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220. テキ屋
しおりを挟むハァハァ……
俺は何でこんな目に遭ってるのだ?
今回の異世界人生は、俺TUEEEE系のハーレム勇者設定では無かったのか?
まさか、勇者の卵である俺が、よく分からん女にビビって逃げ出す事になるなんて……。
完全に、大魔王だった頃のゴトウ·サイトの性格に引きずられている気がする……。
記憶が戻る前の俺だったら、絶対にこんな情けない目になど合うわけがないのだ。
兎に角、気を落ち着かせよう。
クロノスの姉とか言うソフィア。
アイツはヤバイ。
プレッシャーが、姫並だった。
俺じゃなかったら、多分、ペッチャンコにされていただろう。
姫が、寮対抗格闘技大会で優勝した事になっているので、必然的に、俺がサリス魔法学校の影の支配者の地位についてたのに、その地位も有耶無耶になってしまった……。
それから運の悪い事に、いきなり俺の事を、ソフィアに認識されてしまったし。
アイツは、俺の秘めた力を完全に見抜いている。
俺自身 気づかない振りをしていたが、実際、ソフィアは、ブリトニーの事より、俺の事をずっと注視していたのだ。
だからといって、俺から生徒会に仕掛けるのは愚策だ。
暫くは、様子を見よう。
仕掛けられたら仕方が無いが、今はブリトニーに任せて置けば良いだろう。
ブリトニーの嫌がらせは、常軌を逸しているのだ。
毎日、生徒会の部屋の前に鼠の死骸を置き続けるとか、手の凝ったことを普通にする。
ブリトニーは、滅茶苦茶に見えるが、実際は真面目な所もあったりする。
そもそも早起きな奴が、真面目でない訳がない。
俺が知ってるブリトニーは、自分が面白いと思った事は真剣にやる。
というか、やり過ぎる。
俺が大魔王ゴトウ·サイトだった頃など、毎朝早起きして、カワウソの牙のヤナトとスイセイに修行をつけていた。
だが、その修行が常軌を逸していて、毎日、ヤナトとスイセイは、手足を切断されて達磨にされてたっけ……。
まあ、ヤナトとスイセイは、達磨にされても、三本目の足はビンビンに勃起し、白い液体がドピュドピュ出てたけど。
兎に角、ブリトニーに任せておけば、ソフィアも俺に構っている時間など無くなるという訳だ。
そんな事はさておき、俺の目的は、ブリトニーと話をする事だった。
こんなにブリトニーと話をするのが大変だとは思わなかった。
同じクラスの生徒の筈なのに……。
たまには授業に出て欲しい。
ブリトニーは、朝も早過ぎるので早朝に捕まえるのも難しいし。
どうしたものか……。
というか、【影渡り】スキルで、普通にブリトニーに会いに行けば良かったではないか……。
俺はなんてアホなのだ。
この数日間の無駄な時間はなんだったのだ。
やはりこれは、ゴトウ·サイトの記憶が戻ったせいである。
ゴトウ·サイトの記憶が戻って良い点もあるが、悪い点もたくさんある。
そもそもこの世界に転移する前のゴトウ·サイトは、駄目人間だった。
なんの取り柄も無い、中卒の駄目ニートだったのだ。
この世界に転移させられたのだって、姫の命を救う為に、時間が無かったモッコリーナが妥協して、仕方が無しに俺を召喚しただけだし。
時間さえあれば、もっと適切な人物を召喚できた筈。
間違いなく、モッコリーナが、俺をこの世界に召喚した理由は重度のロリコンだったからだろう。
ロリコンなら絶対に、姫を見捨てないと思ったに違いない。
そんなゴトウ·サイトと違い、サトウ·アレンになる前の俺は、普通の少年だった。
アリスに呪われたせいで、家から出られなくなりオタク気質だったが、どちらかと言うと家族を大事にするマトモな人間だった。
冷凍されるという選択をしたのだって、これ以上、家族に迷惑をかけない為だ。
そんなマトモな人間だった俺が、ゴトウ·サイトの記憶が戻った事によって、変態になってしまったのだ……。
正統派俺TUEEEE系完璧勇者になる筈が、俺TUEEEE系ロリコン変態ハーレム勇者になってしまった。
俺は、姫やアンちゃんやブリトニー、それから超絶スキル『全知全能君』と引き換えに、変態ロリコン野郎になってしまったという訳だ!
妄想が長くなってしまったが、取り敢えず、【影渡り】スキルを使って、ブリトニーの元に向かう。
「ウワッ! ご主人様! 私の影から出てくるなんて珍しいのニャ!」
ブリトニーが、驚いた表情をしてビックリしている。
どうやらブリトニーは、春島のメインストーリートの一角にある中央広場に居たようだ。
「こんな所で何やってんだ?」
「中央広場にある私のお店を見に行くのニャ!」
「お店って、屋台か何かか?」
「そうニャ! タコ焼きとクレープの屋台をやってるのニャ!」
どうやら、ブリトニーは、サリス魔法学校以外でも屋台をやっているらしい。
春島の中央広場には、露天が沢山出ているので、ブリトニーもそれに便乗したのだろう。
中央広場には、所狭しと、採れたて野菜や果物が売ってる露天や、雑貨などを売ってる露天など、沢山の露天が出ている。
「最近、授業に出て居なかったのは、そのタコ焼き店とクレープ店の準備の為か?」
「そうニャ! 寮対抗格闘技大会で、私の屋台が大盛況だったので、中央広場に進出する事にしたのニャ!
午前中は、良い場所をゲットする為に、場所取りをしていたのニャ!」
「場所取りって、もう大体、誰がどこに露天を出すって決まってるんじゃないのか?」
俺は気になったので聞いてみた。
日本のお祭りでも、テキ屋の元締めが、誰がどこに屋台を出すのかとか、しっかり決めていると聞いた事があったからだ。
「だから、毎朝私がわざわざ出張って、因縁付けて来た奴をシメて廻ってるのニャ!」
まあ、それはそうなるだろう。
何せ、テキ屋は一般人では無いのだ。
だが、ブリトニーも一般人では無い。
というか、南の大陸のテキ屋の元締めはブリトニーの配下ギルドの『プッシーキャット』だったりする。
ブリトニーが、サリス魔法学校に入学した次いでに、サリス魔法国家にもテキ屋団体でもある『プッシーキャット』を進出させるつもりだったのだろう。
そんな訳で、『プッシーキャット』の団長であるエロチックさんまで、サリス魔法学校に入学したと思われる。
「で、地元の人達と話は着いたのか?」
俺は気になり、一応聞いてみる。
「知らないのニャ。最近は何故だか分からないけど、誰も何も言ってこなくなったのニャ」
ブリトニーはそう言うと、愛刀のスキルスッポンソードを鞘から抜き取り、刀身をペロリと舐めながらニヤリと笑った。
まあ間違いなく、テキ屋の元締めの何人かのチンコが、ブリトニーに100枚に下ろされたのは想像ついた……。
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