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77. ヨナンの屋敷に女子が来た
しおりを挟む既に、鑑定スキルの念話によって、地上の家のセバスチャンには連絡済み。
でもってSクラスは、カララム王国学園の入試で成績上位者が集められたクラスなので、必然的に高位貴族の子息令嬢ばかりが集まってるのだ。
それならば、やはり、グラスホッパー商会の商品を売り込まなくては!
セバスチャンには、既に、お土産用のグラスホッパー商会詰め合わせセットを用意させていたりしている。
勿論、女子が喜びそうなお土産セットだ。
そんな整った感じで、俺は女子を引き連れて、自分の地上の屋敷に凱旋したのであった。
屋敷に到着すると、無駄に凝りに凝った彫刻が掘られたアイアンの黒光りする重厚な門が開かれる。
本当は、煌びやかな宝石とか嵌め込んでも良かったのだが、そうすると下品に見えてしまうので、敢えて、アイアンで重厚さを出したのだ。
というか、何も連絡してない筈なのに、勝手に重厚な門が開いて、女子達は驚いている。
そして門が開くと、セバスチャンを筆頭に、50人程の執事とメイドが玄関へと続く真っ白な大理石の道の両端に並んで立ち、
そして、
「「主様、そして、お嬢様方、おかえりなさいませ!」」
何故か、メイド喫茶のような挨拶で、お出迎えしてくれた。
俺は分かるが、何で、女子達にまでお帰りなさいませなのか、全く意味不明だ。
多分、鑑定スキルの入れ知恵だろう。
絶対に、俺が喜ぶと思ってやらしてるのに違いない。
「エエェェェェェェ……お嬢様方……!」
何故か、女子達の方がビビってたようである。
「てっ!? ちょっと、あそこに居るのエリス様じゃない?」
なんか、メイド達と一緒に、頭を下げてるクールビューティーエリスに、女子達は、ビックリしている。
まあ、誰にも言ってなかったから、当然なんだけど。
「ヨナン君! これは一体、どういう事!」
なんか、女子達が騒ぎ始めてる。
「この屋敷の警備責任者って、ところかな?
まあ、ウチの母親が、『熊の鉄槌』て言う、昔、エリスが所属していた冒険者パーティーの団長をやってて、そのツテで雇ってる感じかな?」
「エエェェェーー! ヨナン君のお母様って、元『熊の鉄槌』の団長さんだったのーー!」
またまた、女子達が驚愕している。
もう、既に、カレンとアンとカトリーヌが、クリソツなので、ヨナンの母親が、グリズリー公爵の娘だという事は周知されてるが、エリザベスが、『熊の鉄槌』のリーダーだったとは、認知されてなかったようである。
「取り敢えず、どうぞ」
ヨナンは、いつまでも家に入ってくれなそうなので、兎に角、女子達を家に入れる。
「キャァァァァーー!! 何コレ!」
女子達は、ヨナンがやっつけで建てた屋敷に大興奮している。
まあ、適当に建てたとしても、カララム城より、外装も内装も豪華で、凝りに凝った装飾が施されてるのだけど。
これくらいで大興奮しちゃうなら、ヨナンが本気で建設した地下宮殿を見たら、多分、卒倒して倒れてしまうかもしれない。
「どうぞ、お嬢様方」
セバスチャンが、お客さん用の応接室に案内し、ソファーに座らせる。
「なんなのーー! このフカフカ過ぎるソファーわ!
こんなソファーに座ったら、もう、一生立つことなんて出来ないわ!」
ただのソファーに座っただけでこの始末。
まあ、これからお茶を飲むソファーで、背中まで付けて寛いでいいのかは疑問だけど。
だけど、女子達は夢心地で、ソファーの中に埋もれてしまっている。
「お嬢様方。こちら、グラスホッパー商会新商品の季節のフルーツタルトでございます。
こちらの商品は、季節ごとに旬のフルーツを乗せて販売する予定になっております。
どうか、お嬢様方には、味見してもらい意見を頂けたら幸いでございます」
メイドが運んできたお茶請けについて、セバスチャンが説明すると、ソファーに埋もれていた女子達が、一瞬にして飛び起きる。
「な……なんですって! グラスホッパー商会の、まだ発表されてない新商品を食べれるですって!
しかも、これって、甘くて美味しい、グラスホッパー領のフルーツをふんだんに使ってるわ!」
もう、女子達は、フルーツタルトに釘付けだ。
「紅茶は、フルーツタルトに合わせて、ダージリンをお楽しみ下さいませ」
「これが噂のダージリンね。他にも爽やかな柑橘類の香りがするアールグレイや、甘い香りでドッシリとしたコクを持つアッサムとか、最近、グラスホッパー商会が売りだし始めた紅茶よね」
そう。最近、鑑定スキルとエリザベスが何かやってると思ってたら、どうやら地球の紅茶を売り出していたようである。
因みに、鑑定スキルの念話距離は、相当延びており、普通にグラスホッパー商会カララム王都店ぐらいまでなら、余裕で念話出来てしまうのであった。
『ご主人様。もう女子達、ご主人様の財力にメロメロですよ』
鑑定スキルが、嬉しそうに念話してくる。
「財力だけかよ」
鑑定スキルが、勝手に消音してくれるが、喋ってもないのに口が動くは怪しく見えるので、口を押さえて鑑定スキルにツッコミを入れる。
「ヨナン君。最高だわ! こんなにもてなして貰っちゃって!」
女子達が興奮しながらも、フルーツタルトをパクパク食べ、ヨナンに感謝の気持ちを伝えてくれる。
「こちらこそ。新商品の味見をしてくれて、助かったよ。
是非、若い女の子達の意見が聞きたかったからね」
ヨナンは、謙遜して答える。
わざわざ、鑑定スキルに頼んで、セバスチャンさんに用意して貰ってたというのは、ヤラシイし。
「な。セバスチャン!」
ヨナンは、セバスチャンに振る。
「主様の仰る通りでございます。もし、宜しければ、これからも新商品の味見をしに遊びに来てくれると、こちらとしても、とても有り難いです」
セバスチャンが、ヨナンの意思を読んで畳み掛ける。
「ええーー!! これからも遊びに来ちゃっていいんですか!」
「是非、 いらっしゃって下さいませ。いつでもお待ちしております」
「いつでもいいんですか?! ヨナン君が居なくても?」
「ええ。いつでも好きな時に、美味しい紅茶とお茶請けを用意してお待ちしております!」
「ん???」
ちょっと、言ってる意味がよくわからない。俺が居なくていいのか?
俺のソファーの後ろに立ってたセバスチャンを見ると、女子達に見えないように、何故かサムズアップしていた。
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