上 下
99 / 177

99. 女神ナルナー神殿

しおりを挟む
 
 世界樹のハイエルフの隠れ里で、ヨナンは想像を越える歓迎を受けた。

 ハイエルフは、ハッキリ言うと女神ナルナーの眷属で写し身であるらしい。
 そんなハイエルフが、女神ナルナーのお気に入りの称号を持つヨナンを、蔑ろにする訳にはいかないのだ。

 ついでに言うと、ハイエルフは女神ナルナーの写し身なので男は居ない。
 全員、エリスと同じ顔だったりする。
 写し身だから当然なんだけど。

 更に言うと、巷に居るエルフは、人間との混血であるらしい。
 エルフの祖であるハイエルフに男性が居ないから、これまた当然なんだけど。

 そんなハイエルフが、女神ナルナーから与えられた唯一の仕事は、レッドドラゴンと共に世界樹を護る事。
 ハッキリ言うと、それだけの為に生きてると言っても過言ではない。

 まあ、たまに、エリスみたいな変わり者が生まれて、勝手に大森林の外に出て行ってしまう。

 そんなはぐれハイエルフが、大森林の外で他種族と交配して生まれたのが、普通のエルフ。
 当たり前の事だが、大森林の外で生まれた普通のエルフには、世界樹の秘密を、一切教える事はないという事だ。

 それから、何故、大森林の植物がやたらと成長が早いかと言うと、全ては世界樹の力。

 そもそも世界樹は、世界に栄養と活力を与え、その過ぎたる力は人を生き返らせる事が出来たり、不老不死にしたりする力を持ってたりもする。
 ハッキリ言うと、栄養満点で、人も植物は育ちまくるのだ。

 そんでもって、意外と草食で、世界樹の果実を食べて生活してるレッドドラゴンも、不老不死になってしまい、しかも世界樹の果実で育った体自体にも寿命を延ばす効能が宿り、レッドドラゴンの血肉を摂取すると、寿命が延びる効果が現れたとか。

 同じく、世界樹の果実を食べてるハイエルフの血肉を食べても、同じ効果が得られるらしい。
 唾液や粘液でも、同じような効能が得られるらしいので、やたらと世界樹の隠れ里に住むハイエルフ達は、ヨナンにチュッチュッチュッしてきたり、股を開いて誘惑してくるのだ。

 まあ、チュッチュッは、なすがままにされてしまうが、お股同士の運動は止めておく。
 俺はまだ童貞だし、初めては妻になる人とすると決めてるし。

「フフフフフ。私も相当寿命が延びたわよ」

 世界樹の里に住むハイエルフを襲っては、チュッチュッしまくったリサリサは御満悦。

 まあ、リサリサは、ハーフリングで見た目がお子様なので、リサリサの性根を全く知らないハイエルフ達は、リサリサにされるがままに、チュッチュッされてしまったのであった。

 もう、相当年寄りの癖に、どんだけ長生きしたいのだ……。

 ーーー

「これで、大森林の謎は解けたな」

『ですね。まさか大森林に、世界樹とハイエルフの隠れ里が有るとは思いませんでしたよ! しかも、世界樹がこの世界に栄養を与えてるとか! 世紀の大発見ですよ!』

 知識欲に飢えている鑑定スキルが、興奮気味に話す。

「もしかして、女神ナルナーのお気に入りの俺が、この世界樹を守らないといけないのか?」

『間違いないですね! なので、女神ナルナーが、ご主人様をこの大森林に導いたんですよ!』

 鑑定スキルも、同意する。

「確かに、俺がなんの縁もなかった大森林の、しかも、世界樹から滅茶苦茶近くのグラスホッパー領に導かれるように連れてこられ、グラスホッパー家の養子になってしまうって、出来過ぎてるもんな……」

『女神ナルナーに、嵌められましたね……』

「だとしたら、ムカつくな……」

『世界樹を守るの、止めきます?』

 鑑定スキルが、神をも恐れぬ、罰当たりな事を言ってきた。

「そんな訳いかんだろ! グラスホッパー男爵領が、戦地になるのは避けないといけないだろうが!
 俺は、もう、絶対にグラスホッパー家の者達を不幸にさせないと誓ってるんだよ!
 ジミー以外は!」

『確かに、僕も、ジミー以外は助けたいです!』

 どうやら、鑑定スキルも、俺と同意見のようだ。
 俺の中でジミーの価値はゴキブリ以下だしね。

「もう、これはアレだな。ここに世界樹が存在する事を、絶対に誰にも漏らさないようにしないとな!」

『ハイ! そしてこれ以上は、絶対に大森林の開発はしちゃいけません! そして、従業員にも徹底して、大森林の奥には入っていかないようにと厳命しなくてはなりませんよ!』

