95 / 166
95. 復讐に駆られる男
しおりを挟むハラダ家、ハラ家VS異界の悪魔サルガタナス側。
「お主が、何を言おうと、ジゲン流を使うのは、ハラダ家、ハラ家の者のみ!
とくと見よ! これが本家本元のジゲン流じゃ!」
無防備の異界の悪魔サルガタナスに、スエキチ爺さんが大きく飛び跳ね、上段蜻蛉の構えから、必殺の一撃が振り落とされる場面。
「チェストー!!」
ズダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダーーン!!
凄まじい、轟音と共に、会心の一撃と思われる斬撃が、異界の悪魔サルガタナスに振り落とされた。
「グワッ!」
異界の悪魔サルガタナスが、呻き声を上げる。
「チッ! 浅いか……しかしながら『白蜘蛛』。やはり異界の悪魔でも斬れる」
スエキチ爺さんは、確信する。
今まで、異界の悪魔を斬る事ができるのは、聖剣だけだと思われていた。
しかし、後期の『白蜘蛛』なら、会心の一撃を与えれば、一応、異界の悪魔が斬れると。
しかしながら、斬れたと言っても致命的な傷は与えられない。聖剣で今の攻撃を食らわせていれば、異界の悪魔サルガタナスを持ってしても、大ダメージが与えられた筈、しかしながら、異界の悪魔サルガタナスは普通に立っている。
「驚いたぞ……まさか、聖剣以外に我を傷付ける事ができる日本刀レプリカがあったとは……」
異界の悪魔サルガタナスの額は、正面から無防備で、スエキチ爺さんの会心の一撃を受けた為、額がバックリ割れて居る。
だけれども、全く致命傷ではない。
自己再生能力を持ってるのか、ミルミル傷が塞がれていき、もう、血も止まってる状態である。
「お爺様!」
ハナが、叫ぶ。
「殺れるぞ! ハナよ! ここから一気にラッシュを掛けるぞ!」
「「ハイ!!」」
ハナも含めて、ハラダ家、ハラ家の者達が、歓喜に沸きながらも、力強く返事をする。
そして、ハラダ家、ハラ家の者達が、異界の悪魔サルガタナスだけに集中して、攻撃を仕掛けようとしてる、まさにその時、
その背後から、鬼気迫る表情で迫り来る一人の男の存在を、薩摩の末裔達は全く気付く事ができなかったのだ。
誰しも、共闘してるシャンティー達『犬の肉球』の面々が守る、背後から襲われるとは、微塵も思っていない。
「行くぞ!」
「「オオ!!」」
スエキチの号令と共に、ハラダ家、ハラ家の者達が、異界の悪魔サルガタナスに飛び掛る。その瞬間、
ズダダダダダダーーン!!
「えっ?!」
「うぎゃぁぁぁーー!」
「な……何で……」
背後から、ハラダ家、ハラ家の者達が攻撃を受ける。
「えっ!? 塩太郎殿……どうして……」
背後からの攻撃を敏感に感知して、なんとか避ける事に成功していたハナが、斬撃波を背後から放った塩太郎に問い掛ける。
「フン。お前に直接恨みはないが、お前らは薩摩の末裔。俺が元いた世界では、薩摩藩は、長州藩の不倶戴天の敵なんだよ!」
「え……そんなの知らないです」
ハナも、突然の事に動揺している。
「お前ら薩摩は、尊皇攘夷をするフリをして、俺ら長州を裏切り、幕府と会津と組んで、俺達を京都から追いやったたんだよ!」
「尊皇攘夷? 一体、なんの事を言ってるのですか?」
訳の分からないハナは、必死に質問する。
「お前らに言っても分かんねーよ。薩摩っぽは、どうせ、得をする方に付く風見鶏だからな!
日本の為に、本気で動かねー奴らに、話す気になんねーんだよ!
どうせ、国の殿様の島津様が大事なんだろ!
俺達の殿様、毛利様とは、格が違うんだ!
長州藩は、殿様も藩士も、命を掛けて日本を守る為、変える為に戦ってたんだ!
お前ら薩摩のように、薩摩藩が得する事だけしか考えずに、行動してんじゃねーんだよ!」
そう。あの時代、本当に日本を変えようと戦ってたのは長州藩だけ。
長州藩だけは、殿様も含めて、日本を牛耳ってた徳川家と本気で戦っていたのだ。
死んだ人間は、数知れず。
蛤御門の変。
イギリス、アメリカ、フランス、オランダを敵に回して戦った四国艦隊下関砲撃事件。
長州藩3500人に対して、幕府軍10万5000人の戦い。無謀な戦いと思われた第二次長州征討も含めて。
藩滅亡寸前まで、追い込まれ、何とか最後に薩長同盟を組んで、何とか幕府を倒す事に成功した。
この薩長同盟を結ぶ時、長州代表として参加した桂小五郎は、どんだけ悔しかったか……桂小五郎自身も蛤御門の変の当事者で、薩摩の奴等に仲間をたくさん殺されているのだ。
だけれども、日本国の行く末を考え、血の涙を流し、断腸の思いで薩長同盟を結んだのだ……。
塩太郎が死んでしまうキッカケとなった、蛤御門の変の後の話は、塩太郎の知らぬ事なので、塩太郎の中では、薩摩との敵対関係が一番明確になった事件。蛤御門の変までで止まっている。
「塩太郎殿! 私達一族は1000年前にこの世界に来た侍の末裔!元の世界の事など、全く伝わってないし、覚えてないのです!」
ハナは、塩太郎に分かってもらおうと、自分達が何も知らない事を訴える。
「お前らの1000年前の御先祖様がやらかした事柄だとしても、俺にとってはつい最近の話なんだよ!
