上 下
97 / 177

97. レッドドラゴン再び

しおりを挟む
 
「キャアアアアアーー!!」

 世界樹の方に、先に1人で走り出していったリサリサの断末魔が聞こえてくる。

「なんか、不味いんじゃないのか?」

「多分、大丈夫。念話で既に仲間に伝えてある」

 俺の問い掛けにエリスが答える。

「だけど、心配だよな!」

 俺は急いで、リサリサの断末魔が聞こえた方に向かう。

「てっ?!」

 そして暫く走ると、突然森が開け、そこにはなんと、気絶して口から泡を吹いてるリサリサと、尻尾が切れた巨大なレッドドラゴンがそこに居た。

『ご主人様! あのレッドドラゴン、尻尾が無いですよ! しかも、ご主人様の鞄の中にあるレッドドラゴンの尻尾と、同一のレッドドラゴンで間違いありません!』

 鑑定スキルが、知りたくもない情報を俺に知らせてくる。

「だな。生きてたのかよ……」

『ご主人様! 早く戦闘準備をして下さい!確実に倒すには、聖剣ムラサメが必要ですよ!』

 鑑定スキルが、相手の力量を測って、的確な指示を出してくる。

「おお! 分かってるって!」

 ヨナンは急いで、魔法の鞄の中から聖剣ムラサメを取り出す。

 すると、

「チョチョチョチョチョ! 誤解だ! 我は、貴様と戦う気などコレっぽっちもない!
 ただ、エリスに言われて、お前達を迎えに来ただけだ!
 そして、このハーフリングは、我を目の前にして勝手に気絶しただけじゃ!」

 レッドドラゴンは、聖剣ムラサメを見て、慌てて言い訳をする。
 どうやら、ヨナンが持ってる聖剣ムラサメの恐ろしさを身をもって知ってるようである。

 そしてエリスが、ヨナンに遅れる事、3分程経って現れる。

「エリス、早く、この者に説明して、あの聖剣を仕舞わせろ!」

 レッドドラゴンは、やはり聖剣ムラサメにビビってるようだ。
 というか、レッドドラゴンとエリスは知り合い?

「少し、尻尾が伸びてきたようですね?これなら後、2、3年もしたら元通りですよ」

「そんな事どうでもいいから、この女神ナルナー様のお気に入りをなんとかしろ!」

 レッドドラゴンは、エリスに逆ギレする。

「あっ、主様。この蜥蜴は、世界樹の護り手のレッドドラゴンです。
 そしてレッドドラゴンの仕事は、間違ってここまでやって来た者を殺す役目をしてます」

 もう少しオブラートに包んで話てもいいと思うが、ボキャブラリーが乏しいエリスには無理か……。
 多分、子供の時に見た事がある、大森林を捜索する為に来たカララム王国の探索隊も、このレッドドラゴンに食べられているのだろう。

「エリス! 蜥蜴とか言うな! そしてもっと、言葉を覚えろ! 我は世界樹の護り手!
 大森林を近づく者は、誰であっても容赦せん!」

「やっぱり、俺は来ちゃいけなかったのか?」

「どうぞ!どうぞ!女神ナルナー様のお気に入りを止める権利など、我にはございませんので!」

 ヨナンの言葉に、レッドドラゴンは、冷や汗を垂らしながら慌てて答える。
 というか、レッドドラゴンは相当、ヨナンに恐れを成している。まあ、ヨナンと言うより聖剣ムラサメにビビってるだけと思うけど。

「本当に、このレッドドラゴンって強いのか?」

 あまりに腰が低いレッドドラゴンに、ヨナンは疑問を抱き、鑑定スキルに質問する。

『強いですよ。多分、ご主人様の次ぐらいに強いですね。なにせ世界樹の護り手ですので』

 名前: レッドドラゴン
 種族: 龍
 称号: 世界樹の護り手 調停者
 スキル: 火魔法Lv.10、雷魔法Lv.10、風魔法Lv.10、重量魔法Lv.5、転移魔法、ファイアーブレス、咆哮、etc……
 力: 9999
 HP: 9999
 MP: 9999

 鑑定スキルが、レッドドラゴンのステータスを見せてくれる。

「力とかHPとか、全て9999でカンストしてるじゃねーかよ! それなのに聖剣ムラサメが怖いのか?」

『ご主人様、気付いてます? 聖剣ムラサメって、限界突破してるんですよ。
 因みにこれが、前にも見せましたが、聖剣ムラサメのステータスです』

 聖剣ムラサメ
 属性: 雷、火、風、氷
 スキル: 斬撃波、雷撃、炎剣、氷剣、自己修復、HP自動回復、MP自動回復、魔法攻撃無効、所有者の攻撃力3倍、防御力3倍、素早さ3倍、即死系攻撃1回無効
 攻撃力: 10000
 耐久力: 50000

「攻撃力10000、で、耐久力50000?」

『ハイ。普通は9999でカンストですね。9999と10000の違いは、たった1ですけど、雲泥の違いがあるんです。因みに、レッドドラゴンを殺せるのは、この世でご主人様だけですので、あのようにいつも尊大なレッドドラゴンが、ご主人様にビビってるんですよ!』

 何故か、俺の事なのに、鑑定スキルが自慢げに話す。

「あの腰が低いレッドドラゴンって、いつもは尊大なのか?
 というか、攻撃力が10000で、耐久力まで50000って、限界突破し過ぎだろ!」

『ですね。絶対に壊せれませんね! しかも自己修復スキルまで備わってますから、この世から消滅させる事も出来ません。
 まあ、耐久力50000の聖剣に、自己修復スキルが必要かどうかは分かりませんけど……』

「俺が作った聖剣ムラサメって、本当に凄かったんだな……」

『ですね。ご主人様の場合、適当に作っても物凄い性能になるのに、聖剣ムラサメの場合は、暗殺者から逃れる為に、ご主人様が死ぬ気で作った聖剣なので、トンデモない聖剣になってしまったんですよ!
 多分、この聖剣ムラサメを手にした者は、世界征服出来ちゃいますね!』

「俺、世界征服する気なんか更々ないけど?」

『まあ、その気になれば、簡単にやれるという話です』

 鑑定スキルは、事も無げに答えた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

骨から始まる異世界転生~裸の勇者はスケルトンから成り上がる。

飼猫タマ
ファンタジー
トラックに轢かれて異世界転生したのに、骨になるまで前世の記憶を思い出せなかった男が、最弱スケルトンから成り上がってハーレム勇者?魔王?を目指す。 『小説家になろう』のR18ミッドナイトノベルズで、日間1位、週間1位、月間1位、四半期1位、年間3位。 完了済では日間、週間、月間、四半期、年間1位をとった作品のR15版です。

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅
ファンタジー
 物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル 異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった 孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。 5レベルになったら世界が変わりました

処理中です...