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59. ビクトリア・グリズリー

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「ヨナン!学園に戻らないといけないので、暫くお別れになってしまうけど、戻ったら、また、子作りしましょうね!」

 カレンが、カララム王国学園に帰る道すがら、グラスホッパー商会・イーグル支店にやって来て挨拶しにきた。

 まあ、グラスホッパー商会は、イーグル辺境伯領のイグノーブル城塞都市の正門入口の一番の一等地にあるから、王都に出発するついでだと思うけど。

 グラスホッパー男爵家の長男セントも、行きと同様、グリズリー公爵家の馬車で、王都まで送ってもらうらしい。

 そして、グラスホッパー商会に迎えに来た、グリズリー公爵家の次期当主の息子のフィリップと、娘のカトリーヌとも少しは打ち明けたようで、楽しそうに会話もしている。

「それでは、父上、エリザベス。私達は王都なので、先に帰ります!」

 グリズリー公爵家次期当主のエリザベスの兄ちゃんが挨拶して、セントやフィリップやカトリーヌは先に帰っていってしまった。
 なんでも、エリザベスの兄ちゃんは、カララム王都にある別館に暮らしてるらしく、ヨナンから見て爺ちゃんのグリズリー公爵夫婦は、カララム王都の隣にある自領で暮らしてるとの事。

 というか、グリズリー公爵夫婦。最初見た時と違い過ぎて、なんかおかしな感覚になる。
 そう、ドラゴンステーキを食べて、若返っているのだ。多分、元々50代程だったのだが、40代? いや、30代ぐらいになっている?
 まあ、エリザベスが20代ぐらいになっちゃって、長男のセントと兄弟みたいになってしまってるから、もう、本当に訳がわかんなくなる状態になってしまってるのだ。

 しかも、王様まで若くなってしまってるので、暫くは、ドラゴンステーキの売買で国が揺れるかもとか言われてるし。

 結構な人数に、ドラゴンステーキ200グラムを配ったし、昨日新たにワイン品評会に参加した人達にも、実は配ってる。
 そりゃあ、ワイン品評会に参加したら、知り合いが全員若返ってたら、普通、理由聞くし。まあ、収拾つかなくなると面倒だから、最初から配ってしまったのである。

 てな訳で、現在、相当の数のドラゴン肉が、カララム王国に出回ってる事となるのだ。

 まあ、個人取り引きには限界が有るので、商会同士の奪い合い、オークション。本当にどうなるか分からない。
 200年前に、少量ドラゴン肉が出回った時は、結構、殺人事件とかも起こったらしいし。

 まあ、それ程、人間は若返りたいのであろう。

「ヨナン君。今回のドラゴン肉と、ワインで、完全に、貴族相手の商売なら、トップバリュー商会を越えたわよ!
 それに、カララム王家に、グラスホッパー領のシャトーを売ったのは大きいわね。
 流石のトップバリュー商会でも、おいそれと、カララム王家のシャトーがある、グラスホッパー領に手を出す事なんか出来なくなるしね!」

 エリザベスは、御満悦である。
 それもあって、シャトー・ロードカララムを、王家に売るのを拘っていたのであろう。

「そうね! 次は、どんな手を打ちましょうか!」

「ん?」

 何故か、エリザベスの母親のビクトリアが、ヨナンに話し掛けてくる。

「あっ! ヨナン君。言ってなかったけど、お母さんをグラスホッパー商会で雇ったから!」

「んんんんん?」

「私も、エリザベスからヨナンちゃんの色々な死に戻りの話とかを聞いて、手伝いたくなったのよ!
 トップバリュー男爵家。あの忌々しい家は万死に値するわ!
 私の孫達を殺したなんて、絶対に許さない!」

 バキッ!バキッ!バキッ!

 ビクトリアは、たまたま握ってた、旦那の手を握り潰した。

 ーーー

 なんかよく分かんないけど、またまた鑑定スキルによって、俺の死に戻り前の映像を見る観覧会。

 勿論、今回もエドソンには見せずに、ビクトリアとグリズリー公爵だけ。

「絶対に許せんな……」

 映像を見終わったグリズリー公爵も、怒りに打ち震えている。

「エリザベス。トコトン、トップバリュー商会を追い詰めるわよ!」

 なんか、ビクトリア婆ちゃんヤル気である。
 見た目、30代だけど。

「取り敢えず、グリズリー公爵領にもグラスホッパー商会を立ち上げるのが先決ね!
 王都の一等地の土地の買収はちょっと時間が掛かるけど、グリズリー公爵家の領都グリズリーなら、グリズリー公爵家が所有してる土地があるから、そこを譲るわ!じゃなくて、買取って!」

 なんか、ビクトリア婆ちゃんが言い直した。
 やはり、エリザベスと親子、お金に厳しいのである。

「という訳よ! 次は、カララム王都の隣のビクトリア公爵領に向かうわよ!」

 エリザベスが、勝手に俺の予定を入れてしまう。
 まあ、いいんだけど。だけれども、流石の俺も、ちょっとだけ仕事を休みたいと思ったのは内緒の話。

 まあ、アスカのトップバリュー商会をザマーできるのなら、どんな事でも我慢できるのだけどね!
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