら、俺の魔法の鞄の中に、大量にストックしてるのがあるけど?」
俺は、魔法の鞄の中から、ホカホカの公爵芋の石焼き芋を取り出し、コナンに分けてやる。
「ウン! これこれ、この味! 今、グラスホッパー商会で売ってる公爵芋の石焼き芋も美味しいけど、やっぱり、ヨナン兄ちゃんが直接焼いた、焼き芋の方が断然美味いよ!」
「そうか?」
「そうだよ! また、あの頃みたいに兄ちゃんとシスと一緒に、石焼き芋の屋台やりたいな! あの頃、本当に面白かったもん!」
コナンが、嬉しいこと言ってくれる。
ならば、
「久しぶりにやってみるか?」
「エッ? やれるの?」
「俺は、このカララム王国学園剣術祭の実行委員長って、言っただろ! その権限で、屋台の1つ2つ増やす事なんて、どうにでも出来るんだよ!」
俺は、鼻高々に宣言してやる。
コナンの為なら、黒でも、真っ白に漂白してやるのだ。
それこそ、兄ちゃんの務めなのである。
「スゲーぜ! ヨナン兄ちゃん!」
てな訳で、久しぶりにキャンピングキッチントレーナーで、公爵芋の石焼き芋店を開く。
勿論、魔法の鞄の中にストックしてる焼き芋じゃなくて、その場で作った石焼き芋だ。
ん?たった休憩時間が1時間しかないのに、直ぐに石焼き芋を焼けるのかって?
そんなの聖剣ムラサメを持ってたら、俺だけ超高速の時間を過ごせるんだよ!
石焼き芋を焼き上げるのに、1分も掛からなかったりするし!
後は、コナンと2人で、公爵芋の石焼き芋を売り捌くだけ!
美味そうな匂いと、元祖公爵芋の石焼き芋の登りを出したら、石焼き芋の出店は長蛇の列。
何せ、グラスホッパー商会が、公爵芋の石焼き芋の屋台から始まったのは有名な話なのだ。
そんな石焼き芋屋を、商会長の俺自ら焼くとなれば、誰しも食べてみたくなるのは当然の事。
そして、今回の俺は、聖剣ムラサメで公爵芋の石焼き芋を作ってやった。
ん? 剣で、石焼き芋が出来るのかだって?
そんなの出来るに決まってる。大工スキルを持ってる俺が使えば、何でも大工道具になってしまうのだ!
ん?そもそも、大工道具で料理出来るのかって?
そんなの俺が出来ると思ったら、何でも出来るんだよ! 大工スキルというのは、そういうスキルだしね!
でもって、俺の最高傑作である聖剣ムラサメで、公爵芋の石焼き芋を作ったら、どうなるか?
そんなの決まってる。最高に美味しい、この世のものと思えない程の石焼き芋が出来上がったのである。
「何? コレ……涙が止まらない……」
何故か、石焼き芋を食べてるのに、号泣する者が続出。
いつもより高めの設定にして、1500マーブルで売ってるのに、売れに売れる。
本来なら、捌き切れないほどの人だかりなのだが、そこはコナンのみじん切りスキルLv.3の力が発揮されちゃうのだ。
コナンは、みじん切りスキルLv.3のお陰で、メチャクチャ手が早いのである。
そして、なんか、よく分からないスピードで客が捌けていってしまう。
で、たった1時間だけの営業だったのに、売れたのは1万本。売上は、脅威の1千500万マーブル。ぼろ儲けである。
「ヤッパリ、金儲けって、メチャクチャ興奮するよね!」
コナンも、何故か仕事してたというのに御満悦。
そう。コナンは、グラスホッパー男爵家の中で、一番色濃く、イーグル辺境伯の血を引き継いでるのである。
なので、商売好きのビクトリア婆ちゃんや、母親のエリザベスのように、商売大好き、お金大好きなのだ。
コナンが、俺の事を大好きなのも、俺が強くて甲斐性があるから。
多分、コナン的に、俺の事を、金の成る木か何かかと思ってるのかもしれない。
てな訳で、コナンには、臨時お小遣いとして、屋台で稼いだ1千500万を、ポン!と、全てやった。
俺はいつでも、コナンの最高のお兄ちゃんでありたいのだ。
流石に、現玉で貰えば、コナンも喜ぶと思うし、自分も働いて得た金なので、要らなとは言わないだろう。そう、現玉の力は偉大なのである。
「エッ! 全部くれるの! ありがとう! 流石、ヨナン兄ちゃん! 男前!」
ヨナンは、いつものように最大限に、俺を褒めちぎってくれる。これで俺は、暫く頑張れる。
可愛い弟から褒め言葉をもらう事こそ、俺の原動力なのだ。
まあ、死に戻り前。戦争に行く前のエドソンに、「エリザベスとチビ達を頼むぞ!」
と、言われてたのに……俺ときたら……
アスカの術中に嵌って、何もしてやれなかったのだ……。
あの時、コナンやシスに何もしてやれなかったという、贖罪の気持ちも有って、コナンやシスにしてあげれる事なら、全力でしてやろうと思ってる。
そんな、死に戻り前にしてやれなかった事を、俺は、現世で100倍返してるだけなのであった。
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