お前ら薩摩に裏切られて、志半ばで死んでしまった仲間の仇、キッチリ、薩摩の末裔の命で返させてもらうぜ!」
まあ、ハラダ家、ハラ家は、江戸時代初期からの異世界転移者の末裔なので、幕末の事件には全く関わっていないのだが、そんな事は、塩太郎に関係ないのだ。
ただ、仲間を、同じ釜の飯を食った、同じ志を持っていた仲間をたくさん殺した薩摩の血族が憎いのである。
「私は、貴方と戦いたくない!」
ハナは、涙ながらに塩太郎に訴える。
「俺は、お前を殺したくてしょうがないぜ!」
塩太郎は殺気漲らせ、ハナに躊躇無く斬りかかった。
0
お気に入りに追加
231
あなたにおすすめの小説
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。
飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。
ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。
そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。
しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。
自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。
アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!
お持ち帰り召喚士磯貝〜なんでも持ち運び出来る【転移】スキルで異世界つまみ食い生活〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ひょんなことから男子高校生、磯貝章(いそがいあきら)は授業中、クラス毎異世界クラセリアへと飛ばされた。
勇者としての役割、与えられた力。
クラスメイトに協力的なお姫様。
しかし能力を開示する魔道具が発動しなかったことを皮切りに、お姫様も想像だにしない出来事が起こった。
突如鳴り出すメール音。SNSのメロディ。
そして学校前を包囲する警察官からの呼びかけにクラスが騒然とする。
なんと、いつの間にか元の世界に帰ってきてしまっていたのだ!
──王城ごと。
王様達は警察官に武力行為を示すべく魔法の詠唱を行うが、それらが発動することはなく、現行犯逮捕された!
そのあとクラスメイトも事情聴取を受け、翌日から普通の学校生活が再開する。
何故元の世界に帰ってきてしまったのか?
そして何故か使えない魔法。
どうも日本では魔法そのものが扱えない様で、異世界の貴族達は魔法を取り上げられた平民として最低限の暮らしを強いられた。
それを他所に内心あわてている生徒が一人。
それこそが磯貝章だった。
「やっべー、もしかしてこれ、俺のせい?」
目の前に浮かび上がったステータスボードには異世界の場所と、再転移するまでのクールタイムが浮かび上がっていた。
幸い、章はクラスの中ではあまり目立たない男子生徒という立ち位置。
もしあのまま帰って来なかったらどうなっていただろうというクラスメイトの話題には参加させず、この能力をどうするべきか悩んでいた。
そして一部のクラスメイトの独断によって明かされたスキル達。
当然章の能力も開示され、家族ごとマスコミからバッシングを受けていた。
日々注目されることに辟易した章は、能力を使う内にこう思う様になった。
「もしかして、この能力を金に変えて食っていけるかも?」
──これは転移を手に入れてしまった少年と、それに巻き込まれる現地住民の異世界ドタバタコメディである。
序章まで一挙公開。
翌日から7:00、12:00、17:00、22:00更新。
序章 異世界転移【9/2〜】
一章 異世界クラセリア【9/3〜】
二章 ダンジョンアタック!【9/5〜】
三章 発足! 異世界旅行業【9/8〜】
四章 新生活は異世界で【9/10〜】
五章 巻き込まれて異世界【9/12〜】
六章 体験! エルフの暮らし【9/17〜】
七章 探索! 並行世界【9/19〜】
95部で第一部完とさせて貰ってます。
※9/24日まで毎日投稿されます。
※カクヨムさんでも改稿前の作品が読めます。
おおよそ、起こりうるであろう転移系の内容を網羅してます。
勇者召喚、ハーレム勇者、巻き込まれ召喚、俺TUEEEE等々。
ダンジョン活動、ダンジョンマスターまでなんでもあります。
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…
小桃
ファンタジー
商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。
1.最強になれる種族
2.無限収納
3.変幻自在
4.並列思考
5.スキルコピー
5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!
夜間救急事務受付
ファンタジー
仕事中、気がつくと知らない世界にいた 佐藤 惣一郎(サトウ ソウイチロウ)
安く買った、視力の悪い奴隷の少女に、瓶の底の様な分厚いメガネを与えると
めちゃめちゃ強かった!
気軽に読めるので、暇つぶしに是非!
涙あり、笑いあり
シリアスなおとぼけ冒険譚!
異世界ラブ冒険ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる