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122. カレンVSアレクサンダー君

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 予選は無事終わり、本戦は次の日に持ち越される。

 力の加減を全く分かってないアン姉ちゃんは、エリザベスに捕まり、教育的指導。

 だって、今まででも相当ヤバかったのに、現在は有り得ん殺気を常時撒き散らす人間凶器になってるのだ。

 たまたま、今迄は、運が良かっただけ。

 グラスホッパー領に住んでた時は、そもそも俺以外の家族全員が規格外。

 カララム王国学園に入学したての頃は、貧乏過ぎて、バイトが忙しく友達が1人も居ないボッチだったから、自分の凄さを全く気付けなかった。

 そして、最近つるんでるのは、同じ身体強化スキルLv.3を持ってる、カレンとカトリーヌ。

 本気に、今迄、自分が普通の人間だと思ってたのだ。

 天然にも程がある。
 まあこれは、エリザベスがアン姉ちゃんに、今まで教えてこなかったのが原因だけど。

 というか、エリザベスもゴリラ並の力持ちだというのを、俺達家族に隠してた。
 俺も、死に戻りしてから、初めてエリザベスのヤバさを知ったし。

 そして、次の日。カララム王国学園祭本戦。

 アン姉ちゃんは、憔悴しきって、エリザベスと一緒に会場に現れた。

 どうやら、殺気の抑え方を覚えたようである。
 エリザベスによる、脳筋スパルタ特訓で。

 あのままの状態なら、遅かれ早かれ死人が出てたと思うから、しょうがないよね。

 でもって、本戦トーナメントの対戦は、くじ引きによって、カレン対アレクサンダー君。アン姉ちゃん対カトリーヌに決まった。

 そして、まず最初に、カレン対アレクサンダー君の試合が始まる。

「陛下! 止めておくなら今のうちよ!」

 カレンは、カララム国王であっても、全く、忖度する気はないらしい。
 まあ、元々、誰かに忖度するような性格じゃないし。

「カッカッカッカッカッ! 抜かせ、小娘が!ワシの力を存分に見せつけてやるわ!」

 とか、強気な事を言ってるアレクサンダー君は、俺が、カララムダンジョン攻略の時に作ってやった、剣と鎧を装備してるし。
 これだけで、多分、攻撃力と防御力が、5倍くらいに跳ね上がる。

 まあ、ハッキリ言ってズルだよね。

 そんなアレクサンダー君に対する、カレンの得物は、何の変哲もない木刀1本。

「カレンの奴、木刀で大丈夫なのか?」

 アレクサンダー君の得物がその辺の国宝級の武器や防具なら、多分、木刀だとしても、カレンの実力で勝ててしまうだろう。

 だがしかし、アレクサンダー君が装備してるのは、俺が目を閉じ、鼻くそほじりながら作った剣と鎧なのだ。

『そうです! だから、もっと手を抜いて作ってと言ったんですよ!』

 鑑定スキルが、ぶつくさ言い出す。

「普通、目を閉じて、剣も鎧もマトモに作れると思わないだろ! だって、何も見てない訳だから!」

「それでもです! もっともっと、手を抜いて作らないと駄目なんですよ!」

 鑑定スキルが、俺をメチャクチャ責める。

「これ以上手を抜くって、どんだけ難しいか分かってんのか! 俺だって、必死に手を抜いて作ってんだよ!」

「だから、今度は髪の毛で、大工道具を持って作って下さいと、言ってるでしょ!」

「髪の毛で作ったとしても、良いもの作れそうな気がしちゃうんだよ!」

 そうなのだ。今の俺の力だと髪の毛でも、凄いものが作れる気がするのである。

「だったら、エドソンさんに貰った大工道具を封印して下さい!」

「そ……そんな事出来る分けねーだろ! アレは俺の宝物なんだぞ!
 まだ、グラスホッパー家が貧乏だった時、エドソンが、あのケチなエリザベスに頭を下げてまでして、俺の為に買ってくれた、エドソンのお小遣い3ヶ月分もした、俺の大事か大事な宝物なんだよ!」

 俺は、鑑定スキルに、断固拒否する。
 誰が、エドソンから貰った大事な大工道具を飾りもんなんかにするかよ!
 というか、何処にでも売ってる普通の大工道具を、飾る奴なんか居ないし。

『ご主人様……気付いてます。そのご主人様の大事な大事な大工道具が、ドンドンご主人様の手に馴染んできて、トンデモない性能を発揮しちゃってるって!
 明らかに、昔より、良い物が出来上がっちゃって来てるんですよ!』

 うん。気付いてた。だって最近、どんだけ手を抜いても、凄いもの出来ちゃうんだもん。
 だけれども、俺に、エドソンの大工道具を使わないという道などないのである。
 何故なら、エドソンは、いつも使って欲しくて、俺に大工道具をプレゼントしてくれたのだから。

「ちきしょー! 俺の気持ちも知らないで!
 俺に、エドソンから貰った大工道具を眠らせておく事なんか出来ねーよ!
 大工道具は、使ってナンボなんだ! エドソンだって、俺に使って欲しくて、買ってくれたんだ! それなのに……」

 ヨナンは、何故か悔しくなって、涙が溢れ出て止まらなくなってしまう。

 とかやってると、

「「ウオォォォォォー!!」」

 何やら、歓声が聞こえてくる。

『アッ! ご主人様、試合終わってしまいましたよ!
 結局、カレンさんが圧勝しちゃいましたね!』

 涙で溢れた目を拭い、会場を見ると、アレクサンダー君が無念そうに倒れ、カレンがアレクサンダー君を見下し立っていた。

「エッ? 何で?! 俺が陛下の為に作った、剣と鎧って、最強じゃなかったのか?」

 よく分かんないが、ついさっきまでの俺の気持ちの高まりは、何だったんだろう。
 俺の作った剣と鎧は、カレン相手でも通用する筈だったのに……。

『やっぱり、使う人の力量が大切なんですよ!
 アレクサンダー君には、ご主人様が作った剣と鎧のポテンシャルを、全く発揮できなかったって事です!
 その点、カレンさんは、完全に木刀を自分の手足のように使いこなせていましたし!』

「そ……そうなんだ……」

 ヨナンは、全く納得いかない。
 だって、ついさっきまで、鑑定スキルはもっと手を抜いて、アレクサンダー君の剣と鎧を作るべきだったと言ってたのだ。

『だから、今も話してたじゃないですか!
 道具は、持つ人によって、至高の道具にも、なまくらの道具にもなってしまうんです!
 その辺に売ってる、ほんの少しだけ高い大工道具でも、ご主人様が持てば、神の宝具になってしまうという話です!』

「お前、暗にエドソンがくれた、俺の大切な大工道具をディスってないか?」

『えっと……僕、嘘言えませので。実際、エドソンさんがくれた大工道具って、量産品の何処にでも売ってる大工道具ですからね!』

 鑑定スキルは、いつものように、悪びれることなく言い切った。

 まあ、そんな何処にでも売ってる大工道具を使いこなす俺を、鑑定スキルは、物凄く褒めてるとも言えるんだけどね。
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