58 / 177
58. ワイン品評会
しおりを挟むヨナンが、カララム王から準男爵の爵位を授与して直ぐに、イーグル辺境伯領の新たな寄子である、グラスホッパー男爵家、それと、急遽、寄子になったグラスホッパー準男爵家のお披露目パーティー兼、ワイン品評会が始まった。
まず、最初に、グラスホッパー騎士爵が、男爵家になっていた事にみんな驚き、逆に、ヨナンがグラスホッパー準男爵の爵位を貰った事には、一人も驚く者はいなかった。
だって、歳が若返るドラゴン肉を取ってきた張本人だし、ドラゴン肉をタダで振舞った事が、これ即ち、強烈なワイロにもなっていたのである。
もう、既に、このワイン品評会に参加した貴族の中に、ヨナン・グラスホッパーを批判できる者など一人も存在しないのだ。
もし居たとしたら、みんなに白い目で見られて、吊し上げにされるのは目に見えてるし、昨日、ドラゴン肉を食べて、蘇る金狼になった結構偉い侯爵の爺さんなんかは、ヨナンに会うと、昨日、久しぶりに嫁さんとハッスルできたと、喜んでいたしね!
ーーー
「それでは、試飲会を始める!」
主催者である、イーグル辺境伯の号令で、ワインの品評会が始まる。
それぞれ名前を伏せられたワインを、ソムリエの資格を擁してる10人の貴族と、特別審査員として、カララム王と、元『熊の鉄槌』の酒豪の称号を持つゴンザレスが、審査を受け持つ事となった。
勿論、他のゲストの貴族達も自由にワインを飲む事ができ、何番のワインが美味しかった!いや、私は、何番がいいとか! 今回は、ロードグラスホッパーホテル・イーグル支店が用意したケータリングを食べながら、飲み比べして、それぞれ自由気ままに批評できるフランクな感じのワイン品評会になっている。
そして、その中で、絶大な人気を博してるワインが3つ。
名前は完全に伏せられてるが、イーグル辺境伯がシャトーを保有してる、シャトー・ロードイーグル1965と、グリズリー公爵家がシャトーを保有してる、シャトー・ロードグリズリー1965、そして、グラスホッパー商会が出品してる、シャトー・ロードグラスホッパー1965の3つである。
まあ、残念ながら、昨日、振舞ってしまった(仮名)シャトー・ロードカララム1965は、1本も在庫が無くなってしまったので、出品できなかったのはお約束。
「それでは審査を始めます!1番美味しかったと思う番号札を、審査員の方々は上げて下さい!」
進行係の合図で、審査員が一番美味しいと思うワインの番号を一斉に上げる。
「5番、5番、5番、5番! 満場一致で、5番のワイン! 原産グラスホッパー領、グラスホッパー商会所有、シャトー・ロードグラスホッパー1965が、満場一致で、1位となりました!」
パチパチパチパチパチパチパチパチパチ!
「ブラボー! ブラボー!」
進行係のが宣言すると、盛大な拍手と賞賛が会場内にこだまする。
「それでは、審査員の感想は後にして、次に美味しいと思われるワインを、審査員は選んで下さい!」
再び、審査員は、番号札を上げる。
「これは2つに別れましたね。11番が5票、21番が7票!
よってワイン品評会第2位のワインは、原産地グラスホッパー領、グリズリー公爵家がシャトーを保有する、シャトー・ロードグリズリー!
そして、第3位は、同じく原産地グラスホッパー領、イーグル辺境伯がシャトーを保有する、シャトー・ロードイーグルとなりました!
盛大な拍手を!」
ワアァァァァーー! ブラボー! ブラボー!
