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50. 男走り

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 ズダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ……

「えぇ……と……
 ガブリエルさん……
 ペロちゃんの攻撃、止めて貰えるかな?」

「アッ……」

 ペロちゃんの魔法攻撃が止まった。

 ガブリエルは真っ赤な顔をして、俺の顔をチラチラ見ながらモジモジしている。

「アンさん……どうしたら?」

「ハァー……これは重症ね……でもアレックスを助けにも行かないといけないし……
 兎に角、僕達は第485ダンジョンに向かいましょう!
 どうせ第485ダンジョンはガリム王国の関係者しか入れないから、アレン君達を第485ダンジョンに送り届けたら、僕が姫ちゃんを責任を持って、漆黒の森に送り届けるよ」

 アンさんが、ガブリエルのデレぶりに溜息をつきながらも提案してくれた。

 それにしても、ガブリエルのツンデレの高低差が凄まじい。
 ここまでのツンデレは、正直引いてしまう。

「そしたら直ぐに父上を助けに行くのじゃ!
 こうしてる間も父上が危ない目にあってるかもしれぬのじゃ!」

 珍しくアリスが、ガブリエルに噛みつく事なく、早くダンジョンに行こうと主張する。

「というか、私達の方が危ない目に合ってた思うのだけど。
 アンさんが護ってくれてなかったら、私達 完全にガブリエルさんに殺されてたよ」

 ジュリは、真っ赤な顔をしてモジモジしているガブリエルを睨みつけながら指摘した。

 アンさんは、困ったものだと肩を落としながら、「ペロちゃん! おいで!」と、俺達を遠方から魔法攻撃をしていた人物を呼んだ。

 アンさんの呼びかけに応じ、遠くの方から3つの頭を持つ神獣ケルベロスが飛んできた。

「ペロちゃんって、ケルベロスの事だったのか……」

 圧倒的な迫力で飛んできた4メートルはある巨体のペロちゃんは、アンちゃんの前に来て ちょこんとお座りし、褒めて褒めてとハァハァ舌を出しながら、尻尾をブンブン降っている。

 何気に、あれ程の無慈悲な魔法攻撃を俺達に仕掛けて来たペロちゃんが、可愛く感じてしまう。

 ペロちゃんは、ガブリエルに命令されていただけなのだ。

 ペロちゃんは、全く悪くない!

 犬好きの性分か、ペロちゃんをモフモフしたくて堪らなくなってしまう。

「それじゃあペロちゃん! 僕が戻ってくるまで姫ちゃんを護るのよ!」

「ワン!」

 アンさんはペロに、ガブリエルさんを護れというが、この最強の一角の少女に喧嘩を売るバカな奴なんているのか……

 ガブリエルはペロの巨体に隠れて、俺の事をチラチラ見ている。

 俺達は取り敢えず、隣のクラスにいる気になる男子を廊下の窓からチラ見をして、勝手に興奮している女子中学生のようになってしまっているガブリエルを置いて、第485ダンジョンに向かった。

「アレン君。あの人の事どう思ってるの?
 あの人は、エリスさんを殺そうとしてた人なんだよ。
 そこの所は、どう思ってるの!」

 ジュリが突然、俺に質問してきた。

「綺麗な人だとは思うけど、流石に母親を殺そうとしてた人に対しては、変な感情は湧かないよ……」

「ガブリエルは、妾が絶対に倒してみせるのじゃ!
 今はガブリエルもペロちゃんにも全く勝てる気がしないのじゃが、取り敢えず神道異界流を極め、必ずや今日の雪辱を果たすのじゃ!」

 アリスはよっぽど悔しかったのであろう。
 色ボケしてたガブリエルに対して、珍しく何も言い放たなかったのだ。

 アリスの今までの行動原理から考えると、1言ぐらいガブリエルに何か言いそうなものなのに。悔しさを呑み込んで、じっと耐えていたのだ。

「そんなに姫ちゃんを責めないであげて。
 姫ちゃんがエリスさんを憎むのにはそれなりの訳があるのよ」

「そうだとしても、何も関係の無い私達をいきなり殺そうとするなんて信じられません!」

 ジュリは、引き下がらない。

「アリスちゃん!ストップ!
  すぐ目の前に見える祠が第485ダンジョンだよ!」

 アリスは前の世界にある公園の公衆便所のような大きさの祠の前に降り立つ。

 祠には第485と書かれた名札が打ち込まており、ガリム王国関係者以外立ち入り禁止と書かれた紙が張られてあった。

「それじゃぁ、僕は姫ちゃんを向かえに行ってから帰るね!
 それからジュリちゃん、アレックスを救ったら僕に連絡を取って!
 そしたら、姫ちゃんがエリスさんを憎む訳を教えるよ!
 その話を聞いてから姫ちゃんを許す。許さない。を決めてほしいな!」

「……」

 アンさんの問い掛けに、ジュリは何も答えない。

「解りました! アンさん。父さんを救ったら、アンさんを訪ねますね!」

 俺は、ジュリの代わりにアンさんに答えた。

「ありがとうアレン君!
 そしたらコレを渡して置くわ!
 アレックスを助けたら連絡を頂戴ね!」

 俺はスマートフォンの様な端末をアンさんに渡された。

「スマートフォン?」

「よく知ってるねアレン君!
 そう、それはこの世界に100台しかない魔導式スマートフォンだよ!
 400年前に、サイト君がその当時生きていた天才魔道具職人、ゾイ·ラトニエルに造らせた神級魔道具なんだよ!
 僕だけの番号を登録してあるから、アレックスを助け終わったら電話してね!」

 アンさんはそう言い残した後、ガブリエルを迎えに駆け足で帰っていった。

 どうでも良い情報なのだが、アンさんは見掛けによらず、男走りで足が速かった。
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