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93. 重たい女

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「それでは、ガリム王国レイドの成功を祝い。
 今回のガリム王国レイドマスターであり、ガリム王国の王子であるネム·ガリムが乾杯の音頭を取らしてもらいます!」

「挨拶なんかどうでもいいから、早く飲ませろよ!」

 アレックスがチャチャを入れる。

「それでは、皆さん! チンチン!」

「「「チンチン!」」」

 騎士さんや冒険者達が、チンチンと大きな声で叫ぶ!

 これが日本だったら、セクハラで訴えられるだろう。

 ここには女子もたくさんいるのだ。

 しかし、女子である筈のジュリやアリスも、嬉しそうにチンチンと叫んでジュースが注がれたグラスを掲げていた。

「……(何かおかしい)」

 俺の思考が、幼稚になっているような気がする。

 まだ、この世界に生まれて4年しか経ってないが、これ程までにチンチンに固執する事はなかった。

 チンチンやウンコという言葉に、妙に反応するとは、完全にお子様ではないか……

 最近、俺の前前世を知る者に連続して会いすぎた事により、変態ロリコン大魔王と言われたゴトウ·サイトの思考に似てきてしまっているのかもしれない。

 これは不味い現象だ。

 俺もこのままでは変態ロリコン大魔王アレンと呼ばれるようになってしまうかもしれない。

 アレン。落ち着け! 平静になるのだ。
 俺は俺なのだ!

「アレン君。どうしたの?
 青い顔して、気分でも悪いの?」

 ジュリが心配して話しかけてきた。
 どうやら、俺は酷い顔をしていたらしい。

「大丈夫だ。 ただ少し考え事をしていただけだ」

「ここの料理、凄く美味しいよ!」

「そうだな」

 俺は漫画でしか見た事がないような、でっかい骨付き肉を食べてみる。

「う……美味い! 」

 見た目だけの淡白な味だと思っていたのだが、とんでもない。
 皮がパリパリで歯応えがあるのだが、そのパリパリを越えると、中からジューシーな肉汁が溢れだす。
 そして、ただ柔らかいだけではなく、ある程度噛みごたえもあるのだ。
 霜降りのサシが、絶妙なのだろう。
 しかし、この骨付き肉はデカ過ぎる。
 これを1個食べたら満腹になってしまいそうだ。

 そんなデッカイ骨付き肉を、アリスとアレックスは両手に持って、美味しそうにむしゃぶりついている。

「夢にまで見たマンガ肉が食べ放題なんて、妾は幸せなのじゃ!」

 何故かアリスは、マンガ肉とか専門用語を知っているらしい。

「流石はアリス様、マンガ肉を知っておられるとわ!」

 アリスがマンガ肉に騒いでいると、それを見ていた漆黒の森総料理長のガリクソンが近ずいて来た。

「知っておるわ! 前の世界で、兄様を呪っていた時に、テレビや漫画でいつも見ていたのじゃ!
 ある日、マンガ肉が現実には存在しないと知って落胆し、暫くの間立ち直れなかったのじゃ……」

 アリスは、その時の事を思い出したのか。
 少しだけ暗くなった。

「その気持ちわかりますよ。
 私は、ゴトウ殿を見てきましたからね!
 ゴトウ殿は、マンガ肉に物凄く執着しておられました。
 マンガ肉自体は、このダンジョンで飼育しているミノタウルスの腕の肉が、丁度マンガ肉に見えると、すぐに採用になったのですが、腕肉は少し筋張っていて、モモ肉とは違ってあまり美味しくなかったのです。

 それからというもの、ミノタウルスの腕肉の改良が始まりました。

 ゴトウ殿的に、マンガ肉はヨダレが垂れる程、美味しくなくてはならないと常日頃から仰っていたのです!

 ゴトウ殿の死後も、マンガ肉の改良は姫様に引き継がれて続きました。

 姫様は、ゴトウ殿の遺言を守り、莫大な予算を掛け、遂に300年掛けて、美味しい腕肉のミノタウルスの品種改良に成功したのであります!

 そして、調理の仕方にも拘り、最終的に私が編み出した秘伝の調味料に一晩付け、素揚げにするという調理方が1番美味しいという事が分かり、秘伝の調味料で味付けまでした素揚げ前のマンガ肉を、冒険者ギルドに販売する商売を始めたのです!」

「商売してるのかよ!」

 俺は思わず突っ込んでしまったが、300年も掛けて品種改良したミノタウルスの腕肉を、『漆黒の森』の大食堂だけでしか食べれないのは、確かに勿体ない。

 何せ、マンガ肉は本当に美味しいのだ。

 それにしても、姫の執念が凄まじい。
 ゴトウ·サイトの願いを実現させる為に、300年もの間、研究の資金や労力を惜しまなかったのだから。

 姫は、ゴトウ·サイトの為ならなんだってするのだ。
 違う言い方をすれば、凄く重たい女というのかもしれない……
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