「確かに、従業員が、レッドドラゴンに燃やされるのは避けなくてはいけないな……」

 従業員が、レッドドラゴンに丸焼きなどにされたら目も当てられない。
 世界の平和を考えると、燃やされた従業員の方が悪になりそうなので、労災下りるか分かんないしね。

 そんな訳で、世界と、グラスホッパー家と、世界樹を守る為に、大要塞を建てる事にした。

 まず、エリスによって結界が張られてる内側に、アマダンタイトミスリル合金で高さ20メートルほどの城壁を建てる。
 まあ、これで、横からの魔法攻撃や物理攻撃は、大体防げるだろう。

 多分、この城壁を破壊出来るのは、俺が持つ聖剣ムラサメだけで、尚且つ、大工スキルを持つ俺が使わないと、破壊出来ないと思う。

 でもって、上空からの攻撃を防ぐ事も考えなくてはならない。
 世界樹は、樹木なので光合成しないといけないから、必然的に、太陽光を浴びる為に上空を開けとかなければならないのだ。

 まあ、これは、エリスの結界を増幅する魔道具を設置する事にとどめた。
 世界樹を屋根で覆って、枯らさせたら本末転倒だしね。

 箱物を完成させたら、後は、中の作り込み。
 やはり、世界樹の大要塞なので、神秘的な荘厳な空間にしなければならない。

 至る所に、女神ナルナーの裸像とか、無意味な噴水とか、はたまた女神ナルナーを祀る神殿とか、いたせり尽くせり。ヨナンが本気で夏休みの全ての時間を費やして完成させたので、本当にトンデモない出来栄えとなってしまった。

 まあ、ここまでくると世界樹の大要塞じゃなくて、女神ナルナーの神社?神宮?
 もはや、世界樹が関係なくなってる気がする……。

 兎に角、女神ナルナーの裸像だらけの、人が簡単に近寄り難い雰囲気を漂わす大要塞?大社?が出来上がったのは、間違いない話だった。
しおりを挟む
感想 191

あなたにおすすめの小説

職種がら目立つの自重してた幕末の人斬りが、異世界行ったらとんでもない事となりました

飼猫タマ
ファンタジー
幕末最強の人斬りが、異世界転移。 令和日本人なら、誰しも知ってる異世界お約束を何も知らなくて、毎度、悪戦苦闘。 しかし、並々ならぬ人斬りスキルで、逆境を力技で捩じ伏せちゃう物語。 『骨から始まる異世界転生』の続き。

ReBirth 上位世界から下位世界へ

小林誉
ファンタジー
ある日帰宅途中にマンホールに落ちた男。気がつくと見知らぬ部屋に居て、世界間のシステムを名乗る声に死を告げられる。そして『あなたが落ちたのは下位世界に繋がる穴です』と説明された。この世に現れる天才奇才の一部は、今のあなたと同様に上位世界から落ちてきた者達だと。下位世界に転生できる機会を得た男に、どのような世界や環境を希望するのか質問される。男が出した答えとは―― ※この小説の主人公は聖人君子ではありません。正義の味方のつもりもありません。勝つためならどんな手でも使い、売られた喧嘩は買う人物です。他人より仲間を最優先し、面倒な事が嫌いです。これはそんな、少しずるい男の物語。 1~4巻発売中です。

秘宝を集めし領主~異世界から始める領地再建~

りおまる
ファンタジー
交通事故で命を落とした平凡なサラリーマン・タカミが目を覚ますと、そこは荒廃した異世界リューザリアの小さな領地「アルテリア領」だった。突然、底辺貴族アルテリア家の跡取りとして転生した彼は、何もかもが荒れ果てた領地と困窮する領民たちを目の当たりにし、彼らのために立ち上がることを決意する。 頼れるのは前世で得た知識と、伝説の秘宝の力。仲間と共に試練を乗り越え、秘宝を集めながら荒廃した領地を再建していくタカミ。やがて貴族社会の権力争いにも巻き込まれ、孤立無援となりながらも、領主として成長し、リューザリアで成り上がりを目指す。新しい世界で、タカミは仲間と共に領地を守り抜き、繁栄を築けるのか? 異世界での冒険と成長が交錯するファンタジーストーリー、ここに開幕!

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~

暇人太一
ファンタジー
 仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。  ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。  結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。  そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?  この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

処理中です...