上 下
107 / 177

107. 暴君アレクサンダー君

しおりを挟む
 
 アレクサンダー君が、立て続けにスライムを5匹程倒すと、

「この階層は、物足りんな」

 そりゃあそうでしょう。
 だって、アンタのステータス、

 名前: アレクサンダー・カララム
 職業: カララム王(お休み中)
 称号: 若返り王 暴れん坊将軍
 スキル: 剣術Lv.2、木魔法Lv.2、火魔法Lv.2、鑑定Lv.1
 ユニークスキル: 身体強化Lv.2 魅了Lv.1 
 力: 1500
 HP: 1200
 MP: 1000
 器用: 100

 そう。『熊の鉄槌』のメンバー並の高ステータスなのだ。

 普通に、カレンやアン姉ちゃんより強いし、このステータスなら、カララムダンジョンの最高到達階層記録を狙っても良いレベル。
 それに、俺がちょっとだけ丁寧に作った剣と鎧も装備してるしね!

 だけれども、決して、最高到達階層記録なんか狙わせない。
 アレクサンダー君にもしもの事があったら、多分、俺、打首だしね。
 傷さえ負わせても、絶対に殺されるし。

 だって、今までだって、極度の姫プレイをやって来てたんだよ。
 そんなアレクサンダー君を、危険な目に合わす事なんか出来るかよ!

 とか、思ってたのも、我儘王アレクサンダー君には通用しませんでした。

「ヨナンよ! 上の階層に行くぞ!」

 そりゃそうなるよね。
 オーバースペックの俺が作った魔法剣で、いくらスライム倒してもつまらないし。
 だって、スライムに向けて軽く一振すれば、勝手に火魔法が発動し、その火魔法が自動追尾してスライムに百発百中でヒットしてしまうのだ。

 こんなの蚊を殺すより簡単。
 あの素早いゴキだって、自動追尾機能で絶対に殺せてしまう優れもの。
 アレ?これ売り出したら、爆売れしちゃうかも。

『ご主人様、何、現実逃避してるんですか!とっとと上の階層に行きますよ!』

 鑑定スキルが、尻を叩いてくる。
 人の気持ちも知らないで。
 アレクサンダー君に怪我させたら、俺、殺されちゃうんだぞ!

『大丈夫ですよ! ご主人様が作った鎧装備してるんですから、例え、レッドドラゴンに踏まれても、アレクサンダー君は、傷一つつかないと思いますし!』

 鑑定スキルが、俺の心を読んで教えてくれた。

「やっぱり、俺が作ったあの鎧、そんなに凄いの?」

『攻撃力8000ぐらいの敵の物理攻撃は全て弾きますし、上級魔法ぐらいなら、軽く弾きますよ。尚且つ、装備者のHP、MP自動回復機能まで付いてますし!』

「すげえな……」

『そんな装備を目を閉じて作っちゃうご主人様が、一番凄いんですからね!』

 とか、仲良しの鑑定スキルとワチャワチャ話してると、

「10階層にショートカットする階段はどこじゃたかな?」

 アレクサンダー君は、まさかの2階層に上がるんじゃなくて、10階層に向かうようである。

「あの……なんで10階層に続くショートカットがあるの知ってるんですか?」

「そんなの来たことあるからに、決まっとろうが!」

 糞っーー! 誰がアレクサンダー君の姫プレイしたんだよ!
 もっと下の階層で遊ばせとけばいいだろうに。

『まあ、アレクサンダー君の実力なら、10階層ぐらい余裕じゃないですか?』

「お前、俺が打首になったら、スキルのお前も死ぬ事分かってるのかよ!」

『分かってますけど、10階層ぐらい余裕ですって! そもそもアレクサンダー君のステータス自体が凄いですし、ご主人様が作った鎧まで装備してるんですよ!
 それにもしもの事があったら、ご主人様が聖剣ムラサメを装備しちゃえばいいじゃないですか!
 カララムダンジョンなんて、余裕に攻略できてしまいますって!』

「なるほどの~」

 何故か、俺と鑑定スキルの会話に、アレクサンダー君が入ってくる。
 というか、鑑定スキルの奴、アレクサンダー君にも、念話チャンネル繋げてたままだったのかよ。
 得意の取捨選択、まるで出来てねーじゃねーか!

「それではヨナンよ。早速、カララムダンジョンを完全攻略してみせよ!」

 アレクサンダー君が、尊大な態度で、俺に言い放ってきた。

「今から?」

「当たり前じゃろ! ワシとお前の2人だけで、難攻不落のカララムダンジョンを攻略したとなれば、お前だけでなく、ワシの名声も上がるのでな」

「アンタ、もう十分、名声持ってるでしょ!」

 ヨナンは、ちょっとイラッとして、アレクサンダー君に対してアンタ呼ばわり。
 こちとら、アレクサンダー君に怪我を負わさないで、カララムダンジョンを攻略しないといけないのだ。
 カララムダンジョンを攻略するにしても、グッと、難易度が上がるのである。

「ワシが名声を持っている? そんな訳あるか! 先の大戦では、英雄エドソンが現れなければ負け戦だったし、それからバカ息子のせいで、ワシの威厳もガタガタじゃわい!
 息子がAV男優の王様の気持ちが、お主に分かるのか!」

 それを言われると、ヨナンも申し訳ない気持ちになる。
 だって、アスカとルイ王子の濡れ場を録画したのは俺だし、それを断罪パーティーで流したのも俺の指示。
 市場に流したのはエリザベスだが、やっぱり俺が原因で間違いない。

『ご主人様、カララムダンジョンの攻略ぐらい、やって上げましょうよ。
 だって、このままだと、アレクサンダー君、息子がAV男優になるのを止められなかった、カララム王国史上もっとも残念な王様になってしまいますよ!』

「だな。息子が、自分が統治してる国民達のオカズになってしまってる残念な王様という話で、歴史の教科書に載ってしまうなんて、流石に可哀想過ぎるか……」

「お主ら……もうちょっとオブラートに包めぬものか? 余りに度が過ぎる物言いをするなら、不敬罪でお主らを打首にする事も出来るという事を、ゆめゆめ忘れるでないぞ!」

「「すみませんでした!」」

 アレクサンダー君は、どうやら暴君で間違いないようだった。

 ーーー

 面白かったら、いいね押してね!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

骨から始まる異世界転生~裸の勇者はスケルトンから成り上がる。

飼猫タマ
ファンタジー
トラックに轢かれて異世界転生したのに、骨になるまで前世の記憶を思い出せなかった男が、最弱スケルトンから成り上がってハーレム勇者?魔王?を目指す。 『小説家になろう』のR18ミッドナイトノベルズで、日間1位、週間1位、月間1位、四半期1位、年間3位。 完了済では日間、週間、月間、四半期、年間1位をとった作品のR15版です。

辺境の契約魔法師~スキルと知識で異世界改革~

有雲相三
ファンタジー
前世の知識を保持したまま転生した主人公。彼はアルフォンス=テイルフィラーと名付けられ、辺境伯の孫として生まれる。彼の父フィリップは辺境伯家の長男ではあるものの、魔法の才に恵まれず、弟ガリウスに家督を奪われようとしていた。そんな時、アルフォンスに多彩なスキルが宿っていることが発覚し、事態が大きく揺れ動く。己の利権保守の為にガリウスを推す貴族達。逆境の中、果たして主人公は父を当主に押し上げることは出来るのか。 主人公、アルフォンス=テイルフィラー。この世界で唯一の契約魔法師として、後に世界に名を馳せる一人の男の物語である。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜

犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。 この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。 これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

処理中です...