上 下
56 / 177

56. レッドドラゴン討伐記念パーティー

しおりを挟む
 
 なんか、ヨナンがレッドドラゴンの鱗と尻尾を持ち帰った事が、想像以上の大騒ぎになってしまい、ドラゴンの鱗や尻尾を売ってくれやら、武勇伝を聞かせてくれやら完全に収拾がつかなくなってしまい、急遽、ロードグラスホッパー・イーグル支店で、レッドドラゴン討伐記念パーティーが行われる運びになってしまった。

「ヨナン君! これは商機よ! この機会を活かして、グラスホッパー商会の商品、ひいては、グラスホッパー領を宣伝するチャンスよ!」

 エリザベスが、相当ヤル気になっている。
 そして、シャトー・ロードグラスホッパー1965と一緒に、明日のワイン品評会に出す予定だった(仮名)シャトー・ロードカララム在庫の500本を、このレッドドラゴン討伐記念パーティーで消費する決断までしてしまった。

 そして、パーティーが始まり、司会進行のエリザベスが喋り出す。

「皆様、レッドドラゴン討伐記念パーティーにお集まりありがとうございます。
 この度、我が息子、ヨナン・グラスホッパーが、討伐したレッドドラゴンの尻尾のステーキ200グラムをメインに、我がシャトー・ロードグラスホッパーホテルの腕利きの料理人が、グラスホッパー領で取れた高級な野菜や果物をふんだんに使った料理をお届けいたします!
 そして、明日の品評会で出す予定だった、グラスホッパー領のシャトーで生産した美味しいワインも用意しておりますので、どうぞ、そちらも御堪能下さりますよう、宜しくお願い致します!」

 エリザベスが、グラスホッパー商会広報として、グラスホッパー商会と、グラスホッパー領の宣伝もする。

「おい……あれって、グリズリー公爵令嬢のエリザベス様じゃないか?」

「えっ? 嘘? あの行方不明だったエリザベス様?」

「いや、間違いない。あれはエリザベス様だ。まさか、大戦の英雄エドソン・グラスホッパーと結婚してたなんて、本当に驚きだ」

 エリザベスの突然の登場に、会場の貴族達は相当驚いている。

「それにしても、神獣ドラゴンの肉を食べれるのか?
 話によると、ドラゴンの肉を食べると10年若返るらしいぞ!」

「私も、それは聞いた事がある。それから、抜けた髪が、また延びたとか、伝説は幾らでもあるぞ!」

「なんと、10歳若返るというのは、真実か!
 もしかした、数年前に勃起不全になってしまったワシの一物も、蘇る金狼になるというのか!」

「200年前に、ドラゴンの肉が出回った時は、サイコロステーキ1つ分で、1億マーブルしたと聞いた事がある」

「なんと、その肉のステーキを200グラムも大盤振る舞いするだと?!
 売れば、巨万の富を手に入れれるというのに……グラスホッパー商会……恐るべし……」

 もう、なんかヨナンの武勇伝より、みんなドラゴンの肉を食べれる事の方に興奮してしまっている。

「それでは、ヨナン・グラスホッパー、レッドドラゴン討伐記念ディナーをお楽しみ下さいませ」

 もう、ここまでくると、ヨナンの武勇伝など、誰も聞きにこない。
 全ての貴族は、いつレッドドラゴンのステーキ肉200グラムが出てくるのかソワソワしている。

 そして、ワインに頼んだ者のみに、(仮名)シャトー・ロードカララム1965が、グラスに注ぎ込まれる。

「ん!? なんなんだ……このワインは!?」

(仮名)シャトー・ロードカララムを飲んだ者達が、次々に驚愕し出す。

「味は力強いのだがエレガント。酸味と渋みが絶妙な繊細なバランスで調和している。
 シャトー・カララム当たり年のシャトー・カララム925と似ているか?
 しかし、これはシャトー・カララム925を越える味わい……
 まさか、ワイン品評会でもない場所で、明日の品評会で出品すれば、必ず1位を取れるであろうポテンシャルのワインを飲めてしまうだなんて……こんな美味いワインを飲めるだなんて、我が人生に一点も悔い無し!」

