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95. 復讐に駆られる男

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 ハラダ家、ハラ家VS異界の悪魔サルガタナス側。

「お主が、何を言おうと、ジゲン流を使うのは、ハラダ家、ハラ家の者のみ!
 とくと見よ! これが本家本元のジゲン流じゃ!」

 無防備の異界の悪魔サルガタナスに、スエキチ爺さんが大きく飛び跳ね、上段蜻蛉の構えから、必殺の一撃が振り落とされる場面。

「チェストー!!」

 ズダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダーーン!!

 凄まじい、轟音と共に、会心の一撃と思われる斬撃が、異界の悪魔サルガタナスに振り落とされた。

「グワッ!」

 異界の悪魔サルガタナスが、呻き声を上げる。

「チッ! 浅いか……しかしながら『白蜘蛛』。やはり異界の悪魔でも斬れる」

 スエキチ爺さんは、確信する。
 今まで、異界の悪魔を斬る事ができるのは、聖剣だけだと思われていた。
 しかし、後期の『白蜘蛛』なら、会心の一撃を与えれば、一応、異界の悪魔が斬れると。

 しかしながら、斬れたと言っても致命的な傷は与えられない。聖剣で今の攻撃を食らわせていれば、異界の悪魔サルガタナスを持ってしても、大ダメージが与えられた筈、しかしながら、異界の悪魔サルガタナスは普通に立っている。

「驚いたぞ……まさか、聖剣以外に我を傷付ける事ができる日本刀レプリカがあったとは……」

 異界の悪魔サルガタナスの額は、正面から無防備で、スエキチ爺さんの会心の一撃を受けた為、額がバックリ割れて居る。
 だけれども、全く致命傷ではない。

 自己再生能力を持ってるのか、ミルミル傷が塞がれていき、もう、血も止まってる状態である。

「お爺様!」

 ハナが、叫ぶ。

「殺れるぞ! ハナよ! ここから一気にラッシュを掛けるぞ!」

「「ハイ!!」」

 ハナも含めて、ハラダ家、ハラ家の者達が、歓喜に沸きながらも、力強く返事をする。

 そして、ハラダ家、ハラ家の者達が、異界の悪魔サルガタナスだけに集中して、攻撃を仕掛けようとしてる、まさにその時、
 その背後から、鬼気迫る表情で迫り来る一人の男の存在を、薩摩の末裔達は全く気付く事ができなかったのだ。

 誰しも、共闘してるシャンティー達『犬の肉球』の面々が守る、背後から襲われるとは、微塵も思っていない。

「行くぞ!」

「「オオ!!」」

 スエキチの号令と共に、ハラダ家、ハラ家の者達が、異界の悪魔サルガタナスに飛び掛る。その瞬間、

 ズダダダダダダーーン!!

「えっ?!」

「うぎゃぁぁぁーー!」

「な……何で……」

 背後から、ハラダ家、ハラ家の者達が攻撃を受ける。

「えっ!? 塩太郎殿……どうして……」

 背後からの攻撃を敏感に感知して、なんとか避ける事に成功していたハナが、斬撃波を背後から放った塩太郎に問い掛ける。

「フン。お前に直接恨みはないが、お前らは薩摩の末裔。俺が元いた世界では、薩摩藩は、長州藩の不倶戴天の敵なんだよ!」

「え……そんなの知らないです」

 ハナも、突然の事に動揺している。

「お前ら薩摩は、尊皇攘夷をするフリをして、俺ら長州を裏切り、幕府と会津と組んで、俺達を京都から追いやったたんだよ!」

「尊皇攘夷? 一体、なんの事を言ってるのですか?」

 訳の分からないハナは、必死に質問する。

「お前らに言っても分かんねーよ。薩摩っぽは、どうせ、得をする方に付く風見鶏だからな!
 日本の為に、本気で動かねー奴らに、話す気になんねーんだよ!
 どうせ、国の殿様の島津様が大事なんだろ!
 俺達の殿様、毛利様とは、格が違うんだ!
 長州藩は、殿様も藩士も、命を掛けて日本を守る為、変える為に戦ってたんだ!
 お前ら薩摩のように、薩摩藩が得する事だけしか考えずに、行動してんじゃねーんだよ!」

 そう。あの時代、本当に日本を変えようと戦ってたのは長州藩だけ。
 長州藩だけは、殿様も含めて、日本を牛耳ってた徳川家と本気で戦っていたのだ。

 死んだ人間は、数知れず。
 蛤御門の変。
 イギリス、アメリカ、フランス、オランダを敵に回して戦った四国艦隊下関砲撃事件。
 長州藩3500人に対して、幕府軍10万5000人の戦い。無謀な戦いと思われた第二次長州征討も含めて。

 藩滅亡寸前まで、追い込まれ、何とか最後に薩長同盟を組んで、何とか幕府を倒す事に成功した。

 この薩長同盟を結ぶ時、長州代表として参加した桂小五郎は、どんだけ悔しかったか……桂小五郎自身も蛤御門の変の当事者で、薩摩の奴等に仲間をたくさん殺されているのだ。
 だけれども、日本国の行く末を考え、血の涙を流し、断腸の思いで薩長同盟を結んだのだ……。

 塩太郎が死んでしまうキッカケとなった、蛤御門の変の後の話は、塩太郎の知らぬ事なので、塩太郎の中では、薩摩との敵対関係が一番明確になった事件。蛤御門の変までで止まっている。

「塩太郎殿! 私達一族は1000年前にこの世界に来た侍の末裔!元の世界の事など、全く伝わってないし、覚えてないのです!」

 ハナは、塩太郎に分かってもらおうと、自分達が何も知らない事を訴える。

「お前らの1000年前の御先祖様がやらかした事柄だとしても、俺にとってはつい最近の話なんだよ!
 お前ら薩摩に裏切られて、志半ばで死んでしまった仲間の仇、キッチリ、薩摩の末裔の命で返させてもらうぜ!」

 まあ、ハラダ家、ハラ家は、江戸時代初期からの異世界転移者の末裔なので、幕末の事件には全く関わっていないのだが、そんな事は、塩太郎に関係ないのだ。
 ただ、仲間を、同じ釜の飯を食った、同じ志を持っていた仲間をたくさん殺した薩摩の血族が憎いのである。

「私は、貴方と戦いたくない!」

 ハナは、涙ながらに塩太郎に訴える。

「俺は、お前を殺したくてしょうがないぜ!」

 塩太郎は殺気漲らせ、ハナに躊躇無く斬りかかった。
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