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76. 班分け
しおりを挟む「それでは、野営訓練の班分けをする!」
Sクラス担任で、厳しい女教師風の細メガネを掛けたグロリア先生が、朝のホームルームで話し出す。
カララム王国学園の新入生は、学園になれ始めた5月になると、野営訓練と称して、いわゆる戦争の訓練をするのである。
「ヨナン・グラスホッパー! カトリーヌ・グリズリー! そして、アスカ・トップバリュー!入学試験トップ3のこの3人を班長にして、班分けするように!」
ん? 指示はそれだけ?
班分け方法とか、指示しないのか?
とか、ヨナンが思ってると、
「マイク・タイガー! それと、グレイブ・ホースは、私の班に入って!」
アスカが、有無を言わさず、多分、『恋愛イチャイチャキングダム』の攻略対象の2人を、自分の班に入れようとする。
「何で、俺達が!」
「ストーカー女と同じ班になんて、絶対お断りだ!」
相当、アスカに付き纏われてる2人は、拒否する。
「私は班長! アナタ達は、私のモノって、ずっと前から決まってるのよ!」
なんか、アスカは強気だ。
最近、2年生の攻略対象2人を、魅了スキルでものにしたので、イケイケなのだろう。
この調子で、このクラスの攻略対象も、続けざまにゲットしようとしてるに違いない。
「そしたら、私の班に入りたい人は、私の所に集まって下さい!」
カトリーヌも、アスカにならって班員になってくれる人を呼び掛けるようだ。
「だったら、俺の班にも!」
直ぐに、アスカに選ばれた以外の男全員は、カトリーヌの班に、そして、女子全員が、俺の班に入りたいと言ってきた。
『ご主人様、モテモテですね!』
鑑定スキルが、ヨナンにだけに聞こえる念話で話し掛けてくる。
まあ、なんとなく分かってた。
男子全員が、カトリーヌの班に流れてしまった事により、カトリーヌの班に行こうとしてた女子達も思いとどまり、俺の班に全員来てしまったのだ。
そして、どうやら、アスカの班にだけは誰も入りたくないらしい。
「ヨナン! お前だけ狡いぞ!」
「俺も、お前の班に入れろ!」
アスカに拉致された攻略対象の2人が騒いでいる。
俺だって、女だけの班なんて嫌だ。これは戦争訓練なのだ。ある程度の戦闘能力を持った奴と組みたい。
「よし! お前とお前とお前とお前とお前! アスカの組に入ってやれ!」
グロリア先生が、勝手に、ヨナンとカトリーヌの班に入った生徒を、人数が足りないアスカの班に強制的に入れる。
「ええーー! 絶対嫌です!」
「誰が、入るかよ!」
「嘘つき女の班なんて、絶対にいや!」
アスカの嫌われっぷりは、相当である。
まあ、この1ヶ月間、糞みたいな事しかしてこなかったので、当然なんだけど。
しかも、先輩の貴族を2人も掴まえて、いつもイチャイチャしてるし。
しかし、
「はあ? 私に意見するのか? お前ら何様だ?」
グロリア先生怖すぎる。
こんな感じで、Sクラスの班分けは終わったのだった。
そして、授業が終わると、
「ヨナン君! みんなで班の親睦を深めようと集まる事になったんだけど、勿論、班長のヨナン君にも来てもらうわよ!」
なんか、班員の女子9人全員が揃って、ヨナンに話し掛けてきた。
「えっと……別にいいけど、どこで?」
「勿論、ヨナン君の家よ!」
「俺の家って、寮って事だよね?俺の部屋は、下級貴族用の寮だから、とても狭いんだけど?」
「そんなの、勿論、ヨナン君ちの御屋敷よ! 学園からも、とても近いし! 丁度いいよね!」
なんか、よく分からんが、女子達は、ヨナンの地上の家に行きたいらしい。
よく考えたら、ヨナンの地上の家は、恋人達のデートスポットになってたり、お上りさんの観光スポットになってるらしい。
まあ、学園の女子達が気になるのも、当然と言えば、当然なのかもしれない。
多分、ヨナンの班に入りたいと言ったのも、完全にヨナンの家目当てだったのだろう。
「じゃあ、俺ん家来るか?」
「「ウン! いく!」」
なんか知らんが、女子達を引き連れて地上の家に帰る事となってしまった。
というか、もしかして、俺、初めて女の子を自宅に連れ込むんじゃね?
まあ、女子達は観光目的なんだけどね。
とか、思ってるのは、実際ヨナンだけ。
女子達は、全員、ヨナン狙い。
なんてたって、僅か13歳の時に、カララム王から準男爵の爵位を授かり、グラスホッパー商会という、この国一番の大商会を立ち上げたのだ。しかも、レッドドラゴンを倒した英雄。
女子達の中には、その時、レッドドラゴンの肉を貰ったイーグル辺境伯の寄子の家の者で、潰れそうだった家を、レッドドラゴンの肉を売って持ち直した家の娘とかもいたりするのだ。
本当に、ヨナンの事に興味を持ち、ヨナンを慕い、命の恩人と思ってる女子も居たりする。
ハッキリ言うと、ヨナンは、カララム王国学園で、一番の優良物件で玉の輿。
みんなヨナンと同じクラスになった時点から、狙ってたのだけど、イキナリ、生徒会長の剣鬼カレン・イーグルが、ヨナンに会いに来たりしてたので、二の足を踏んでいただけだったのだ。
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