 なんか、ワイン通のオッサンが、ワイングラスを天に掲げ、感激したのか涙を流し、ワイン余韻に浸っている。

 というか、色んなテーブルで、涙を流す、オッサンやオバサンがワラワラ現れている。

 流石は、地球でも5大シャトー筆頭と呼ばれるシャトーラフィット・ロートシルトと味が同じで、それを、2倍美味しくしたワインである。
 この世界のワイン通を唸らせるポテンシャルを十分にもっていたようだ。

 ドラゴンステーキに浮かれて、ワインを飲んで居なかった者達も、次々にワインを頼みだす。
 どうやら、グラスホッパー領原産のワインの評判は、上々であるようだ。

「前菜は、甘くて美味しいと評判のグラスホッパー領原産の果物の生ハム包みです。手前から時計回りに、柿の生ハム包み。イチジクの生ハム包み。桃の生ハム包み。メロンの生ハム包みになっております」

 超絶美味いワインを味わってた、上級貴族が柿の生ハム包みを口に運ぶ。

「こ……これは……」

 カラン!

 上級貴族は、思わず、柿の生ハム包みを口に入れた後、フォークを落としてしまう。

「甘くて、美味しい……。
 生ハムで果実を包むなんて、何を馬鹿げた事をやっておるのかと思っていたが、食べた事もないとても甘い果物が、少し塩辛い生ハムに包まれて、その果物の甘さが、より強調されておる……私は、こんな甘くて美味しく、尚且つ、ワインのお供になる前菜も、果物も食べた事ないぞーー!」

 高級なホテルのディナーだというのに、絶叫するのはどうかと思うが、なんか他の貴族もやたらと叫ぶので、このディナーでは有りという事なのだろう。

 そして、グラスホッパー領の食材を使った新たな料理が出る度に、貴族達が吠えるという、なんかよく分からなくなってきたヨナン・グラスホッパー、レッドドラゴン討伐パーティーのメインディッシュ、ドラゴンステーキ200グラムが、遂に登場した。

「皆様、大変長らくお待たせしました。こちらがドラゴンステーキでございます!
 しかし、ご注意して下さいませ!
 このドラゴンステーキを食べてしまうと、ご覧のように10歳若返ってしまいます!」

 何故か、少し薄暗くなっていた会場で、突然、エリザベスにスポットライトが当たる。

「なんと……つい先程より、若返っている……」

 ディナーに参加してる貴族達が、エリザベスを見て驚愕してる。
 だって、30代後半だったエリザベスが、どう考えても若返ってるのだ。20代後半?いや、20歳前半位に若返っている。

「先程、味見してみたのですが、この通り。しかし、伝承によるとドラゴン肉の若返り効果は1度のみ。良く考えて食べて下さいませ。
 そのまま食べるのも良し、魔法の鞄で保存し、後日、歳をとってから食べるのもよし。しかし、絶対ダメなのは、10歳未満の子供に食べさせてしまう事。
 私共もどうなってしまうのか、分かりませんので責任は負えません。
 今回、ドラゴンステーキを食べない方々は、係の者にお申し付け下さいませ。直ぐに代わりの別のメイン料理をお出ししますので!」

 エリザベスの話を聞いて、直ぐに食べる者、魔法の鞄にしまい、別のメイン料理を食べる者とに別れる。しかし食べる者も、ドラゴン肉の効果が得られるというサイコロステーキ一口分の大きさしか食べない。
 だって、ドラゴンステーキの市場価格って、サイコロステーキの大きさで1億マーブルするんだもん。
 という事は、ドラゴンステーキ200グラムで、約7億マーブルの価値があるのだ。

 このヨナン・グラスホッパーレッドドラゴン討伐パーティーに参加した者達は、ただこのパーティーに参加しただけで、一人、7億マーブルも、ヨナン・グラスホッパーに与えて貰った事となるという事だ。
 そして、寄子会議に参加した者達は、大体、領主と妻と長子の3人。
 大体、一領、21億マーブルも、グラスホッパー商会が援助した事となる。

 これは、昔のグラスホッパー騎士爵のような貧乏貴族にとって、トンデモない援助にもなる。

 少数ではあるが、グラスホッパー騎士爵が、イーグル辺境伯の寄子になるのを反対するつもりでいた貴族も、これでは何も言えなくてしまう。
 まあ、エリザベスがグリズリー公爵令嬢だったと分かった時点で、誰も文句など言えなくなっていたのだけどね!
しおりを挟む
感想 191

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

幼女と執事が異世界で

天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。 当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった! 謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!? おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。 オレの人生はまだ始まったばかりだ!

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

処理中です...