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29. エリザベス・グラスホッパー
しおりを挟むグラスホッパー領に帰る道すがら、コナンとシスが疲れて眠りについた後、鑑定スキルと、今後の会議を始める。
「イーグル辺境伯の件、どうすっかな……」
『やっぱり、イーグル辺境伯の寄子になってた方がいいんじゃないですか?
前の周回の時も、結局、グラスホッパー家が、貴族のどこの派閥にも入ってなかったから、トップバリュー男爵家にいいようにやられてしまったということも有りますし』
「やっぱ、そうだよな。イーグル辺境伯の派閥に入ってれば、少しは安心出来るかもしれんしな。なんかの拍子で、トップバリュー男爵とかち合った場合、グラスホッパー家が、大貴族のイーグル辺境伯の派閥に所属してたら、トップバリュー男爵家も、おいそれとグラスホッパー家に手がだせなくなるし!」
『ですね!』
「そうすると、エドソンをどう説得するかだな。エドソンって、貴族との付き合い方とか全く分かってなさそうだし」
『ですね。多分、もうちょっと上手くやれてたら、トップバリュー男爵の策略に嵌って殺され無かったと思います』
「まあ、イーグル辺境伯の寄子になるのは決定で、後は、どうやってエドソンを説得するかだな……」
『ですね』
一応、こんな感じで、イーグル辺境伯の派閥入りする方向で動く事を確認して、ヨナンは家に帰ってきたのだった。
「「ただいま!」」
『どうだった!』
ヨナンとコナンとシスが、玄関を開けると、エドソンだけでなく、エリザベスも珍しく待ち受けていた。
まあ、養子の俺だけじゃなく、本当の息子と娘であるコナンとシスも、カナワン伯爵領に泊まりで行ってたので、当然と言えば、当然なんだけど。
『ああ。みんな売れたよ! そして、今回は、100キロ入る魔法の鞄をゲットできた!
これで、これから大量に公爵芋が売れると思うよ! そして、これ! 残ったお金!』
ヨナンは、20万マーブルをエドソンに渡す。
『残ったお金って、これはヨナンが稼いで来たんだろ?』
「ああ。今回は、コナンとシスも手伝ってくれたから、そのお礼だよ!」
「本当に貰っていいのか?」
「ああ! 好きに使って!」
「ヨナン。アナタって子は……」
なんか知らないが、エリザベスまで感動してる。
余っ程、グラスホッパー家は困窮していたのであろう。
「それから、ちょっと相談があるんだけどいいか?」
「おっ? 何だ?」
「ここだと、ちょっと長くなるからリビングで」
「おっ! そうだな!」
そこで、ヨナンは、カナワン城塞都市で、カナワン伯爵の使いの者から、イーグル辺境伯の派閥に入らないかと言われた事を伝える。
「派閥とか言われてもな……俺、貴族の付き合いとかって、全然分かんないし……」
エドソンは、メチャクチャ困っている。
まあ、元々、庶民で、荒くれ者の冒険者だったのだ。
貴族との付き合い方など、分かる筈もない。
結構、戦争の英雄なので、騎士爵に成り立ての頃とかは、どこぞの貴族のパーティーとかに呼ばれてたのだが、礼儀作法を知らないとか、訳の分からない理由をつけて全部断っていたのである。
まあ、それが原因で、アスカと、トップバリュー男爵が画策した戦争で、誰も助けてくれる事なく、敵軍1万の部隊に、たった15人で突撃して全滅する羽目になっちゃったんだけど。
「アナタ、イーグル辺境伯ならいいんじゃない? 私もイーグル叔父様なら、知らない間柄じゃないし」
突然、エリザベスが援護してくれる。
というか、イーグル叔父様?
「あの?イーグル叔父様って?」
ヨナンは、恐る恐るエリザベスに尋ねてみる。
「あら?ヨナンは知らなかったのね。私って、貴族の家を飛び出して冒険者になり、エドソンと結婚したのよ!」
まさかの新事実。
エリザベスは、どうやら本物の貴族令嬢であったようだ。
「あの? それって、他の兄弟達もみんな知ってるのか?」
「今、初めて言ったから、エドソン以外は誰も知らないと思うわよ?」
ヨナンは知らなかったの?って、これ誰にも言って無かったら、誰も知らないだろ……。
「エリザベスの実家とかも、エドソンと結婚してる事、もしかして知ってるのか?」
「う~ん。多分、知らないと思う。家を飛び出した後、家の人達に誰も連絡してないから」
「何で?また、貴族に戻ったのに?」
「あらヤダ?本物の貴族なんて、戦争で武功を上げて貴族になった騎士爵なんて、誰も貴族なんて思ってないわよ!」
なんか、凄い貴族的思考。
「あの……近くに本物の貴族が居るんだから、礼儀作法とかは、エリザベスに習えばいいんじゃないかな?
これから貴族としてやって行くには、少しぐらい貴族の付き合いも覚えていかないといけないと思うし。
エドソンだけならいいけど、息子のセントとかジミーとかも、これから貴族社会を生き抜く上で、他の貴族とも付き合っていかないといけないと思うから」
「そうか?」
「そうだよ!」
「じゃあ、イーグル辺境伯は、エリザベスの叔父さんらしいし、イーグル辺境伯の寄子になるか!」
「だね! まあ、多分、これからカナワン伯爵やイーグル辺境伯に、エドソンも会わないといけなくなると思うから、その間まで、せいぜいエリザベスに礼儀作法教えて貰っててね!」
「おう! 任せとけ! 俺はやる時はやる男だからな!」
自信満々に言い放つエドソンを見て、ヨナンだけではなく、本当の子供であるコナンとシスまで、一抹の不安を覚えたのは、言うまでもない事だった。
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