原産グラスホッパー領のワインが1位、2位、3位を独占して、会場は沸きに沸き、
グラスホッパー領こそが、世界で一番のワイン産地と印象つけられる事となった。
この後引き続き、ワインの品評会が行われたが、イマイチ盛り上がらない。
もう、みんなグラスホッパー原産のワインの話で盛り上がっている。
シャトー・ロードグラスホッパーはどうとか、シャトー・ロードグリズリーはどうかとか、シャトー・ロードイーグルはどうのとか、そして、毎回、人々の話に上がるのは、昨日のレッドドラゴン討伐記念パーティーで出された、グラスホッパー産の名前が伏せられていたワイン。今回は、出品されなかったが、もし、出品されてたらどうなっていたかという話。
なんか、もう、その他のワインなど、みんな興味がなくなり、(仮名)シャトー・ロードカララムの話で、みんな話が盛り上がる。
そして、今日到着して、昨日のレッドドラゴン討伐記念パーティーに参加してないワイン好きな貴族などは、是非飲んでみたいとか、どうすれば飲めるんだと騒ぎだし、もう、ワイン品評会など自然にお開きになってしまい、審査員まで、グラスホッパー産の幻のワインの話で持ち切り。
なんか、いつの間にか、今日出品されなかった事より、尾ひれが、どんどんついて来て、(仮名)シャトー・ロードカララム1965が、幻の伝説のワインだと言われるようになり、結局、あまりの議論が白熱し、どこぞのワイン好きの大貴族も、グラスホッパー商会に、シャトーを売ってくれと大騒ぎ。
結局、一口も飲んだ事のない、カララム王の、
「ワシが買う!」
の、一言で、やっと騒動が収まったほどだった。
まあ、こんな感じで、結局は、カララム王家がシャトーを買い取ってくれる事が決定し、無事、(仮名)が外れて、シャトー・ロードカララムが誕生したのであった。
27
お気に入りに追加
2,899
あなたにおすすめの小説
職種がら目立つの自重してた幕末の人斬りが、異世界行ったらとんでもない事となりました
飼猫タマ
ファンタジー
幕末最強の人斬りが、異世界転移。
令和日本人なら、誰しも知ってる異世界お約束を何も知らなくて、毎度、悪戦苦闘。
しかし、並々ならぬ人斬りスキルで、逆境を力技で捩じ伏せちゃう物語。
『骨から始まる異世界転生』の続き。
ReBirth 上位世界から下位世界へ
小林誉
ファンタジー
ある日帰宅途中にマンホールに落ちた男。気がつくと見知らぬ部屋に居て、世界間のシステムを名乗る声に死を告げられる。そして『あなたが落ちたのは下位世界に繋がる穴です』と説明された。この世に現れる天才奇才の一部は、今のあなたと同様に上位世界から落ちてきた者達だと。下位世界に転生できる機会を得た男に、どのような世界や環境を希望するのか質問される。男が出した答えとは――
※この小説の主人公は聖人君子ではありません。正義の味方のつもりもありません。勝つためならどんな手でも使い、売られた喧嘩は買う人物です。他人より仲間を最優先し、面倒な事が嫌いです。これはそんな、少しずるい男の物語。
1~4巻発売中です。
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
秘宝を集めし領主~異世界から始める領地再建~
りおまる
ファンタジー
交通事故で命を落とした平凡なサラリーマン・タカミが目を覚ますと、そこは荒廃した異世界リューザリアの小さな領地「アルテリア領」だった。突然、底辺貴族アルテリア家の跡取りとして転生した彼は、何もかもが荒れ果てた領地と困窮する領民たちを目の当たりにし、彼らのために立ち上がることを決意する。
頼れるのは前世で得た知識と、伝説の秘宝の力。仲間と共に試練を乗り越え、秘宝を集めながら荒廃した領地を再建していくタカミ。やがて貴族社会の権力争いにも巻き込まれ、孤立無援となりながらも、領主として成長し、リューザリアで成り上がりを目指す。新しい世界で、タカミは仲間と共に領地を守り抜き、繁栄を築けるのか?
異世界での冒険と成長が交錯するファンタジーストーリー、ここに開幕!
異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる