36 / 177
36. 作業日
しおりを挟む次の日、カナワン城塞都市での支店の開店の下交渉と、石焼き芋の販売。それから新商品のスゥイートポテトの貴族への宣伝を、エリザベスとコナンとシスに任せて、ヨナンは、グラスホッパー領に残り、作業をする事にする。
「商会長おはようございます!」
「ああ、おはよう」
「商会長。今日は天気がいいですね!」
「ああ」
いつの間にか、グラスホッパー商会の従業員になったグラスホッパー領の住民達が、会う人会う人、ヨナンの顔を見ると挨拶してくる。
というか、もう既に、従業員への教育は完璧であるようだ。恐るべしエリザベス……。
ヨナンは、早速、公爵芋畑の隣の大森林を、一気に伐採していく。
「ウオリャァァァァァァァァーー!」
バサッ! バサッ! バサッ! バサッ! バサッ!
そして、伐採が終わると、
「ウオリャァァァァァァァァーー!」
一気に、土地を耕し、農地にする。
「あの、商会長、エリザベス様から、この種を植えるように預かってます」
従業員が、見計らったように、何種類かの種をヨナンに渡す。
「何だこれ?」
『ご主人様、それは梨と、リンゴと、イチゴと、トマトと、日本でいうと桃のような果物の種ですね!』
「エリザベスの奴、こんなの用意してたのかよ?」
『なんか、付加価値が付く甘い果物を生産すれば、高く売れるとかなんとか、昨日、石焼き芋を売ってる時に言ってましたよ。僕も、それだったらと、日本で人気な甘くて美味しい果物を幾つか提案しておいたんです!』
「お前ら、俺が寝てる間にそんなミニ会議を開いてたのかよ……」
ちょっと、エリザベスの動きの良さに驚愕する。
というか、もう、鑑定スキルを、自分の秘書のように使いこなしているし。
『ハイ。早くアスカと、トップバリュー男爵にザマーする為には、少しでも早く、グラスホッパー商会を発展させないといけませんからね!
なので、ご主人様は、梨は豊水。リンゴはシナノスゥイートと王林。イチゴは、とちおとめ。トマトは、オレンジパルチェと、料理用のトマト。そして桃は、甘くて美味しい桃をイメージして種を植えて下さいね!』
「俺がイメージして種を蒔けば、大体、その通りに育つのは何となく分かるけど、お前が言う品種、半分は食べた記憶が無いんだけど……」
『その辺は、鑑定スキルLv.3の僕が情報を補完するので大丈夫です!』
鑑定スキルが、ドン!と胸を叩く。
まあ、実体無いから、比喩表現だけど。
「俺の大工スキルと、お前の情報があれば、大体、何でも有りになっちゃうんじゃないか?」
『僕との初めての共同作業ですね!』
「お前、言い方!」
ワイワイ喋りながらも、とっとと種を撒く。
何故なら、ヨナンはとても忙しいのである。
そして、また種を撒き終わった頃に、
「商会長、新しく種を撒いた食物用の専用倉庫を、それぞれ作るようにと、エリザベス様から仰せつかっています!」
また、さっきの従業員が話し掛けてくる。
「何だそれ?そんな事、昨日、エリザベスから聞いてないぞ?」
「エリザベス様は、ヨナン商会長なら、出来ちゃうからと、仰っていました」
従業員は、申し訳なさそうに話す。
「エリザベス、アイツ、俺を殺す気かよ!
どんだけ働かす気だ!」
『ご主人様は、いつも死ぬ程働いてるじゃないですか。エリザベスさんは、ご主人様の得意分野を、集中してやらしてるんですよ!
代わりに、販売は、コナン君とシスちゃんに、交渉事は、エリザベスさんがやってますから、適材適所ですよ!』
ヨナンはブツブツ言いながらも、梨は梨、リンゴはリンゴの専用倉庫を次々と作っていく。
「次は、スゥイートポテトを、従業員にも作れるような専用機械の開発をお願いします」
「嘘だろ! エリザベスの奴、俺に開発までさせるのかよ!」
『大丈夫です! ご主人様、スゥイートポテトの生産ラインの機械なら、僕のデータベースに入ってますから、それをアレンジして、この世界の住人にも使えるようにすればいいだけですから!
最初に機械さえ作ってしまえば、後はご主人様がノータッチで、スゥイートポテトが生産されちゃうので、最終的に考えれば、ご主人様が楽になるんです!
だって、今現在では、スゥイートポテト作れるのって、ご主人様だけですから!』
なんかよく分からないが、鑑定スキルに言い含められる。
「まあ、そう言われればそうだよな……俺がやれば一瞬で作れるけど、それが重荷になって色んな事やらなきゃいけなくなると、流石に手が回らなくなるもんな……」
『そうです! ご主人様がやってるのは、もう個人商会レベルじゃないんですから、人の使い方も、しっかり覚えましょうね!』
てな感じで、鑑定スキルに、頭の中でスゥイートポテトの生産ラインの映像を流して貰ってから、猛スピードで手を動かし、スゥイートポテトの生産ラインが出来上がった。
「生産ライン作るついでに、大きめの生産工場も作っちゃったな!」
『いいんじゃないですか?これからは、他の加工品の生産ラインも作る事となると思いますからね!』
「だな!」
「次は、移動販売用の荷馬車の量産です。
エリザベス様の要望は、取り敢えず、100台作ってくれと言われています」
どうやら、ヨナンのスケジュール管理を任されているであろう従業員が、次の指示を出してくる。
「100台って、うちの商会にそもそも100人も従業員居ねーじゃねーかよ!」
『その辺は、今日、エリザベスさんがカナワン城塞都市に募集を掛けると言ってましたよね!』
「ああ。分かってんよ!」
ヨナンは、速攻で、ヨナンが現在使ってるキャンピングキッチントレーラーと同等の荷馬車を100台作ってやる。
しっかりと、昨日必死に考えた、グラスホッパー商会の新たな幾何学的でオシャレな殿様バッタの紋章と、カナワン伯爵家お墨付き商会の名を入れて。
『ちょっとと言うか、大分、グラスホッパー家の紋章とは違うんですね?』
「ああ。俺は直系じゃないからな! 将来は、グラスホッパー家を出ていって、分家扱いになると思うから、今のうちから考えといたんだよ!」
『というか、グラスホッパー家の紋章より、オシャレでカッコイイですよね!』
「だよな! まあ、エリザベスはどうやらグラスホッパー商会を、他の商会と差別化する為に、高級路線で攻めようと思ってるようだから、その商会の紋章が、ダサい殿様バッタとか、ちょっとヤバいだろ……」
『確かに……』
「次は、スゥイートポテトを入れるオシャレな箱を作って下さいとの事です」
再び、従業員がやってきて、ヨナンに指示を出す。
「お前、やっぱり、俺のスケジュール管理要員だろ!」
毎回、仕事が終わると見計らったようにやって来て、指示してくる若い男の従業員に、ちょっと頭に来て文句を言う。
「そうです。ヨナン商会長が、仕事が終わった瞬間に、次の予定を指示するようにと、エリザベス様に仰せつかっていますので」
若い男の従業員は、何事でもないように答える。
『エリザベスさん……ご主人様を少しも無駄にしないようにと、考えてますね……』
鑑定スキルは、気の毒そうにヨナンに言う。
「これ、アスカより人使い粗くないか……」
『確かに……』
まあ、結局、ヨナンは、バッタポイ色であるティファ〇ーの箱をパクって、スゥイートポテトの高級箱を完成させたのであった。
16
お気に入りに追加
2,899
あなたにおすすめの小説
職種がら目立つの自重してた幕末の人斬りが、異世界行ったらとんでもない事となりました
飼猫タマ
ファンタジー
幕末最強の人斬りが、異世界転移。
令和日本人なら、誰しも知ってる異世界お約束を何も知らなくて、毎度、悪戦苦闘。
しかし、並々ならぬ人斬りスキルで、逆境を力技で捩じ伏せちゃう物語。
『骨から始まる異世界転生』の続き。
ReBirth 上位世界から下位世界へ
小林誉
ファンタジー
ある日帰宅途中にマンホールに落ちた男。気がつくと見知らぬ部屋に居て、世界間のシステムを名乗る声に死を告げられる。そして『あなたが落ちたのは下位世界に繋がる穴です』と説明された。この世に現れる天才奇才の一部は、今のあなたと同様に上位世界から落ちてきた者達だと。下位世界に転生できる機会を得た男に、どのような世界や環境を希望するのか質問される。男が出した答えとは――
※この小説の主人公は聖人君子ではありません。正義の味方のつもりもありません。勝つためならどんな手でも使い、売られた喧嘩は買う人物です。他人より仲間を最優先し、面倒な事が嫌いです。これはそんな、少しずるい男の物語。
1~4巻発売中です。
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
秘宝を集めし領主~異世界から始める領地再建~
りおまる
ファンタジー
交通事故で命を落とした平凡なサラリーマン・タカミが目を覚ますと、そこは荒廃した異世界リューザリアの小さな領地「アルテリア領」だった。突然、底辺貴族アルテリア家の跡取りとして転生した彼は、何もかもが荒れ果てた領地と困窮する領民たちを目の当たりにし、彼らのために立ち上がることを決意する。
頼れるのは前世で得た知識と、伝説の秘宝の力。仲間と共に試練を乗り越え、秘宝を集めながら荒廃した領地を再建していくタカミ。やがて貴族社会の権力争いにも巻き込まれ、孤立無援となりながらも、領主として成長し、リューザリアで成り上がりを目指す。新しい世界で、タカミは仲間と共に領地を守り抜き、繁栄を築けるのか?
異世界での冒険と成長が交錯するファンタジーストーリー、ここに開幕!
異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる